"四代目"Big Red story   作:シンバル・シャンシャン

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9話です。
日本ダービーです。


第62回 日本ダービー

────日本ダービー、それは日本中のホースマンにとっての夢であり俺達サラブレッドにとっては一生に一度しか出られない大舞台。このレースに勝てるなら引退しても良いと言う騎手がいる、このレースで勝って燃え尽きた馬もいる。この国で最も権威のあるレース、それが日本ダービーというレースだ。

 

日本ダービーは東京の府中競馬場で開催される日本でも歴史の長いG1レースで、距離は2400m、最後の直線の長さは500mを超える。直線が長いからか逃げ馬が勝つことは少なく、先行や差しの馬が勝つ事が多い印象だ。枠番2関しては内枠の馬が勝つ事が多い。俺は追込み馬だからあまり関係ないけどね。

 

その日本ダービーに、今日俺は出走する。史実の優勝馬であるタヤスツヨシは前走で負かしてる、皐月賞で俺をハナ差で降したジェニュインは本領を発揮出来るのはマイルから2000m辺り、対して俺は絶好調距離も血統的に問題は無いだろう。油断は出来ないとはいえ追い風は俺に吹いている、今日勝たずして何時勝てというのか。

 

クマさんはダービーだからかいつもより緊張していた。

不安じゃないかと言われれば不安ではある。しかし、信じて任せてくれと言われたのだから俺はクマさんを信じて指示に従うだけだ。

てか、他人の心配してる場合じゃないな…めっちゃ緊張する……。

そんなこんなでパドックも終わって本馬場入場と返し馬の時間だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さあ、やって参りました第62回ダービー、今日此処府中競馬場で最も運の良い馬が決まります。ダービーの栄冠を手に入れるのは一体どの馬なのか。まずは返し馬です。』

 

『1枠1番セイショウコウ、馬体重は466kgです。』

 

『1枠2番フラッシュサイン、馬体重は500kgです。』

 

『今日はこの馬が1番人気に推されました。2枠3番イージーゲーム、父も祖父もコースは違えど同じ距離で圧倒的なパフォーマンスを見せています。馬体重は前走と変わらず532kgです。』

 

『2枠4番マイナスバレー、馬体重は6kg増の474kgです。』

 

『3枠5番ブラインドスリー、馬体重は+6kgの432kgです。』

 

『3枠6番トーナメントカグラ、前走から大幅増の462kgです。』

 

『4枠7番マイナスレイク、馬体重は2kg減の450kgです。』

 

『4枠8番アクターリバー、馬体重は+8kgの468kgです。』

 

『5枠9番ハネダカイザー、今日の5番人気です。馬体重は4kg増の474kg。』

 

『5枠10番ナンカイロック、馬体重は2kg+の464kgです。』

 

『6枠11番マニュアルモード、前走から2kg減の474kgです。』

 

『6枠12番チクタクテイオー、馬体重は前走から+10kg、486kgです。』

 

『鼻に着けた白いシャドーロールは前年の3冠馬を彷彿とさせます。3冠のためにも此処は負けられない、7枠13番ジェニュイン、2番人気です。馬体重は8kg減の482kg。』

 

『皐月賞ではジェニュインとイージーゲームの3着に敗れましたが力は十分に見せてくれました。今日こそ主役になれるか、7枠14番タヤスツヨシ、3番人気です。馬体重は前走と変わらず468kgです。』

 

『7枠15番ナンバーワン、馬体重は496kgです。』

 

『8枠16番オールパワー、前走からは-14kgの大幅減、馬体重は420kgです。』

 

『8枠17番イカスミチョッキ、馬体重は440kg、今日の4番人気です。』

 

『8枠番ムシカテイクオフ、馬体重は4kg減の454kgです。』

 

『返し馬も終わってゲートインの時間です。』

 

 

ゲートに入るとクマさんに声をかけられる。

 

「今日こそは俺に任せてくれよ、イージーゲーム。必ずお前を1着にしてみせるからさ。」

 

もちろんだ。騎乗ミスなんてしたら一生口きかないからな、元から喋れないけど。

 

そうしてる内に全馬ゲートに入った様だ。いよいよ、日本ダービーがスタートする。

 

『今、全馬ゲートに入って─────スタートしました!』

 

『ドッと飛び出しました!さあ、殆ど揃った良いスタートを切りました、イージーゲーム良いスタートを切りました、オールパワー、ナンバーワン、中からハネダカイザーが出て参ります、そして内の方でフラッシュサインも好スタートを切ります。』

 

スタートは今までで1番上手くいった、そのため前の方に出てしまったがクマさんからは下げる指示が出されたので素直に従う。

 

『イージーゲームはどうやら下げるようです。抜けましたのはまずオールパワーそしてハネダカイザー、ナンバーワンの2番手争いそれから4番手にマニュアルモード、外をついてジェニュイン行きます。それからイカスミチョッキも上がって行きました、フラッシュサインは内に固まっています、チクタクテイオー、タヤスツヨシは中団の外目でナンカイロックが中におります。』

 

ジェニュインは前にタヤスツヨシは中団にいるらしいが気にするな、俺。他馬の動きはクマさんが見て指示を出してくれる手筈になっている、俺はクマさんを信じて指示通りに走るんだ。

 

『第1コーナーカーブし終わりまして、先手を取りましたのは16番のオールパワーリードは3馬身、2番手にナンバーワンが上がっています、そして2馬身半差ジェニュイン3番手か、内ハネダカイザー、マニュアルモード中、それからイカスミチョッキが外を回ってこれが好位グループ。』

