<Infinite Dendrogram> 王は今日ものんびりと自殺する   作:そらからり

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正直に言います。
未だ【魔法☆少女】のルビを考えていません。
そろそろ考えておかないと……ここはシンプルにいくか?


51話 残りの人数

■【魔法少女ω】クリアント

 

「……そんなことで」

「うん。そんな理由でドラゲイルはこの山に……【魔法☆少女】を決める儀式の付近に棲みついたんだよ」

「難儀な性格……いえ、性癖なんでしょうか。クャントルスカ達にとったら迷惑以外の何物でもないのでしょうけれど」

「うーん……一概にそうとは言い切れないんだけどね。だって、私達魔法少女の使命じゃない? 悪い敵と戦うのって。それが、【魔法☆少女】になってすぐ戦える相手がいるのはこっちとしても好都合!」

「あー……こっちにも難儀な性癖の人がいました」

 

 ドラゲイルについて。

 そして、ドラゲイルと【魔法☆少女】についてクリアントとワンプは一通り聞くことが出来た。

 

「まあ、ひとまず儀式の方を進めていきたいところですよね。残りが何人なのか分かりませんけども」

「あれ? コンパクト持っているよね?」

「え、あ、はい」

「コンパクトはワンプが持っているんだっけ?」

 

 変身の時に使い、その後は開始時に中央のボタンを押した。

 その後はワンプに預けて、そして……

 

「いえ、私がテリトリーになった時に先輩の腰に下がるようになったんですよ」

「あ、そうだったのか」

 

 腰にコンパクトが下がっても、その重みに気づかない。

 それもまた、クリアントのセンスの無さがうかがえる。

 

「んー、これか」

 

 腰に下がっていたコンパクトを取り出す。

 開こうとして……刻まれた様々な傷に気が付いた。

 

「……あれ?」

「あっ……壊れていますね。どの時でしょうか。毒の効かない魔法少女か、ドラゲイルの雷、あとはカマイタチか……」

 

 思い返せば全身に攻撃を浴びさせられていた。

 クリアント自身が即死するようなダメージを受けて、その装備品が無事なはずがなかった。

 

「あれ……ということはもしや……」

「……確かルールの中にあったな」

 

 ルールその4、コンパクトを破壊されてはいけないに抵触する。

 この時点でクリアントの敗退は決まった。

 

「……まあ、別にやることは変わらないか」

 

 だが、それでこの儀式から追い出されるということは無いのだろう。

 未だ森の中で戦い続けられていることから、【魔法☆少女】に至る資格を失っただけのようだ。

 

「あはは。残念だったねクリアント君。せっかくのチャンスが」

「いや、別に最初からなる気はなかったし……それに俺がなると困るのはそっちだろ」

「まあ、そうなんだけどね! クリアント君達には協力して欲しいだけだから。今のままで良ければ、このままお願いしたいな」

 

 コンパクトはすでに効力を失っているようだ。

 クリアントが魔法少女の力を使えてはいるため、失っているのはこの儀式における機能のみのようだが。

 

「じゃあ、私のコンパクトを見てみて」

 

 クャントルスカが取り出したコンパクトの鏡、そこには5という数字が映し出されていた。

 

「これが残りの魔法少女の数だね。結構減っているみたい」

 

 クリアントが数に入れられないとすれば、残りはクャントルスカ、フィリップ、そして他の魔法少女が3人なのだろう。

 

「間違いなく生き残っている魔法少女はプシュケーちゃん」

「強いのか?」

「うん。間違いなく有力候補だよ。【魔法☆少女】に相応しい魔法少女。魔法少女らしい魔法少女だね」

「TYPE:レギオンのエンブリオを使うのよ。ワルキューレと呼ばれる少女を使役する能力ね。その1人1人が強いから、相手するなら魔法少女数人と同時に戦うと考えなくてはいけないわ」

「プシュケーちゃん本人も槍捌きは一流だよ。うん……もしかしたら儀式が終わる前に紛れ込んだドラゲイルを倒しちゃっているかもしれないね」

 

 クャントルスカにここまで言わせるほどの魔法少女。

 森の中で出会わなくて良かったとクリアントは胸をなでおろす。

 

「他の2人のうちの1人も目星は付くね。【魔法少女δ】P助ちゃん」

「ああ……あの子。そうね、彼女ならまだ逃げ延びている」

 

 逃げ延びている。

 生き残っているや、勝ち残っているではなく。

 逃げていると彼女らはそのP助という魔法少女を評した。

 

「逃走能力が異様に高くてね。この森を覆っている結界もその子対策なんだ」

「前回は隣国にまで逃げられてしまってね。儀式は中断されちゃったわ」

「……それでもここに集めるまでは出来たのか」

 

