<Infinite Dendrogram> 王は今日ものんびりと自殺する   作:そらからり

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Cside 巨人伝説~目撃者は殺された~ 9

■【自殺王】クリアント

 

 【巨人王】ゼロムスの言葉の直後に巨人の1人が爆発した。

 爆発元は彼の首元のようで、巨体が倒れた横に頭部が落ちてくる。

 

 ゼロムスは【巨人王】は巨人たちの奴隷であると言った。

 誰も成りたがらない生贄であると。

 まさか、今のはゼロムスの仕業なのか。

 クリアントがゼロムスを見ると、

 

「……っ!?」

 

 彼もまた、驚愕の表情で倒れた巨人を見ていた。

 何が起きたのか分からない、そんな様子である。

 

「……確認しておくぞ。今のは、お前がやったんじゃないんだな?」

「当り前さ……今の僕に戦う力なんて微塵も無い。いや、それよりも……!」

 

 ゼロムスが周囲を警戒する。

 すぐに巨人たちがゼロムスを囲むように集まり、盾を構えた。

 

「王よ! 無事でありますか」

「……ああ。死んだのは誰だったさ」

「はっ。サードル様にございます」

「そうか……宰相がやられたか」

 

 死んだのは国の中枢部の巨人らしい。

 であれば、内情を良く知る人間の犯行か。

 

 もしくは……

 

「あっ……え、あ、ああああぁぁ」

 

 巨人の1人が右肩を抑えたかと思うと、弾けた。

 ゼロムスを囲っていた巨人ではない。

 離れた位置にいた、街路で露天商を営んでいた巨人の1人だ。

 

「なにが起こって――」

 

 訳の分からない事態に、ひとまず警戒を兼ねて走り出そうとしたクリアントの腹部に衝撃があった。

 それは1本の矢。

 深々と刺さったソレは、次第に膨らみ……クリアントを内部から弾き殺す。

 

 謎の爆発の正体こそは矢。

 巨人の身体が余りにも大きく、人間サイズの矢は知覚できなかったのだろう。

 だが、威力は巨人すら殺せる代物であったために、犠牲者が出てしまった。

 まるで巨人種と妖精種の戦争の再来のようだ。

 巨体故に死ぬ。

 ステータスの差が無い木偶の坊故に。

 

「火薬の類では無さそうだな」

 

 自身の血肉の雨を浴びながら冷静にクリアントは判断する。

 矢が刺さった者は爆発……破裂により尽く死んでいるが、その周囲の者は無事である。

 ひとまず、回避さえ出来れば何とかなる攻撃のようだ。

 

「矢を受けるな。俺は鎧越しだったが、巨人は全員素肌から爆発している。巨人専用の分厚い盾や鎧は貫通出来ないようだ」

 

 ひとまずの指示としてはこれで良いだろう。

 元よりENDの高い種族。

 矢が刺さりさえしなければ、脅威足りえない……はずだ。

 

『お前すげぇなぁ。死んだはずなのによぉ、何でまだ生きてんだ?』

 

 低い振動音が聞こえた。

 何かが回転するような、規則的な音と共に、男の声。

 

『ま、関係ねえけどよぉ。死んでも生き返るっつうならよぉ、また殺せば良い話だよなぁ!』

 

 音はクリアントの頭上から聞こえてきた。

 慌てて見上げれば、視界いっぱいに機関砲が映る。

 それはやがて回転を始め、

 

『いくら弓の名手とはいえよぉ、巨人に比べたら当てづらいよなぁ。そんなら俺の出番だ』

 

 小さなヘリコプターの武装から放たれた弾丸の雨は残らずクリアントに命中し、その肉体をハチの巣のように穴を空けた。

 

 

 

 

【???】アシスタ

 

「命中」

 

 直線状に巨人は見えずとも、相棒の展開する視覚共有用のモニターによって巨人の死が確認される。。

 狙いは違うことなく。

 命中精度は問題無い。

 問題は貫通力。

 やはり、威力は劣る。

 巨人の鎧に当たっても皮膚には届かない。

 とうの巨人たちは当たったことにすら気づいていない様子だから、死者が出るまでは狙われていたことにすら気づかなったのだろう。

 

「……命中」

 

 二射目も巨人の命を奪う。

 今度は防具を装備していない巨人。

 商人のようだが関係はない。

 巨人ならば皆殺しだ。

 目的が【巨人王】故に、巨人は全て死んでもらわなくては困る。

 

「……ん? 大きさが違う」

 

 普通のティアン……否、〈マスター〉が1人。

 よく見れば巨人に混ざって巨大な少女もいる。

 2人の〈マスター〉。

 このタイミングであれば少女が【巨人王】に就くために来たのだろう。

 わざわざ正攻法で、ご苦労なことだとアシスタは吐き捨てる。

 

