<Infinite Dendrogram> 王は今日ものんびりと自殺する   作:そらからり

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む。
普通に変換ミスが一つありました(今までもたくさんあったけど)
しかも大事なとこ


90話 泥と人形 1

■【深潜水士】クリアント

 

 つくづく、ジョブを【魔法少女ω】から【深潜水士】へ変更してしまったことが痛い。

 後悔こそすれ反省は無い。

 このような戦闘が起こるなどとは思っていなかった。

 思っていなかったことを反省するだなんて、無駄なこと。

 もっと予測を立てろ、予想をしておけと言うのであれば、その予兆を見せて欲しいとクリアントは思う。

 

 村が強襲されるなど。

 クレハが殺されるなど。

 UBMが目の前にいるなど。

 

 そんな予兆は無かった。

 予測も予想もつかないことだ。

 

 だから、クリアントに反省すべきことなど全くない。

 

「いや先輩……後悔とか反省とか、そんなの今どうでもいいですから……」

「ほら、言い訳しておかないと、後で何を言われるか分からないだろ?」

「誰に言い訳しているのか分かりませんし、先輩を誰が責めるかと言うと、まさに今! 私が責めているんです! 避けてください!」

「――ッ!」

 

 間一髪、というには遅すぎた。

 ぢりぢりとクリアントの全身から焦げ臭い匂いが発せられていく。

 

「っぶな」

「いや、避けきれていませんからね! ほら、次!」

「っと」

 

 クリアントの真横を剣が通り過ぎていく。

 回避自体は可能だ。

 クリアントの大して高くも無い戦闘技術とステータスでも避けることが出来る。

 

 だが、その剣に纏う炎。

 それがとてつもなく厄介である。

 

「あ、死んだ」

 

 刀身そのものはクリアントに触れていないのだが、炎がクリアントを狙うかのように揺らめき、掠めていく。

 

 その剣の有する能力は発火。

 炎に触れた対象を触れた面積に関係なく、全面積を焼く能力である。

 

 一度目は何とか耐えられたその能力も、二度、三度と受け続ければクリアントでは耐えられない。

 否、クリアント以外でも耐えることは難しい。

 どのように頑丈な生物とて、表面だけでなく内部まで焼かれては多大なダメージとなる。

 生物である以上は火に弱い。

 無理やりに、HPが残ることで耐えるしかないのだ。

 

「さて、後悔と反省は置いておくにしてもだ」

 

 新たな肉体が創造され、改めて武器を構える。

 クリアントが選択した武器は大剣。

 相手も大剣ゆえに、こちらもと思ったのだが、あの炎の剣――『赤砂の剣』を受ければ折れるだろうとその後思い直し、未だ使っていない。

 

「このままのジョブで何とかやっていくしかないな」

「【ジョブクリスタル】を使い切っていたことは反省してもいいかもしれませんねー」

 

 というか、残数を確認しないまま使ったことを反省すべきだろう。

 毒沼こそ攻略出来たが、あそこで【深潜水士】のジョブがどれだけ役に立っていたのかは定かでない。

 無かったら無かったで、案外泳げていた可能性もある。

 あれを水泳と呼ぶのかは置いておくとして。

 

 

 

 

 【永遠偶人 クレハドール】、と辛うじてクリアントの《看破》でも読み取ることが出来た。

 これまでは試そうとも思っていなかったが、村の誰にも、フィリップ達にも正体がばれていなかったことを思うと、ドラゲイルのような擬態、あるいはステータス詐称のスキルがあるのだろう。

 等級は逸話級。

 マッドラップスと同格の強さ、とみるべきだろう。

 だが、純粋に生物殺しに特化していたマッドラップスと比べれば、クレハドールから発せられる圧はそれほど脅威とは思えない。

 人間のように化ける、という力にリソースを割いていたが故だろう。

 その戦闘能力は『赤砂の剣』任せ。

 剣技はあるのだろうが、結局は炎の剣を使う人間のようなもの。

 それこそ、クレハの域を出ない強さだ。

 

「――ちぃっ!」

「……お前、人間ではないんだよな? UBMのわりに自我みたいなのがあるようだけど」

「俺は神だ。愚かな人間でも、卑しいモンスターでも無い! 神カゲツ! そう覚えておけ!」

「……覚えておけと言われても」

 

 【永遠偶人 クレハドール】という名であるし、その前の姿がトロであったため、カゲツが何を指しているのかクリアントには分からない。

 

「……ああ、畜生! 何だこの肉体は! てめえ如きを殺せねえとか、弱すぎんだろ!」

「俺、褒められてる?」

「自分を嘆いているのでは?」

 

