織斑一夏と愉快な家族達 作:探さないで!
「.....じゃ、本題に入りましょうか?」
「本題、ですか?」
「あれ、忘れてる? ほら、一夏と私がコソコソしてた」
そういえばそんな話だった!!
ラウラは今のショッキングなイベントで、全て吹っ飛んでいた。
そんなハッとしたラウラの顔を、スコールは舐める様に撫でた。なんだかんだで、彼女を撫でるのがクセになってきたのだ。
そしてその手は、次第にラウラの左目の眼帯に近付いていく。
「ラウラちゃんは痛んだことない?」
「目が......ですか?」
「うん、そう」
目というのは、ヴォーダン・オージェの事だろう。これは軍に居た時、ISとの適合性を上げる為にラウラの部隊全員に強制されたモノだ。
確かにラウラより先にこれを「入れた」周りの人間も、ひっきりなしに叫んでいた。
『取ってくれ、取ってくれ!!!』
そんなに気持ち悪いものかと、そんなに痛いものかと、ラウラは手術される前は大変戦慄した。
実際、ラウラの考えていたよりかはマシだった。だが、それでも何も気にせず今まで通り生活できるかと言えば、そうではなかった。
ヴォーダン・オージェをオンにすれば、瞼の裏を指先でつつかれる様な不快な気分が延々と続き、かと言ってオフにしておけばまるで右目に鉄球でも埋め込まれたかのように重く、異物がめり込んでいるような......形容し難いが、とにかく気持ち悪かった。
まぁ、それはヴォーダン・オージェのせいではなく、瞳に何か入っているというラウラの思い込みから引き起こされた『痛み』であった訳だが......当時のラウラにはそんな事は分からなかった。
やがて、数ヶ月経つとその『痛み』にもすっかり慣れてしまい、特に気にならなくなった。
あんなに叫んでいた隊の連中も、その時には静かになっていた。
「いえ、特には......強いて言うなら初めは違和感が凄かったですが」
「今はそうでもないの?」
「ええ」
「羨ましいわ。一夏は今現在もあんなに騒いでるのに...」
「マスターがっ......!?」
愛するご主人様の名前が出現し、目の色を変えるラウラ。
「あ、じゃあ隠してたんだ。一夏に悪い事しちゃったかな?」
「マスターが、隠してた.......?」
「『いまだに慣れねぇ....』って泣いてたわね」
「..........」
「初めの方はもっと酷かったわよぉ。一夏ったら、フォークで抉りだそうとしてたんだから」
懐かしなぁ、と恐ろしい事をさらりと言うスコール。
しかし、ラウラには一夏が目について何か言っていた覚えはない。
ラウラの様に一夏が最近になってやっと目の違和感に慣れたのかも知れないが、スコールの言い方からして恐らくつい最近も一夏は苦しんでいたのだろう。
つまり、私はまだマスターに信用されきって無いということか.....
そんなラウラの落ち込んだ表情を見て、スコールは―――
「多分、ラウラちゃんに心配かけたくないんじゃないかなぁ」
「そう、でしょうか......?」
「きっとそうよ。一夏が眼帯外したまま寝るなんて、そうとう心許してないとしない事だし」
「外したまま....何故ですか?」
「だって、一夏がその人には何も隠さなくていいって思ってるって事でしょ?」
やはりスコールは一夏の父親だった。
ラウラはスコールの何となく説得力のある言葉に心底ホッとした。
......と見せかけて、実際は一夏との初夜を思い出して、ニヤニヤしただけである。
事情が終わったあとのマスターの寝顔たるや、ラウラは天にも昇る気分だった。
それが信頼の証だと言われれば、ラウラのニヤニヤが収まらぬのも無理からぬ話であった。
どこか遠くを眺めてデュフデュフと笑うラウラを見てスコールは嘆息する。
案の定この子にも手を出してたか。我が息子ながら、守備範囲の広さには呆れるばかりである。
「...まぁ、それはいいとして。つまり、『自分の体じゃない』って、凄い痛いのよ。ラウラちゃんはそうでもないみたいだけどね」
ラウラがいい加減リアルに戻ってくるあたりで、スコールは話を再開した。
「『自分の体じゃない』......?」
「考えたこと無い? ああ、自分の体の何パーセントかはもう自分のじゃないんだ、って」
「はぁ....?」
スコールの言っている意味が分からず、ラウラは首を捻る。
ラウラの頭を撫でながら、スコールは構わず続けた。
「私は時々そうなるわ。今でも体を失った時の痛みがいきなり襲って来て、それで自分の体にくっついてる
やっとラウラにも言いたいことが分かった。
そんなの、ラウラだって何度も考えた。
自分の左目を鏡で見て、煌々と輝くその目を見て、何度鏡を叩き割った事か。
手術が終わった後の数十分は、『あれ、案外カッコイイのでは』などと思っていたが、一時間も経てばそんな気持ち吹き飛んでいた。
その後は何とも言えない虚無感が、ただひたすらラウラを襲った。
たかだか、左目に
それが全身など、ラウラは考えたくも無かった。
「でね、そうなると体が言う事をきいてくれないの。別に神経を遮断した訳でもないのに、動かなくなる......怖いわよぉ、体が動かなくなるって」
「それでマスターと......?」
「...だって誰か傍に居てくれないと、本気で辛いのよ」
拗ねた子供の様に唇をとがらせる。
ラウラはそれを見て苦笑した。
この人はこうでなくては.......
「だからラウラちゃん、これからは私が『そうなった時』、一夏達と一緒に助けてね?」
「分かりました!」
ーーーーーーー
翌日。
いや、朝になっただけなので、翌日って言っていいのか分かんないけど。とりあえず朝。
父さんは『ああ』なると、その日一日殆ど動かなくなる。
動けないのでは無いが、動くと体が痛むらしいのだ。(ラウちゃんと話をしている時は、そうとう我慢してたんだろう)
俺も『目』だけとはいえ、何となく分かる。自分の物ではないという不快感が、痛みとなって襲ってくるのだ。
父さんの場合はそれが全身だ。想像したくねぇ.....
「父さん、飲み物いる?」
「おいスコール、何か欲しいもんあるか?」
「父様、お腹は空いていませんか?」
「皆、ありがとね」
そんな訳で、その日は『家族全員』で父さんを甘やかす事になっている。
特にそういう決まりは無いんだけど、父さんが静かだとなんかしっくり来ない。だから皆その日はいつもの様に劇薬を無理やり飲ませたり、素っ裸でベランダに干したりはしない。
........流石にベランダには無かった。素っ裸で放置は割とあったけど。
うん、まぁ結局何が言いたいかって言うと......
「スコール様、コーヒーなどいかがです?」
「...ありがとう、ラウラちゃん」
......こういう事だったりする。
「ち、千冬さん、これどういう流れなんですかね? スコールさん熱でも...」
「凰、それならソファではなくベッドに寝かさないか?」
「た、確かに....」
言い回し、表現、比喩その他もろもろ。アドバイスお待ちしてます。感想も。
誤字は見つけ次第、修正していきます。
感想をくれた方ありがとうございます!
スコールの設定はこんな感じ。
以前言ったやりたい事というのは、つまり家族の設定をもうちょい作っていこうかな.....とね。
全員は無理でも、後一人や二人はやりたいですなぁ。
ではでは皆様、良いお年を.....