織斑一夏と愉快な家族達 作:探さないで!
第24話
バスの窓際の席から外を眺めていると、急に膝の上のマドカが不安そうに声を出した。
「箒さんは何処に行かれたのでしょうね.............」
「.......そうだな」
マドカの頭を優しく撫でながら、俺は思わずこのバスに乗っていない唯一の一年A組である、箒様を思い浮かべる。
今朝、バスの中で千冬姉が出席をとっていた時だ。なんと箒が居なかったのだ。ポッカリと彼女の席だけ空いていた。
当然、山田先生は大慌て。それはもう、動揺しすぎてクラス全員に『落ち着けよ!』と突っ込まれた程だった。そして最終的には気絶した。流石である。色々な意味で流石である。
千冬姉は、そんな茶番をしている間にも何とか箒と連絡を取ろうと奮闘していたらしいが、そもそもアイツは携帯を持ってないので実家に電話するくらいしか選択肢は無かった。 今時携帯持ってないとか、こっちも流石っスね。まじパネェっす。
箒の両親も居場所が解らず、時間目一杯になっても来なかったので、仕方無く置いて行く事にした。
最悪、千冬姉が瞬歩でどうにかして連れてきてくれるでしょう。多分。俺はそう信じてる。千冬姉ならどんな不可能も可能にする気がする。
「一夏、後どれくらいかかると思う?」
「わからん」
そして俺の隣には鈴が座っていた。
電光石火の早業とは、まさにあの事を言うのだろう。
どこからか箒が休みだと聞きつけた鈴は、山田先生の『二組のバスはあっちですよ!』を『暴れるわよ?』の一言で封殺。その後俺の隣に座っていたセシリアちゃんと、本来箒が座るはずだった席を瞬く間に交渉してトレード。クラスの皆に有無をいわさず俺の傍をもぎ取った。俺の嫁も中々に流石だ。
だが、そもそもバスの席を決める時に俺の席の所に『織斑兄妹』と勝手に書いたクラスメイト達だ。我が物顔で他クラスが乗り込んで来たにも関わらず、『織斑先生もあそこに混ざってきたらどうです?』なんてラフプレーをかまして来やがった。千冬姉の事だから、もし山田先生が目を覚まさなかったら確実にマドカを押し退けて俺の膝の上に座ってた。間違いない。
「そろそろ目的地に着く。各々準備しておけ」
千冬姉の声がバス内に響き渡った。
あ、ガイドさんが千冬姉にマイク渡そうかどうかですげぇあたふたしてる。分かる。その気持ち分かるよ。
あの人が何かミスってても、堂々としすぎて自分が間違っているかのような錯覚に陥るんだよな。
『何か手違いでも?』とか千冬姉に言われたら、『な、何でもないです.....』って感じになるしか無い。弟の俺ですらそう感じるんだ。あのガイドさんも内心相当参ってるに違いない。
そう考えると山田先生は素直に凄いな。.............凄いよな?
「千冬さんって地獄耳なの?」
鈴が首を傾けながら聞いてきた。
どうだろう。正直あの人なら実は悪魔だったとか、実はスクラル星人だったとか全然不思議じゃない。そっちの方が納得できる。
結局、俺は鈴の問に頷くしかなかった。
ーーーーーーー
バスから降りると、タイミング良くラウちゃんが
「ご無事でしたか、マスター」
「.......うん、ありがと。大丈夫だったよ」
そうだ、確かコイツ『バスの中は奥様方もいる事ですし、安心でしょう。しかし!重要なのは外からの攻撃なのです!!』とか言ってバスの上に飛び乗ってたな。移動中ずっとそんな危ない所に居たのか。
アホか、とツッコミたい所だ。
でもどうしよう。すっごいワクワクした顔してるんだけど。とりあえず褒めとくべきかな。
「ワクワク.......!!」
この子、声に出ちゃってるよ.............
仕方ないなぁ。その可愛さに免じて褒めちぎってやろう。
「俺の為によく働いてくれた。流石は俺の犬だ」
乱暴に頭を撫でてやると、いきなりラウちゃんが倒れた。ヤベ、強すぎたか?そんな強くやったつもりは無いんだが。
「お、おい。大丈夫か?」
実はバスの上がめっちゃキツかったのか?
案外アホの子なのかな、ラウちゃん。
「す、すいませんマスター.......幸せのあまり腰が抜けてしまって.....」
全身麻酔でも打ったのかと思うほどだらしない表情のラウちゃん。腰が抜ける位幸せって、どんだけだよ。そんなに嬉しかったのか。
俺だってマドカに撫でられても、せいぜいよだれが出るだけだぞ。腰が抜けるなんて........
