<Infinite Dendrogram> 王は今日ものんびりと自殺する   作:そらからり

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47話 合流。そして昔々のお話です

■【魔法少女ω】クリアント

 

「クリアント君!」

 

 森の中を走るクリアントに、頭上から声がかかる。

 見上げれば、そこにいたのは翼の生える少女に抱えられた魔法少女――クャントルスカが手を振っていた。

 

「クャントルスカさん!」

「……生きていたか」

 

 速度を緩めつつ、クリアントは安堵した表情で手を振り返そうとし……思い直して手を挙げるだけにした。

 

「良かった無事で。この雷もそうだけど、森の中の魔法少女は皆可愛くて強いから心配していたんだ」

「(……ワンプ)」

「(問題ありません。ちゃんとクャントルスカさん本人です)」

 

 つい先ほどまで魔法少女に化けるモンスターの相手をしていたのだ。

 警戒するのも無理はない。

 挙げていた手は手刀を作り出していたが、すぐに解く。

 

「んん? どうしたのかな。そんなに緊張しちゃって……って、もう解けているみたいだけど?」

「ああ……すまないな」

「なにせ相手が魔法少女や雷だけじゃなかったもので」

 

 クャントルスカが地上に降りてくる。

 器用にも、雷には掠る素振りも見せない。

 尤も、雷なので掠っただけで感電するのだが。

 

「あれ? ワンプちゃん強くなってるね……ひょっとして進化した?」

「なんでわかるんですか!?」

「あははー。私は人の内面が分かるからね」

「ちなみに私は中身が分かるわよ?」

 

 クャントルスカとモーちゃんが笑う。

 その笑みはクリアントからしてみれば笑いごとでは無さそうな微笑みであった。

 

「内面ってステータスじゃないんだよな……?」

「内情? というか真価なのかな……進化だけに。本質みたいなものが何となくだけど分かるんだ。ワンプちゃんはさっき会った時よりも少しだけ頼もしい表情をしているからね」

「お前……あれだけの進化で頼もしく思えていたのか」

「うっ……いやぁ……まあ……上級エンブリオですし?」

 

 それだけ上級エンブリオに進化したことが嬉しかったのだろう。

 クリアントの目が細くなろうとも、ワンプの顔は綻んだままだ。

 

「それでそれで? クリアント君とワンプちゃんは森の中で一体何があったのかな? というか、ダメだよ勝手に走りだしちゃ。まだ教えていないことがたくさんあったんだから」

「それは……本当に面目ない」

「うちの先輩がすいません」

 

 クリアントとワンプが頭を下げ、許しを請う。

 

「いいよいいよ。まだ生きていたんだから。それで? この雷も、クリアント君達が何かしたのかな」

「ああ。そうだ――」

 

 クリアントはクャントルスカに伝える。

 走り出してから最初の戦い、そしてドラゲイルとの邂逅。

 ドラゲイルの有しているであろう能力やその戦い方を。

 

「――だが、まだ能力の片鱗ってところだろうな」

「ほとんど瞬殺に近いですからね。分かっているのは雷を操る能力と、変身する能力ってところくらいです」

「そして、変身した相手のジョブスキルやエンブリオのスキルすらも使えるようだ」

 

 雷だけでも厄介な相手が、変身し他の能力まで使えることで拍車がかかる。

 流石は古代伝説級というべきか。

 グラスコードと比べても遜色ない強さであろう。

 

「変身……ね。そっか、そういう力も持っていたんだ」

「クャントルスカ?」

「雷の方はね、実は知っていたんだ。多分だけど、この戦いに参加している魔法少女のほとんどはドラゲイルっていうドラゴンが雷を操ることを知っていて、それで参加している」

「ドラゲイルのことは周知の事実だったのか」

「まあね。というか、【魔法☆少女】に就いて最初の戦いがドラゲイルとの戦いなんだよ」

「それはどういう……?」

 

 【魔法☆少女】とドラゲイルの因縁。

 それはドラゲイルが魔法少女に対して好戦的であったことと関係しているのだろう。

 

 クャントルスカは周囲を見つつ、

 

