純潔の星   作:4kibou

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息抜き。

書きたいモノを書き散らしたくなったので息抜き(洗脳)


今度こそはゆっくり投稿です。


第一部 星の反逆者
0/『プロローグ』


 Number:Nine

 Chief:One

 Type:Energy

 Code:Unicorn

 

 The other side of the sky...

 

 

 

 西暦二一六〇年。

 異常なほどの寒さに包まれた十二月――東京の冬。

 

 本日の極東地域における出生数はゼロ。

 これにて二百日連続の記録を更新。

 

 対する死亡数は確認できただけでも三十を越えている。

 昨日より十人増加、といったところ。

 それもこれも寿命ではなく、戦闘による被害であるのだから笑えない。

 

 ――かつて七十億を越えていた世界人口は、いまやたったの五千人程度まで落ち着いた。

 

 増えるばかりだった命はやがて消耗のスピードに追いつかれ、人類はいつかの未来だと思い描いていた衰退と減少の一途を辿った。

 それもこれも、たったふたつの外的要因によるものだ。

 

 ひとつは宇宙(ソラ)から飛来した災害の如き異形の怪物たち。

 瞬く間に文明を蹂躙したそれらは、かつての人間の大半を殺した絶滅の切欠だ。

 

 決定打となったのはもうひとつ。

 突如として地上の大気を汚染し、地球環境を変貌させた未知の粒子。

 曰く、〝純潔の乙女以外に害を与える神秘のエネルギー〟。

 

 これによって男性人口は急激に低下、さらには出生率まで低下し、種の継続は困難と判断される。

 クローン技術や人工授精による研究も進められたが、どれも失敗のまま文明は半壊。

 かくして人類はいつ終わるか分からない時代にありながら、風前の灯火みたいに辛うじて生き残っていた。

 

 ……要は、これはそういう時代の話。

 

 もはや終わるしかないと信じて疑われなかった、終末のテクスチャに縛られた未来の物語。

 ――そして、向かい風の環境に真っ向から刃向かった、ひとりの馬鹿の叛逆劇。

 

 さあ、これより祝福をはじめよう。

 その名は――――

 

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 

 ――思えば、物心ついたときからそうだった。

 

 なにかを頭で考えるとき、なにかを心で思うとき。

 ピンと張った糸みたいに、どこかに繋がった感情の線。

 それが、おもむろに震える時が何度もあった。

 

 〝イヤだ、ダメだ、気にくわない〟

 

 衝動じみた反骨精神。

 こうあれかしと願われるその姿が我慢ならない。

 自由になんてこだわりはないのに、どこか縛られているとなぜか魂が叫んだ。

 

 〝ふざけるな、認められない、そんなのは間違いだ〟

 

 常識的に、世間的に考えればおかしいのは己自身。

 こんなのはただの馬鹿か阿呆の言い分で、後先もなにもない勢いのままの心情でしかない。

 だというのに、心の奥底から出た本音は、抑えるのも酷く辛かった。

 

 だから。

 

「――ああ。だから、仕方ねえよ。しょうがねえよなァ。だって俺は俺なんだぜ」

 

 くつくつと喉を震わせて笑う。

 長く過ごすうちに()()のクセが移ってしまったらしい。

 それがどことなく嬉しかった。

 こんなどうしようもない自分にあっても、まだ〝らしい〟部分がちゃんとある――

 

 ――()()()

 

「悪い、すまねえ、許せよ、ごめんな。俺は――――馬鹿だからなァ!!」

 

 もうこれ以上、ウダウダと考えるのはやめにしたんだ。

 

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 

 ドタドタと慌ただしく軍靴の音が鳴り響く。

 極東第一男性収容所。

 東京の湾岸に建てられたそれは、今となっては貴重な男の保護・管理を名目とする施設のひとつだ。

 

 職員の数はおよそ七十名。

 収容された男性は十二名、と小さな島国としてはこれ以上ないほど人的資源を詰め込んだ重要な場所でもある。

 

 ――しかし、そんなめちゃくちゃやべぇトコロで事件は起きた。

 

 起きてしまった。

 

《――全職員に告ぐ! 全職員に告ぐ! アンダー五階より脱走者一名! 現在中央の階段を地上に向かって逃走中! 迅速に対処せよ! くり返す! アンダー五階より脱走者一名! 現在中央階段を地上に向かって――》

「おい! 見つけたか!?」

「いいやまだよ! 早いわ! まるで男とは思えない!」

「というか誰よこんなバカなことする奴は!?」

「アンダー五階のバカと言えばひとりしかいないでしょう!?」

「アンダー五階…………、――――まさか!」

 

