<Infinite Dendrogram> 王は今日ものんびりと自殺する   作:そらからり

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■クラン〈パルプンテ〉

 

「初のイベント参戦だ。条件にも合うことだし、出来れば全員での参加を望みたい。みんなも都合は付きそうか?」

 

 討伐、クラン、決闘。いずれのランキングからも外れている〈マスター〉及びクランのみ参加できる今回のイベント。名を〈ウェルカム〉。

 レジェンダリアを舞台としたイベントは過去に幾度か行われたらしいが、対象を絞ったものは珍しいらしい。

 季節イベントでも、大会のようなものでもない。

 そしてランキング外という条件。

 紛れもなく、枠外の強者を集めようというレジェンダリア国家の意図が紛れ込んでいる。

 果たして運営主体であろうイベントが一国家の思惑を抱き込ませられるのだろうかは甚だ不明であるが、それを考えても仕方ないだろう。

 世界派遊戯派紛れる〈パルプンテ〉であるが、〈Infinite Dendrogram〉の世界観そのものに深く触れた者はいない。

 イベントはイベント。

 他の国々とのバランス調整のためかもしれないなと思うだけだ。

 

「イベント自体は二日間予定みたいだが、内部時間の加速で現実世界では半日くらいらしいな」

「それもイベント特有ですわね。日程的にも私は問題ありませんわ。数度、休憩を頂けるのでしたら」

 

 皆、同じようだ。

 食事やトイレといった生理的欲求に従った現実への退避さえあれば半日程度の拘束は大丈夫らしい。

 

「じゃあこのままイベント参加は申し込んでおくか。ええと、クラン名は〈パルプンテ〉、人数は全員だから……15人か」

 

 ランキング外ばかり集めるのだから15人ならばかなりの大所帯に入るのではないだろうか。

 その内訳も〈超級〉や準〈超級〉ばかり。

 ひょっとすればイベントの上位入賞も見えてくるのではないかと期待も出来る。

 

「ルールは今度の王国と皇国で行われる戦争のフラッグ戦にポイント制度を混ぜたようなものだったな」

 

 一つのクランに一つ与えられるフラッグ。

 これを指した箇所から半径50m以内が自クランの陣地となる。

 陣地内ではクランメンバーに多大なるステータスバフが与えられるため、陣地内で戦えば相当有利な状況となる。

 フラッグを破壊されればそのクランは200ポイントが引かれ、フラッグは以降再生成されることはない。

 

 続いて、ポイント制度とは各クランに与えられる200ポイントのこと。

 これらをクランメンバーで好きに割り振り、死守する。

 死亡すればポイントは直接的な死因となった相手へと送られることとなり、このポイントが最後に多かったクランが優勝となる。

 

「一見するとフラッグの防衛が前提にみえるが……」

「相手チームを殺して200以上のポイントを集めちまった方が良さそうだよなぁ」

 

 フラッグを壊しても、壊したチームへポイントは与えられない。

 故に積極的にフラッグを壊すのは相手チームへの減点狙いとなる。

 自チームのポイントを増やすために敵を倒すか、敵のポイントを減らすためにフラッグを破壊するか。

 どちらを選ぶかが戦略の鍵となるだろう。

 

「分からないことがあれば運営に問い合わせろってあるな。とりあえず自殺した時のポイント移動がどうなるか聞いておくか」

「それを聞くのクリアント君くらいだよね」

 

 仕方ないだろう。

 ストックを数え間違えて死んでしまう可能性がある。

 

「ポイントのことだが、200を15で割るのか。最低1人10ポイント以上は保持していなければならないみたいだから、後はてきとうに……」

 

 残り50ポイントをどうするか。

 〈超級〉3人を軸にして強い奴から5人選べばいいかなどと気楽に考えるクリアントに全員が待ったをかける。

 

「オーナー、この中だとオーナーが適任だと思うよ」

「そうか?」

 

 巨人の森での一件以来、キシリーはクリアントに対して意見を述べるようになっていた。

 それは彼に対しては対等とみているのか、臆することが無くなったことの証だろう。

 

