<Infinite Dendrogram> 王は今日ものんびりと自殺する   作:そらからり

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137話 【自殺王】を求めに

■【深潜水士】クリアント

 

「パルペテノン……今までの特典武具や妖刀に比べたら大人しめの性能だな。回復能力はありがたいことだけど」

「ダイレクトに先輩の体にダメージを与える【マッドラップス】や【出涸らし】はその代わり出力を上げていますからね。【クレハドール】は……精神的に先輩を蝕もうとするのヤバくないですか?」

「まあ……効果が良いから使うんだろうけどな。デメリット大きいから、しばらくはアイテムボックス行きだ」

 

 立て続けに入手した武具の性能を確かめつつ、《瞬間装備》や《瞬間装着》の対象にセットしていく。

 鎧、腹帯、刀、巾着袋。

 合計4つの武具を手に入れたクリアントの現状の戦力は決して準〈超級〉に引けを取らないだろう。

 

「後はメインジョブの更新が出来れば、俺もそこそこ戦えるようになるな」

「ですねー。自爆覚悟の特攻野郎から昇格です。あ、覚悟どころか自爆野郎でしたっけ」

 

 いずれも自傷系のデメリット、状態異常付与ありの武具ばかり。

 だが、それ故に低ステータス、低火力のクリアントの攻撃手段と成り得ている。

 

「……自爆から昇格したところで自殺に変わりはないんだけどな」

 

 

 

 

 それは【侮蔑腹 パルペテノン】を討伐した直後。

 【愚弄腹帯 パルペテノン】を手に入れ、性能を確かめるべく、そのデメリットによって死亡し、新たな肉体で生き返った後のことであった。

 

 

【自殺・自殺未遂回数が500回に到達しました】

【条件解放により、【自殺王】への転職クエストが解放されました】

【詳細は転職可能なクリスタルでご確認ください】

 

 

「遂にか」

 

 兼ねてより目標であった超級職への就職。

 クリアントの適性であると言われていた【自殺王】への就職条件が満たされた瞬間であった。

 

「それにしても500回でしたか……。そんなに自殺していましたっけ?」

「未遂も含めているみたいだし、俺達が数えている以上にカウントされていたのかもな」

 

 アナウンスの指示によれば、転職可能なクリスタルが置いてある場所はノクトル村と同じくカルディナとの境。

 そこまで遠い場所ではない。

 距離でいえば、一日も歩けば辿り着ける位置にある。

 ただし、山岳地帯付近の街を超えたところにあるらしい。

 マップ上では山も海も無い、谷のような地形であったのだが、そんなこともあるだろうとクリアントは流した。

 

「これは……フィリップさんを待った方が良いですかね」

「だな。これ以上距離を離せば合流も面倒になる」

 

 フィリップがいくらクリアント達の探索が出来るからといって、遠くへクリアント達が移動してしまえばフィリップの移動距離も増える。

 チャリオッツのエンブリオとはいえ、フィリップのノーチラスは海中専用。

 陸上での移動手段には乏しい面々である。

 当然、クリアント達側も新たな移動手段を手に入れなければ徒歩での移動となってしまう。

 

「この付近で暇潰しが出来るものといえば……」

 

 パルペテノンを討伐した森を抜けたところで、クリアントにメール通知が届く。

 リアルでのメール機能と接続されており、デンドロをプレイしている最中に通知があったということは、こちらの世界でのフレンドの1人である。

 

「……フィリップからか」

 

 内容は良い知らせと悪い知らせの2つとあった。

 【探検王】に無事就けた、ただしその過程でデスペナルティを繰り返していたため合流は3日後になるという内容であった。

 

「3日後か。確か、3日前にもデスペナルティになったとメールが来ていたから、2回も死んだということなるのか」

「誰もが先輩みたいにポンポンと死ぬことが出来るわけじゃないですもんねー」

「それが俺の強みだからな。ともかく、【探検王】になれたのなら何より」

 

 隣を歩くクャントルスカにもその旨を伝えると、笑顔で祝福していた。

 

