純潔の星   作:4kibou

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1/『その男、獰猛につき』④

 

 

 

 悠が脱走して三時間が過ぎようとしていた頃。

 唐突に、その連絡は美沙たちのもとへ入ってきた。

 

「――所長! 本部から通信です!」

「! わかった、繋いでくれ! 回線に不調は!?」

「いまのところ問題ありません! 繋ぎます!」

 

 ざざ、と不規則に響く電子音。

 しばらく待って帯域は安定した。

 

 数秒の無音。

 

 逸る気持ちをおさえつけて、美沙はひとつ深呼吸をする。

 

 

 

《――久方ぶりだな、美沙》

 

 

「……おまえ」

《ふむ、顔が見られんのが惜しい。その声だとさぞ愉快な表情だろうに》

「……うるさい。ようやく回復したか、阿呆め」

《手厳しいな。これでも無茶だったのだよ。全盛期の二割といったところか》

 

 ガチャガチャと煩く鳴っているのはおそらく義手だろう。

 電波の向こう側にいるのが誰なのか理解した上で、美沙は呆れたように息を吐く。

 

「それでよく生きていたな」

《これでも彼女たちのトップだ。まだまだ死ぬワケにはいかないだろう。それに、なにより成すべきコトは沢山残っている》

「そうか。いつものおまえらしくて安心した。――それで、用件は? ()()()

《聞かずとも分かっているだろう。お前の起こした始末だよ》

「――――――」

 

 予想通りというか、そうでなければ困るというか。

 厳かな口ぶりでこぼした相手に、無意識のうち唇を噛んだ。

 

 彼女たちはともかく、収容所(こちら)戦闘部隊(あちら)の仲はあまりよろしくない。

 この状況の打開を狙うのは同じものの、相手への反抗を主に置くか種の継続を重きにするかの違いである。

 

 窮地の間際、絶体絶命であろうとも意見の衝突、他者との対立は避けられないもの。

 それが知性、理性、および感情を獲得した人間という生き物ならば

 

《金宮――第三部隊の隊長から報告があった。どうも逃げた男を捕縛したらしい。おまえのほうからも支援要請は入っていたな。名前は流崎悠。間違いないか?》

「……ああ。その子だよ。悠は私のところから脱走した男だ」

《そうか。では部隊のほうをそちらに送らせる。貴重な男だ、出迎えの準備だけしておいてくれ――――と、済めばよかったのだがな》

「…………何事だ?」

 

 来た、と身構える。

 考え方の差異、重要視する部分が別なら導き出す答えもまた別だ。

 

 言わずもがな、悠の特異性――優れたトコロは美沙も把握済み。

 その上で〝人類の継続には必要不可欠〟と彼女は答えを出した。

 

 彼が(カレ)であるが故に。

 

 

 

 

 

 

《どうもその少年は走行中の車両を強引に停止させ、天井を引き剥がして車内に侵入してきたらしい。しかも無手、武器もなにもない状態でだ》

 

「――――――――――」

 

 

 

 

 〝な、なにをしてんだあの馬鹿ーーーーーーッ!?〟

 

 

 

 

「だッ、大丈夫なのか!? その、悠に怪我は!!」

《案ずるな。いまのところ無事ではいるらしい》

「そ、そうか……、すまない。取り乱した」

《構わんよ。珍しい姿を見られた。役得だな》

「うるさい」

《だがな。()()()()()。……この報告だと、私としても耳を疑うのだ》

 

 あまつさえそんなコトをしておいて、と付け加える戦闘部隊総司令。

 むしろ美沙は車両を止めた、というほうに耳を疑ったのだがそれはそれ。

 向こうにとっては少年の身の安全より、その素性のほうが興味深いものだったらしい。

 

《率直に問おう。彼は何者だ? 本当に男か、美沙》

「……男だよ。それは私がこの目で確かめた」

《付いていたのか》

「付いていたッ、……本当にただの男だ。おまえが目を付ける必要など、微塵もない」

《ほう。ただの男がこのような荒事に耐え、外で元気に生きられるのだと――おまえはそう言うのだな? 収容所の責任者である所長の、トップのおまえが。美沙》

「ああそうだ。こちらもハッキリ言わせてもらおう。()()()()()()()()。あの子はただ純エーテルの適正値が高いだけの男だ。おまえたちのように怪物どもに対抗するのはおろか、ただ走ったり動いたりするのだって本当は無茶なんだ」

