【SAO】ハイドGMなのにJCプレイヤーにばれた件について 作:伊葉 翔
「こんなもんで良いっすか?」
「はい、これで白ネームです。本当に助かりました」
さっきのリーマンらしきってか、本当にリーマンプレイヤーだったカリアゲさんが白ネームになった事を確認して、俺は腰を下ろして一息ついた。
カリアゲさんの情報に信憑性があったので、俺もその証拠を見せるために七十四層のフィールドでPTを組んでmobを倒す、いわゆるカルマ下げを行って赤ネームから白ネームに戻す作業を終える。
「これで俺の約束は守りましたよ。後は手はず通り頼みます」
「解りました。状況報告はいかが致しましょうか?」
「えっと。カリアゲさんが七十四層《こっち》に戻って来た時か、俺が四十層に行ってそちらにtellした時で良いっすか?」
「解りました。では行ってきます」
「うっす。頼みます」
そしてカリアゲさんをゲートまで送って四十層へ戻ってもらう。
さて、情報が来るまで何から始めるべきか。
少なくともシェラは俺が生きている事を知っている、むしろ俺が姿を現して一発弓をくれてやったのだから間違いなく認識しているだろう。
そんな状況で俺がシェラだったらマコトをすぐには殺さず、人質にして俺からさらにアイテムが奪えないかどうかの交渉を考える。となれば俺から探りを入れずとも向こうから何かしらのコンタクトがやってくる可能性が高い。
『セスさん、大変です!』
「うおおっ!?」
ひとまず町に戻ってからゆっくり考えようと、アルゲードの門前についた瞬間カリアゲさんからのtellウィンドウが現れる。それにしても早すぎないか?
『どうしました?』
『マコトさんを人質にしてセスさんの装備を奪おうとしてるみたいです!』
俺の予想は見事に当たりって訳か。だとすれば聞くべきことは決まってる。
『ではその手口について分かったことを教えてもらえますか?』
そこでカリアゲさんが場所から方法、そして集まるであろう人員まで詳細に分かるtellを渡してきた。
『完璧ですね。これならマコトを助ける手口が見つかりそうです』
『ありがとうございます。ほかに手伝えることがあればこちらでも手は尽くしてみますが、いかがでしょうか?』
『それでは……』
カリアゲさんから必要な情報を貰い、更に工作の依頼を出していったん俺の部屋に戻ると扉の前にメッセージが届いていることを確認する。
『はぁーい。元気かしらぁ?』
とりあえず開いてみると媚びた口調の糞女、シェラの動画が浮かび上がる。
『貴方とちょっと
妖艶な笑みで得物の細剣を構えて振り回している。要するにマコトが人質って事か。
『それじゃあ四十層のバッカニアの町でお待ちしてるわぁ。期限は明後日まで、あとは来る前に連絡ぐらい頂戴ねぇ? 女の準備は長いのよぉ』
期限と場所、連絡を受けてから準備をする。確かにカリアゲさんの情報通りだな。
ふざけた事を付け足してはいるが、仮に連絡せずに乗り込んだとしてもマコトを簡単に救出できない位置に隠しているとのことで、このあたりの情報はカリアゲさんが全く手に入れることができなかったらしい。
じゃあ俺を見つけられる奴がいなかったとして乗り込んで敵から直接聞きだす方法も考えたが、マコトを脅せば簡単に俺を見つけることができるし、警備している奴らへ不意を突いてもすぐに返り討ちにできる人員を揃えているとカリアゲさんからの情報で分かっている。
結局相手の罠にかからなければチャンスが存在しない事が分かったが、そこで気になった点が一つある。
これさえ確証が取れたら迷わず罠でも飛び込むつもりはあるんだが……。
「はぁ……経験もねえ奴がそんなこと考えたって解らねえよな」
「おいおい、来て早々ため息なんざついてどうした。マコトと喧嘩でもしたのか?」
何となくエギルの店へ寄って話でもすれば何かわかるかも知れないと考えたが、やっぱ上手くまとめることなんざできないよな。
「喧嘩じゃなくて誘拐された。それもよりによってシェラの奴にな」
「あいつ生きてたのか? イリオスが死んでから完全に音信不通だったが」
「ああ、生きてたよ。それに
「そんな奴にマコトが誘拐されて、お前さんはなんでこんな所で悠長に油売ってるんだ?」
「助けに行こうかどうか迷ってるからに決まってるだろ?」
「なんで迷う必要があるんだ?」
ごく当たり前のように即答してくるエギルに対して、俺はさっきも言ったじゃないかとさらに深いため息交じりに口を開く。
「何もかもが上手く行きすぎだ。俺だけ無事の挙句に敵地の情報が手に入ったことなんて特にな」
「良い事じゃないか。情報さえ分かればお前さんの姿隠しさえあれば楽勝だろ?」
「確かに楽勝かもしれんば、結局はマコトが敵か味方かいまだに信じられないんだよ」
結局はこれに尽きる。
「なんでいきなりそんな結論になるんだ? 仲は良さそうに見えたが」
「あれで仲が良さそうなあ……俺から見れば距離感が全然縮まってないように感じるんだが。それに、あれぐらいの状態からひっくり返って大嫌いとか、本当は大嫌いだったとか平気で言われた俺からしては何も言えないな」
「うーむ。しかしそれは最初から嫌いと決めつけて話を進めてるお前さんが言って良い台詞じゃないと思うが」
「確かにそうかもしれんが、結局騙されて死ぬことになったら最悪だぜ?」
「何言ってるんだ。お前さんなら騙されていたとしても最悪一人でも逃げられるだろ?」
「逃げることはできるな。ただ、信じきった所でマコトに背後から一撃とかされたらさすがにお手上げだぜ?」
「そこまで疑ってるのであれば、あえて飛び込んで説得するぐらいの意気込みは無いのか?」
「それができたら苦労しねえよ。騙された後もどうすれば良いか分からないし、俺から手をかけるのにも抵抗がある」
騙されて命の危険がある心配ともう一つの心配がこれだった。
結局俺はマコトを殺せない。死ぬ覚悟も無ければ殺せるほどの覚悟もない中途半端な人間だって訳だ。
「なら一つ考えがあるな。お前さんが騙されてる前提で行くならこんな手段があるんだが……」
と、エギルに耳打ちされて俺は思わずうなずいてしまう。
「確かにそれなら騙されたとしても俺はさっさと逃げれば良いし、もし手にかけるとしてもそこで話し合ってから処分を考えられるって話か」
俺のリスクを最小限に留められる願っても無い作戦だったが……。
「ただ、本当にやってくれるのか? こんな作戦」
「大丈夫だろう。あいつらちょうど暇してるはずだしな」
自身満々に言うエギルを信頼して俺もそれに答えることにした。
「そうか。それじゃあ早急に俺からも連絡を取らないとな」
そして俺はtellウィンドウを開いて文字を入力し始めた。