六年前を覚えている   作:海のハンター

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遅れての投稿ですみません。

今回の話の都合上26話の時間帯を朝から昼に変更しました。
やっぱりストックはあった方が良いですね、いつでも修正できますしw

後、作品の紹介文を大きく変更しました。理由はここまでこの作品に付き合って頂いた皆様には分かると思います。


27話 『物語は知らない所で始まる』

 

 辛いテストを何とか一夜漬けで乗り越え、後は来る夏休みまで小銭を稼ぐだけだと思っていた。

 

 そんなここ最近交友関係が異常に広まった赤い髪に中性的な顔を引き立たせるマッシュヘアーの少年相沢綾人(あいざわあやと)はスタジオの掃除を終えロビーに帰って来た。

 

「まりなさん掃除終わりましたよ」

 

「綾人君お疲れ様。今日はRoseliaの練習を見るんだったね。彼女達もうラウンジに居るみたいだしもう上がっていいよ」

 

 二〇歳ぐらいの黒のショートヘアの女性、月島(つきしま)まりなは誰よりもCiRCLEの事を考えその上後輩からは一番慕われている。

 相沢もシフトに入る度に月島から面倒ごとや厄介ごとを押し付けられているが彼女を慕っている。ただ口に出せば付け上がるため口が裂けても話はしない。

 その彼女の押し付けた面倒事の一つがRoseliaの指導だ。

 初めこそ面倒だと思っていた指導だったが着々とレベルが上がる彼女達の姿を間近で見るのは今まで味わったことのない達成感があった。

 それは同時期に指導することになったもう一つのバンドAftergrowも同じだ。

 

 今になって思えば月島からバンド指導と言う面倒事を押し付けられなければ親友の上坂が幼馴染と再開することはなく、そして相沢自身もバンドを組むなんてことはなかった。

 そう思えば感謝はある。少し程度の面倒ごとなら喜んで引き受けようとさえ思う。

 

「まりなさん最近元気が無いみたいですけど何かあったんですか?」

 

 元気を振る舞う月島だが最近明らかにため息の数が増えている。

 

「綾人君も気づいてると思うけど最近お客さんの出入りがね……。こんな調子で今度のイベント成功するのかなーって」

 

「イベント?」

 

「あれ? 綾人君、オーナーからイベントの話し聞いてない?」

 

「聞いてないです」

 

「それじゃ、私から説明するね。このライブハウスは元々、オーナーがこの辺りで活動しているガールズバンドを応援したくて作ったものなのは、知ってるよね」

 

「まぁ、そりゃあ」

 

 オーナーがCiRCLEに来るのはとても珍しく、相沢も片手で数えれる程しか会った事がない。つまり月島が殆どオーナーの代わりに取りまとめていると言っても過言ではない。

 

「それもそうだよね。だって綾人君、面接の時に下心丸出しに『俺は女の子と仲良くなりたいんです』って言ってたよね。やったね、君の言った通り今じゃ女の子に囲まれるハーレムだよ」

 

「まりなさん、俺そんな事言ってませんよ。俺がここで働いてるのも空いた時間にタダでスタジオを貸して貰えるからですよ」

 

「確かそんな理由だったね。綾人君が女の子にモテモテだからすっかり忘れてたよ。でも、綾人君、動機通りスタジオをタダで使えてよかったね」

 

「あいつらのバンド指導って言う名目ですけどね」

 

 初めのうちこそはバンド指導にバイト代を別に請求した事もあった相沢だが、月島に、タダでスタジオを使う上に美少女達の指導をするんだよむしろバイト代を引いてもいいぐらい、と反撃しようのない理由を言われ論破された。

 

「もぉ、綾人君をからかうのが面白いから話がそれちゃったよ」

 

「それって俺が悪いんですか?」

 

「ハイハイ言い訳は良いから説明するね」

 

「言い訳って……」

 

 相沢は言いたい気持ちをグッと抑え込む。

 

「それでイベントって言うのは、今度ガールズバンドを集めたライブイベントをやることになったの」

 

「それは良いですね華があって」

 

「うんうん、綾人君なら分かってくれると思ったよ」

 