 

 そう、あれほどのコトをしておいてなんだが、流崎悠は歴とした収容所暮らしの男性。

 身体機能を維持するため定期的に施設内で運動はしていたが、それもあくまで軽く身体を動かす程度のものだ。

 今まで生きるためだけに生きていた人間が、急に戦うため動けるワケがない。

 

《その適正値というのどれぐらいだ?》

「……聞いてどうする」

《いや、なに。純粋な疑問というヤツだ。私もそれなりに高いが、数値にすればA判定といったところになる。人より多く純エーテルを扱えて、巧く操るコトができ、治癒の促進も瀕死の重傷から生き残れるぐらいには強い》

「だから?」

《純エーテルの加護下にある(わたし)でそれだ。その男子……悠といったか? 外で暴れ回るぐらいだそうじゃないか。男であるというデメリットを打ち消してだ。それはどの程度だ? なあ、美沙。もしかしてとは思うが――()()()()()なんてコトはないだろうな?》

「――――――」

 

 ……声が詰まった。

 だって、それは。

 

《分かりやすい。それは肯定していると受け取るぞ》

「いや、待て。だがな、よく考えろ(あおい)、悠は男だ。世界に百人といない男性なんだぞ? それをまさか、戦場で使い捨てるのか? 正気か?」

《そうだな、正気じゃない。それがただの男であればだ。だが、()()。――――もしも彼に私を越える才能があるとすれば》

 

 そうするのは吝かではない、と。

 彼女――戦闘部隊総司令、陽向(ひなた)葵は言外にそう告げた。

 卓越した純エーテルに対する素質があるならば、外敵と戦うべきだなんてコトを。

 

「――ふ、ふざけるなッ! おまえ、あの子をなんだと思っている!? 何度も言うぞ! 悠は男子だッ! 外でマトモに生きるのも限界がある男なんだよッ!! 本来なら純エーテルを使うコトすら自殺行為だ! それをッ、――――それを、強制させる気か!?」

《ならば私としても言っておこう。美沙、おまえ、ヒトをなんだと思っている?》

「なにを!」

《日に日に人類は減る一方だ。純エーテルの影響もあるが、先ずは脅威・天敵を消し去らなくては意味がない。今なんて酷いものだ。先の北極への遠征で戦闘部隊は半壊している。()()使()()どもは役に立たない。私ですらこの有り様だ。単純に戦うための人手が足りていない》

 

 言わずもがな、葵は部隊における司令塔であると同時に最高戦力でもある。

 その実力がどれ程かというと、彼女が安全の約束された場所から指示を飛ばすより、前線に立って自ら戦ったほうが遙かにマシなぐらいだ。

 

 名実ともに戦う人員のトップ。

 人類最強とも言われる力量は伊達ではない。

 

 ――そんな彼女が、数ヶ月の間まともに歩く事もままならない傷を負った。

 義手と義足を取り付けて、戦うための力の大半を失った。

 

 それがどれほど絶望的かなんて、少しでも内情を知っていれば理解できる。

 

《猫の手でも、とは言うがな。本当にその通りだ。戦える人材があるのなら、私たちはそれが欲しくてしょうがない》

「男でもか!!」

《無論、男でもだ。良いじゃないか、強い男子(ヤツ)は嫌いじゃない。むしろ好ましいな。おまえたちの施設を抜け出すほど剛毅なのだろう? ――――私好みだ。是非ともこの身体が万全であれば手合わせしてみたいな》

「このッ――――戦闘バカが……! 悠は違うぞ! あいつは()()()だからな! おまえみたいな三度の飯より血の匂いが好きなド変態とは違うからな!」

 

 と、その言葉に反応するオペレーターたちがいた。

 

「良い子……? 流崎くんが良い子……?」

「とてもそうは思えねえ」

「何とも言えない認識の齟齬を感じる。流崎くんには手を焼かされた記憶しかないデス」

《良い子が脱走するのか? 面白いな。とても会ってみたくなった》

「やめろッ! そしてオカシな考えはよせ! 悠は私のだぞ!?」

「所長、出てます。素が出てます」

「ついに言っちゃったよこの人。戦闘部隊(向こう)の総司令相手に」

 

