<Infinite Dendrogram> 王は今日ものんびりと自殺する 作:そらからり
最近はキャラ設定だけ考えてはどう組み込んでいけばいいかで悩む
エンブリオと超級職の組み合わせ考えるのたのしー
■【幻影少女 ドッペルゲンガー】について
TYPE:メイデンwithガードナーに分類されるこのエンブリオはかつて凶悪で凶悪な大敵に二度敗れている。
一度目は古代伝説級UBMであるドラゲイル。
敵味方問わず、自身に特攻効果を持つが故に範囲攻撃を繰り出す事が出来ず、逆にそれを行うことのできるドラゲイルの前に倒れることとなった。
二度目はクリアント。
こちらは偽物を無視し、本体諸共自爆特攻を仕掛けたが故に、その場にいた全員が爆発に巻き込まれ、マッドラップスとの凶悪なコンボの前に毒死を遂げた。
さて、この二度の戦闘。
一抹の疑念が残る。
それは、メイデンという特性上、ジャイアントキリングに精通する能力であるという点に由来する。
それを踏まえれば、確かに敵の偽物を生み出すという能力はあってもおかしくはない。
確実に仕留めるために同時に2体生み出すこともあり得なくは無いだろう。
だが、同時に。
本当にそれだけなのだろうかという疑念が残る。浮かび上がる。
リソースを抑えるために本体と同様のステータスは持てず、代わりに自身に特攻効果を持たせている。
そう、ドラゲイルは予測した。
実際に、その通りであり勝利した。
ここまでは当たっている。
だが、それ以前に間違っている点が1つだけあった。
それは、召喚に割くまでの時間だ。
会敵した直後。
このタイミングでも偽物の召喚は可能だ。
本体に遠く及ばないステータス、本体と偽物同士に特攻のあるバフとデバフを掛けられて生み出される。
であれば、ここで浮かび上がる疑問。
時間をかけたらどうなるか、だ。
否、相手を観察する時間があったらどうなるか、である。
その答えは……より本体に近づく。
ステータスも。
スキルも。
その全てが本物に近づく。
より、本物を殺すドッペルゲンガーと化す。
それこそが《偶像支配》というスキル。
ドッペルゲンガーが第四形態――上級エンブリオに進化した際に発現したスキルだ。
彼女を知る者は驚く。
そして、その未知数と底の知れなさに恐れを見出す。
第四形態という未だ発展途上でありながら、格上すら殺しかねないスキル。
それが、必殺スキルでも無く、ただの固有能力として備わっている。
これがどういうことであるか。
そして、時間をかけて生み出された本物に近いドッペルゲンガーがどういった意味合いを持つのか。
それを知ることが出来るのは相対した者のみ。
自身と強制的に出会わされた主観者のみである。
■【魔法少女η】狂ヶ咲夢味
「《偶像支配》」
夢味の影から生み出される敵と同一の存在。
偽スコーピオンが這い出る。
続けて出現したもう1体と合わせて2体の偽物。
夢味は感じていた。
此れまでのどの偽物よりも強力。
咄嗟に生み出してきたどの個体とも一線を画す。
ステータスだけであれば本物に近づいている。
「ほ、ほ。先ほどは妾自身の攻撃を食ろうてみたが、なんぞ妾自身が出てくるとはの。これじゃから人間は面白い。どこまでも貪欲で悍ましい。嗚呼、じゃから良い」
対するスコーピオンはまるで臆さない。
愉快であると笑う。
強敵を望んだ『最強』が出会ったのは同じ『最強』。
これ以上の対戦相手はいまい。
「……ふむ? 流石に妾のスキルは真似出来ておらんようじゃな」
「……」
スコーピオンの問いに夢味は無言で答える。
そう、スキルは別物だ。
時間をかけても、一度でも見なければ真似は出来ない。
故にドラゲイルの推測は違っていた。
雷を用いたスキルを使わなかったのではない。
使えなかったのだ。
原理が不明な《制裁罰》も他のスキルも。
会敵と同時に身を守るためにすぐさま偽物を召喚しなければならない。
夢味自身の戦闘能力の無さが、《偶像支配》に枷をかけていたのだ。
「スキルなんて無くてもー」
「貴女自身の力があれば充分でしょー?」
だが、それでも強気であることを忘れない。
弱気であることを隠す。
狂気に浸れ。
善人と悪人の狭間で揺れ動け。
見る者を惑わし、不気味に、理解されず、自分自身のみを憎んで嫌って愛して好め。
「さしずめ、妾と同等の力を持つ召喚獣であろう? いや、その自信満面の表情……妾を殺す力があるか? まあ、良い。しばし遊んでやろう。妾が2人程度、本気になれるかは分からんがな」