 

そのまま目立った動きは無くレースは進んでいく。

 

『第2コーナーカーブから向こう正面の直線、その直後内を虎視眈々フラッシュサインが進んでいます、チクタクテイオーはその外折り合いがどうやらついた様です。そして、その後方にタヤスツヨシツヨシ、内は8番のアクターリバーという体勢、この辺り中団です。それからその内を回りまして6番のトーナメントカグラは上がって1400を切りました。62秒位で通過しています。』

 

1000mの通過タイムが62秒、いわゆるスローペースというやつだろう。

 

『その後方でありますがポツンと7番のマイナスレイクが後方から6番手、5番手の位置、イージーゲームはその後ろ、遅れましてセイショウコウは内、更にその外を回りましてマイナスバレーが進んでいます。後、後方から2番手の位置、外からブラインドスリー、そして最後方の位置を進んでおりますのがこれがムシカテイクオフか。』

 

かなり位置が後ろになったが俺の得意な位置だし、何よりクマさんの指示だ。問題は無い。

 

『第3コーナーのカーブに入って参ります、後1000m切りました、先頭からお終いまではおよそ18馬身位であります。』

 

『先頭を行きますオールパワー、ペースをとりまして1馬身半のリード、ジェニュイン早くも2番手に上がってきた、イカスミチョッキがピタっとこれをマークしている、そしてナンバーワンが内をついて、そしてこれから3、4コーナー中間地点にかかります。』

 

クマさんから位置を押し上げる様に指示される。了解だ。

 

『マニュアルモードが続いている、それからハネダカイザーもこのグループ、2番手集団の直後、それからトーナメントカグラなどアクターリバーもその外を上がって、タヤスツヨシは中団の外、第4コーナー1番外を回って上がってくる!そして後方からはイージーゲームが徐々に前との差を詰めています!』

 

徐々に前との距離を詰めて、そろそろだ。

 

『第4コーナーカーブから直線に向いた所で、一斉に広がりそうな雰囲気になってきた!』

 

最後の直線、クマさんのムチに応える為に脚に力を込め、スパートをかける。

 

『さあ、懸命に頑張っているオールパワーを交わしてジェニュイン!ジェニュインが先頭か!そして中をついてフラッシュサイン!フラッシュサイン突っ込んで来た!外にはイカスミチョッキ!3頭広がっている!そして大外をついてタヤスツヨシ!』

 

他の馬は気にしなくて良い、俺が見るべきはゴール板。あのゴール板に向かって自分の最高速度で走る、それだけだ。

 

速く、もっと速く、この直線を全身全霊で走り抜ける。

今はそれしか考えられない。

 

────自然と歩幅が広くなる。俺の末脚は更に加速する。

 

『ここでイージーゲーム、更に脚を伸ばします!先頭に立つ勢いです!!』

 

『前は広がったぞ、坂を上がって後200!イージーゲーム一気に先頭に立ちました!イージーゲーム更に突き放します!!』

 

まだだ、まだ足りない。どうせ勝つなら圧勝だ、俺はまだ止まらない。

 

『2番手争いは広がっている!ナンカイロックが上がって来るがジェニュイン食い下がっている!内はフラッシュサイン!そして大外からはもう一頭チクタクテイオー!しかし、先頭は遥か前方!イージーゲーム後続に7、8馬身程差をつけて今、ゴールイン!!2着はタヤスツヨシ!3着争いはジェニュインか!?』

 

───勝ったのは、俺だ。

 

『それにしてもイージーゲーム!圧倒的なパフォーマンスを見せてくれました!タイムは2分26秒ジャスト!着差はダービー最大着差タイの8馬身差です!!』

 

 

………まだ、走り足りない。体が熱くてたまらない。まるで、体の中を火の付いたガソリンが流れてる様だ。

 

俺が今感じている事……それは走る喜び、そして敵を打ち負かし勝利する喜び、その2つだ。

 

今だけは何も考えずにこの喜びを全身で表現しよう。

 

「おっと、随分嬉しそうだなイージーゲーム、雄叫びまであげてよっぽど勝ったのが嬉しいんだな。」

 

当たり前だ。俺は今初めて走る喜びを知ったんだ、ある意味でようやくサラブレッドとしてのスタートラインに立ったんだ。喜ばずにはいられないよ。

 

「どうだ?俺を信じて正解だっただろう?」

 

あぁ、全くだ。何も考えずに全力で走るのがこんなに楽しいなんて思わなかった。気づく事が出来たのはクマさんが俺をリードしてくれたからだ。クマさんを信じて良かったよ。

 

「……お前に乗れる俺はラッキーだよ。お前みたいなイカした馬、普通なら一生乗れないぜ。」

 

……日本ダービーは最も運の良い馬が勝つと言われてるがどうやら本当の事らしい、だって俺はこんなに素敵な騎手に出会えたんだ、これを幸運と言わずして何と言えばいいんだ?

 

 

 

 

 

 

 

表彰式も終わって帰る時間だ。

それにしても、良い表彰式だったな。クマさんはもちろん、山都さんや普段あまり笑わない酒田さんも皆がいつもより良い顔で笑っていた。やはり、皆にとってもダービーは特別なものらしい。

 

 

きっと、今日の事を俺はずっと忘れないだろう。

 

 




9話終わりです。
補足しますと主人公が走る喜びに覚醒めたのは、今まで人間らしい思考に抑えられてた馬としての本能が考えるのをやめた事で強く出た感じの設定です。
作者はレースや調教が嫌いな馬はいても、走る事自体が嫌いな馬はいないと思ってます。
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