あれ?マドカと鈴が居ない。どこ行った。てか、クラスの皆も居ないし先生も居ない。
マズイ、もしかしたら皆今日から三日間泊まる旅館に先に行ってしまったのかもしれん。やっちまったぜ。
くそぅ。どうして二人は俺の事置いてったんだ......
「お気を使わせてしまったようです.............」
「どゆこと?説明プリーズ」
「その.......マスターと二人きり.......」
「.........」
ふむ。なるほど。
ま、たまにはラウちゃんと二人ってのも良いな。犬だし。
犬 だ し。
「じゃ、ゆっくり行くか。立てる?」
「申し訳ありません......」
マジか。救急車とか呼んだ方が良いのかな。
でも腰を除けば元気いっぱいって感じだな。
「私は這ってでもマスターについて行きますのでご安心下さい!」
「いやいや、そんな事はさせないぜ」
ラウちゃんに背を向けてしゃがむ。おんぶである。
「そんな!マスターに私を背負わせるなんてトンデモない!!」
「捨てるぞ、わんころ」
そう言うと、かなーり長い時間迷った挙句、渋々と言った具合に俺の肩に手を回してきた。これでよし。
「よ......宜しくお願いします.......」
「うし!出発進行!!」
俺が歩き始めると、ラウちゃんが小声で俺に合わせて
「しゅ、しゅっぱつしんこー.....」
危ねぇ。初対面でこのモードのラウちゃんに出会ったら惚れてたかもしれん。こんな隠された資質を持っているとは、あなどれんな。ラウちゃんよ。
「.........」
てか、道わかんねえ。なんでバスを旅館に停めないのよ。
今時駐車場の無い前時代的な旅館など果たして存在するのか。疑問だ。
「次の道を左折です、マスター」
「知っているのか、ラウデン?」
「デン?........ええ、この日に備えて下見はしておきました」
もしかして、俺が行く予定になっている所は全てロケハンしてるのか。水着買いに行った時ともなのかな、すげぇや。
「.........後でご褒美だな。何が欲しい?」
「今が既にご褒美なので大丈夫です!!」
そんな萌え死ぬような切り返しされても困るんですけど。
後でサプライズしてやろう。ぐへへ。今度は腰の一つや二つ、余裕で陥没させてやる.....
「あ、そこ右です」
「りょーかい」
ーーーーーーー
「あれ?」
ラウちゃんの言う通りに道を進んで行くと、奇妙な人だかりを発見する。なんだあれ。
「ラウちゃん、今日祭りでもやってんの?」
「いえ、そのような話は聞いていませんが.........」
気になるな。ちょっくら覗いてみるか。
「人力車?」
「.........ですね」
その人だかりの中心には、人力車が鎮座していた。誰か乗ってるっぽいけど、顔までは判らない。
ここら辺の人からしたら珍しいのかも知れんが、俺は別に人力車なんぞに興味はない。乗ってる人にも興味は無い。
そう思って、再び旅館を目指すべく歩きだそうとして
「カカカッッッッ!!!!行くぞ、束!!早う引くが良い!!!!!」
「御意にござりますぅぅ!!!箒様!!!!!!!!」
「.........」
「マスター、どうかしました?」
こうして俺の校外学習は幕を開けた。
不安だ.........
ーーーーーーー
生徒会長のお部屋
「お嬢様、何処へ行くおつもりで?」
「いい、虚ちゃん?今から私は一年A組出席番号22番、布仏本音よ」
「.......は、はい?」
「だって簪ちゃんの水着姿よ!?この目で見るまでは死ねないわ!!」
「お嬢様.............?」
「アデュー!!!」
「お嬢様!ISの無断使用は校則違反で.......ッ!?」
「久しぶりだね?お姉ちゃん.........?」
「ほ、本音?な、何をしに来たのですか?」
「ううん、違うよ。今の私は更識楯無.........うふふ.........」
「.........」
「さぁ、一緒にお仕事しよぉうねぇ........うふふ.....」
言い回し、表現、比喩その他もろもろ。アドバイスお待ちしてます。感想も。
誤字は見つけ次第、修正していきます。
感想をくれた方ありがとうございます!
うーん、書いてる途中に日を空けるのはやめよう。なんか文が変になった.....
よく分からないけど、知らぬ間にラウちゃん回になってた。