スコーピオンの余裕は崩れない。
スキルの模倣は不可。
それを夢味は暴露している。
ならば、恐れるはステータスのみ。
要は、当たれば死ぬかもしれないということだけ。
スキル無しならば、倒しようは如何様にもある。
「2人だけ?」
「もしかしてー、私達は数えられてない?」
使役型の戦闘スタイルを得手とする者は本体が弱点である。
その戦闘リソースを全て召喚獣や使役する対象に注いでいることが多いからだ。
稀に必殺スキルや奥義で与えていたリソース全てを取り込んで本体を強化する場合もあるが、その場合は使役を諦めた時のみ。
使役と同時に本体を強化することはほとんど無い――夢味は例外として。
「《強像虚像》」
夢味の手元にスコーピオンと全く同じ大鋏が2つ出現する。
続けて黒紋付が出現し、夢味の元から着ている魔法少女のコスチュームと同化し黒く染め上げた。
「ほう……?」
スコーピオンが感心したような声をあげる。
彼女は感覚的に理解した。
夢味が持つ大鋏はスコーピオンが持つものと全く同じものであると。
黒紋付はコスチュームに吸い込まれたが、性能としては上昇している。
スコーピオンの鋏の切断力と黒紋付の防御力を手に入れたということだ。
ドッペルゲンガーが第五形態に進化した際に芽生えた新たなスキル《強像虚像》。
相手と同一の装備を整えられるというやはり偽者としてのスキルだ。
「良い、良いな。妾の装備が整っていると見るやそれも模倣するとは。妾の強さがまたも妾の首を絞めている。それで? まだあるのなら早う見せよ」
これだけではないと直感で理解する。
否、同種であるからこそ知識として容易に推測できる。
まだ、もう一つだけ力を使っていないものがあるだろう、と。
「行くよ、ドッペルちゃん」
「うん。一緒に行こう、夢味ちゃん」
前に立つでも、後ろに守られるでもない。
隣に立つ自身のために。
夢味とドッペルが並んで戦闘に臨む。
両者の手にはそれぞれ大鋏、そしてコスチュームは黒く染まっている。
「……やはり、の」
スコーピオンは自身の推測が当たっていたことに満足げに頷く。
これこそが【魔法少女η】の固有能力。
物質の複製である。
特典武具や、それに相当する武器防具、アイテムは不可能であるが、ただ切断力に長ける鋏や防御力の高いだけの防具であれば、MPの消費量は多いが複製出来る。
分け合うための力。
夢味とドッペルが同一であるための力だ。
「これで、私達も戦える」
「4対1だよ。私達にとっても有利だね」
背後でまだ炎に包まれて生きているチャングは存在感をアピールしようとするが、諦める。
その空気感では無かったため、とりあえずスコーピオンの隙を伺いつつ必殺スキルの反動で死なないようにタイミングだけを伺い始めた。
「ほ、ほ。震えておるぞ小娘達よ」
だが、スコーピオンは嘲笑う。
弱小の存在が、武器を構えたところで自衛のために玩具を振るっているようにしか見えない。
【魔法少女η】のステータス上昇値がほとんど無く、エンブリオによるステータス補正が微塵も無いため、彼女たちは武器防具に振り回されるだけになるだろう。
「さて、支度は終わったか? 死ぬ覚悟が」
「そっちこそ出来たのかな?」
「這いつくばる準備―?」
互いに戦意は微塵も損なわない。
『最強』として個の強さを見せる【パス・スコーピオン】。
未だ実力の全ては見えていない。
敗北を知り欠如を知り、そして自身を知った少女。
弱く、しかしながら潜在能力だけであれば魔法少女達の中でもトップである彼女は、偽りの強さを身に纏い、『最強』に挑まんとする。
「余興の始まりじゃ」
最初に仕掛けたのはスコーピオン。
遊びと言いながら、退屈であったのかもしれない。
それでも夢味にもドッペルにも捉えることのできない速度で距離を詰められ、繰り出された大鋏の一撃。
左右の手に持つ2つの鋏が肉食獣の牙の如く2人の少女の喉元に喰らいつく。
《強像虚像》
夢味達の弱さが結局勝敗の分けれ目になるため、クリアントに殺された後に芽生えたスキル。
これがあればクリアントに殺されることは無かった……と思いきや、マッドラップスの鎧を模倣したところで夢味自身が毒に置換されて死ぬという。しかも特典武具であるため【魔法少女η】で複製は不可。そのためドッペルは装備出来ず、毒で死ぬことは無く、今度はドッペルちゃんが夢味ちゃんの死に様を見届けるという素敵な再戦になりそうな予感。