<Infinite Dendrogram> 王は今日ものんびりと自殺する 作:そらからり
原作様が更新なされてるー
■【魔法少女α】クャントルスカ
誰も残っていない。
フィリップも、プシュケーも倒れた。
クリアントもどこかで戦っているのだろうが、相手は恐らく狂ヶ咲夢味。
出会った者は死ぬと言われている魔法少女。
無事で済むはずがない。
しかし、コンパクトに映る魔法少女の数は1。
クャントルスカ1人だけ。
夢味は倒されたのだ。
それだけでも、クリアントは仕事を果たしたと言えるだろう。
「モーちゃん!」
「……見つけた。ええ、分かったわ」
隠れていたモーちゃんがどこかへと飛んでいく。
森の中身を覗いている彼女に見つけられないものはない。
好きな相手なら尚更。見つけられないはずがない。
ここからはクャントルスカの番だ。
ここまで協力してくれた魔法少女達全ての夢を背負い、ドラゲイルを倒す。
『魔法少女! 貴様らは何なのだ! 次から次へと湧きおって。羽虫の如く矮小な存在が! 斯様に我を苦しめるとは!』
「私たちはただの女の子。夢を追いかけ、夢に憧れ、夢を叶える。魔法少女だよ!」
『訳の分からぬことを!』
訳の分からないはこちらの台詞だ、とクャントルスカは不思議に思う。
魔法少女とは可能性の塊であり、何にだってなれる原石でありながら、しかし完成形の一つでもある。
『決着だ。貴様らとの戦いに決着を付け、そうして我は魔法少女を倒した真の邪竜となろう』
「うん、そろそろ決着を付けよう。ドラゲイル……邪竜である君を倒して私は【魔法☆少女】になる」
片や【魔法少女】系統のジョブの一つを極めただけの回復力が取り柄の少女。
片や雷を除く他全てのスキルを封じられたドラゴン。
しかしステータスでは差はまだある。
『我の最初の力が雷であるぞ! それが健在ならば、貴様如き!』
クャントルスカの頭上から3本の雷の柱が立つ。
それを躱しながら、クャントルスカはドラゲイルの全体を見る。
「……まだ。……まだ好きになりきれない」
ドラゲイルとプシュケーとの戦いを見て、ドラゲイルの長所を知ることが出来た。
能力の多彩さもさることながら、その諦めの悪さには目を見張るものがある。
己を邪竜と名乗り、そこに芯を決めている。
「足りない……中身は……うん、好きになれた」
性格の一部にでも好きになれる部分があれば、クャントルスカはそこを取っかかりに相手を好きになれる。
「見た目が可愛くないなぁ……」
黒く、雷を纏うドラゴン。
可愛らしさの欠片も無いだろう。
「見た目をもう少し可愛くできればなぁ……」
今のままでは好きにはなれない。
だが、クャントルスカ1人ではどうすることもできない。
出来るが、1人では出来ない。
「……でも、やるしかないよね」
クャントルスカはスキル《中間透出》を発動し、ドラゲイルの体内を見通す。
人間の構造とは異なるドラゴンの骨格。
どこが脆く、どこが弱点であるのか分からない。
筋肉の付き方も人のそれとは全く違う。
『どこを見ておる』
それに加え、ドラゲイルは雷を主体とする戦い方をする。
肉体の動かし方や、筋骨格を覗いたところでどうしようもない。
「勿論、君のことだよ!」
『抜かせ! 《喝采罰》』
雷の槍が宙に作り出される。
3本の槍がクャントルスカに狙いを定める。
「……迎撃は無理!」
ただダメージを受けただけであれば、すぐに回復も可能だろう。
槍を受け止め、受け流し、あるいはその身で受けきることが出来たならば、回復力任せで無理やりに突破も出来たかもしれない。
だが、ただの槍ではなく、雷で構成された槍。
触れただけで電流が体を焼き、【火傷】や【麻痺】となるかもしれない。
「うう……プシュケーちゃんは凄いな」
雷では無かったが、【麻痺】を付与する糸や風、爪全てを受けきってみせたプシュケーを思い浮かべる。
彼女はどうしていたか。
スウェーコンという特典武具があったとはいえ、彼女が持つ卓越した槍術や体術あっての回避だ。
クャントルスカに真似は出来ない。
「《ライフヒーリング》全開!」
ならば、クャントルスカにしか出来ないやり方。
回復任せに受けきってみせる。
部位欠損や状態異常すらもMPを注げば回復出来る《ライフヒーリング》を使い、槍を弾く。
途中で【麻痺】になり、神経や筋肉を電流で焼かれるが、それらも即座に回復する。
「……もう限界」
この後を考えれば5秒しか使えない全力の回復。
それでも、耐えきってみせた。
『《憔悴罰》』
ドラゲイルの背から落とされた雷が何もない地面を伝う。
