<Infinite Dendrogram> 王は今日ものんびりと自殺する   作:そらからり

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153 集う少女達

■【深潜水士】クリアント

 

 【魔法少女】。

 それはクリアントにとっては自身のサブジョブにある【魔法少女ω】や仲間のクャントルスカがメインとする【魔法☆少女】以上に、魔法少女達集うバトルロワイヤルを想起させる言葉だ。

 クリアントが邂逅した魔法少女は全体の1割にも届かなかっただろうが、出会う全てが個性的であり、何かしらの信念を持っていた。

 いずれも超級職である【魔法☆少女】を目指す理由があり、真剣に戦いに取り組んでいただろう。

 

 故に、その戦いにおいてクリアントも真っ当に戦っていれば確執など残らなかっただろう。

 正々堂々と戦い、そして勝敗が付いていたのならば、こうして睨まれることも殺意に満ちた眼光に晒されることも無かった。

 

「……何でだろう? お兄ちゃん、私のこと知っているよね」

 

 睨む相手は妹妹。

 初対面にしてクリアントが僅かでもドラゲイルであるかもしれないと警戒してしまったことに疑念を抱いていた。

 彼女の戦闘スタイル……いや本質である弱いふりをしていたいというデンドロにおけるプレイスタイルからしてみれば、初対面から疑いの目を向けられることはほぼ有り得ない。

 そのための可愛さ、そのための【魔法少女μ】、そのための隠し持ったエンブリオだ。

 

「あー……ドラゲイルがお前に化けていてな。一度戦ったんだ」

「……ああ。そうですかそうですか……はぁ」

 

 妹妹はがっくりと肩を落とす。

 落胆した表情はクリアントに向けられ、

 

「……私のエンブリオとか諸々、秘密だからね?」

 

 そのままクリアントの肩に手を伸ばすと、見た目からは信じられないような力で引き寄せ、耳打ちしてきた。

 顔が離れれば、そこには蠱惑的な笑みを浮かべた少女が居り、手には小さくバツ印を作っている。

 クリアントは冷や汗を背に垂らしながら頷くと、妹妹は指で丸を作り、

 

「よろしくね、お兄ちゃん」

 

 と、改めて挨拶をしたのだった。

 

 

 

 

 次いで、殺意に満ちた眼光を飛ばしている魔法少女にはクリアントもよく憶えがあった。

 同じ顔をした魔法少女が2人。

 そのうちの1人は苦笑しながら相方を宥めていたが、もう一人は今にも飛び掛かりそうであった。

 

「落ち着いて夢味ちゃん。こんなところで戦うのは良くないよ」

「邪魔しないでドッペルちゃん。こいつを殺して私はドッペルちゃんの仇を取る」

 

 こちらはクリアントにとって初対面で無く、2度目の邂逅。

 1度目は戦闘相手であったためあまり会話はしていなかったが、その能力は覚えている。

 

「確か……狂ヶ咲夢味だったか。【魔法少女η】の」

「隣の子はドッペルゲンガーでしたっけ」

「凄い形相だぞ。戦闘時の方がむしろ笑顔だったな」

 

 死ぬ間際は戸惑っていたが、その直前、クリアントの分身を作り出した際や名乗りを上げた時は気味の悪いくらい笑っていた。

 現在とのギャップに驚きつつ、あまり刺激をしないようにクリアントは離れていく。

 

「おま、お前のせいでドッペルちゃんは……ッ!」

「い、いいから、夢味ちゃん」

 

 負けたことを根に持っているのだろう。

 突発的な再会であったために負けた時のショックが再燃しただけで、時間をおけば大人しくなるだろうとクリアントは他の知り合いの魔法少女がいないか探す。

 

 

 

 

「久しぶりだね、キシリーちゃん」

「お、お姉ちゃん……じゃなかった、【魔法☆少女】……」

「クャントルスカ……ちゃん」

「うん! キシリーちゃん、少し小さくなった?」

 

 クリアントが目を向けると、クャントルスカもまた会話をしていた。

 よほど成長期が早かったのか、見た目に反してサイズが少しばかり大きい。

 だが、クャントルスカは彼女を見て小さくなったと言っている。

 

「あの後にね……ウチデノコヅチが進化して更にサイズダウン出来るようになったんだ」

「そうなんだ。良かったね。……あ、そうだ! これ、あげるよ」

 

 クャントルスカはアイテムボックスからカラフルなリボンやフリルを取り出す。

 

「絶対似合うと思って作っておいたんだ。付けてもいいかな?」

「う、うん」

 

 【裁縫職人】のスキルを用い、魔法少女の衣装にリボンやフリルなどを付けていく。

 男であるクリアントから見ても彼女の選んだ色は、衣装にも、その持ち主にもよく似合うものであった。

 

「キシリーちゃんなら次会う時はもっと似合うと思って少し小さめに作っておいたんだよ」

「え、それって……」

「だって、小さくなりたい、可愛くなりたいってキシリーちゃんは願っていたんでしょ? 魔法少女なんだもん。叶えるって分かってたよ」

 

