織斑一夏と愉快な家族達 作:探さないで!
ん、マドカから通話掛かって来た。なんだろ?
『兄様、ご無事ですか?』
『おう、無事よ。どしたん?』
『いえ、その.......ジョンが..........』
いつも通りの大変癒される声のマイシスターだが、今回は珍しく歯切れが悪い。どうかしたのだろうか。
なんかマジっぽいので、一度母さんから離れる。
「ん、どした?」
「マドカたそからラブコール来た」
「お、おう」
母さんに軽く引かれてしまったけど、この人とは魂レベルで惹かれあってるから問題ない。アイラブ母さん。
『.......とりあえず帰って来てくれませんか?』
いつになく真剣な声音......というよりは、戸惑っている様に聞こえる。一体ラウちゃんの身に何が起こった。
『うい、分かった。今から帰る』
不安を感じながらも、俺はマドカとの通話を切った。そしてそれから少し間を空けて、二人に会話を切り出す。
「........母さん達、これからまた仕事なのか?」
聞かなくても分かるけど、一応聞いておく。そう簡単にあのブラック企業で休暇が取れるとは思えないからな。どうせこの後も仕事でビッチリなんだろう。
うぅ、また母さんと離れるのか。心が張り裂けそうだ。
「........」
そう思っていたが、しかし何故か返答が来ない。母さんはポリポリと頬を掻いて黙ってしまった。
どうしたんだろう。何かあったのかな?
「父さん、なんかあったの?」
父さんならなんか知ってんだろ、と話し掛ける。母さんがとても言いにくそうだからだ。仕方ないね。嫌な役目は全部父さんに押し付けるのが、我が家のルール。
「......一夏、私の事気付いてたの?」
しかし返ってきたのは、信じられないと言わんばかりの呟きだった。すげぇ驚いてる。
「.......当たり前だろ?」
何を馬鹿な事を。父さんの存在に気づかない訳ないじゃん。
気のせいか父さんの声が震えてる。本格的に心配だ。なんかあったんだな。
「......よかったぁ!!貴方達二時間も抱き合ってるんだものぉ!!もう自分が知らない内に霊体になってるのかと思うほどのスルーっぷりで、本当に辛かったんだから!!!」
そう言うと、父さんは俺に抱きついて来た。うわ、泣いてやがる。暗くて分かんなかったけど、この人ガチ泣きしてやがる。マジかよ。
......ちょっと可哀想な事したな。
「グスッ.....ふええ......」
「これがアラサーの泣き声っ!? 」
「うるさぃ.....うぅ.....」
息子の胸に顔を押し付けて嗚咽を押し殺す父親。これ俺の父さんは女だからいいけど、字面は凄いむさ苦しそうだ。
.......うーむ、困った。これでは話が聞けなくなってしまった。それにそろそろ帰らないと。
仕方無い。
「......母さん、結局どったの?」
「あー.......一夏、覚悟して聞けよ?」
なんだなんだ、改まって。ちょっと怖いぞ。
「実はな.......俺達無職になったんだ......」
「...................ワンモアプリーズ?」
「......無職になったんだよ」
無職って、それはつまり『
.......あれ? それはつまり母さん達と一緒に暮らせるんじゃね?家族みんなで一家団欒っていう長年の夢叶うんじゃね?
嬉しい。超嬉しい。ハイパー嬉しい。嬉しい.......けども...........
「そう聞くと、あんまり嬉しくないや.......」
「だろうな。どんなに言い繕った所で、お前の両親が職を失った事に変わりはない.......」
申し訳なさそうに顔を伏せる母さん。可愛い。美人で可愛いとか反則だろ.......