 少女達がステージで輝く姿が想像できているのか調子よく月島は話していたが、思い出したかのようにため息を吐く。

 

「でも肝心のバンドからの応募が一つもなくてねえ……ライブハウスとしての知名度もイマイチな状況じゃ、まぁ、当然なんだけどね。ねぇ綾人君、綾人君のひろーい人脈で何とかならない?」

 

「何とかって言われましても……」

 

 人脈が広いと言われれば嘘になるが、いくつか当てはある。

 相沢はスマホを取り出し電話をかける。

 

「こんにちわーっ!」

 

 運がいいのか入ってきたのは猫耳少女の戸山香澄(とやまかすみ)

 そして運がなかったのか相沢が電話をかけた相手だ。

 

『あっ、携帯がなってる。……もしもし戸山です』

 

『おれおれ』

 

『綾人くんおはよう』

 

『おはようって、もうすぐ昼だけどな』

 

 電話で会話をしながら正面の戸山に手を振る。

 

「誰? 綾人君の知り合い?」

 

 隣の月島は猫耳少女について尋ねる。

 

「あいつは戸山香澄(とやまかすみ)、バンドをやってる当て(いち)です」

 

「流石は綾人君、ハーレムを作ってるだけあって女の子の知り合いがすぐ見つかるんだね」

 

『綾人くん、何の話をしてるの?』

 

『実はな……』

 

「はー、はー……やっと追いついた……」

 

 勢いよく入ってきたのは金髪ツインテールの市ヶ谷有咲(いちがやありさ)だ。

 市ヶ谷は入ってきては体力が枯れたのか膝に手を付き深い息を吐く。

 

「まったく、ほんっとに言うこと聞かねーやつだな。……お前ら何してんだ?」

 

「今綾人くんと電話してるの」

 

「そんなの見たら分かるつーの。私は何で目の前にいる相手と電話してるのかを聞いてんの?」

 

「そんなのノリに決まってるだろ?」

 

「ノリって何なんですの⁉」

 

 市ヶ谷は相沢の顔を見ては表情が引きつり、言葉遣いも表と裏二つが混り変わった話し方になる。

 

「もしかして俺の事覚えてない?」

 

「覚えてるに決まってるだろ⁉ お前ってあれだろ?あいつと同じバンドの奴だろ?」

 

「お前って言うけど、俺の名前は知ってんのか?」

 

「…………」

 

 市ヶ谷のメッキで作られた自信は跡形もなく崩れ落ちた。

 

「そんな事言うお前は私の名前知ってんのか⁉︎」

 

「市ヶ谷有咲だろ? 因みに俺は相沢綾人、覚えとけよ。……はぁ、有咲はやっぱり澪の事しか見てないんだな」

 

「やっぱりってなんだよ! それにあいつの事なんか見てねー、私はあいつのピアノを見てんだよ!」

 

「分かったから落ち着けって」

 

「ちくしょー! やっぱりあいつの周りはろくな奴がいねー!」

 

 子供をあやすようななだめ方をする相沢に市ヶ谷は頭を掻き回した。

 

「お楽しみのところ悪いんだけど、綾人君からライブの事聞いてみてよ」

 

 一人そっちのけになっていた月島はタイミングを見つけて会話に入る。

 

「そういえば香澄、さっきの話なんだけど、うちが主催のライブイベントに出ないか?」

 

 戸山が答えを返す前に自動ドアが開いた。

 

「香澄、有咲、やっと見つけた。って、綾人までどうしているの?」

 

「どうしてってここ俺のバイト先だし」

 

 入ってきたのは栗色の髪を後ろに一本結んだポニーテールの少女、山吹沙綾(やまぶきさあや)だ。

 戸山が背負っているギターケースを見た時点で練習後か練習前と予想していたためいずれ来る事は予想していた。

 山吹の後ろからは他にも二人、ショートボブの牛込(うしごめ)りみと腰まである長い黒髪の花園(はなぞの)たえも続けて自動ドアを通り過ぎる。

 

「へ〜、ここがCiRCLEかー」

 

「知ってる風に言ってるけど、俺はここでバイトしてるなんて一言も言ったことがないからな」

 