 それだけ聞くと戦いが嫌いな人物に思える。

 ならば、そのまま儀式に参加せず、どこかでひっそりといればいいものだが。

 

「P助ちゃん以外の【魔法少女δ】を連れてこようとしたんだけど、いつの間にか儀式の参加登録だけはされちゃって」

「ほら、自分はなれないけど誰かに譲りたくないって気持ちよ。中断し続ければ、少なくとも【魔法☆少女】は空位のままだから」

「とんでもなく性格捻じれていますねー」

 

 戦いたくない、だけど誰かが【魔法☆少女】になるのも許せない。

 それはなんとも……

 

「あまり魔法少女らしくない考え方だな……」

「お、クリアント君も魔法少女が分かってきたね! うん、そうなんだよ。そういう考え方は魔法少女の敵とか、魔法少女を妬むクラスメイトとかの役割だよね」

「いや、そこまでは分からないけど。だけど、そいつがいるからクヤ……クーはこの結界を張っているのか。……負担大きくないか?」

「うん。おかげでMPのほとんどを持っていかれてる。必殺スキルも使えないんだよね」

「ただでさえエンブリオが潜伏向きなのに、最近手に入れたらしい特典武具がそれに拍車をかけているみたい。視覚、聴覚どちらも彼女を捉えることは出来ないわ」

「……そうなると、手分けしたところで発見するのは難しいか」

 

 そのような魔法少女が特典武具を手に入れていることにも驚きであるが。

 ともあれ、残したままでは後々面倒だ。

 最悪、漁夫の利を頂かれてしまう。

 

「ふむふむ。話は聞かせてもらったよ。それは実に私向きじゃないか」

 

 そう言いながら現れたのは、全身泥で汚した魔法少女……フィリップであった。

 衣装が泥をモチーフにしているのではなく、単純に汚れているようだ。

 元は綺麗な青色をしていた。

 

「あ、フィリップさん! 私の真似っこですか!?」

「ははは。違う違う。少しばかり水に包まれて地面を転がっていたからね。着替え直すのも出来ないからこのままになっているのさ」

 

 目ざとく見つけたワンプをいなしながら、フィリップは自身の胸を叩く。

 

「その魔法少女、私に任せてくれ。隠れているものを見つける……それは私の得意分野だ」

「へえ……クリアント君、問題ないかな?」

「ああ。そうだな……確かにフィリップになら可能だ」

 

 見えず、聞こえず。

 完全に隠れている魔法少女であるようだが、その程度であるならフィリップは簡単に見つけてくれるだろう。

 

「おっけい。なら私たちはプシュケーちゃん達の方に行こうか。そっちの決着を付けにいこう」

「もう1人、魔法少女がいるようだが……それは俺が受け持つか。時間稼ぎくらいならやり遂げよう」

「え、倒すとか言ってくださいよ。この流れで時間稼ぎとか言われるとエンブリオの私が恥ずかしいんですけど」

「俺のこの森でのキル数」

「うーん、何も言えません」

 

 P助とやらをフィリップが、プシュケーをクャントルスカが。

 5人のうち最後1人をクリアントがどうにかする。

 どうにかとは、クャントルスカに不意打ちをされないように気を引くだけであるが。

 

「あ、フィリップちゃん」

「ん? なんだい」

 

 すでにP助の所在は掴んでいるのか、フィリップは迷うことなく森を進もうとしている。

 それをクャントルスカ止め、尋ねた。

 

「ちなみにだけどコンパクトは無事だよね?」

 

 その前提は聞かなくてはならない。

 これでフィリップのコンパクトが壊されていては、把握している人数が狂ってしまう。

 

「勿論だとも。こうして、傷一つ無く所持しているよ。残りの人数は……6とあるね」

「え?」

「え?」

「は?」

「おや?」

 

 フィリップの見せるコンパクトに映る数字。

 そこには6と記されている。

 

「……うん? 故障か?」

 

 そして、5になる。

 誰かが死んだのか。

 そして、タイムラグがクャントルスカのコンパクトとフィリップのもので起きていたのだろうか。

 それならば、まだ良かっただろう。

 すでに解決した案件として忘れることが出来た。

 

「また増えた。6になったよ」

 

 だが、すぐに6へと数字は増え、そして数秒後には5となる。

 

「……何が起きているんだ?」

「……分からない。初めてだよ、こんなこと」

 

 まだ儀式は終わっていない。

 最後まで立ち上がっている者が誰なのか。

 そもそも、今生き残っている者が誰なのか……何人いるのかすら把握が困難となってしまった。

 

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