「――っ!」
それらは一帯の地面全てに走り、触れた生物全てを焼き尽くす。
慌てて飛び上がったクャントルスカを待っていたのは雷を模したドラゴン。
『《偽造罰》』
雷竜が顎を開きクャントルスカを飲み込もうとする。
空を飛べても咄嗟に避けることが出来ない。
「……プテアリス。《外様》!」
特典武具である【外内時計 プテアリス】の第一スキル《外様》を発動する。
注いだMPの時間だけ外界から隔離されるスキルだ。
《ライフヒーリング》よりは消費するMPが少ない。
それにより、雷竜が通過するのをやり過ごす。
『これも駄目か。ならば次は――』
いくつもの罰がクャントルスカに降り注ぐ。
そのたびに手札を切らされ、失っていく。
「……これ以上は」
ドラゲイルが己の爪に黒雷を纏わせる。
クャントルスカを切り裂こうと、振り下ろす寸前――
『っ!?』
――ドラゲイルの背が爆発した。
その威力は如何にタフなドラゴンであろうとも無視できないダメージがあったのだろう。
ドラゲイルはすぐに後退し、何が起きたかを警戒するように探る。
「あれで殺し切れなかったか。だがまだ……弾はある」
『……ぬうぅ。貴様か! まだ生きておったとはな……クリアントぉぉ!』
木々の影から走ってきたのは魔法少女であって少女でない男。
そして、ドラゲイルの頭上にはモーちゃんがいた。
森の中からクリアントを見つけ、ここまで連れてきた。
近い位置で戦っていたとはいえ、その短い時間すら致命的な程に危険な状態であった。
だが、それももう終わりだ。
間に合った。
「呪術師のスキルで気配を消していたがもうバレるとはな」
「クリアント君! 間に合ったんだ!」
「遅くなってすまないな。毒を解除するのに手間取った」
「……? よく分からないけど大丈夫! それでね、さっそくなんだけど……」
「分かっている。時間稼ぎくらいやり遂げてみせよう」
それはつい先ほども聞いた台詞。
だが、今はあの時よりも頼もしく聞こえた。
「何度目だか分からないが、ドラゲイル……もう逃げるなよ?」
『……! 逃げていたのは貴様であろう! 殺せども、殺せども、何度も我の前に立つ貴様は魔法少女でも英雄でも無しに! ただの凡百いる人間風情が、我の手を何度振りかざさせる!』
「さあな。生憎と、殺しても立ち上がれるのが俺の取り柄だ」
すでに観察は終了している。
残されているのは、どうやれば好きになれるか。
ドラゲイルという邪竜を可愛くする方法をすでに思いついてはいるが、クャントルスカ1人では手が足りなかった。
1人でも良い。
囮か、反撃の隙を与えない程の攻撃を可能とする者が欲しかった。
プシュケーのワルキューレが適任であったが、彼女らはドラゲイルのスキルを封じるのに必要であった。
何より、あの糸や風はクャントルスカの行動を大きく制限する。
雷のような直線的でないだけ、軌道を読みづらく、回避がしづらい。
だから、クャントルスカは感謝する。
プシュケーという魔法少女に。
本当を言えば、必殺スキルを発動する時にプシュケーには傍にいて欲しかった。
最後の決戦時に、大好きな彼女もいれば、きっと必殺スキルの発動効果内にいただろうから。
「1分でいいよ。クリアント君、その時間だけでもドラゲイルを翻弄できる?」
「……ああ! 勿論、1分と言わずに倒してしまってもいいんだろう?」
出来るものなら、と言おうとしてクャントルスカは口を閉じる。
実際に先ほどの爆発を何度もドラゲイルにぶつければ倒せるかもしれない。
あれだけでドラゲイルの膨大なHPを1割も削っている。
「……じゃあ、勝負だね。私とクリアント君のどっちが先にドラゲイルを倒すか」
「おう」
きっと、クャントルスカがその勝負に勝った時、クリアントは勝者の姿を見ることが出来ないだろう。
だって、モーちゃんがクリアントに対して好意を抱いているのだから。
いや……もしかしたらと思う。
【魔法少女ω】でありながら健在であるクリアントは分身か何かをつくることで瀕死級のダメージを回避している。
それならば生きている可能性も……無いだろう。
ダメージ量など関係ない。
殺すためのスキル。それが必殺スキルだ。
スキルを封じたり、風を起こしたり、そういったものとは一線を画すクャントルスカの必殺スキルから逃れる術はない。
「……好きだよ」
クャントルスカの小さな声はクリアントに届かない。
ただ、モーちゃんだけがそれを聞いて微笑んだ。
おれ、この章が終わったら登場人物一覧つくるんだ
魔法少女に関する設定が作ったはいいけど出せてないのたくさんある