 働いてるところを見られたくない相沢はバイト先の話をする事は殆どない。すると言えどバイト先を知るバンドメンバーだけだ。

 相沢がCiRCLEでバイトをしてるなんて知ってるはずがない。

 つまり裏切り者がいると言う事だ。

 とは言えそこまで深く考える必要はない。

 犯人は二択まで絞り込んでいる。

 口の軽い四季か失言の多い上坂のどちらかだ。

 

「それで香澄はどうしてそんなに興奮してるの?」

 

「なんか相沢が私達にライブイベント出てくれってさ」

 

「さーや、出ようよ!」

 

「ん〜、出るにしても詳しい話を聞かないと……」

 

「詳しいも何もCiRCLEの存亡を賭けたガールズバンド限定のイベントライブに出て欲しいって話し」

 

「そんな大事なステージ、私達なんかが出てもいいのかな?」

 

「りみ、大丈夫。私達はあのSPACEのステージで演奏をしたんだよ。自信を持って私達なら出来る」

 

「そうだぞ、おたえの言う通りお前達には資格はあるしCiRCLEの未来と俺の財布を預ける価値もある」

 

 先週、彼女達poppin'party通称ポピパはガールズバンドの聖地SPACEでのライブを乗り越えた。

 ライブ当日は勿論応援に駆けつけ、開演前から長蛇の列を並んだ事は記憶に新しい。

 

「綾人くんがここまで私達を信じてくれてるんだしみんな出ようよ〜!」

 

「……ま、こうなったら香澄は聞かないし、それに香澄の言う通り綾人がここまで私達のこと信じてくれてるみたいだしね」

 

「サンキュー……」

「ありがとう! 助かるよ! ライブの練習には、うちの併設スタジオを使ってくれていいからね」

 

 返事をしようとする相沢を月島が押しのけて喜びを表す。

 

「……まりなさん、今の所は俺が感謝を伝えて友情を深める場面ですよね?」

 

「彼女達が参加してくれるんだからそんなのどうだっていいじゃない? それに彼女達の相沢ハーレム入りを阻止したんだし私、ファインプレーじゃない?」

 

 月島は笑顔を浮かべ両手でピースサインを作る。

 

「相沢ハーレムなんてそんな幸せな組織俺は知りません」

 

「構成メンバーは十人!」

 

 AfterglowとRoseliaの事を指しているのだが構成員の一人と思われる上原は彼氏持ちの為実質構成メンバーは九人。

 

 先のやり取りで上昇中だった相沢の好感度も月島の一言で、市ヶ谷と山吹は引き、牛込は怯える始末となった。

 

 

 

 相沢、月島、ポピパの五人は練習用スタジオにいる。数分まで相沢が掃除をしていたと言う事もあり中は目立った汚れはなかった。

 

「……で、つまり、出演者が私達以外決まっていない、と」

 

 イベントの詳しい話を聞いた市ヶ谷が呆れた表情を浮かべる。

 

「あ、あはは〜……それで、よければ綾人君と一緒に他のバンドのスカウトを手伝ってくれないかなー、なんて……」

 

 月島は申し訳ない気持ちを冗談ぽく笑って誤魔化す。

 

「バンドの目処はついているんですか?」

 

 山吹は尋ねる。

 結成して間もないポピパにはバンドの繋がりは小さくとてもライブを開けるだけのグループを集めれる自信がない。

 

「それについては綾人君だよりなんだ。なんせ彼顔が広くて……特にガールズバンドの。彼がいたから君達とも仲良くなれたしね」

 

「まりなさん、ハーレムキャラを定着させるのやめてもらえませんか?」

 

「いいじゃんハーレム、男の子の憧れでしょ?」

 

「確かに憧れですけど、『俺、ハーレムなんだぜ』って自分から言うのは痛いです」

 

 普通の男子高校生より女の子に囲まれている自覚はある。

 ただそれはバンドの指導者やクラスメイトという立場なだけであってその立場がなければ女の子とはまず関わる事がないと相沢は思う。

 

「それで綾人、候補の目処はあるの?」

 