 はあ、とため息をつくオペレーター諸君である。

 この所長(オンナ)、大好きな彼ピッピのコトになるとまるで冷静じゃいられない。

 

《まさか、美沙。おまえその子を好いているのか。あのおまえが?》

「――なんだ、悪いか。良いだろう別に、誰かを慕うぐらい」

《ああ良いさ。良いとも。良いだろう。が、それとこれとは話が別――――む?》

「……? どうした葵。今度はなにを」

《……まずい。第三部隊のもとに羽虫が向かっている。急に移動したようだ。――――接敵まで残り十秒もないだと? すまん美沙! そちらは》

「各員通信を繋げッ!! 迅速にだ!! 急げ、本気で悠が死ぬぞッ!!」

 

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 

 ぐしゃり、と潰れていく旧世代の装甲車両。

 

 悠にぶつかった時より何倍も大きな破壊の衝撃。

 押し潰していく不協和音が快音となって荒れ地に響き渡る。

 

 爆ぜて炎上する鉄の塊。

 

 燃え上がる火炎と、バラバラに散った配線(コード)破片(ガラス)の中。

 さもその所有権は自分にある、とでも言いたげにその影は揺らめいた。

 

 我が物顔で地上に降り立つ緩慢な動作。

 ギコギコと擦り合って嫌な音を立てる手足の節。

 

 (カオ)は蝉に似ている。

 胴体(カラダ)は網目状に組まれた大小様々な木製だ。

 

 伸びた爪から足の棘に至るまで、すべてが枯れ木の枝葉で出来た奇妙な姿。

 

 とくに目を引くのはその背中だろう。

 カラダと違って丁寧に編み込まれ、繊細なつくりを施された見事な羽。

 虫のような翅ではなく、天使みたいな羽毛を蓄えた純白の双翼。

 

 ――それこそが、人類をここまで追い詰めた脅威のひとつ。

 

 雲の上、はるか空から気まぐれに降り注ぎ、未だなお人命を脅かす外敵。

 木製の怪物、彼女らに〝羽虫〟と呼ばれる今回の討伐対象だ。

 

「――ホラ。やっぱり首輪つけて正解だったじゃないですか」

「言っとけよ、偶々だろぉが。……で、ありゃあなんだ。随分と不気味だが」

「私たちが戦ってる相手だよオトコノコ。……しかし、参ったネこりゃ。車が台無しだ。あはは、援軍到着までは帰る目処も立たないなー……ところで全員無事?」

「あたしはピンピンしてるぜェ。妃和は?」

「平気だ、心配いらない。……有理紗はどうしたんだ?」

「はッ、まさかあいつ死んで――」

「ませんことよ!?」

 

 どばぁ、と地面の砂をかき分けて這い出てくる淑女。

 咄嗟の判断で地中に潜っていたらしい。

 ぷはっと息継ぎをしてもがく様子はなかなか陸地で見られない水泳の光景みたいだ。

 

「よし、五人全員無事。流崎クン(おとこのこ)もこの通り無傷。いやあ、良かった。不慮の事故で死んだら浮かばれないからねぇ」

「隊長、ウチら不慮の事故じゃなくても今から死にそうですけど?」

「うーんバッドラック! だって、まさかねー……そりゃあ本部から緊急通信も来てたワケですよ。まさか羽虫(アッチ)からコッチに来るとはね」

 

 果たしてどういう因果か、と考えながら美鶴は腰を低く落とす。

 

 彼我との距離は目測で大体二十メートル。

 人間なら全速力で走って三秒もあれば詰められる程度だ。

 純エーテルの加護で多少の無茶が効く彼女たちなら更に速い。

 

 ……が、相手はその人間を食い物にする埒外の脅威。

 

 隔たりはないに等しい。

 この間隔、この距離では時間稼ぎにもなりはしない。

 戦うのならもっと近く、逃げるのならさらに遠くでなければ意味がないだろう。

 

