そもそも異常とな何に当てはまる事柄であろうか。私は良く死神やそれに付随する異様な事柄について、全て異常であったり常識外という言葉で済ましてきたが、それらの言葉は本当に正しかったのかは現状では判別がつかない。
かのアインシュタインは『常識とは、18歳までに身に付けた偏見のコレクションである』と述べていたが、常識が偏見であるのならば、非常識は何であろうか。偏見の対義語で正見か、それとも中立か。非常識に対しては物事を正しく見抜くのは不可能に近いし、真ん中に立った所で全てを理解するのは不可能である。
結局のところ、非常識とは何処までいっても理解が及ばない非常識である。偏見の方がまだ少しでも理解する心があるだけマシというものだ。
人間にとって、この世に存在する殆どのものが未知だ。それは死神関連に限らず、宇宙であったり地底であったりと様々だ。
しかし、未知と常識外はイコールにならない。未知は全て理解できる可能性を秘めているのだから。
数学に置き換えたら未知は整数で常識外は自然数と言ったところか。整数の中に自然数が存在する、つまりは未知の中に理解が及ばない常識外が紛れているということだ。ならば常識は無理数と言ったところか、無理数と常識が思考上一切結び付かないのが逆に笑えてくる。
どうせ数学繋がりならここで一つ、
「『次のマッチ棒の問題を答えなさい。マッチを一つ付け足して式を完成させよ。 8=1』」
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私が世界をつくるなら、良い世界をつくろう。
何も考えていない頭の悪い回答。しかし、この回答を頭が悪いと言うのなら、そもそも頭のいい回答とは一体全体何のことを指すのであろうか。
先に【世界をつくる】と述べたが、その文字は『作る』なのか『造る』なのか、それとも『創る』であるのかさえもはっきりしない。一番正解に近い回答としては『創る』であろうか。しかしこの文字も意味としては『原型と呼べるものが何も無いところから作り上げる』のであって、もしも世界という見本がそもそも存在してているのなら、それを創ると言ってもいいと私は思えない。
だが、これで答えは出た。正確には無理やっり答えを当てはめたと言ったほうがいいのか。結局のところ、すべてに対して適用できる『作る』を使用すれば済む話だ。文章の見栄えが悪くなるだったり、子供っぽく見えるなど言いたい奴が言えばいい。結局、見栄を張って間違えでもしたら、それこそ本末転倒なのだから。
「あんたもそろそろ現実見たら」
友人はうつむく私の顔覗き込みながら、私のことをわが身のように心配するがごとくそう言った。
「……現実?」
「そう、現実」
はて、私が現実を見ていないとでもいうのだろうか。私ほど現実を謳歌している人間など存在するかどうかも怪しいというのに、この友人はそんな私に現実を見ろというのか。
「こないだの数学のテスト、最悪だったらしいじゃないの」
「……な、何故貴様がそれを知っている?」
「キャラ崩れるくらい動揺する必要ないと思うのだけど、あんたが数学苦手なのは先生がクラスの生徒全員に公表して知れ渡ってるでしょーが」
「そ、そうだったけ?」
「あんたの記憶力に対して私は心配になってきたわよ」
私はこれでも、今まで記憶力はいいと自身に評価をつけていたのだが、どうやら今回以降はその認識を改めなければいけないようだ。
「にしてもあの教師、皆の前であんたの不出来な事を発表するなんて、まるで虐めのようね」
虐めか虐めでないかと聞かれたら、私は虐めではないと答えるだろう。
私にとっては別に皆に知られても気にしない。人には得意不得意があるのだから、それで他者を弄る方がおかしいのだ。どんな人間だって欠点は確実に存在するのだ。もしも完璧な人間が存在するのなら、それは人間と否定させて貰いたいところだ。否定し、拒絶する。私の知る天才も、完璧であったことは一度もないのだから。
「あんたは公開処刑のような真似されて全然平気そうね。私なら半年は引きこもるところなんだけどなー」
半年とは、それはとても長い。私にとったら長く、友人にとったら短い一時なのだろうか。それこそ、時間の感じ方など人それぞれであり、今も科学で解明されていない難題の一つであるのだから。
「私にとってあんな事は障害になり得ない。ただ、私にとっての障害は死神だけだから」
「あんたにとって、あの全てはあんな事ですんでしまう様ななんでもない事なんだね。それにしても、またあんたの死神語りが出たか。こりゃとんだ地雷を踏んでしまったかしら」
「あいつだけは許せない。私にとっての敵はあいつであり、同時に私にとっての障害もあいつだけだ。私を生んだとしても、私はあいつを許さないし、あいつを──」
「あー、はいはい。そんな事よりあんたはお腹すいてない? 私、久しぶりに今日はお弁当なんだよね。あんたにもあげるから一緒に食べなさい」
よく見ると、友人の膝の上にはお弁当を入れるポシェットがあり、そこで初めて私は友人が手ぶらで無いことに気づく。
珍しい。いつも昼食を抜いている友人がお弁当を手にするなど明日は雨でも降るのだろうか?
