<Infinite Dendrogram> 王は今日ものんびりと自殺する   作:そらからり

115 / 443
103話 汝、自身がどちらか見抜けるか 2

■【動物王】レシーブ・キープ

 

「好奇心旺盛な猫の次は、盛ったフラミンゴですかぁ」

 

 必殺スキルを唱え終わると、レシーブは溜息をつく。

 

「【動物王】の名折れですかねぇ。私が呼ばなくてもこんなに動物が集まってくるじゃないですか」

 

 犬歯を剥き出しにして吼える子犬。

 知識をどん欲にかき集める猿。

 群がって一つの巣を形成する蟻。

 好奇心旺盛に見渡す猫。

 今度は何だ、ピンク色の服を拡げて。フラミンゴのようだとレシーブは思う。

 

「んー……あの男はどんな動物でしたっけ? 忘れましたぁ」

 

 ローガン配下の悪魔から逃げおおせた男はどのような動物であったか。

 それを思い出しながら、レシーブは周囲にいるモンスターを索敵する。

 

「この子がいいかなぁ、あの子がいいかなぁ」

「……何を言っているの?」

 

 目の前に敵がいるのに、何の警戒もしていないように見えたのだろう。

 クャントルスカがレシーブに尋ねる。

 

「動物を探しているんですよぉ。だって、私は【動物王】ですからぁ。私とあの子だけで、戦えませんもの」

「へえ。そうなんだぁ。それ、私に言っても良かったの?」

 

 現状では戦う手段が無いと弱点を明かすレシーブにクャントルスカが怪訝な表情を作る。

 

「あははぁ。良いですね、その表情。とっても上手いですよ」

「ありがとう?」

「貴方もきっと、感情がそのまま表情に出てしまう動物ですよねぇ。というか、その鳥の子……なるほど、モー・ショボーでしたかぁ」

 

 【動物王】の基本スキルである《動物図鑑》は生物系統であればモンスターであれ、エンブリオであれ、その名を見抜く。

 やっぱり、盛ったフラミンゴじゃないかと。

 レシーブは頷く。

 

「モー・ショボーの逸話は対象の脳髄を啜る、とかでしたっけぇ? 怖い怖い。怖い表情、合ってますかぁ?」

 

 腐った肉を目の前にした時の表情を作り出しながらレシーブは尋ねる。

 

「うーん、少し違うような? 怖いよりもドン引きしているよ、それ」

「律義に答えるなんて、偉いわクャントルスカ」

 

 ならば、道路に急に子供が飛び出してきた時の運転手の顔?

 それとも、警察が家に尋ねてきた時の殺人犯の顔?

 

「凄いね、モーちゃん! あの子、いろんな表情を切り替えているよ!」

「ええ。愛らしいわ。愛しいわ。けれど残念。もう愛する手段が無いのよね」

「パリドーネちゃんに使っちゃったもんね。だから、直接愛するしかないよね!」

 

 日に一度の必殺スキル。

 既にパリドーネに使用してしまっていることでクャントルスカの切り札は消えている。

 更に、ドラゲイルも今はクールタイム中。

 

 だが、問題は無い。

 魔法少女の戦う術はそれだけでないのだから。

 

「……中々誘いに乗って来ないですねぇ。やっぱり動物の野生的勘が働いているのでしょうか?」

 

 と、レシーブの足元から純竜級に匹敵する【ドラグワーム】が飛び出る。

 

「近くにある砂漠地下のボスらしいですよぉ?」

 

 そして、【ドラグワーム】が作り出した穴から、続けて4匹のモンスターが出てくる。

 

「名前は右から……【ドラッグ・ビッグスライム】ちゃん、【メタル・バジリスク】ちゃん、【ハイ・サンド・ドラゴン】ちゃん、【スターヴ・キングウルフ】ちゃんでーす」

 

 いずれも純竜級に相当するボスモンスターである。

 各々の縄張りから移動し、【ドラグワーム】の掘った穴を伝い移動し、主であるレシーブの下へ馳せ参上した。

 

 巨大なミミズのようなモンスターを始めとした、全身を猛毒液で包み込むスライム、全身を金属で覆う巨大な鳥、砂地に隠れるドラゴン、飢えを隠さずに牙を剥く狼がクャントルスカへ一斉に視線を向ける。

 

 ステータスはいずれも5000を大幅に超えている。

 STRも、ENDも、AGIも。LUKさえも。

 

「……魔法少女に不可能はないもんね」

「ええ。見せてあげましょう。貴方の新しい力を」

 

 

 

 

 フラミンゴが支配下にいるモンスターと戦う姿を見ながらレシーブは、いつぶりの光景だろうかと思い出す。

 久しぶりだ。

 純竜級モンスターを支配下に置いたのは、少なくとも一カ月は無かったこと。

 

 それもこれも全てはアテナの力所以。

 【財知神梟 アテナ】というエンブリオがレシーブの力を制限していたが所以であった。

 

 エンブリオとジョブのシナジーはよく聞く話だ。

 エンブリオの力がジョブの力を後押しする。あるいは逆にジョブの力がエンブリオの力を助ける。

 互いに作用することで、思いもよらぬ力を生まれさせる、というのはどこの〈マスター〉も考える話であり、身近によく転がっている。

 ローガンはその最たる例であり、パリドーネもまあ……【問王】くらいしか彼女のエンブリオと組み合うものが無かったのだろうが。

 

 レシーブのエンブリオ【財知神梟 アテナ】は違う。

 必殺スキルはともかく、2つあるパッシブスキルのうち1つは【動物王】の力を著しく制限する。

 LUK値を極端に下げるパッシブスキル、と周囲には伝染している。

 その通りであり、それに追随する効果は決して他人にメリットのあるものではないのだから。

 

