<Infinite Dendrogram> 王は今日ものんびりと自殺する   作:そらからり

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Cside 巨人伝説~目撃者は殺された~ 15

■【巨人王】ゼロムス

 

 空を見上げる。

 大きい。

 普通の人間サイズになった時、巨人であった時に比べ大きいと感じたことを思い出す。

 今は更に、空が大きい。

 だが、空の大きさは不変だ。

 何も変わっていない。

 変わったのは……僕だ。

 

 あの時の高揚は一瞬にして瓦解した。

 巨人たちに身を捧げることに絶望した。

 王だと祀り上げられたと喜んだのは一瞬。

 結局は担がれただけであった。

 

 何故、巨人が数多いる国にわざわざ僕が招かれたのか。

 それを知った時にはもう手遅れだった。

 仲間を失い友を失い家族を喪った悲しみから逃れるために行き着いたこの国に、温かく迎えられたのは、僕を【巨人王】にするためであった。

 

 試練もまた勝敗関係なく巨人に認められれば良いだなんて都合のいい言葉は、巨人たちにとっての都合のよい言葉に過ぎず、奴隷を選出するための方便。

 認めないわけがないのだ。

 認めなければ、巨人の国が廃れてしまうのだから。

 

 ……ああ、だけど僕はどうしてだろう。

 この国を存続させたい。

 巨人を害したくない。

 見捨てたくない。

 そんな気持ちでいつしか溢れていた。

 王としての責任感が芽生えさせられていた。

 

 だから僕は王としての責務を全うした。

 新たな巨人を生み出した。

 森を広くした。

 巨人の亡霊が出ると噂が出れば、その元凶であるUBMを討伐した。

 国の為に動けば動く程、働けば働く程に僕の体は小さくなっていく。

 巨人の王として相応しくなくなっていく。

 

 そうしていつしか、担がれていた神輿は。

 荷物と成り果てた。

 

 

 

 

■巨人の国 森林部

 

『oooooooooooooAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa』

 

 巨人――かつて闘技場に潜んでいたエレメンタルを素材とした怪物が両腕を広げる。

 彼は興奮していた。

 小さかったかつての自分に別れを告げ、新たな巨大な人間の姿であることに。

 素材となったエレメンタルの幾つもの思想思考が乱れ混じり、しかし大きくなりたいという確固たる信念だけは共通のものとなり、彼を動かす。

 王の命令など既にどうでも良かった。

 ただ、巨人となった自分の力がどれだけのものとなったか。

 それを示す遊び場が足元にはある。

 

『aaaaaaaAaaaaaaaHaaaaaaaaaaaaaaa』

 

 赤子のような笑い声。

 実際に彼は生まれたてだ。

 巨人としては、その大きさに見合った、生まれ持った膨大なステータスさえ除けば、生まれたての赤子に等しい。

 

 広げていた両腕を閉じる。

 その間にあった巨木は1本残らずへし折れる。

 巨木に相応しい幹も、根も、まるで存在しないかのように、ドミノを倒すが如く、倒し集めていく。

 

 生き延びた巨人がその光景を見たら、自分との違いに呆然としただろう。

 巨木は倒せるかもしれない。

 運ぶことだってできるかもしれない。

 だが、あれほどに一度に倒し、集めることなど40足らずの大きさでは不可能。

 100mの巨人だから出来ることだ。

 

 故に巨人は、こう呼称した。

 

「ば、化物だ……」

 

 もはや同種に非ず。

 同じ巨人であることに違いないが、あまりに種がかけ離れている。

 

「闘技場にいた奴……だよな。何であんな大きさに……」

 

 何故こうまで巨大になれたか。

 その理由は、素材となったエレメンタルの数と質。

 普通は巨人1人に対してエレメンタル1体。

 それも、巨人になりたいという願望持ちを素材にしているため、比較的若い個体が選ばれる。

 対する闘技場のエレメンタルは凡そ10体。

 そして、彼らは闘技場の維持のためにテイムされていた【ハイ・アースエレメンタル】という、闘技場建設より経験値を蓄えていたモンスターだ。

 

 数と質、その両方で上回るのだ。

 それを最終奥義である《巨人の国》で巨人化すれば、大きさも別格であろう。

 

 怪物は暴れ狂う。

 遊び場で、オモチャを使って遊ぶ。

 巨木を投げ、壊し、かき集める。

 

 ――その思考の片隅にはしかと王の命令が刻まれていることに気づかずに。

 

『……おいおいおいおい。何だよこれは……俺達にとって嫌がらせみてえなバケモンを生み出しやがってよぉ』

 

 もはや怪物にとってはたかる羽虫よりも小さなラジコンヘリを操舵するのはバーバヤード。

 黄金の機体を操りながら呆れた顔を見せる。

 

