「私達のスクールアイドル部入らない?」
僕はその言葉を理解するのに少しばかり時間がかかった。それは突然の事だったし、思いがけない提案だったからだ。
「僕が?」
「そう、君が」
渋谷さんは僕から目を離すことなくじっと真剣に見つめている。
僕はコーヒーカップを持って、一口飲んだ。
「それは嬉しいけどさ、僕は力になれないよ。渋谷さんほど音楽に詳しい訳ではないし、僕はただ葉月さんから教えられた事だけしか知らないんだ」
「それでも必要なの、たまに見るくらいでもいいし、私だってきっと音楽科の人達だったりそれこそ葉月さんと比べたら未熟だよ。でも実は本音は、音楽を少しでも知ってる君に助けを求められるし、君がいれば生徒会長の説得も何とかなるかもー!っていう打算もあるんだけどね……」
僕は顎に手を当てて摩るように動かした。
渋谷さんは心配そうな顔をして、僕を見ていた。
「ごめん、やっぱり迷惑だったよね……」
「いや、僕で良ければやるよ」
申し訳なさそうにいう渋谷さんの言葉をかき消すように僕は言った。
単純に面白そうと思ったし、僕は小さい時は彼女に支配されていた。でも今は自由になったから彼女の嫌がったスクールアイドルに関わる事で反抗しようとする子供のような気持ちもあった。
そして何よりも彼女からは色んな可能性の様な物を感じた。
「本当に……?」
恐る恐るといった様子で聞いてくる渋谷さんに対して僕は微笑んで返した。
「本当にありがとう!明日から来れる?!」
「明日……は何も無いから大丈夫だよ、まだ学校も決めてないしね」
その後僕は具体的な活動場所だったり、部室の場所を聞いた後は下に降りると、彼女のお母さんがこちらを見てにっこり微笑んだ。
「ごめんね、何かかのんの我儘に付き合ってるみたいで」
「いいえ、全然。僕も面白そうなのでついて行っているだけです」
僕がそう返すと、再び微笑んで次は渋谷さんの方を見てさっき僕に向けていたのと違う悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「告白、上手くいったの?」
「こ、告白!?違うって!全然そんなんじゃないの!ただの勧誘だから!」
顔を真っ赤にして、否定する渋谷さんを見るのは楽しかった。
そして僕はカウンターに珈琲二杯分のお金を置いて帰った。
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次の日、僕は入校許可書を首に掛けながら、ぶらぶらと歩いていた。
やはり周りの人からの視線は痛かった。前は葉月さんといたけど、今回は1人。中々に心細いものがある。
やっとの事で、部室のらしき所に着いて扉を開けると、何だか騒がしかった空気が一瞬で静まった。
またなんか僕やっちゃいました?
なんておどけてみたくなったけれど、実際はどうにも居心地が悪いだけだった。
「あ、この前の不法侵入のヒト!」
「前回も今回もちゃんと許可書はあるよ」
胸にかけられている許可書を見えるように僕は掲げた。するとまだ金髪の人の僕に鋭い目線を向ける人の視線は幾らか緩められた。
「来てくれたんだ」
渋谷さんは僕を見て顔を少し緩ませて、僕の方に駆け寄った。
「かのんちゃん、その人は?」
白髪の、まるで頭に丸が3つあるかのような髪型の人がそう問いかける。
「そうだ、紹介してなかった、今日からスクールアイドル部に入ってもらう、名前は……えっと……名前は………」
手を額に当てて考え込む彼女を見て、そういえば彼女の名前は知ってるけど、僕の名前を教えてなかったな。と思った。
「僕の名前は久川優希、よろしくね」
「久川……優希……くん」
隣で渋谷さんは僕の名前を小さい声で繰り返した。
「ユウキ、私は唐可可、クゥクゥと呼ぶデス」
「私はかのんちゃんの幼馴染の嵐千紗都だよ、よろしくね」
「平安名すみれ、一応よろしくと言っておくわ」
「最後に一応、私も。渋谷かのん、優希くん、これからよろしくね!」