「.........ま、まあ、まずはマドカの所へ行こう!」
「.....おう、そうだな!」
「うぅ.....」
って、忘れてた。父さんまだ泣いてた。このままじゃ帰れない。
.......しゃーなしだな。父さんはお姫様だっこだ。まったく、世話が焼けるぜ。
俺達は多少急ぎ足で旅館に戻った。
ーーーーーーー
「母さん、仕事であれ追っかけてたんだろ?なんで倒さなかったんだ?」
「どっか目的地があるっぽいから、泳がせてた......まぁ、もうおシャカになったがな」
「なーる........って、それ駄目じゃね?仕事だったんだろ?」
「大丈夫だろ..........もう俺達には関係ないからな」
「ふーん..........」
「......んな事より、ソイツ寝てないか?」
「まっさかぁ......」
「はふぅ....一夏のご飯はおいひぃなぁ......」
「.........泣き疲れて寝落ちとか、流石父さん」
「はぁ.............」
「........もう『四次元袋』に仕舞っていいよね?」
「.....おう」
「はーい、しまっちゃおうねー」
「やめろ、トラウマだ」
「そうなのか。母さん可愛い」
「.....うるさい」
「.......うし、収納完了。母さん代わりにだっこしてあげようか?」
「馬鹿言うな.................五分程、頼む」
「ニヤニヤ」
「に、ニヤニヤすんな!」
「はいはい、お手を拝借お母様」
「........」
「どうよ、息子の腕の中?」
「........悪くない」
ーーーーーーー
浜辺に着くと、既に俺の嫁達と復活した千冬姉が集合してた。すげぇ、一日経たずと半日で心臓治ったのか。やはり千冬姉も人外。
どうでもいいけど、流石に皆水着じゃなかった。ちょっと悔しい。
俺は着陸すると同時に、ゆっくりと砂浜に母さんを下ろす。
「ただいま」
「「おかえりなさい」」
マドカと鈴の声が重なる。皆、ずっと待ってたのかな。それだったら悪い事をしちゃったな。後で埋め合わせしないと。
「うぅ、まずだぁぁぁぁぁ!!!!」
そして何故か号泣しているラウちゃん。
勢いよく俺の胸に飛び込んできた。今日はよく泣き付かれる。
しかし、父さんと違って泣きじゃくるラウちゃんは中々そそるぜ。ぐへへ。
.........そうじゃなかった。
「どしたん、ラウちゃん?」
「ふぇぇ.....ますたぁが死んじゃったからぁ......!!!」
「おいおい、勝手に殺すなよ.....」
マドカと鈴に目で解説を求めると、鈴が近くに来てこっそり耳打ちしてくれた。
「アレが帰ってきた時に、ラウラが一夏の事を聞いたの」
「ほむほむ」
「そしたら『今一夏は家族と再開中だ。邪魔してやるな』って」
鈴の小芝居劇場。箒のモノマネは鈴じゃ無理だよ。プリティすぎるもん。
「それで、過去に千冬さんから両親が蒸発したのを聞いてたラウラは.......」
こうなった、と。なるほど。そうか、ラウちゃんは軍人時代に千冬姉から聞いてたのか。
ま、千冬姉がドイツに居た時は俺『亡国機業』に拉致られてたし、そん時は千冬姉も母さんの事なんて知らんよな。
「てんきゅー」
「うん.......ところでこの人が?」
鈴がチラリと母さんを見る。なんかソワソワしてるのはそれが原因か。緊張してるっぽいな。
俺は鈴に頷き返す。
「紹介するぜ、この人が俺の母さんの」
「オータムだ。よろしくな.......えーと?」
鈴はしまった!という顔をして母さんに頭を下げる。
「凰鈴音ですっ!!えっと一夏とは、その、えとえと、」
しどろもどろになる鈴。母さんを前にしてかなり焦ってるな。母さん美人だから仕方ない。うん。
「鈴、落ち着.......」
ここは助け舟でも、と思ったが
「あー、一夏から話は聞いてるぜ。よろしくな、『お嫁さん』?」
「にゃう........」
母さんに先をこされた。
顔を真っ赤にして母さんに撫でられる鈴。いいなぁ、俺もなでなでしてほすぃ。
俺が母さんに物欲しげな視線を送っていると、やれやれと言った具合に苦笑された。どうやらお預けらしい。べ、別に羨ましくなんかないんだからァ!!