 とはいえ、着実にクリアントの肉体創造のストックは減っている。

 2回、3回と死んでいく。

 

「先輩! 残り10回をきりました!」

「分かった! 俺もそろそろ見切ってきた頃だ!」

 

 『赤砂の剣』が振り下ろされる。

 クリアントは紙一重……ではなく、炎が舐めとるよりも遠く躱し、発火を防ぐ。

 

「なっ!?」

 

 クレハドールの顔が驚愕に染まる。

 

「俺も無駄に殺され続けていたわけじゃない」

「そして、無駄に死体を生産していたわけじゃないんですよ!」

「え、ちょっ!?」

 

 これまではクレハドールというUBMの戦い方が分からなかった。

 そのため、《異身伝心 儀ノ四》――死体を動かすことは無かった。

 故に、クレハドールは周囲に転がるクリアントの死体はただの死体として、警戒を抱かなかった。

 

 そこをクリアントは突く。

 無警戒から攻めていく。

 

 新たな肉体が創造される。

 すでに死体となったクリアントから目を離し、クレハドールは新たなクリアントの肉体へと『赤砂の剣』を振るい、躱される。

 その体勢を崩しかけたクレハドールの足元を払うように、クリアントの死体は動き出し、抱き着いた。

 

「は、離せ!」

「……これで、終わりだ」

 

 クレハドールが『赤砂の剣』を振り回すが、クリアントは構わない。

 これまで殺され続けたことで、この剣は一撃程度なら発火では死なないことが分かっている。

 自身も燃えながらクリアントは大剣を振り下ろす。

 クレハドールを倒すために。

 

 

 

 

■【永遠偶人 クレハドール】について

 

 クレハドールが本来持つスキルは2つだけである。

 1つ目は、自身を人間として認識させる《人生の宣託》。

 クレハドールというUBMのステータスではなく、トロという故人のステータスへと弱体化する代わりに、ジョブにも就ける能力である。

 トロとして認識させる……つまりは詐称スキルも兼ね備えている。戦闘にはほとんど役に立たない代わりに、その詐称性能は高い。

 

 2つ目は、人形を生み出し、人形を使役する『人形牧場』。

 無生物かつ、人間を模して造られたものであれば、作れるし、操れる。

 こちらは、トロという故人に擬態していた際も使うことのできたスキルである。

 クレハの特典武具に合う人形を作っていたのはこのスキルのおかげだ。

 〈遺跡〉の外であれば、煌玉兵すらもクレハドールの支配下に置くことが出来る。

 

 この2つのスキルが、逸話級UBM【永遠偶人 クレハドール】という、トロを素体にした煌玉兵から成り立ったモンスターが本来持つはずであったスキルの全容である。

 だが、ここにカゲツというイレギュラー……バグが混じった。

 元々、バグの塊であったクレハドールに更にバグが混じることで捻じりに捻じ曲がった。

 

 それが3つ目のスキルである《神化論》。

 【神子】であるカゲツが混じったことで生まれた第三のスキル。

 

 このスキルは、戦闘時に役に立つスキル……であるかもしれないが、敵を倒すためのスキルではない。

 【神子】の持つスキルである神を祀るスキルでも、神に成るスキルでも、神の脅威と成り得る対象の動きを封じるスキルでもない。

 

 神を更に上の次元へと昇華させるスキル。

 それが《神化論》である。

 

 具体的には、【永遠偶人 クレハドール】の所持物品や現象を消費することでリソースを得て、等級を引き上げるスキルである。

 

 クレハドールの持ち得るリソースは、細かいものを除いていくと、大きなものが2つある。

 1つは『赤砂の剣』。

 こちらは、過去にグラスコードやドラゲイルといったUBMらがすでに行っていることだ。

 フィリップの集める3つの宝はいずれもそれを所持したモンスターの力になる。

 生命力を、精神力を強化する。

 クレハドールには、そのまま剣としての戦闘能力を強化した。

 

 だが、それはあくまで装備品としての力だ。

 リソースは剣に留まったまま。

 

 クレハドールは『赤砂の剣』をリソースとして吸収する。

 この局面に勝つために。

 

 2つ目のリソース諸共に。

 

 

 

 

※プレイヤー非通知アナウンス

 

【(【永遠偶人 クレハドール】のレベルアップ・ランクアップを確認)】

 

【(【永遠偶人 クレハドール】を古代……)】

【(リソース供給に伴う進化処理挿入)】

 

【(――【永遠火月 クレハドール】を古代伝説級に認定)】

 

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