「あんたなんか失礼なこと考えてるでしょう」
ジト目で私を睨みながら友人は、ポシェットから弁当と箸をとりだし、食事の準備を進めていく。
「今日は偶然家族が作ってくれたのよ」
家族が作ってくれるなどなんとも羨ましい限りだ。私の両親なんてそんな事を一切してくれた事はないのだから。
まあ、気にかける所か目を合わしたら常に警戒されているのだが。実の娘に酷い対応だ。
「にしても、私が食べていいの? これはあなたの家族があなたの為に作ったものでしょう」
「いいのよ。あんたには私から食べて欲しいんだし」
もしかして、この友人は常日頃から昼食を抜いている私を見かねて自分の弁当を分けてくれると言っているのだろうか。正直な所、友人の気遣いはとても嬉しい。
しかし、何事も線引きが大事だ。ここは一つ──
「ふんぐっ!? ん! ん!?」
唐突に私の口の中へ挿入される箸とナニカ。見たところ、先程よりひとつ欠けた弁当内の卵焼きから判断するに、どうやら友人は私の口へ無理やり卵焼きを押し込んだようだ。
「変な御託を考える前に一口だけでも食べてみなさい。それで私が食べて欲しかった意味も理解出来たと思うし」
砂糖の効いた甘くて美味しい卵焼き。そして、お手製の独特なダシが染み込んでいるところから、とても手間隙かけて作られたのがこの味から感じられる。
私に対してこんなものは勿体無い。正直な感想はこうであったが、しかし友人はそんな私の心も見据えた上であのような口へと押し込んだのだろう。
「…………おいしい」
「そうでしょそうでしょ! やっぱり私のママは凄い人なのよね」
私を楽しませるなんて、友人ながら何とも意気な心得だ。
校舎の屋上で天に上る太陽を眺めながら、私は口の中に残る卵焼きの味を味わい、何故か懐かしさを感じていた。
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『鬼のいない鬼ごっこ』は一体どういうものなのだろうか。鬼役がいなければ、鬼ごっこではないし、そもそも遊びとしても成立していない。成立していなければ、開始もされないし、終了もされない。
何物でもないし、何者でもない。ただただ言葉としてそこにあるだけのものだ。しかし、子どもの頃は不思議で良く一人で鬼ごっこをしたものだ。
それこそ人それぞれかもしれないが、イマジナリーフレンドの様な見えない何かと共に遊び、共に成長した事がある人は最低でも何人かいるはずだ。
遊び、楽しみ、笑い、そしていつか忘れていくフレンド。それがいる限り、一人は一人で無くなり、また孤独も消え失せる。
「あはは、いくら美味しかったからって弁当の半分を食べる程がっつかなくて良かったでしょう」
「美味しい方が悪い」
「それは褒め言葉として受け取っておくわね」
久しぶりに食した昼食は私の心を満たしてゆく。
「それで、話を最初に戻すけど、数学のテスト点数最悪だったのでしょう。あなたはそれで良かったの?」
「…………別に」
「嫌な事になると短絡的に 話を終わらす癖は無くした方がいいわよ」
満たされていた心にモヤがかかる。正しく飴と鞭だ。もしも世界の鬼について語るのならば、友人の名前を出さなければ失礼に値するかもしれない。
「……」
「……」
「……」
沈黙が私と友人の間を駆け抜ける。その中には校庭でクラブ活動している生徒の声も入ってこない。
「はぁ、わかったよ。」
先に折れたのはさてはてどちらであったか、今の私には一切の判別がつかなかった。
いつもなら5000字を目標にやっていましたが、物語の都合上3500字程度になってしまいました。
一応次話の構成はおおよそでき上っているので、今週中までには投稿できると思います。