「どうするよォ、隊長」

「交戦しますの? というかわたくし達だけでどうにかできますの、アレ」

「無理ですってウチらだけなんて。ここは一旦逃げません……?」

「私たちはともかく流崎はどうするんだ。このままだと不味いぞ」

「勝手に決めんなよ、俺の意思があんだろォが。なんなら殺り合ってもいいぜ」

「いやー無茶言わないでよ流崎クン。さっきの吐血見てると戦力としては論外っていうか――」

 

 ぎち、と木製の間接が稼働する。

 遠目からでも分かる動きの前兆。

 

 舞い上がった煙と撒き散らされた火の粉が見えた。

 

 ――――瞬間。

 

「!!」

 

 それはまるで、急成長でも行ったかのように。

 

 ――伸縮(伸びる)刺突(伸びる)直進(伸びる)

 

 枝葉じみた右の腕が、

 枯れ木色に染まった自然の槍が、

 

 彼女たちの群れに潜む(いぶつ)に向けて、伸びていく――――

 

「――――ッ、流崎ィ!!」

「あァ!?」

 

 ……が、間一髪、それを防いだのは妃和だった。

 

 引き寄せるようにして翻る悠の身体。

 突発的に助けられた少年は、自らの瞳でその光景を直視する。

 

 ぐちゃりと潰れていくヒトの肉体。

 

 彼を庇った少女の脇腹が、鋭い切っ先に容赦なく抉られていく。

 

 火の走ったような痛み。

 それは一体どちらの頭に浮かんだモノか。

 

 ――――頭痛が、した。

 

「妃和ッ!?」

「――――ッ、てめえ!!」

「大、丈夫だ。それより、無事か。流崎」

「――――っ、ああ無事だよ! ふざけんなありがとうよ! なめてんのかお人好しィ!」

「ッ……お礼を言うか怒るかどっちかにしてくれ……」

 

 青い顔で立ち上がる妃和。

 傷口を手で押さえながらも、彼女の姿勢はわずかにブレるだけだ。

 

 悠には勝らないでも少女たちは歴とした戦闘部隊のメンバーである。

 適正値は常人より高い。

 おかげで純エーテルの治癒促進は多少ながらも発揮される。

 

「サンキュー! だけど頼んでもねえ! 自己犠牲もいい加減にしろよ良い奴め!!」

「流崎サン落ち着け! 感情がぐちゃぐちゃになってねェか!?」

「一先ず動くよ! 竜乎は妃和を連れて脱出! 柚葉もそのまま流崎クン引っ張って! 有理紗と私は背後に気を配ってできたら時間稼ぎ! 戦っても勝ち目ないからね! 逃げるよ!」

「了解ですわッ!! 久々に腕が鳴りますわね!!」

「ええッウチ男の子抱えるとかしたコトないんですケド!?」

「いいッ! 気遣うな走るぐらいできらァ! とにかく逃げるんだな気にくわねえが!」

 

 吼えながら立ち上がって、悠はいざ行かんと地面を踏む。

 がしかし、

 

「ぶべぇ!」

「流崎サン!?」

「そうですよ縛ったままでしたね!」

「走れるワケないだろう常識的に考えて……!」

「――だああ誰だよこんな風にしたヤツは!?」

 

 べしゃあ、と顔面からこけつつも悠は器用にもう一度立ってみせる。

 経緯はどうあれいまは非常事態、文句よりも逃げるのが先だ。

 

 ヒモ、鎖、手錠、足枷、その他もろもろ少女たちのおふざけの限り。

 逃げないようにと縛ったツケがここに来て最悪の形で回ってきた。

 

 ここで解いているような暇はない。

 とすれば、残された手段はただひとつ。

 

「――流崎さん首輪の内側に手を!!」

「あァ!? ――いや、そういうコトか! おっけぇ乗ったァ!!」

「行きますよ走り(いき)ますよぉ……、――――ふんッ!!」

「――――ッ、ご、ぉあッ――――がッ!?」

 

 どがががががががっ! と砂埃を巻き上げて爆走していく柚葉ウィズ男子。

 

 彼女は手に巻き付けた首輪のリードを引っ張りながら全力で荒れ地を駆ける。

 当然、リードを握られて嫌な散歩をするワンちゃん状態の悠も引き摺られていく。

 