「そうッ!!」

 

 ガン、と手すりに靴底のぶつかる音。

 見れば階段を駆け上がる彼女たちの真横から、急に飛び出てきた人影があった。

 

 物陰に潜んでいたのだろう。

 その身なりは酷く汚れている。

 ボロボロのズボンと、擦り切れるまでに煤けた灰色のシャツ。

 荒れ果てた黒髪の隙間から覗く眼光は、どこまでも真っ直ぐに上を見ながら。

 

「俺だッ!!」

 

 直後、一直線に軌道を描く人型。

 彼はさながらロケットのように、手すりを足場にして上階へと一気に飛び去った。

 

「――――流崎(りゅうざき)貴様ァ!?」

「あんた自分がなにしてるか分かってんの!?」

「死にたいのかおまえ!? 死にたいんだな!? そうなんだな!?」

「やめなさい流崎くん! それ以上はバカのやることよ!」

「しょうがねえだろコイツバカなんだから!」

「ああそうだったわねバカだったわね流崎クン!」

「いやバカバカうるせえなァ!?」

 

 下から聞こえてくる会話に一言返しながら、彼は素早く足を動かせる。

 

 部屋を飛び出してからわずか三分。

 流石とも言うべきか、彼の脱走は一瞬にして気付かれた。

 

 色々と手の施された施設である。

 許可もなく抜け出すどころか、()()()()()()()()逃げたのは派手すぎたらしい。

 

「このッ――――力尽くじゃないと分かんないか!」

「ここはアタシに任せなさい! CQCの基本を見せてあげる!」

「バカ! 男相手だぞ!? 怪我でもさせてみろ! 手荒な真似はできん!!」

「じゃあ()()もダメってことよね……! ああもう! ほんと厄介なんだから!」

 

《構わん。多少手荒にしても私が許す。とにかくそこのバカを捕まえろ》

 

「「「「「神塚(かみづか)所長!?」」」」」

 

 ふと、スピーカーから聞こえてきた声に少年の口もとが緩む。

 こういう非常時でも慣れ親しんだものは心に染み渡るらしい。

 

 ニヤリ、と悪い笑みを浮かべながら、彼は職員たちの無線越しでも聞こえるよう声を張り上げた。

 

美沙(みさ)のヤローか! なんだ! 機嫌悪そうじゃねえの!」

《よくもやってくれたな(はるか)。今ならまだ間に合うぞ。軽い罰で済ませてやる》

「へぇ! そいつは一体!?」

《――私の抱き枕だ。一週間は横で寝てもらおう》

「「「「「所長乙女かッ!!!!」」」」」

《誰にモノを言っている。私は至って健康体だ。生粋の乙女だぞ?》

「悪いがそれは御免だなぁ! 此処は出るってもう決めちまったからよォ!!」

 

 と、その返答になにか思うところがあったのか。

 ピタリと鳴り止んだ放送に、彼がこてんと首を傾げる。

 

《――――ふん。別にいいが、このまま逃げられるとでも?》

「「「「「所長拗ねてる!!」」」」」

《うるさい。拗ねてない。さっさと動け馬鹿ども》

《こちら司令室! 所長の顔がめっちゃ不機嫌です!!》

《言うなァ!! 馬鹿ァ!!》

「だはははははッ!! なんだよ美沙ァ! おまえ可愛い反応するじゃねえか!!」

《ッ――――――――》

《所長顔が真っ赤です!!》

《悠ァ!!》

「ぎゃはははははは!! あー腹痛え!! あっはっはっはっは!!」

 

 爆笑しつつも彼の足は止まらない。

 追いすがって捕まえようとする職員たちを見事に躱しながら地上へ向かう。

 

 このまま行けばあと三秒でロビーに入る。

 分厚い壁で隔離された施設(ココ)ともおさらばだ。

 

 けれども、それは。

 

「――――ああ、ほんと、面白えんだよ。ここは」

 

 それは、心の底から出た彼の本音。

 

 彼に一切の不満はない。

 なにか不自由を感じたというワケでもない。

 

 こんな時代において衣食住が確保されていて、安心して眠りにつける環境が整っている。

 管理されているが故の息苦しさも狭苦しさも感じなかった。

 

 結論としていえば分かりきったコト。

 

 ここは自分たちにとっての楽園だ。

 なにもしなくても幸せな毎日を過ごしていける場所だ。

 

