【SAO】ハイドGMなのにJCプレイヤーにばれた件について   作:伊葉 翔

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6話 決断

「どうもお待たせしましたー!」

 マコトと共に店の扉を開けると元気の良い少女の声が出迎える。その少女の年齢はマコトと同じぐらいだろうか、髪はピンクで横に流したりはねたりと、声の通り元気の良さそうな雰囲気をこれでもかと言うほど醸し出している相手だった。

 あれからマコトが泣きやむのを待ち、鍵付き倉庫(セキュアボックス)を確認すると確かにあの首輪と注文書が一枚入っていたので、その注文書の店へと足を運んだ訳だが……。

「ども。それじゃあ続きを頼みますよっと」

 その注文書の店名はリズベット武具店、注文者名は『Alice』と書いてあるがマコトが聞いたイリオスのメッセージボックスによると、シェラに奪われた時の事を考えて偽名にしたそうだ。

 この注文書を店主でもあるリズベットさんに渡すと急に表情を険しくして閉店後に来て下さいと言われ、時間を改めて今に至る。

「それではこの注文者様の名前を読んで貰えますか?」

「注文者名はイリオス、受け取り主はセスだ」

 確認をされるが、これもマコトから聞いた情報通りだったので注文者名と受け取り主の名前をそのまま言う。

「承りました、少々お待ち下さいねー」

 どうやら問題なく承認してくれたようで、すたすたとカウンター裏の倉庫から真っ白な刀身の短剣を持ってくる。

「はい、これですねー。名前は『シャドウチェイサー』これもクリスタルライト素材なんで見るのは初めてなんだけど、手にとって確認して貰えますか?」

 リズベットさんの言われるがままに俺は白の短剣を手にとってステータスを確認する。

「すげえな……」

 基本スペックは今まで装備した短剣のどれよりも強く、これでもかというDEX(器用さ)AGI(素早さ)の基本ステータス補正に、急所突き(クリティカルポイント)やら不意打ち(バックスタブ)のソードスキルや姿隠し(ハイド)潜伏(ステルス)まで一通りスキル増幅(ブースト)される至れり尽くせりな短剣だ。

 それに武器の名前通り、装備中は常に姿隠し(ハイド)を見破れる効果と追跡(トラッキング)状態になると表記してあるが、実際どこまで見破れる効果があるのかは分かりにくく表記してあるのはMMOであるが故の醍醐味かもしれんな。ただ、こんなデスゲームで分かり易く表記していないのは致命的な訳で、どっかで一度検証する必要があるな。

「クリスタルライトの余りがあったからベースに作ったんだけど、他の素材を確保するのが大変だったんですよ? その代わり、耐久力は折り紙付きですけどね」

 おっと、目先の付与効果(エンチャント)ばかり目について、耐久力を確認してなかったよなって……えええ!?

「なんだこの耐久性能……バグってんじゃねえのか?」

 普通の装備よりも一桁所か二桁も多いとか、ここまで来るとチートかバグの類にしか思えないぞ。

「違いますよ! キリトの二刀流ソードスキルにも耐えられる素材なんだから、それぐらいあって当然ですよ」

 む、キリトの剣に色が似てると思っていたがここで作られた物だったのか。さっきのダンジョン攻略の時に少しだけあのソードスキルを拝む事ができたが、あそこまで激しく叩き付ける技に耐えうる代物なら……そうだ!

「リズベットさん、この武器のタイプ変更はできるかい?」

「同じ短剣なら大丈夫! 何に変更したいんですか?」

 と、自信満々に胸を張ってどんと来いとアピールしている。それじゃあお言葉に甘えるとしよう。

「耐久力に自慢があるのならこのタイプに変更して欲しいんだが、どうだろ?」

 そう言って一本、俺の持ち物枠(インベントリ)から同じタイプの武器を見せると、リズベットさんが思わず後ずさって驚いた表情を見せる。

「そ、それって凄い攻撃力下がりますよ? それに流石にそんなタイプに変更したら……」

「耐久力には自信があるんだろ? それに俺ら短剣使いにとっては攻撃力なんて飾りみたいもんさ」

 基本的に俺みたいな短剣を扱う連中は、基本的に通常攻撃で攻撃する事はほとんど無い。むしろ急所突き(クリティカルポイント)不意打ち(バックスタブ)を通常攻撃代わりに用いている程だ。