「俺が用意できたのは三バンド、一つはお前達ポピパ、あと二つは俺が練習を見てるRoselisとAfterglow の二つ」

 

「綾人君ならもっといけるんじゃない? Pastel*Palettesとかハロー、ハッピー、ワールドとか」

 

「だからまりなさんは俺をなんだと……パスパレなら友達に頼めば何とか……」

 

 バンドメンバーの渡辺が本格アイドルバンドPastel*palettesのバンド指導をしている。

 

「やっぱり顔広いじゃん。それじゃあみんなには早速綾人君と一緒にRoseliaのスカウトに行ってほしいんだけど……」

 

「もっちろん、手伝いますよっ! ……でもどうしてRoseliaから何ですか?」

 

 戸山も相沢の知り合いから誘う方が誘いやすいのは分かる。しかしそれなら同じ知り合いのAfterglowからでもいいだろう。

 

「彼女達、もうすぐスタジオを使う時間でね、今、外のラウンジにいるの」

 

「だったら早く行かなくちゃですね」

 

「私も行きたい。私、いろんなバンドに出会ってみたい」

 

「だよねたよね!」

 

「彼女達、すっごくストイックで真面目で自分達の納得出来るステージじゃないと出演しないんだけど……その辺りは綾人君がいるし問題ないよ」

 

 指導者であり親しい関係の相沢が参加すると言うことだけで成功率は格段に上がる。親しいはともかく指導者と言う肩書きが大きい。

 

「それじゃ、綾人くん、おたえ一緒に声かけ行こ」

 

 相沢は手を引かれ半ば引きずられる形でスタジオを出た。

 

 

 

 相沢がラウンジに上がるや長い銀髪の少女が不機嫌な顔で迎える。

 

「綾人、何をしているの?」

 

 彼女は湊友希那(みなとゆきな)。絶対的な歌唱力を持つ歌姫。

 

「綾人の周りにはいつも女の子がいるよね」

 

「リサさんまで俺をハーレムキャラに定着させないで下さい」

 

 湊の隣の席に座る茶髪のギャルのような風貌の少女、今井(いまい)リサが相沢の両サイドを見て楽しそうに笑う。

 

「ハーレム? あっははー、いいじゃん。なら私達Roseliaも相沢ハーレムのメンバーなのかな?」

 

「えっと、……それは……」

 

「今井さん、冗談だとしてもやめて下さい。戸山さんに花園さん、二人ともその人から離れた方が賢明です」

 

 困っている相沢を助けた船はとんだ泥船だった。

 

「紗夜が知ってるって事は花咲の生徒? 紹介してよ〜!」

 

 長い水色の髪の少女、氷川紗夜(ひかわさよ)は相沢から離れた二人を紹介する。

 

「一年後輩の戸山香澄さんに、花園たえさんよ」

 

「紗夜ー、あと一人残ってるよ〜」

 

「はぁ、後もう一人、相沢綾人さんです」

 

 氷川はうんざりした顔で答えるが、今井は嫌な顔をせずむしろ笑顔だった。

 

「よくできました〜。じゃあ次はアタシ達かな、アタシはリサ。ベースをやってるんだ」

 

 今井はボーカルの湊友希那(みなとゆきな)、ドラムの宇田川(うだがわ)あこ、キーボードの白金燐子(しろかねりんこ)を紹介する。

 

「それで、私達に何のようかしら? 私達これからスタジオに行くのだけど」

 

 話している限りファンではない事は想像できる、かと言って湊の通う高校、羽丘の生徒でもない。自分達と同じガールズバンドと言うのが一番妥当でそうなれば次第と要件が分かる。

 

「友希那さん、今度CiRCLEが主催するライブイベントに出てくれませんか?」

 

 Roseliaのバンドとしての完成度は高く、ライブイベントの誘いが来る事もしばしばある。

 

「イベント自体に興味がないわけではないけれど……、ただ、そのイベントに出てRoseliaに得るものはあるのかしら?」

 

 しかしその完成度の高さ故に彼女達は自分達のレベルにあったステージにしか立たない。

 

「俺がバンド練習と合同練習の両方を見ます。指導の回数が二倍になる事はRoseliaにとってもプラスになると思います」

 