 なにかを訴える必要も、ましてやこんな風に逃げる必要もない。

 

だがなッ!! それじゃあ意味がねえ!!」

 

 そんなコトは分かりきった上で、なおも彼は迷わない。

 

 迷えない。

 

 だって、そう、すべては彼のその一心。

 まとめて全部ひっくるめて、価値を落とす愚かな思考。

 

 だから気に入らない。

 

「こんなんじゃあ、生きてる意味なんてまったくねえ!!」

 

 走りながら今になって思い返す。

 

 世話になった、ありがとよ。

 退屈が嫌いってワケでもないし、十分に楽しめてたさ。

 

 でもこればっかりは仕方ない。

 なにもかもが彼自身の問題で、どうしようもない衝動の部分だ。

 

「そうだろ!? ああそうさ!!」

 

 覚悟も決意もすでに終わっていた。

 ここを出ていくとそう決めた。

 

 命の使い方はとうに昔から己自身と定めている。

 

 それは証明のために。

 あるいは胸に刻むために。

 

 死んだように生きているなんて我慢ならない、と彼は吼え叫んだ。

 

 まさしくその通り。

 

 ――生きているのなら、死んでいくのなら、前のめり以外にありえない――!

 

《ロビーの出口シャッターを閉めろ! 急げ! 現場職員は包囲網を形成!》

「だっはっは! 男の子なんてこんなもんよォ!」

「もう逃げられませんわよ?」

「大人しくお縄につきなさい! そして所長への手土産にするのよッ!!」

「というか馬鹿なコト考えんなよ流崎……外出ても男が生きていける環境じゃ」

「ごちゃごちゃとうるせぇぇえええ!!」

 

 外と中を隔てる壁が一枚、また一枚と降りてくる。

 

 非常時用の鉄製シャッター。

 何層にも重なるそれは、到底人の力でどうにかできる代物ではない。

 

 活路は潰えた。

 逃げ場はない。

 前は閉じられ、後ろは囲まれている。

 

 しかし、彼の目に諦めの色は一切浮かばなかった。

 

 

 

《なッ――――所長!! この、反応は――――!?》

 

「ははははははッ!! んだよ、案外上手くいくもんだなァ……分かるだろ? 分かるよなあ……ッ、――そう、コイツはァ!!

 

 強く握り絞めた拳が色付いていく。

 周囲を揺蕩う微細な粒子が感応して光り輝いた。

 

 それは人類を終焉へと導いた破滅の極光。

 同時に、怪物と戦う力を少女たちへと与えた進化の煌めき。

 

 澄んだ青空のように透明で、原初の海より透き通った――

 

 ――空色の、燐光。

 

「馬鹿なッ! ()()()()()だとぉッ!?」

「あ、あれって私たち――女性しか使えないはずじゃあ!?」

「いや! 誰だって使えるんだ! 純エーテル()()は! でも!!」

「純エーテルの性質は純潔の女性以外に対する絶対的な有害性! つまり――」

《――――気が触れたか、悠ッ!!》

「もとより正気でなんざ生きられるかよォ!!」

 

 沸き起こるのは人体を越えた力に対する全能感と、それを上回る絶不調の大津波だ。

 

 とんでもない吐き気と頭痛。

 脳から回って内臓まで血管が千切れていく錯覚。

 口の中には鉄の味が広がって、身体の節々には剣を突き刺されたような痛みが走る。

 

 もはや五体満足かどうかなんて分からない。

 意識はとっくに腕が何処を向いていて足が何を踏んでいるのかすら定かでない闇の中。

 

 ――ああ、それでも。

 

 これがいい、と彼は盛大に笑い飛ばした。

 これだから、これでこそ。

 

 ――このぐらいじゃないと、生きてる気がまったくしない!!

 

「あははははははははははははははは!!!!」

 

 くり返される意識の断絶。

 全身を巡る電気信号すら何度も消えて、記憶が擦り切れていく死の間際。

 

 気絶と覚醒の連続で脳みそが弾けそうになったその刹那に、

 

 ――――彼は気合いと根性で、渾身の拳を()()()()()

 

「いやいやいや! 使い方違くない!?」

「あれぇ!? ねえ! 純エーテルってビームだっけ!?」

「んなワケあるかよ! 特殊な武器と能力! それらふたつの発現に要る燃料だ!!」

「じゃあなにあれ!? なんで純エーテルだけであんな――」

 

「だらっしゃああああああああ――――ッ!!」

 

 空色の光が炸裂する。

 

