<Infinite Dendrogram> 王は今日ものんびりと自殺する   作:そらからり

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なんやかんやで話数かかってしまった
よっしゃ、ラストスパートだ


Aside まにまに問答 9

■将軍と旅の途中

 

 それは、パリドーネがノクトル村を襲撃する直前のこと。

 彼女とレシーブの能力の使い方を必死に考えていたローガンはふと思いついたことを口にする。

 

「そういえば、何でモンスターに言葉が通じないんだ?」

「……? 質問をします。耄碌しましたか?」

「違う! ではなくて、たまにいるだろ、言葉が通じていそうなモンスター。リアルだって犬とかは飼い主の指示が伝わっていることだってあるし、だったらお前のスキルだって発動しそうなものだなって」

 

 意図が通じるモンスターは確かに存在する。

 元々知能が高いのだろう。

 そもそも、テイムされたモンスターは主人に従うのだ。

 全く通じていなければ、それこそテイマーの存在意義にも繋がる。

 

「それは……恐らく意図や指示でなく、質問をするのに完全に言語を共通化する必要があるからかと思われます」

「言語の共通化……」

 

 リアルでどのような国のどのような言語であろうと自動翻訳してくれるデンドロにおいて、言語が通じないという現象そのものが珍しい。

 だが、それがモンスター相手であれば理解は出来る。

 倒すモンスターの悲鳴を一々言葉を理解してしまえば、倒せない者が続出するだろうから。

 

「つまりは、パリドーネちゃんが人間の言葉を使わなくてもいいわけですね」

「そういうこと……です。ですが、発声器官の仕組みと多種多様なモンスターの言語全てを把握するには時間がかかります」

 

 一度だけ、パリドーネも考えたことがあった。

 通じないなら通じるようにしよう、と。

 

 だが、結果は散々であった。

 まず、理解するまでに死ぬ。

 物理的に。

 モンスターに襲われて死ぬ。

 

 故に諦めるしかなかった。

 無理に通じさせるよりも、戦った方が早い。

 言葉の通じない相手は戦うしか無いのだと。

 

「ふふっ。だったら私の出番というわけですね」

「……?」

「パリドーネちゃん。私のジョブは何でしょう」

「愚問です。【動物王】でしょう」

 

 多数のモンスターを従わせる【動物王】。

 彼女のエンブリオと相まって一見強そうに見える。

 ……が、彼女のエンブリオが足を引っ張り実力を発揮できない場面が多いというシナジーが薄いジョブである。

 

「では、私はどうやってモンスター達に指示を出すでしょうか」

「それは……スキルでしょう?」

「ええ、その通り。なのですが、もう少し細かく言いますと、モンスターに通じる言語スキルを用いて指示しています。《動物言語》という基本スキルですね」

「……!」

 

 ハッとさせられた。

 なるほど。

 自身は【問王】だからモンスターの言語を理解するならひたすら学ぶしかないと思っていた。

 だが、スキルという恩恵があるならば……。

 

 ノクトル村でのデスペナルティ明け後、彼女は使役系統で《動物言語》のスキルを得られるジョブをサブに置いた。

 だが、問題は【問王】とのシナジー。

 残念ながらメインジョブが【問王】であると使役系統のスキルは何も発動してくれないらしかった。

 

 結局モンスターを相手に質問することは出来ない。

 その結論に辿り着くしかなかった。

 

 だが、パリドーネは勘違いしていた。

 質問をするのも、答えを出すのも常に1人である必要はない。

 時には複数人で挑むこともあるのだと。

 

 【問王】が【動物王】と協力してモンスターに質問をする。

 こんな簡単な答えに辿り着くまでに時間がかかったのは……彼女がレシーブを真の友人と認めるまでが長かったからか。

 あるいは、愛を学び始めたか。

 

 

 

 

■【問王】パリドーネ

 

『こ、この畜生風情がぁぁぁぁぁ! 人間共にいい様に利用されやがってぇぇぇぇぇ!!』

 

 怒り心頭、といったところだろうか。

 本性を現したともいう。

 仏とは見た目だけ。

 中身はただのモンスターであったともいう。

 

 ともあれ、ここまで来れば倒すだけ。

 

『く、来るなぁぁぁぁ! 近づくなぁぁぁぁ!』

 

 フトは叫ぶ。

 だが、私達を阻むものがない。

 モンスターは私達を襲わず、雨は私達を罪人と認めず。

 幾つかの能力を隠し持っていたフトも手札は尽きたようだ。

 

『ああああああぁぁぁぁぁ……? ああ、そうではない。足りないでは無いか』

 

 レシーブがまずフトを殴る。

 その一撃でフトのHPバーが1本消滅する。

 新たにバーは現れる。

 これで残り2本。

 

「パリドーネちゃん。後は任せましたよぉ? 私にここまでお膳立てさせたんだから、決めちゃってくださいね」

「ええ。勿論、その期待にも応えましょう」

 

