祭りと怪物   作:ユバ()

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京都大賞典があまりにも夢のような出来事だったので
キタサトでゆる~く、字数はサクッとです。


ある秋の日に

 秋にしては暑い暑い日もようやく和らいできたある日の昼。

 キタサンブラックはお昼ご飯を食べるために食堂に来ていた。

「あ、今日はキャロットピラフに人参ゼリーもある!」

 なかなかレアなメニューを受け取り、どこか空いている席はないかなとキョロキョロ周りを見わたす。

 すると、端の二人掛けの席に一人で座っているサトノダイヤモンドを見つけた。珍しくイヤホンをはめ、スマホで何かを見ているようだ。

「おーい、ダイヤちゃーん」

 せっかくだから相席しようと声をかけるが反応がない。

 遠かったのかな。と少し近づいてもう一度呼びかけるが変わらず返事はない。サトノダイヤモンドは食い入るようにスマホの画面を眺めたままだ。

「む~。珍しい」

 返事もしてくれないことに少しだけむすっとしながらキタサンブラックはそっとサトノダイヤモンドに近づく。

 そして画面に夢中のサトノダイヤモンドに気づかれないようにそっとお昼ご飯を置き、背後に回ると

「えいっ!!」

 っとサトノダイヤモンドに抱き着いた。

「うひゃぁ。ってキタちゃん!?も~びっくりさせないでよ~」

 サトノダイヤモンドは耳をぴくッと立てて後ろを振り向き、キタサンブラックだとわかるとほっと息を吐いた。

「えへへ、ごめんごめん。でも何回読んでもダイヤちゃん返事してくれないんだもん」

 ちょっと拗ねたように返事を返し、キタサンブラックはそのまま背後から画面を見ようとする。

「あ、だめだよ。キタちゃん。勝手に画面を見るのは」

「む~そうだけど。気になるな~。ダイヤちゃんが夢中になってみていた動画」

 そのままじっと見つめ合うような形になること数秒。

「……絶対笑わないって約束する?」

 先に根負けしたのはサトノダイヤモンドだった。

 耳にさしてたイヤホンの片方をキタサンブラックに差し出すと二人で見れるように角度を調節する。

 そのままふたりでくっついて画面をのぞき込む。

 

『スタートしました。まず先行争いですが───』

 そこにはつい先日のレースが映し出されていた。

 

『───最終コーナー回って直線に入りました───闘魂注入か!古豪が引っ張る形となった』

『さあ復活なるか!復活なるか!前が抜け出している!』

『そして外から強襲したのはダービー───』

 

 三分にも満たない短い動画だったが何度見ても感動する。笑顔にはなるけれど下品に笑うものではない。

 恥ずかしがるような動画ではないはずだ。

「何回見ても感動するね~。でも、ダイヤちゃんが必死に隠す必要はなかったような?」

 キタサンブラックはサトノダイヤモンドに尋ねる。

「う~。そうかもしれないけど。やっぱり少し恥ずかしいよ~。何回も同じ動画を見てるってキタちゃんに知られるのは」

 顔を真っ赤にしながらサトノダイヤモンドは答える。

 なるほど。確かにライバルの感激する動画を食い入るように何度も見ていたのを知られるのは恥ずかしいかもしれない。

 あたしだってたまに皐月賞の時の動画を見ている時にダイヤちゃんに声かけられるとビクッてなるし。

 キタサンブラックも自分に置き換えたのか少し顔を赤くしながら正面に座り直す。

 また二人で見つめ合うこと数秒。

「「ふふっ」」

 同じタイミングで笑い出す。

「も~笑わないでって言ったのに~。罰としてこの人参ゼリーは貰っちゃいます。」

 怒った様子もなくサトノダイヤモンドが言い、置いてあったゼリーに手をかける。

「え~ごめんごめん。その人参ゼリーはダイヤちゃんに差し出します」

 笑いながらキタサンブラックも言葉を返し、少し冷めたピラフを食べ始める。

 

 そのまま他愛もない会話を続けながら食事を進めること数分。

 ふと、先ほど動画についての話に戻る。

 

「いや~、それにしてもこの前のレースは凄かったね。ダイヤちゃん程じゃないけど感動したよ」

「もう、何回も言わないでよキタちゃん。でも、私も嬉しかったな。それこそ何回も動画を見返しちゃう位にっ!」

 サトノダイヤモンドは満面の笑みを浮かべながら言う。

 それにつられるように笑いながらキタサンブラックも話す。

「やっぱりダービーってすごい勲章だなって思った。最強の証なんだなあって。あたしの代のダービーの勲章はあの怪物だったしね。でも、だからこそダービーは勝ちたかったな」

「私もすごく惜しかったからなぁ。今でもレースを見ちゃうもん。」

 二人の会話はまだまだ続く。それこそダービーの話から二人が勝った菊花賞まで様々だ。

 ドリームリーグのことだって話しているかもしれない。

 

 その傍らに置かれた動いたままのスマホの画面には、先日のレースと彼女たちのダ―ビーが何度も繰り返されながら映し出されていた。

 

 ダービーの冠は世代にたった一つしかない勲章である。栄光の輝きは何年たっても色あせない。

 その感動をもう一度くれた仁川では秋華賞と菊花賞が行われる。

 次はどんなドラマが待っているのだろうか。




最後までお読みいただきありがとうございました。
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