 直撃を受けた天井が、砂の城を崩すように砕け散る。

 

 ガラガラと崩壊する厚さ五メートルもの外壁。

 彼らを守るために造り上げられた防護壁は、皮肉にもそのひとりによって砕かれた。

 

 舞い散り振り落ちてくる爆音と粉塵。

 やがて、衝撃波を伴って撃ち抜いた壁の向こうから、深い空の色が――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――いや、見えねえ。

 

「水ゥ!?」

「馬鹿かおまえ!? 施設(ウチ)の構造がどうか教えられなかったのか!?」

「所長が何度か説明した気がするわよ!!」

「んなもん覚え――――あー! あーッ!! いま思い出したぞちくしょう!!」

「ダメだバカだったこの子!!」

「ていうかやばいわよ! エントランスが水浸しに!!」

「それどころじゃねえよ! 周囲五百メートルたっぷり水槽になってんだぞココは!! それが破られてるってコトはだ!!」

「洪水!」

「水族館!!」

「――――死ぬわねッ!!」

 

 ざばあ、と天井から流れてくる大量の水。

 漏れ出した、なんて度合いではない。

 さながら滝のような勢いで落ちてくる水に、今度は別の意味で施設が騒然とする。

 

「言ってる場合かさっさと動け! このままじゃあたしらまとめて溺死するぞ!?」

「あー……なんだ。その、すまねえ、悪ぃ、申し訳ねえ……」

「反省してる場合か流崎ィ!! おまえッ――ああもういいからおまえもこっちに来い!! というかあたしらよりもお前に死なれるほうがよっぽど困るんだよ!!」

「人類のためとか以前に所長が情緒不安定になるでしょう!? いいの!?」

《ならんわ莫迦者。――総員ロビーから退避。出入り口と生活ルームに繋がる防水シャッターを展開しろ。穴の大きさから十分程度は保つ。急げ、迅速にだ》

「了解ッ!! ――――流崎くんっ!!」

「流崎!!」

 

 焦るように呼びかける声。

 返ってくる言葉はない。

 

 していなかったかと言えば、その場にいる誰もが予想をした。

 同様に、彼ならばやるだろうという嫌な予感も含めて確かにあった。

 

 だが、まさか。

 

 ああ――まさか、これはないだろう、と。

 

《――ッ、どこへ行く悠!!》

「最初に言った筈だぜ! ここを出るとなァ!!」

《ふざけるな!! いまがどんな事態か分かっているのか!? 私はお前のためを思って言ってるんだぞ!? いいから戻れ!!》

「悪いとは思ってる!! 恩を仇で返してるってのもだ!!」

《悠ッ!!》

「だがな!! これはテメエで決めたコトだ! だったらもう止まれねえ! あばよ美沙!! てめえら!! 次会うときは死んでからだッ!!」

 

 いま一度彼の拳に空色の光が宿る。

 今度のダメージは内側だけに済まされない。

 

 破裂していく静脈と、筋肉を切って断裂していく全身の皮膚。

 口もとからは含みきれない血が溢れた。

 穴という穴から液体が見苦しく噴き出てくる。

 

 痛みは熱に変わって、感覚は再度途切れて闇の中。

 

 脳髄はもはやぐちゃぐちゃだ。

 自我も認識も曖昧になって、一瞬のうちに記憶が摩耗する。

 

 純エーテル。

 

 純潔の女性を除いたすべての人類に対する有害性・有毒性を持つ粒子。

 およそ百年前に宇宙から降り注ぎ、地球の大気を覆った未知のエネルギーは、否応なくその真価を発揮していく。

 

 前述の性質を第一とするならば、その特徴は全部で三つ。

 ひとつは人体を介した超活性化時における治癒・解毒作用。

 そして、もうひとつは――――

 

「しゃおらああああああああああッ!!」

 

 不可能すら可能にするとまで言われた、強大すぎる神秘の力。

 

  ――さあ、歓迎しよう。

 

 それは反逆を意味する音。

 

 それは寵愛を授かりし者。

 

 ようこそ世界へ、流崎悠(愛しい人)

 

 ――――その日、極東第一男性収容施設より、ひとりの男が地上へ放たれた。

 




本作は女の子ばかりの世界で男の子が頑張る(意味深)というエッチな作品にありがちな設定ですが、えっちぃシーンを書く予定はいまのところ一切ありません。ご了承ください。

伏線はバラバラしておきますが考察は程々にオナシャス(前作の反省を踏まえて)

??「ようやく出てきたな、ハルカ♡」
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