"四代目"Big Red story   作:シンバル・シャンシャン

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7話です。
間違って6話より先に投稿しちゃいました。
めっちゃ焦りました。
7話見ちゃった人は記憶から消して読んでいってください。


俺、皐月賞

弥生賞での敗北から一週間、俺に勝ったフジキセキは史実通り弥生賞の後に引退したそうだ。もうリベンジする事は叶わない。

 

次走は皐月賞、優先出走権を手に入れたので出ることにしたらしい。

 

史実での勝馬はジェニュイン、フジキセキと同じサンデーサイレンス産駒だ。フジキセキ程目立った印象は無いがG1を2勝している文句なしの名馬だ。一筋縄ではいかないだろう。

 

前走では力を出し切れずに負けてしまったので次の皐月賞では100%の力を出せる様に頑張ろうと思う。

 

……そろそろ調教の時間らしい、皐月賞に向けていつもより厳しめの調教だ。厳しいのは嫌いだが、これも勝つ為なら仕方ない。

 

重い腰を上げ俺はコースへと向かった。

 

 

 

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Sideクマさん

 

最近、イージーゲームの様子がおかしい。

 

何というかいつもに比べて調教に身が入っていないのだ。いつもなら、調教を始めるのを渋る事はあっても調教はしっかりこなしているのだが、最近は見た感じ真面目に取り組んではいるものの、常に別の事を考えているようだ。

 

イージーゲームは賢すぎる馬だ。自分がレースに出て勝たなければいけない事を知っているのだろう。だから弥生賞で敗北して以来、常にそれを気にして調教に身が入っていない。きっとそうだろう。

 

───競走馬にとって賢さは武器でもある。諸刃の剣だ。

賢い馬には2種類ある、賢い故に人の指示にきちんと従う馬と賢い故に人の指示に従わない馬だ。

 

イージーゲームの場合は基本的には前者だ。調教等では人の指示によく従ってくれる。しかし、レースになると別だ、イージーゲームは賢いが故にレースでどう走れば良いのかを考える。道中の位置やペース配分、仕掛けるタイミングを自分で決めて走ろうとして騎手の指示を聞こうとしない。スパートでムチを打てば反応してはくれるが、道中では指示を出しても無視をする事が多い。

 

正直、騎手としてはこれ程嫌な馬は居ない。自分で勝手にレースを運んで騎手の指示は殆ど聞かない、これでは上に乗る人間はただのムチを打つ重りでしかない。俺にも騎手としての誇りがある、何とかこの現状を打ち破らなければならない。

 

その為にも俺ももっとイージーゲームと信頼を得る必要がある。イージーゲームは賢い馬だ、俺が有能な騎手だと思わせれば必ず指示に従うようになる筈だ。

 

「俺ももっと頑張らなきゃなぁ…」

 

そんな俺の呟きは春風に吹かれて消えていった…。

 

──────────────────────

 

 

今日、此処中山競馬場で日本の牡馬クラシック三冠の1戦目である皐月賞が開催される。俺にとっては初の中央の芝G1だ。コンディションは特に問題は無い、前走で完敗したフジキセキも居ない。俺にも十分勝ち目はあるだろう。

 

………そろそろ返し馬の時間らしい。

 

 

 

 

 

 

 

『1枠2番アイムグローリー、前走からは+2kgの494kgです。2枠3番マイナスバレー、馬体重は前走と変わらず472kgです。2枠4番ムシカテイクオフ、前走からは-4kgの458kg

 

3枠5番マッシブパワー、前走からはなんと-12kg!馬体重は450kgです。』

 

『前走まで3連勝で乗り込んできました、弥生賞では同父のフジキセキが強い競馬を見せましたがこの馬はどうか。3枠6番ジェニュイン、4番人気です。馬体重は前走と変わらず490kg。』

 

『この馬もまたサンデーサイレンス産駒です。4枠7番タヤスツヨシ、本日の5番人気。馬体重は468kg、前走からは-6kgです。』

 

『4枠8番マニュアルモード、馬体重は476kg、-2kgです。』

 

『本日の1番人気です。5枠9番チクタクテイオー、馬体重は476kgです。』

 

『5枠10番シャトルジャンプ、馬体重は498kg。6枠12番ホシグマドウジ、馬体重は450kg前走からは-8kgです。7枠13番マイナスレイク、452kg。7枠14番ナンバーワン、496kg。7枠15番オゾンパニッシャー、434kg前走からは-6kgです。』

 

『今日の出走馬では唯一のG1馬、父はサンデーサイレンスのライバルであるイージーゴアです。ライバルの子供同士が国を変え、コースを変えて今再びぶつかります。今日の2番人気8枠16番イージーゲーム、馬体重は前走から+2kgの532kg、今日の出走馬では最重量です。』

 

『前走ではイージーゲームとフジキセキには届きませんでした。この大舞台でリベンジなるか。8枠17番ナンカイロック、3番人気です。馬体重は462kg前走からは-6kgです。』

 

『そして最後です8枠18番トーナメントカグラ馬体重は+6kgの460kgです。』

 

 

 

 

返し馬が終わってゲートインの時間だ。クマさんがいつもより重たい口調で励ましの言葉をくれる。クマさんも大舞台で緊張しているのだろうか?