 自身よりも背の高いキシリーの頭を器用に撫でるクャントルスカ。

 キシリーは恥ずかしそうに、しかし嬉しそうにしながら笑みをこぼしていた。

 

「え、えへへ」

「礼を言いますわ。クャントルスカ、キシリーを気遣って頂いて感謝致します」

 

 煌びやかな魔法少女がいた。

 同時に、その魔法少女は10人いた。

 クャントルスカに話しかけたのはその中でもとびきり派手な魔法少女であり、他の9人は後ろに控えている。

 

「あ、プシュケーちゃん! いたんだ」

「……デンドロ世界広しと言えども、私にそのようなことを言えるのは貴女くらいですわね」

 

 ややこめかみをひくつかせながら派手な魔法少女――プシュケーはクャントルスカに右手を出す。

 

「おめでとう。念願の【魔法☆少女】になれたようで何よりですわ」

「プシュケーちゃんのおかげだよ。ドラゲイル君を倒すことが出来たのも、何よりもあの儀式を行えたことも」

「ふふ。ええ、私の手に掛かれば容易いことでしたわ。そして、私にとって困難ことをやってのけた貴女も大したものです。」

 

 クリアントもプシュケーには見覚えがあった。

 夢味と共に行動していた、終盤まで生き延びた魔法少女の1人だ。

 クャントルスカとは知己であったようだが、彼女が【魔法☆少女】になったことでその友情に罅は入っていないようだ。

 

「……で、そちらの男性が貴方の仲間ですわね?」

「うん。クリアント君とワンプちゃん。私の好きな人なんだ」

「貴女……それ会う人全員に言ってません?」

「言っているよ? プシュケーちゃんもキシリーちゃんも好きだもん」

「わ、私もクャントルスカちゃんのこと好きだよ」

 

 クャントルスカの好きの意味を知らないのか、キシリーは照れながら返している。

 クリアントとプシュケーは彼女程に前向きに捉えられず、曖昧に返した。

 

「ま、まあ……ひとまず。クャントルスカに仲間がいるのなら挨拶をしなくてはなりませんね。私はプシュケー・アーチ。【魔法少女β】ですわ。美しき彼女らは私のエンブリオであり分身、ワルキューレ達ですわ」

「俺はクリアント。【魔法少女ω】だ」

「ワンプです。可愛い魔法少女です!」

「む」

 

 どこからか妹妹の声が聞こえたような気がしたが、さておいて。

 プシュケーはクリアントを値踏みするように全身を見る。

 

「ふむ……顔立ち不合格、強さ不合格」

「おい」

「私の美しさの基準には引っかかりませんわね。そちらのお嬢さんは磨けば光りそうですが……何故に泥をお被りで」

「そういうエンブリオの性質でな」

「泥パックであればまだマシでしょうが……衛生的には不合格ですわ……。総じて不合格ですわね」

「ふっふっふ。でもクリアント君は凄いんだよ」

 

 プシュケーの言葉は否定せず、クャントルスカは胸を張る。

 

「こう見えてクリアント君はドラゲイル君に凄い嫌がらせをして嫌な顔をされていたんだから」

「……ほう」

「それに私が好きになっても生きていたし、今も一緒にいてくれるんだ」

「なるほど……性格は合格のようですわね。及第点といったところでしょうか」

「赤点回避ですね。やりましたね、先輩」

「何も成し遂げた達成感は無いけどな」

 

 確かに【魔法少女ω】の自爆にドラゲイルは嫌な顔をしていた。

 クャントルスカの必殺スキル発動の手助けにもなっただろう。

 

「ふ、相応しいと認めましょう。残念ながら私よりも貴方の方がクャントルスカの隣に相応しいと」

 

 と、魔法少女達への顔合わせも終わったと思ったクリアントであったが、ワルキューレ達を押しのけるように前へ出てきた者がいた。

 

「ち、ちょっとちょっと。私も紹介して欲しいんスけど」

「あら、いましたのね」

「さりげなくワルキューレに命じて押し込まれていたのは誰のせいッスか!?」

 

 渦状の模様の入った衣装を着る魔法少女であった。

 クリアントは完全に初対面。

 雰囲気や格好からして、クャントルスカやフィリップにも聞いたことのない魔法少女であった。

 

「クリアント君は初めて会うっけ?」

「そうでしょうね。彼女は【魔法少女χ】イテカですわ」

 

 プシュケーが彼女を紹介する。

 

「あの儀式において最も早く死んだ魔法少女……」

 

 そして、続けた言葉は信じられないものであった。

 

「開幕と同時に自身の命を絶った魔法少女ですわ」

 




第三者から見たらハーレム状態だけど、相関図にしたら主人公に向けられる感情が殺意と警戒心と無関心がほとんど

とりあえず夢味とキシリーと妹妹の小学生組出せたから満足
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