 自意識過剰な説得ではあるが相沢にあるカードはこれ一枚しかない。

 

「綾人、それは最低条件よ。確かに綾人の言い分だと二倍にはなるけど、他のバンドもいる合同練習でいつも通りの指導ができるのかしら?」

 

「うっ、それは……」

 

 バンドが最終いくつ集まるかは分からない。だけど、ライブイベントを開く以上最低でも五バンドは集まるだろう。ただそれを一人で見るとなると器用な相沢でも不可能だ。

 

「綾人くん……」

 

 戸山から不安の声が聞こえる。

 初めから当たって砕けろの精神であれば不安になる事もないのだが、月島が『大丈夫』と言った手前、断られた時のダメージは大きい。

 

 せめてもう少し人がいればゆっくり時間を割く事が出来るのだが、CiRCLEのスタッフにRoselia程のバンドを指導出来る人材が相沢以外いない。

 

「あっ!」

 

 指導者がいなければ参加バンド同様見つければいい。

 幸い相沢の周りには音楽レベルが高い人が集まっている。

 使わない手はない。

 

「綾人、急に勝ち誇った顔をしてどうしたの? 残念だけど私達は……」

 

「友希那さん、Roseliaのみんなを満足させる程の指導者が他にもいたらこの話引き受けてくれますか?」

 

「どういうことかしら?」

 

 湊の顔つきが真剣になる。

 これは初めて話し合いの席に座った事を意味する。

 

「友希那さんも知ってると思いますけど、俺のバンドメンバーってどいつもこいつもすげー奴ばかりなんですよ」

 

「もちろん知ってるわ」

 

 Roseliaは相沢達4Cの演奏を知っている。

 白金から貰ったチケットで湊、今井、あこの三人も文化祭に招待されたからだ。

 

「それでそいつらもイベントに向けての指導者に入るとしたら? 俺は確かにギター、ベース、ドラムにキーボードの知識はあります。だけど詳しく教えれるのはギターとベースぐらいです。ドラムとキーボードに限ってはかじった程度、あこと燐子さんの方が断然上手いです。だけどそんな俺の苦手な二つを綺麗にカバー出来る奴がいたら?」

 

 狙ったように相沢の弱点を補う人物が上坂だ。

 

「それに他にもプロを相手に指導してる奴もいて……俺の力だけじゃなく、あいつらの力もあればRoseliaは大きく成長できます」

 

 三人からの返事は聞いていないが、相沢の中では参加は確定事項だ。

『バンドとは一心同体』この言葉は仲良し幼馴染バンドから教えてもらった言葉だ。

 

 わがままばかり言うバンドメンバーだ、偶にはわがままを言ってもいいだろう。

 

「綾人の言い分は分かったわ。だったらRoseliaの指導者に相応しいかどうか見させてもらうわ」

 

「見せるも何も友希那さん、俺達の力は知ってますよね?」

 

 湊が文化祭での演奏を見ていなかった事はない。

 何故なら相沢はステージの上から真剣にステージを見る湊を見つけていたからだ。

 

「そんなの知ってるわ」

 

「だったらどうして?」

 

 認めているにも関わらず首を縦に振らない湊に相沢は首を傾げる。

 

「綾人のバンドがRoseliaのライバルに相応しいかどうか見るためよ」

 

 意識の高いRoseliaがライバルと宣言するのは音楽一本でご飯を食べている人達ぐらいかも知れない。

 そんな湊の宣言に相沢は思わず言葉を失う。

 

「来週開かれるCiRCLEでのライブ、そこで綾人達の力を見せてもらうわ」

 

 言いたい事を全て言った湊は、椅子に座り氷が溶け切ったぬるいジュースを口に含む。

 

「こんな小っ恥ずかしいセリフは俺じゃなく澪の奴が言うんだけどなぁ……」

 

 相沢は湊の前に立ち赤くなった頬を指で掻く。

 

「見せてあげますよ! 俺達の力で、Roseliaを認めさせてあげますよ! 認め合って仲間になる、少年漫画みたいで熱いじゃないですか!」

 

 そして相沢は高らかに宣言した。

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