成程、左からクゥクゥさん、嵐さん、平安名さん、渋谷さんか。
僕は渋谷さんのこちらの方に差し出された手をぎゅっと握った。
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僕が席に着くと、両手で頬杖を着いた平安名さんが僕に怪訝そうな顔を向けた。
「それで?あんたはどこの馬の骨なの」
「どこの馬の骨と言われても、なんて言えばいいか……」
「えっと、優希くんは生徒会長の幼馴染で、音楽の知識もあるみたいだよ」
なんて言えばいいか分からなかった僕に変わって渋谷さんが代わりに答えてくれた。
すると、三人が驚いた様な反応をした。
「それって生徒会長から送り込まれたスパイってことじゃないの?スクールアイドル部を潰す為に。それなのに入れて良かったの?」
睨みつけるような目で僕を見る平安名さん。
僕は事態が掴めずにいた。
なぜ、生徒会長が敵になっているのだろうか。
悩んでいると、渋谷さんが答えてくれた。
「今、私達はスクールアイドル部として活動してるんだけど、生徒会長さんが認めてくれなくて……」
はぁ。と言うため息と共にこぼした。
成程と僕は思った。
そこで僕は全てを話すことにした。
小さい時に彼女に束縛の様な物を受けていた事、それで引越しをして彼女がスクールアイドルを嫌う理由も分からないこと。
全てを話すと皆が納得したように頷いた。
「あの生徒会長ならやりかねませんネ、人を縛るナンテ」
「あんたも大変なのね」
「そうだったんだ……じゃあ私たちの強力な味方だね!」
非難の目をここには居ない生徒会長に向けるクゥクゥさんと同情をする平安名さん、納得して僕を認めてくれた嵐さん、三者三葉の反応があった。
「それって酷いよね!生徒会長さんのせいで優希くんの行動とかを縛られてたんでしょ!私、許せないな」
そして、怒りを露わにする渋谷さん。
「でももう過ぎたことだよ、それで音楽を教えてくれたおかげでここにいる訳だし」
必要以上に彼女を貶める必要もないので、僕はそこで無理やり中断させた。
「という訳で、僕をこれからよろしくお願いします」
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僕がスクールアイドル部の一員となって、僕が最初にやった事は練習を見る事だった。
まずはどういう風にいつもやっているのか知ってもらうのと、新鮮な第三者の目を取り入れてもっと上手くなりたいとの事だった。
僕は唯一知っている音楽ですら、あまり他人に口を出せるような知識も無いけれど、素人並みに頑張ってアドバイスのような物は出来た。
特に渋谷さんや前にショービジネスの世界にいたという平安名さんの歌が特に良かった。
どういうのに出ていたのかと興味で平安名さんに聞いたら断られてしまった。
そして、何か言おうとしているクゥクゥさんの口を必死に塞いでいた。
最初は冷静で、落ち着いている人かと思ったらそうでも無いらしい。
ダンスは嵐さんがダンス部という事で教えているらしく、キレのあるダンスだった。
クゥクゥさんは途中で倒れそうになっていた。
そんな練習風景を見ながら僕はドリンクを渡したり、アドバイスというか感想のような物を皆に伝えた。渋谷さんの曲作りにも少しばかり携わらせて貰った。他人と意見を言い合いながら一つのものを作っていくのはとてもいいと思った。
今までは彼女によって制限されていた事だった。
気がつくと、すっかり周りは暗くなって夜風が肌に冷たく突き刺すように吹き付けていた。
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帰ろうと廊下を歩いていると会いたくない人を見かけた。
「渋谷さん、何故彼がここにいるのでしょう、そして貴方には来る時には私に連絡するように言ったはずですよ」
僕と渋谷さんをキツく睨みつける生徒会長がいた。
五話以内で完結させようと思ったら、もう少し必要そうな感じが五話を書きながら思った