 首輪に手を差し込んだのは息ができなくなるのを防ぐためだ。

 が、それも応急処置に近いその場しのぎの策でしかない。

 

 当然ながら首は絞まるし息もちょっとヤバめになってくる。

 

『――が、我慢するしかねぇ……ッ! なんだか全ッ然分からねえが、切羽詰まってるのだけは分かる! 一番事情を知らねえ俺が動き回るのはどう考えても悪手ぅうぐおぉ――ッ!?』

 

 さらに絞まる首、詰まる呼吸。

 ギチギチと不吉な音をたてはじめた命綱(リード)

 明確な命の危機に瀕した頭が、瞬間的に脳内の思考を冷却する。

 

 ……余分な感情(モノ)が断線される。

 それも一瞬、彼はわずかばかり未知の感覚に囚われて――

 

 

「――ッ!!」

 

 

 どくん、と心臓が高鳴った。

 

 途切れ途切れの意識の隙間、ぼやけた視界に何かが映る。

 

 凄まじいスピードで此方を追いすがる鋭い黒色。

 鮮明に見えずとも何かは判断できた。

 

 先ほどと同じ木の腕だ。

 向けた先端を槍のように尖らせて、前と同じく彼の肉を抉るよう迫ってくる。

 

 

 

「――――できるとお思いになりましてぇ!?」

 

 

 

 二度目の遮断。

 今度はその金髪を揺らしながら、有理紗が掴むように槍を防ぐ。

 

 ――否、それは掴んでいるのではない。

 

 左手から溢れだす空色の閃光、神秘の輝き。

 いまなお推進力を失わない木の腕に対し、彼女もまた力を発揮せんとする。

 

「おほほほほッ!! 見ていてくださいまし、悠さん!! これこそがわたくし達の優雅で繊細な戦い方!! そしてッ!!

 

 粒子が渦巻く。

 風景が歪む。

 

 それは純エーテルを確固たるモノとして確立し、その場に形作る人為的な現象。

 

 すなわち、

 

 

 

「純エーテルの本当の使い方、ですわッ!!」

 

 

 

 拮抗する燐光と木製の腕槍。

 有理紗から放たれる空色の光はコンマ一秒ごとにその輝きを増していく。

 

 美沙(だれか)は悠の行為を〝火を起こすのにタンク丸ごとガソリンをぶちまけているようなもの〟と喩えた。

 だとするならそれこそが正しく神秘に点火する使用方法。

 

 ――ギリ、とひび割れたような音が聞こえる。

 

 

 

鉄潔角装(ギアホルン)ッ!!」

 

 

 

 少女の腕に、神秘の鋼鉄が螺旋を描きながら生み出される。

 

 渦巻く快音、火花をあげて砕ける木片。

 

 鬩ぎ合っていた羽虫の腕は、あっという間にその〝武装〟を前に崩れ去った。

 

 現れ方はさながら魔法みたいに。

 木製の槍を打ち払った有理紗の腕には、仰々しい鋼の機械が握られている。

 

「……オイオイッ、なんだよそいつはァ!!」

「見ましたか! 気付きましたか!! そうこれこそが鉄潔角装!! わたくし達が操る純エーテルで出来た武器!! つまりッ!!

 

 と、そこで悠は驚異的なまでの察しの良さを見せた。

 

 先に向けて鋭利になっていくシルエット。

 巻き込み、吸い込み、大気を轟かせる回転音。

 

 ……先ほど、彼が来てからもう一度くり返された竜乎との漫才(いつものノリ)を思い出した。

 ぐるぐるとした姿は正しく彼女の言っていた()()と一致する。

 

「あぁ! それがアンタの言うスクリュードライバーか!!」

 

「――――わたくしのコレはドリルでしょうどう見てもッ!!」

 

 

 違った、どうも金髪縦ロール(スクリュードライバー)ではないらしい。

 紛うことなきドリルだ、と胸を張る有理紗のセンスがイマイチ分からない悠だった。

 

 

 

 

 




ドリル系女子(金髪縦ロール)(スクリュードライバー)(ドリルではない)(どう見てもドリル)(ゲッ○ー2)(グレン○ガンか?)(わたくしの名前は神○人!)
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