「だって、強くても死んじゃったらポイント失っちゃうんだもん。死なないオーナーこそだよ」

「……じゃあ。俺が20ポイント貰うか」

 

 戦闘型ではなく、生存型で選べということならば、クリアントは他に誰が適任か考える。

 高度な回復スキルを持つクャントルスカやノーチラス号に守られるフィリップあたりが良いかもしれない。

 いや、それよりも空中に逃げられるバーバヤードやジャミラも被弾率の低さでいえば適任と言えよう。

 単純なHPの多さならキシリーだ。

 あえて戦闘に巻き込まれにくい位置にいる後衛組のバウムやアシスタもどうだろうか。

 

「うん? 考えるとキリがないな」

 

 もはや誰でもいい気がしてきた。

 というか、みんな強いのだから、誰であろうと構わないのでないかと。

 

「こういう時はパリドーネに……どうしたパリドーネ?」

 

 なんとなく数字に強そうなパリドーネに話を投げようと思い声を掛けるが、彼女はなにやら考え込んでいる様子であった。

 

「……ああ、いえ」

「何かあったのか? もしかしてイベント当日は予定があったとか」

「その日は問題ありません。……その、私の母が、以前に家庭教師を務めていただいた方々に私が〈Infinite Dendrogram〉のプレイヤーであることを教えてしまったみたいで」

「あー。パリドーネちゃん、前にいざこざあったって言ってたもんね」

 

 訳知り顔で頷くクャントルスカ。

 

「なので可能性としては低いですが、もしかすると今後彼らからこのクランに嫌がらせされる可能性も――」

「そんなもの気にしたって仕方ありませんよ」

 

 言葉を遮ったのはレシーブであった。

 本日は少しばかり怒った感情をみせている。

 

「パリドーネちゃんが悪くないのは明らかです。それにあの家庭教師たちですよね。ペンギンのように群れることでしか生きていけない連中に何を恐れることがありますか! こっちは熊も獅子もいるんです。返り討ちにしてやりましょう」

 

 誰が熊で誰が獅子なのかは置いておくとして。

 確かに気にしたって仕方ないことだ。

 

「そうだな。何かあればみんなを頼れば良いと思う」

「……ありがとうございます」

 

 そういえばパリドーネの実年齢は外見よりも低いとクャントルスカが言っていたとクリアントは思い出す。

 普段はしっかり者にみえるが、大人が複数人で押し寄せれば、確かに怖いだろう。

 

「私もこの間、お爺ちゃんのファンだっていう人から手紙貰ったんですけどね。開けて読んでみれば自己語りばっかりで! 結局、お爺ちゃんの名前で売り出して欲しいって内容でしたよ!」

 

 レシーブの言葉は続く。

 どうやら怒っていたのは、その手紙のせいであったらしい。

 

「えーと、パリドーネ。それでだが、このポイントの分け方については何か意見はあるか?」

「そうですね……」

 

 今度こそイベントについて思案するパリドーネはやや考えた後、

 

「まずは配置から考えるべきかと」

「ああ、それがありましたわね」

 

 彼女の言葉にプシュケーがしまったという表情をつくる。

 

「配置?」

「役割、と言い換えても良いかと。いわゆる攻撃、遊撃、防衛です。主体的に敵陣地や敵〈マスター〉を倒す者。攻撃力に特化した者が良いでしょう」

 

 どこからかホワイトボードを持ってきて攻撃、と書く。

 その横にはプシュケーや妹妹、ワン・フー・ウーの名前が挙がる。

 

「遊撃は敵の戦力を図る役割です。生存、移動に特化した者が良いでしょう。オーナーもここに位置付けています」

 

 遊撃と書かれた横にクリアントやフィリップ、バーバヤード、ジャミラの名が挙がる。

 

「防衛はそのまま陣地の防衛です。ステータスバフが与えられるのであればキシリーさんが相応しいでしょうし、その他に支援タイプのバウムさんもでしょうか」

 