 でもってこのスキルのダメージはとにかくDEX(器用さ)LUK(幸運)に依存するので、俺のステータス構成もDEX(器用さ)をとにかく重視したステータスになっている。何よりもSTR()のステータスが重要なSAO(ここ)ではゲームの仕様に真っ向から否定するステ振りだ。何でこうなったのかと言えば、たまたま拾った強力なレア武器が短剣で、それに対して効果的なステータス分配をしていたらいつの間にかこうなったと言えば分かり易いかも知れない。

「でも、これをそのタイプに変更するなら他に強い武器とか持ってるんですか?」

 確かに普通ならこのタイプの短剣は使い捨てにして、本体の装備に切り替えて戦うのがSAO(ここ)のセオリーとされているが、今の俺にとっては壊れにくいだけで十分すぎる利点(アドバンテージ)を持つ武器になる。

「ああ、その通りだ。そこで、こいつの弾は作れるかい?」

 マントの背中に隠してあった折りたたみ式の弓をリズベットさんに見せる。

「それ、最近急に出回って来ましたよねえ。飛び道具なんて存在しない世界なはずなのに」

 確かに本来なら存在しないはずの遠隔攻撃専門の武器。俺の攻撃方法がこれに変わったので攻撃に使う短剣は不要になったって話だ。何故この時期になってこんな武器が現れたのか、それについてはかなり信憑性の高い理由がある。

「それがな。どうやらキリトがGM(管理者)メニューを一瞬だけ弄れたそうで、その時に存在はするが実装しなかったデータを解放しちまったおかげか、敵がドロップするようになったって話だぜ?」

 キリトが実行した時期と俺が拾った時期を考えると確かに一致したので、おそらく間違い無いのだろう。

「キリトってそんな事やっちゃったの!? どうせなら強制クリアとかにすれば良かったのに」

「流石にそこまでの余裕は無かったそうだ。んで、どんな矢を作れるか確認したいんだが……」

 ただ、今の所装備だけならどのタイプのプレイヤーでも可能みたいだが、これに対するスキルが全く存在しないのでダメージが死ぬほど弱い上にとにかく当たらない。

 仮に攻略組の誰かが使ったとしても始まりの街周辺のmob(モンスター)相手でも一撃で倒せないだろう。その辺の検証はマコトに協力して貰って確認したので間違いない。

 まぁ結局の所、実用範囲で使えるのは俺だけって事が良く解った検証にもなり、例え俺以外の相手がPKに弓を使ってこようと全く驚異にはならないだろう。もし気を付けるとすれば相手の投げナイフぐらいだな。

「状態異常を引き起こす矢ならたまーに物好きが買っていく程度だけど、在庫ならある程度ありますよ」

「お、それならいくつか見せて貰えるかい?」

 出て間もないが、ここまで使えないゴミ武器。そんな結論が広まっているににもかかわらず、既に矢も作って販売してると来たか。VRではあるが情報拡散の早さと使用者がそこまで増えるのは流石MMOって感じだな。