「フィリップちゃんにメール返す時におめでとうって言っておいて!」

「ええ。めでたいことよね。それに貴方も超級職に手が届きかけている。このパーティーも一角の戦力になってきたのではなくて?」

 

 〈超級〉とまではいかずとも。

 【自殺王】がクリアント以外に適性が無く、彼が就けると暫定的に数えてしまえば、必殺スキルを覚えている超級職が3人のパーティー。

 【自殺王】も【探検王】もどれほどの能力を持っているかは定かでないが、現状よりも強くなれることは間違いない。

 

「マッドラップスと戦った時よりも強くなったものだ」

「ですねぇ……でも残念ながら今マッドラップスと戦っても先輩無傷で勝てないのが残念ですよねぇ」

「結局死にやすいことに変わりは無いからなぁ」

 

 マッドラップスの毒の前にはどれだけの耐久性も意味が無い。

 ならば、ENDやHPというステータスがいくら上昇しようと、強さに変わりは無いのだ。

 

「お……もう返信が来た。合流は【自殺王】の就職クリスタルのある場所の手前の街でいいってさ」

 

 街の名はペルソティ。

 就職クリスタルのある場所はフィリップも知っているから、当然その街の名も知っていたのだろう。

 

 

「結構暇なんですかねぇ……。しかし距離ありますけど、フィリップさんちゃんと追いつけます?」

「徒歩で一日はかかるくらいだが……【探検王】になる時に馬でも調達したのかもな」

 

 兼ねてより冒険家らしく馬を乗りこなしたいと言っていたフィリップである。

 移動に使えそうなモンスターでもテイムしたのだろうとクリアント達は考えた。

 

「となると……俺達も移動しなきゃいけないな」

「ですね。徒歩で一日ということは今日で三分の一は動かなきゃいけないですもん」

「いや……流石に24時間動き続けた距離ではないと思うが」

 

 調べると、クリアント達の速度であれば半日歩き通せば辿り着けそうであった。

 それでも12時間。

 

「んー。私達は飛べるからもう少し早く移動できるけど……クリアント君、走れない?」

「走れはするけど……体力もたないぞ」

「私達がそれぞれ担いだら結局歩くのと大差無いしなぁ」

「頑張って歩くしかないわよ? ふふ……それでも私に抱き着いて空を飛びたかったらやってあげるけど?」

 

 とはいえ、ただ歩くのも退屈だ。

 道中でモンスターを倒しながらレベルを上げていくのもいいだろう。

 

「またパルペテノンみたいにクエストが出されるといいんだけどね」

「ただ、何故か依頼は失敗したんだよな……パルペテノンを倒すだけだと駄目だったのか……」

 

 結局、森で迷ってしまったため依頼者に会うことが出来なかった。

 そのためパルペテノンの特典武具を手にした後は森から出てしまったのだが、依頼主に会うまでがクリア条件だったのだろうとクリアントは推測する。

 尤も、依頼主どころかクエストを依頼した村人全てが死んでいるというのが理由であるが、パルペテノンを倒したためこれ以上の被害は無いだろうと思っているクリアントには思いつきもしない。

 

「じゃあ道すがら、また近くにある村に寄ってみようか。付近のモンスター討伐依頼くらいならこなせそうだもんね」

「ああ。その方針で行こう」

 

 目的の街――ペルソティまで移動時間にして残り10時間ほど。

 約2時間歩いたところでクリアント達はとある村に辿り着いた。

 

 その村は宗教に溺れていた。

 ずぶずぶと、ずるずると、抜け出せない沼に嵌るかのように沈み込み、そして村人たちは自ら進んでいた。

 

 宗教村ダウト。

 信心と疑惑に満ちた村である。

 彼らは疑う。

 村の外の人間……ではない。同じ村の者をだ。

 彼らは信じる。

 村に伝わる神……ではない。神を信仰する自身を。

 

 その村へと暇潰し程度にクエストを探すためにクリアント達は足を踏み入れるのであった。




話が全く進んでいませんが、この手のがとても苦手なんですわ。
というわけで、【自殺王】への道が開かれたのであとは一直線です。
その手前で寄り道はたくさんする予定ですが。
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