 防衛の横にキシリーとバウムの名が挙がる。

 

「こうやって役割を振っていき、その中で攻撃チームに属さない者にポイントを多く割り振ることを提案します」

「……なるほどな」

 

 攻撃チームだけは自然と戦闘の回数も増える。

 死なないことが前提である20ポイント以上の保持者はどちらかといえば戦闘を回避できる者が良いだろう。

 

「私はパスするよ。遊撃に名が挙がっているけど、どうしたって必殺スキルを切らざるを得ない場面でポイントを気にしてはいられないし」

 

 と、本音は『興味が沸けばガンガン前に出たい』フィリップは10ポイントで良いと発言する。

 本音部分まで透けて見えた者達は確かにと頷いている。

 

「とりあえず、パリドーネの言う役割を振ってみるか。攻撃と遊撃は混ざるかもしれないけど、防衛だけはしっかりしないといけないしな」

 

 と、ここで問題が発生した。

 明らかに陣に籠っている方が優位になるだろう後衛特化のアシスタがバーバヤードと一緒で無いと嫌だと言い出したのだ。

 

「私はバーバヤードと組んでこそ真価を発揮する。私を防衛にするならバーバヤードもよ」

 

 偵察に最も向いているバーバヤードを後衛に下げることなど出来やしない。

 だが、ステータス的にはあまり高くはないアシスタを前線に出すことは危険という考えもある。

 

「……バーバヤード。君の分体はどのくらい離れた位置まで飛べるんだい?」

「そうさな。数キロは可能だが、あまり遠くだと操作は鈍るな」

 

 文字通り、ラジコンのようなものらしく、遠くまでいけばバーバヤードとのラグが発生するのだと言う。

 

「仕方ない。アシスタとバーバヤードは遊撃で」

 

 しかし、これを通してしまえば他のメンバーも誰が誰と一緒が良いと言い出す始末。

 ジャミラはプシュケーと一緒が良いとか、ワン・フー・ウーは妹妹と一緒が良いとか。

 

「全員の意見を纏めると……」

 

 攻撃チームにプシュケー、ジャミラ、イテカ、妹妹、ワン・フー・ウー

 遊撃チームにフィリップ、クリアント、アシスタ、バーバヤード、パリドーネ、レシーブ

 防衛チームにクャントルスカ、バウム、キシリー、夢味

 

「……攻撃にだいぶ割いたな」

「15人のうち11人が自陣から離れるのは無謀に過ぎますわね。何人か戻さなくては」

 

 〈超級〉である3人はこのままがいいだろう。

 動かすならば他のメンバーだが、動かせばもれなく他も着いてくる者もいる。

 

「……初日と二日目で分けるか。初日は遊撃主体で様子を見ても良いだろう」

「良いかと。フラッグを破壊されては元も子もありませんので」

 

 イテカ、妹妹、ワン・フー・ウーを防衛へと下げる。

 攻撃チームの人数は少なくなったが、遊撃から回せば良いだけだ。

 

 攻撃チームにプシュケー、ジャミラ

 遊撃チームにフィリップ、クリアント、アシスタ、バーバヤード、パリドーネ、レシーブ

 防衛チームにクャントルスカ、バウム、キシリー、夢味、イテカ、妹妹、ワン・フー・ウー

 

「攻撃に8、防衛に7……これならまあバランスは取れたか」

「言いたくはありませんが、全員が二日間を無事に乗り切れる保証はありませんわ。もし欠けてしまったら他でカバーしますわよ」

 

 そして、再度誰に残り40ポイントを割り振るか検討したが……

 

「一番死ににくいクリアントさんでよろしいのではなくて?」

 

 と、なった。

 




クリアント60ポイント、他14人が10ポイントずつ
攻撃チームにプシュケー、ジャミラ
遊撃チームにフィリップ、クリアント、アシスタ、バーバヤード、パリドーネ、レシーブ
防衛チームにクャントルスカ、バウム、キシリー、夢味、イテカ、妹妹、ワン・フー・ウー

これだけ覚えておけばよろし
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