「近くに他の子はいないみたいだね……なら伝えておこうかな。少し長くなるけど……ドラゲイルの始まりと【魔法☆少女】の役割について」

 

 それはまるで母親が子供に聞かせる物語のように。

 それはまるで戦場から帰還した英雄が聞かせる武勇伝のように。

 クャントルスカの口から【黒雷竜 ドラゲイル】と【魔法☆少女】について語られたのであった。

 

 

 

 

■【黒雷竜 ドラゲイル】について

 

 ドラゲイルというモンスターの発生は無から始まったものではない。

 他のドラゴンがそうであるように、ドラゴンとドラゴンがかけ合わさることで、交配することで1つの卵から世に生まれた。

 祝福と願いを込められ、誕生と同時に名を授けられ、成長するにつれて強さを感じ取り、親から子に、子から孫に代を重ねていく。

 弱肉強食、自然淘汰。そういった言葉で表されるように、何かしらの強さを持ち合わせていなければすぐに殺されてしまう世界においてドラゴンに生まれたというだけで差が出る。

 本来であれば喜ぶべきであった。

 本来であれば満たされるべきであった。

 親に感謝し、自身の幸福に享受し、世界に自身の名を轟かすために強さを手に入れるはずであったのだ。

 

 母は名も無き地竜。

 体が丈夫なだけの、ドラゴンの中では弱者と呼ばれるような、十把一絡げのような、一応は純竜と分類されるだけの辛うじて高いと言えるステータスを持ったドラゴンであった。

 そこまで高くもない知能であったため、恐らくは死ぬまで主食である草を食べ続け、運が良ければ寿命で、悪ければ他のモンスターに、最悪で人間にテイムされてしまうと思われていた1匹であった。

 

 対する遺伝子に刻まれた父親の名は【雷竜王 ドラグヴォルト】。

 神話級UBMにして、当時はレベル70台、雷や電気を操る能力を有した有力なドラゴンであった。

 【天竜王 ドラグへイヴン】の第三子という血筋を持ち合わせ、その時点でドラグヘイヴンの孫にあたるドラゲイルもまた優秀な血を持っている。

 そのはずであった。

 ドラゲイルの遺伝子に刻まれた父の名がドラグヴォルトであったとしても。

 父は決してドラグヴォルトでは無い。

 それがドラゲイルの運命を決定付けた。

 

 

 

 

 かつて逸話級UBMで【全滅危惧 ミニマムズ】というモンスターがいた。

 見た目はただの黒いスライムである。

 そして、中身は空っぽであった。

 このUBMは誕生し、そして生命活動を終えるまで5日と無かった。

 他の誰に殺されたわけではない。

 ただ、役割を終えて死んだだけである。

 

 ミニマムズというUBMの特性を上げるとすれば、それは交配である。

 だが、ただの交配ではない。

 UBMという点からミニマムズは本来交配を必要としない存在。

 かりに、交配するとしてもスライムである。

 生殖行為は必要なく、増殖も単一生殖で事足りる。

 

 だが、ミニマムズは違った。

 きちんと交配を終えて生命をやり遂げた。

 

 誰と?

 名も無き地竜と。

 

 どうやって?

 【雷竜王 ドラグヴォルト】の姿となって。

 

 誕生してから1日目の間に視認した尤もステータスの高い者の姿になり、そしてその同種と交配し、子を残す。

 これこそが【全滅危惧 ミニマムズ】というUBMの能力であり、生きる意味であり、死んだ原因である。

 

 たまたまだ。

 偶然、ミニマムズの視界内に人間の祭りを楽しんだドラグヴォルトが自分のねぐらに帰還しようと空を飛んでいたところが映った。

 僅か5秒にも満たない程。

 ドラグヴォルトはミニマムズという存在を認識すらしていない。

 だが、《看破》を極限にまで高められていたミニマムズはそのステータスを見て、決定した。

 この姿になろうと。

 このステータスになろうと。

 このスキルを得ようと。

 この性格で生きようと。

 この遺伝子を残そうと。

 

 そして、そのドラグヴォルトの血筋を残してやろうと、種の存続をしようと、ミニマムズからしてみれば善意だけの行為がドラゲイルという忌まわしき存在を作り上げたのであった。

 

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