『アシスタよぉ、あのバカでかいのはよぉ、どう見ても【巨人王】絡みだが。倒せば俺達の勝ちだと思うぜぇ』

「ええ。あんなの、そう何度も出せるものでもないはず。奥義か最終奥義に相当すると見たわ。であれば――」

『ああ。俺達も迎え撃つぜ』

 

 黄金の機体の傍に立つは弓を構えるアシスタ。

 もはや望遠アイテムを使わずとも肉眼で視認できる。

 これで外すようなら弓使いを引退すると思いながらアシスタは矢を番える。

 

 そして、見るも早業で矢を連射した。

 

 次々に命中した矢は、先ほどまでの攻撃と同様に、当たった箇所から破裂していく。

 どころか……爆発し、火があがる。

 

「……中身を変えてみたけど。大きすぎて効果が薄いわね」

『だったらよぉ、一か所でダメならよぉ、四方どころか八方から囲んだからどうなるんだろうなぁ!』

 

 黄金の機体から鈍色の機体が別たれていく。

 

「《十二編隊(フォーメーション・フライト)》」

 

 既に3機、別たれている。

 故に新たに生み出された鈍色の機体は計8機。

 それぞれが遜色ない速度で飛翔し、怪物を取り囲む。

 

『はは、ははははは! 流石に久々だ。難しいぜぇ!』

 

 黄金の機体から焦りと楽しさが入り混じった声が聞こえる。

 それもそうだろう。

 彼は全ての機体を手動で動かしているのだから。

 

 自身の操縦するメイン機体から最大11機の分身を生み出し、操縦を可能とする。

 これこそが彼のメインジョブである【航空王(キングオブパイロット)】が奥義、《十二編隊》である。

 

 そしてメイン機体である黄金の小さなヘリコプターは彼のエンブリオであり、多彩な機能を有するTYPE:ギア・アームズ。

 自動操縦(オート)でなく手動操縦(マニュアル)であるのは、彼自身の手で高く飛び上がりたいという願望故か。

 元より、操縦の腕前に関しては才能を有していたため、12機程度であれば、完全にとまではいかずとも戦闘を行うくらいは出来る。

 

 全長1mの機体から展開されるは機関砲。

 しかしながら、先ほどまで人体に撃ち込まれていたものとは全くの別物。

 それは、高い貫通力と着弾時の【麻痺】の状態異常を付与する弾丸が込められている【雷来砲 クットーン】という逸話級武具。

 弾丸一発あたりの【麻痺】の確率はとても低い。

 だが、その確率は積み上がる。

 二発撃てば確率は二倍に、三発撃てば三倍に。

 一発目は0,1パーセントにも満たない確率であるが、次第に加算された確率は、やがて確実に対象を【麻痺】へと陥らせる。

 

 その弾丸が、八方から放たれた。

 

『uuuuuuuuuuuuuuuuuuu!?』

 

 弾丸の威力が余りにも弱く、無視していたことが仇となった。

 怪物にとっては急に体が動かなくなったと感じただろう。

 動かないのであれば、動かないデカい的が相手であれば、命中精度が低い武器を使える。

 

『とっておきだぜぇ』

 

 次なる武装は小型化した核ミサイルを発射する【皆退去 オールナッシング】。

 威力は、100m以内に収束するが、その範囲内の生物であれば火属性系統超級職と風属性超級職の奥義に匹敵する炎と旋風が巻き荒れる。

 約1分間、内部を焼き、引き裂いた後には、辛うじて原型を留める怪物の姿があった。

 

『……随分と頑丈な奴だぜ。大きさに比例してHPが補正されたか?』

 

 バーバヤードの推測は当たっている。

 《巨人の国》で生み出された巨人に与えらえるステータスは大きさに比例して上下する。

 20mの巨人と40mの巨人が動くのに要求されるステータスが全く同じなわけがないのだ。

 故に大きければ大きい程に彼らは強さを得る。

 100mの巨人ともなれば、それは二倍や三倍では済まない。

 

「関係ないわ。次で終わるもの」

 

 だが、怪物の装甲に滅びが生じる。

 矢が刺さったところで薄皮一枚削るのにやっとであったが、中身に到達できる傷が出来た。

 アシスタの矢が正確に巨人の傷口を通過し内臓部にまで命中する。

 そして、

 

「解放」

 

 怪物は内部から破裂し、その巨体を霧散させたのであった。

 




怪物君。見事に噛ませとなる


【航空王】
操縦士系統飛行士系統派生超級職
他の操縦士系統超級職に比べ、飛ぶことに特化している。
とはいえ、デンドロの空はただ飛べれば良いというわけではない。
飛んでも尚、撃墜されないだけの実力が必要となるのだ。
実力があったから、バーバヤードは【航空王】となった。
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