「......んで、一夏よ。そっちの子は?お前いつの間にジェダイになったんだ?マスター、なんて随分調教進んでるじゃねえか」
「い、いや母さんこれは!」
「わぁーってるよ。自分の息子が変態だって事は、十二分に理解してるつもりだ」
ちゃうねん。ちゃうねんて。別に調教とかそーゆーのじゃないねんて。この子が勝手に言い始めたんやて。強制なんてしとらへんねん。この子がマスターって呼び始めたんやて。ほんまに。
「マ、マスターの母上......?」
「うん、そうだよ。ほら誤解されてっから、ちゃんと自分で自己紹介しなさい」
大体君のせいだから。早く誤解を解いてくれ。このままだと君は奴隷で俺が鬼畜調教師になっちまう。
「で、でもマスターのご両親はっ!」
「......いいから。ここにいるのが俺の大切な母さんだから」
「.......了解しました」
ラウちゃんは手の甲で目元の涙をゴシゴシすると、俺から離れてペコリとおじぎした。なんか微妙に眠そう。
そう言えば、もうかなり夜遅い。母さんとの再会に、時間を費やしすぎた。ラウちゃんなんかは完璧にいつもの寝る時間だ。これが終わったらさっさと旅館に帰るか。
.........あ、ほっぺたペチペチしてる。頭下げながらペチペチしてる。目を覚まそうとペチペチしてる。ラウちゃん可愛い。ラウちゃん頑張れ。
「お、お初にお目にかかります!私はマスターの番犬、ラウラ・ボーデヴィッヒです!」
「.......番......犬......?」
まぁ、そうなるよね。知ってた。
ほら母さんポカンとしてるじゃん。そらそうだよ。そんなリアクションになるよ。番犬なんて言われたらそうなるよ。。
前に言ったじゃん。初対面でそんな事言ったら百パー引かれるって。絶対に危ない人だと思われちゃうから止めとけって。なんで言っちゃうの。
もういっそのことマスターの未来の妻ですの方がよっぽど良かったよ。嘘でも良かったよ。ラウちゃんだったら大歓迎だからさ。
「ば、番犬と来たか.........やるな、一夏」
「えっと........やるでしょ?」
「........................まぁいいや。よろしくな、ラウラ」
多少.......いやかなり間があったものの、母さんは空気を察したらしい。ローテンション気味に言葉を返した。
「はい、こちらこそよろしくお願いします!」
一方のラウちゃんはハイテンションだった。まだ眠そうな表情だけど、声だけは出てる。アカンな。これこっからテンション上がってきちゃって、夜寝れなくなるパターンだ。一回寝るタイミング逃しちゃうと、中々寝れなくなる奴や。俺も経験あるぞ。
.........さて、ラウちゃんばかりを気にしてはいられない。問題はこっからだな。
「んで、アンタが織斑千冬......だよな?」
「........そうだ」
こちらも初対面。
千冬姉には事前に母さんが出来たと話してあるが、弟が勝手に作ってきた母親と言うのはどうなんだろう。やっぱり、姉的には複雑だよな。
まぁでも母さんは気さくな人だし、最悪千冬姉には友達みたいな認識でも構わないかな。うん。
「.......アンタには少し聞きたいことがあるんだ」
ギラついた視線で千冬姉を見つめる母さん。
「.......場所を変えよう」
その視線をものともせず、スタスタと一人で歩いて行く千冬姉。
.......あれ?嫌悪ムードじゃね?
ーーーーーーー
「......あれ?いつの間にか寝ちゃってたみたい。ごめんね、一夏............あれっ!?」
「ここはどこ!?私は誰!?どこは誰!!?ここは私!!!?」
「...........落ち着け、落ち着くのよ、私。クールでセクシーで仕事のデキる女スパイは、こんな事じゃ動じない。動じないんだからっ!」
「..........ふぅ、駄目ね。落ち着いた所でまったく分からない。そもそもなんで私の水着がプカプカ浮かんでるのかしら。しかもかなり昔の水着。訳わかんない」
「............ふぇぇ、ここどこなのよぉ。助けて一夏ぁぁ」
言い回し、表現、比喩その他もろもろ。アドバイスお待ちしてます。感想も。
誤字は見つけ次第、修正していきます。
感想をくれた方ありがとうございます!
もう既に次話も書き終えているのですが、いまいちピンと来ないので書き直しております。
最近やっとこの人数を捌く事に慣れたのに、二人も追加したらまた空気になるキャラが出てくる.......
うーむ、やはり難しいですな。
息抜きで久しぶりに最愛の彼女でも書こうかな.....