 その名も《矢避けに悪運は要らず》。

 LUK値を500分の1に減少させる代わりに、遠距離から飛来する矢や弾からの回避率を上げるというもの。

 絶対に避けられるわけではない。

 相手が必中効果を持つ武器やスキルを使っていれば、当たってしまうし、数を撃たれて退避する場所を失えば当たってしまう程度のものだ。

 故に、避けられるのは100発中99発命中するような相手くらいだ。

 1発の外れを相手に引かせ続けさせるようなもの。

 その程度の力である。

 いつかは99発の方が当たってしまうだろうが。

 

 レシーブにとって、【動物王】にとってシナジーといえるのは2つ目のスキルだ。

 《知恵の果実》という、支配下にある者の知性を引き上げるスキルだ。

 人間相手に対しては思考加速が適用される……とはいっても、大した倍率ではなく1,1倍程度だ。

 だが、モンスター相手にこれを使用すれば、主の指示に従う程度の知恵を持つことが出来る。

 特に、【動物王】は率いるモンスターの数が増える程に統率が難しくなるという欠点を持っている。《知恵の果実》のスキルはその欠点を消せるため、レシーブにとっては重宝しているスキルだ。

 

 自身を守るスキル。

 配下の知性を上げるスキル。

 

 この2つが【財知神梟 アテナ】の持つ基本的なスキルである。

 そして、必殺スキルは《矢避けに悪運は要らず》からデメリットを消し、メリットを増やしたようなスキルとなった。

 《戦に勝ちたい()のならば、()幸運をくれてやろう()

 簡単に言えば、自身のステータスを上げるスキル。

 ただそれだけだ。

 まず、500分の1に減少していたLUK値を元に戻す。

 次に、《矢避けに悪運は要らず》で減少していた日数分×現在のLUK値を好きなステータスに振り分けることが出来る。

 つまりは、今のレシーブは10000程あるステータスを30日分……約300000分のステータスを自由に使えるようになるのだ。

 

「とはいえ。自由にと言っても、ある程度決まっているんですけどねぇ」

 

 《戦に勝ちたい()のならば、()幸運をくれてやろう()》を使う度に振り分けることのできる日数はリセットされる。

 故に、一日使わなければ10000だけ。

 それだけなら【動物王】の欠点が消えることくらいだろう。

 

「これでよし、と」

 

 【動物王】レシーブ・キープ

 HP:49670(+200000)

 MP:11000(+50000)

 SP:14300(+0)

 STR:9803(+10000)

 AGI:7600(+10000) 

 END:8970(+10000)

 DEX:10310(+10000)

 LUK:10002(+10060)

 

 HPとMPを多めに、他を平均的に引き上げたステータス構成に落ち着く。

 別にレシーブが戦う必要は無いのだ。

 要は、モンスターを支配するステータスさえあれば、直接戦う必要などない。

 

「前回よりもレベルが上がっているから見栄えもいいですねぇ。これならUBMも支配下に置けるのでは?」

 

 アテナで探し、【動物王】で無害な状態にし、そして倒す。

 いつでも可能なのだ。

 いつでも特典武具を入手できるのだ。

 

「んー。まだ粘りますねぇ。数が少なすぎましたか?」

 

 【ドラグワーム】が倒され、今まさに【スターヴ・キングウルフ】の頭蓋が蹴り砕かれたところだ。

 残りは3匹。

 だが、いずれも状態異常を得意とするモンスターばかり。

 このままじわじわとなぶり殺しに……

 

「あ、なるほどー。効かないから後回しにしていたんですかぁ」

 

 【メタル・バジリスク】の目が光ると、クャントルスカの動きが止まる。【石化】になりかけているのだろう。

 【ドラッグ・ビッグスライム】がクャントルスカにのしかかる。

 それだけで全身に毒が回る。

 【ハイ・サンド・ドラゴン】は環境に溶け込み、クャントルスカの急所を狙っている。

 

 だが、クャントルスカにの全身が光ると、状態異常は全て解除される。

 

「てやっ!」

 

 不意打ちを狙っていた【ハイ・サンド・ドラゴン】は殴り飛ばされていく。

 そこまで高くないHPであるが、それでも今の一撃で半分ほど減っているところから、クャントルスカのSTRが高いことが伺える。

 

「そいっ! えいっ!」

 

 【メタル・バジリスク】と【ドラッグ・ビッグスライム】も瞬く間に倒されていく。

 状態異常が効かないのならば、確かに彼らはそこまでの脅威では無いのかもしれない。

 

「なるほどなるほど。全くの無効化というわけではなくて安心しましたぁ」

 

 効かないのであれば、だが。

 

「一瞬でも【石化】するし、【猛毒】に侵されるのであれば、通じている、と言えますよねぇ」

 

 レシーブは呼び出す。

 地の底から、天空から、森林から。

 ボスモンスター達を、純竜級に……否、それ以上のランクに匹敵するモンスターを呼び出していく。

 

「環境がどうとか、生態系がどうとか、ゲーム世界なら気にしなくて良いのが楽ですよねぇ。安心してください。これ以上はもう出てこないので。周囲にいたモンスター全て連れて来ちゃいましたからぁ」

 

 伝説級から下級まで。

 総勢12354体。

 その全てがクャントルスカに敵意の視線を向けていた。

 

「ええと……レシーブちゃんの愛って重いんだね」

「私達で受け止めるしかなさそうね」

 




最期のモンスターの数の桁間違えてたなり
一つ余計な数字入っちゃってた
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。