「わっかりましたー!」

 元気よくカウンター裏へ向かうも、すぐに難しい表情で戻ってくるリズベットさん。

「うーん。思ったよりも売れちゃってて、残ってる矢も数本しか無いですね」

「じゃあ、素材があれば作って貰えるかい?」

 その為にmobの毒物関係の素材は取っておいたが、後は必要数次第だな。

「素材の在庫は……っと、そうだそうだ。あたしも一つ思い出しましたよ!」

 足下から素材が山積みになったかなりでかい木箱を持ち上げ、カウンターへ置く。

「イリオスさんが置いていった素材がまだかなり残ってるんだけど、これどうします?」

 そうか、イリオスが死んだ事については知らないのか。

「あいつは遺言を残して死んじまってるんだ。その中で矢に使えそうな材料があるなら、マコトが了解してくれればそいつと俺の素材で作って欲しいんだが、どうだろう?」

 俺が隣のマコトに目を合わせると、こちらのマントを引っ張りながらすぐに笑顔頷いてくれた。

「はい、全てセスさんにお任せします」

「じゃあお願いしても良いかい? 余った材料は経費として使って欲しい。もしそれで費用が足りないなら追加で払うが……」

 素材の状況を確認しようと箱を覗き込もうとしたが、リスペットさんがもの凄い勢いで首と手のひらをブンブンと振る。

「いえいえ! 逆に高価な素材ばっかりで処分に困ってたんで、あたしの方がお金払って買い取ろうかって考えてた所ですよ」

 ほう。あいつ高い素材ばかり残してたのか、抜け目ねえな。

「それなら都合が良い、こいつの引き取りまで迷惑かけた分も含めて全部持って行ってくれ。マコトもそれで良いよな?」

 俺は真っ白な短剣をくるくると回してみせ、カウンターに置く。

「そうですね、今回ばかりはセスさんに賛成です。よろしくお願いします」

「はいよー! それじゃあ武器のタイプ変更と矢の作成ですねー!」

 それからしばらくリズベットさんの金槌が工房に音を響かせていた。

 

 

 

「さて、これで相棒の問題は一つ片づいたな」

 矢の作成だけは数が数だけにしばらく時間がかかるとの事で、タイプ変更して貰った短剣だけを引き取って俺の部屋にマコトと一緒に帰ってきた。

「はい、後はシェラさんの問題ですね」

「ああ、そこが何より重大な部分だな」

 あいつがPKギルドのメンバーな上にマコトがその接点となっている以上は、このまま何事もなくゲームクリアまで、二人ともあいつらの妨害を受けずに過ごす事ができるかどうかは非常に怪しい。

 むしろ向こうからすればマコトを放置するのは非常にまずいのではないかと、今更ながら考えてしまう。

「それなら明日私が話を着けてきますので安心して下さい」

 俺の不安を察知するように結論を出すマコトだが、それでもまだ不安要素が残る。

「待ってくれ。話を着けるなら俺も連れて行ってくれ」

 もうマコトを疑っている訳ではないが本当にこの問題が解決したかをこの目で確認しつつも、あいつに文句の一つや二つ言わなければ気が済まない。

「セスさんもシェラさんに言いたい事が沢山あると思いますが、セスさんを殺して帰ってきたと嘘をついて取引は終わったと言いに行くので、一緒に来ていただくわけにはいかないんですよね」

 確かに納得の方法だ。そうなると俺の出番はないし、マコトの演技力から見ても問題は起きないと思って良い。

「その嘘が通ったとしても、あいつが俺達と同じ層に来てばったり会う事はないのか?」

 だが、それでもまだ安心できるほどの説得力がない。

「それが、その可能性はかなり低いんですよ。私はシェラさんしかあのギルドのメンバーは知らないんですが、聞いた話によると人の多い層には滅多に顔を出さないそうで、基本は四十層以下の低層を拠点にしてるみたいなんですよ」

 なるほど、その心配も無いとすれば、最後に残ったこの不安様子だけになるか。

「それならせめて後ろから姿隠し《ハイド》したまま護衛させてくれ。あんな奴らの所に行って取引を辞めたいなんて言ったら何されるか解ったもんじゃねえぞ?」

 これならお互い納得のできる提案だと思いつつ、俺はマコトに問いかける。

「はい、その通りですね。ではセスさんが私の後ろから姿隠しで付いてきて貰う作戦にしましょう」

「了解だ。決行は明日リズベットさんから矢を貰ってからで良いか?」

「了解です。ではまた明日こちらにお邪魔しますね」

 そしていつもと変わらず丁寧な礼をして、マコトは俺の部屋から出て行った。

 泣く時に俺を呼び止めてたぐらいだから、少しぐらい距離は縮まっていると思いたかった。しかし、初めてあった時と変わらん対応なら結局の所全く進展してないんだろうな。

 結局俺はどんな女にでも相手にされない駄目な男って奴なんだと、つくづく思いながらもベットに体を投げるように寝転がった。




 ようやくユニークスキルについての詳細が判明した所でまた詳細を伏せつつも伏線を入れたりしてます。
 ただ、今回はある程度特徴を書いてしまったので解る方にはすぐ解るかもしれませんので、どこで使うかはお楽しみって事で!
 アニメもALO編に入った所での更新ですが、こちらの2人もALOまでやれそうなネタは考えていますが、今の所未定です。
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