 自分には【巨人王】就職の儀に挑む資格が無い。

 アバターが普通の人間であるが故に、巨人であることが前提の【巨人王】の儀に挑めない。

 

「だから殺す」

 

 故に、2つ存在するとされる【巨人王】就職条件のうち儀以外の方。

 野蛮的な方法とされる、【巨人王】が死んだ時に5㎞以内にいる最も巨大な人間範疇生物が就職条件を満たすというもの。

 既に森の入り口付近にまで来ている彼女は5㎞圏内であるし、巨人と2人の〈マスター〉が死に、【巨人王】が死んだとき、その時彼女以上に大きな人間は付近に存在しなくなる。

 

『曲射っつうんだっけか? すげえよなぁ』

 

 素直に感心した声が聞こえる。

 バーバヤードのものだ。

 姿は見えないが、彼の操る航空機――小さなヘリコプターからスピーカーを通して彼の声が聞こえる。

 彼はアシスタの弓の腕前を褒めていた。

 5㎞越しの曲射。

 それも、目標地点の視点はバーバヤードが展開するモニター頼み。

 ジョブと特典武具によるアシストがあるとはいえ、ほとんどが彼女自身のセンススキルによるものだ。

 

「……別に」

 

 素直に感心されたら素直に返せないのがアシスタである。

 不意打ちとはいえ戦闘を開始したくせに、ぷいと視線をモニターから外す。

 

「……それより状況は? あっちのことはアンタの方が分かってるでしょ」

 

 最初はバーバヤードから仕掛けるはずであったが、《看破》で見えた巨人たちのステータスが予想以上に高かったため、急遽アシスタによる射撃から行うことになった。

 

『……それがよぉ、ちと不味いことになっちまったぜ』

「どういうこと?」

 

 モニターに視線を戻す。

 そこには先ほどアシスタが矢を撃ち込んだ〈マスター〉の男が立っていた。

 

「……外した? あるいはスキルの無効化?」

 

 内心、しまったと焦る。

 あれだけ格好つけて弓を構えていたつもりであったが仕損じてしまっていたとは。

 

『いや……お前はちっとも悪くねえぜ。確かに矢は当たったし、破裂もしている。それに、その後に俺もガトリングを浴びせてるからな』

 

 バーバヤードのヘリコプターは子供玩具サイズ――ラジコンの外見であるが、実際の攻撃力は本物に勝る。

 豆鉄砲の大きさの弾丸だろうと、威力自体はガトリング砲と遜色ない。

 それがまともに当たって生きているはずがない。

 

「……防御特化のエンブリオかジョブ? 見た目は大した装備では無いけど」

『違う。ありゃ、防御性能自体は紙っぺらに近い。だがよ、だけどよぉ。生き返っちまうんだ。殺しても殺してもよぉ、何でかてめえの死体の隣で涼しい顔して立っているんだぜ』

 

 蘇生能力か、とアシスタは納得する。

 同時に、ならば対処法も容易だと安堵した。

 

「死体の横、ね。再生でなく蘇生なら限度があるはず。いつでも殺せる巨人よりも能力が不明の〈マスター〉を優先して殺しましょう」

『……だなぁ! 流石定石を踏まえてるぜアシスタ』

 

 とはいえ。

 とはいえ、だ。

 果たして蘇生能力だけに留まるのだろうか。

 生存特化型がこの巨人の国に来て、ただ死なないことを披露していると?

 違う。

 あの男は巨人の少女に付いてきた。

 巨人の少女を【巨人王】にすべく。

 

 ならば、こうした事態にも備えての人選。

 

「……警戒は続けて。万一、壊されることも考慮しておいて」

『そんなにか?』

「……巨人たちも身を固め始めている。数度の攻撃でこちらにも対応しつつあるわ。指揮を執っているのはあの男。馬鹿では無いようね」

 

 死ぬことで攻撃の正体を見破り、対策を取るタイプか。

 死ぬことに慣れているのであれば、今の数回の死は相手にとって許容範囲であるのだろう。

 

「まだこちらに利はあるわ。アンタは当然見つかっているだろうけど、私は相手から絶対に見えない距離。このまま有利に事を運ぶわよ」

『あいよぉ!』

 

 バーバヤードが傍にいる。

 その実感がアシスタの矢を番える手に熱を込める。

 




5㎞からの狙撃に飽き足らず曲射……妙だな
エンブリオとかジョブとか特典武具あればいけるでしょ(普通は無理)
5㎞の射程距離の確保、あとは当てるだけの技量があれば……
実際はアシスタも運が良かったと思ってるレベルで、巨人は的が大きいから当てられてる
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