 レシーブが雨に触れ、HPを一気に減少させる。

 0となった彼女は光の塵へと消えていく。

 だが、満足げな表情であった。

 どこかで見たことのあるような、しかし彼女の本心だと信じたい感情。

 

『で? どうするのだ? 1人残った貴様に何が出来るというのだ』

 

 対称にフトは冷静を取り戻していた。

 気づいたのだ、私達のステータスがいくら上昇しようとも、手数が足りていないことに。

 強くとも一度にHPバーは1本しか減らせない。

 次を減らす前に雨に打たれ死亡する。

 

 だからこそ、私1人では残り2本あるフトのHPバーを削り切れない、と。

 

「そのような考えでは誤答。バツを与えます」

『……! 罰を下すのは、神罰を与えるのは我である!』

 

 指でバッテンを作る。

 それがフトを逆撫でさせたか。

 

 関係ない。

 

「《問おう、生きるとは何か(スフィンクス)》」

 

 拡声器を用いて私の声が届いたモンスターは500匹以上。

 そのうち、レシーブが私の質問をモンスターの言語に訳せたのは100匹前後。

 100の質問……これが必殺スキルを使用するために最低条件だ。

 

 スフィが本来の姿を取り戻す。

 

「これが答え。貴方に与える最初で最後の死です」

『な、なななななな……馬鹿げている! 有り得てたまるか!』

 

 スフィのステータスは私よりも、そしてフトよりも高い。

 

「彼が貴方のステータスを下げた原因。質問に答えられなかった者に罰を与える能力を持っています」

『ま、そういうことだ。大人しく運命を受け入れるんだな』

 

 スフィはフトの前へ駆けると、爪を振り上げる。

 

『認めぬ……認めぬぞぉぉぉ! 我は死なぬ! そのために……』

 

 フトはスフィを無視して私を狙う。

 スフィには到底敵わない。

 だからこそ、辛うじて近いステータスである私を狙ったのだろう……が、

 

「それは悪手です」

 

 スフィが瞬間移動でもしたのかと見紛う程の速度で私の前に出現する。

 そも、スフィは自主的に攻撃することは無いのだ。

 爪を振り上げたのはただの脅し。

 

 彼の役割は一つだけ。

 

「最後の質問です」

 

 私の質問を妨げる存在から私を守ること。

 その最中にスフィが今度こそフトへと爪を振り下ろす。

 

『……!?』

 

 フトのHPバーがまた1本消える。

 

「愛とは、何でしょうか」

 

 雨がスフィを打つ。

 いくら強化され、膨大なHPを手に入れたスフィといえど、フトの雨に抗えない。

 ダメージを与えてしまえば、その雨の法則からは逃れられない。

 

『愛とはぁぁぁ! 我が力そのものであるぅぅぅ!』

『へへっ……不正解だな。少なくとも我がマスター様はそんなこと思っていないみたいだぜ』

 

 消滅寸前にスフィがフトの回答を誤答と判定する。

 

「貴方の力は罪と罰なのでしょう?」

 

 そして《問おう、生きるとは何か(スフィンクス)》によるペナルティが下される。

 

『残念。お前さんにとっては当たりではなかったみたいだぜ?』

 

 【死呪宣告】が出てくれれば話は早かったが、ペナルティは【猛毒】及び【恐怖】及び【脱力】及び【出血】及び部位欠損であった。

 フトの左足が消えていく。

 

「……いえ、十分です」

 

 これでフトはまともに動くことは出来ない。

 チェックメイト。

 私の一撃で決着が着く。

 

『ひっ……来るな、来るなぁぁぁぁぁぁ』

「答え合わせの時間です。愛とは、自由なものですよ」

 

 右足だけとなり尻もちを付くフトにゆっくりと近づく。

 外せば逆にこちらが危うい。

 良く狙い、一撃で仕留めねば。

 

「貴方が真に神であるならば、少しは人を愛するべきでした」

『愛する! これからは愛するから! だから――』

「……薄い言葉ですね」

 

 狙うはフトの心臓。

 倒れたフトの心臓は狙いやすい位置にある。

 手刀で貫き終わらせる。

 

「これで――」

『だから、まあ明日くらいから殺して愛するとしよう』

 

 フトの四肢が、肉体が別たれていく。

 それは、私の攻撃によるものではない。

 フト自らが、分解されていったのだ。

 

「……は?」

 

 動転し、狙いが逸れた私の攻撃はフトに当たるも、HPを削り切れない。

 フトの四肢は消え、頭部だけとなり、そして頭部が小さな――人間大の大きさのフトへと形を変えていく。

 

 私は……体に何滴も雨が降れ、あっという間にHPが0になる。

 もう私自身に出来ることは無い。

 すぐに目の前が暗くなる……強制ログアウトとなった。

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