 

そんなこんなでゲートに入る。

 

 

 

 

『全馬ゲートに入って────スタートしました!』

 

スタートを切る、いつも通り可も不可もないスタート。問題は無い。

 

『さあ先行争いまだ一線でありますがタヤスツヨシちょっと遅れます、そしてアイムグローリーも下がります。先行争いまず中をついてジェニュインが出てきた!ジェニュインが行きます、内からはマイナスバレーそれから外からはナンバーワン或いは間をついてチクタクテイオーも先行グループに加わる。そしてマニュアルモードの体勢更にその後のグループでありますが外をついてイージーゲーム5、6番手外目に回って上がって行きます、いつもより前目につけています。』

 

いつもなら後方に控える所だが弥生賞では結局前に届かなかった、なので今日はいつもより少し前につける。

 

『ナンカイロックはその後ろ、第1コーナーのカーブに入りまして内から僅かに3番マイナスバレー抜けました、そしてジェニュインが1馬身差の2番手の位置、チクタクテイオーがその外3番手に上がって行きました。後は内をつくマッシブパワー4番手、更にその外でありますがマニュアルモードが上がって行きます。そしてナンバーワン、第2コーナーのカーブに入りました。』

 

「イージーゲーム、いつも通り後ろの方で脚を溜めるんだ。位置取りやペース配分は俺が指示を出す。君は最後の直線に備えて集中力を高めるんだ。」

 

クマさんが何かを言っているがよく聞こえない。……それよりも、もう少し前につけた方が良いかな…。

 

『後ろ2馬身下がって中団でありますが外目外目16番イージーゲーム上がって行きます、中にホシグマドウジ、内はムシカテイクオフ。そしてその直後に2番のアイムグローリー、スタートしてからの1000mは61秒くらいで通過していきます。』

 

「………ッ!抑えろ!イージーゲーム!」

 

クマさんが手綱を引く。抑えろという事か?でも弥生賞の時みたいに届かないかもしれない…此処は抑えない方が良いんじゃないか?

 

『それからナンカイロックも中団のやや後方に上がって行きました。シャトルジャンプは大外を回ってこのグループ、その後方でありますがマイナスレイク、あるいはその外トーナメントカグラ、そして僅かに遅れてオゾンパニッシャー。最後方先頭からお終いまでは10馬身とありません。』

 

まだだ。もう少し前へ。

 

『殆ど固まった状態で3コーナーのカーブ、マイナスバレー、そしてジェニュイン、更にその外からイージーゲーム上がっていった。間チクタクテイオー、4頭広がっている。そしてその後方グループ、ナンカイロックが2馬身差の5番手の位置か、あるいはその間をついてムシカテイクオフ、マッシブパワーなど。』

 

結局そのままの位置で最終コーナーへと向かう。

 

『第4コーナーカーブ400の標識を切りましていよいよ直線に向いて参ります!3番のマイナスバレーが内、そして中をついてジェニュイン更にその後方からはどうだ!?外をついてイージーゲームは伸びるか!?間をついてチクタクテイオー!』

 

この位置なら俺の末脚で届く筈だ。脚に力を込めてスパートをかける。

 

次の瞬間、俺の体が加速する。

 

─────しかし、いつもの様な伸びは無い。

 

『さあ200を切ってジェニュイン先頭!イージーゲームは並んでいる!イージーゲームいつもの様な脚が出ない!外から17番ナンカイロックが追い込んでくる!するとホシグマドウジ…間からタヤスツヨシ!タヤスツヨシ!しかしジェニュインとイージーゲームには届かない!』

 

クッ……!ならばUSAスペシャルだ!!アメリカ魂見せてやる!!

 

しかし、体はこれ以上速くならない。

 

………ッ!!俺とジェニュインの差はほんの僅か、脚が伸びなくても気合で勝ってやる!!

 

『ジェニュインとイージーゲーム両者全く譲りません!馬体をピッタリ合わせて壮絶な競り合いを繰り広げます!!ジェニュインがやや優勢か!?』

 

────鉛の様に重い脚を我武者羅に前に出す、後ろは1馬身程ある、真横に居るコイツさえ抜かせば俺の勝ちだ。前走の様な思いはしたくない。

 

 

──絶対に勝つ──

 

 

その思いを糧に最後の力を振り絞った。

 

俺の体が更に加速"しかける"

 

しかし、

 

 

『ジェニュイン!イージーゲーム!ほぼ同時にゴールイン!!これは写真判定です!!!』

 

 

…………何とか、写真判定にまで持ち込めたが、最後もう少し早く加速出来ていれば確実に勝てただろう。

 

………過ぎた話をしても仕方ない、反省は帰ってからやるとして今は結果が出るのを待とう。

 

 

〜5分後〜

 

 

結果は───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───1着 ジェニュイン

 

 

 

 

 

…………どうやら、ハナ差で俺の負け、らしい……。

 

……何故だ、ジェニュインは確かに強い馬だが勝てない相手ではなかった、事実ハナ差まで追い詰めたのだから。

ならば、何故俺は負けた?俺には何が足りなかった?

 

 

……山都さんの話を聞く限り皐月賞で良い結果を出せたらダービーにも出走するらしい、今回2着だった事を考えるとほぼ確実にダービーには出走する事になるだろう。

 

…だが、今の俺で勝てるのだろうか?今の俺には競走馬として大事な何かが不足している…そしてそれを得ない限りUSAスペシャルも完成しないだろう……確証は無いが今日のレースを経て何となくそんな気がした。

 

 

ダービーまでは1ヶ月しかない、果たして俺にそれを見つける事が出来るのだろうか……。




はい。
惜しかったですね。
主人公に足りないものって何でしょうね。
次の話で分かると思います。
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