織斑一夏と愉快な家族達 作:探さないで!
ピン芸人のオータムは、ある日街角のテレビを見て愕然とした。
そこに映っていたのは、若かりし頃『力を付けたら、コンビを組もう』と約束したスコールだった。
しかも驚く事に、なんと彼女にはラウラという相方がいた。
つまり、オータムのあずかり知らぬ所で、スコールはコンビを組んでいたのだ。
事務所に見捨てられ、明日の食い扶持にすら困る様な現状のオータム。
そんな彼女とは違い、そこかしこのテレビ局から引っ張りだこで、おまけに相方までいるスコール。
その差は絶望的だった。オータムは悲しみに暮れた。
そんな時、オータムは『伝説のツッコミピン芸人・鈴』の存在を耳にする。
オータムとラウラはダブルボケという、一風変わった芸風で売れている。
ならばコチラはダブルツッコミだ。
オータムはダメもとで、伝説のピン芸人のもとを訪ねるのだった......
ええ、全部大嘘です。はい、本編はシリアス継続中です。
それではドゾー。
「.........」
「.........」
オータムさんがこの部屋に来て、三十分ほど経っただろうか。
その間、私達は一言も口を聞かなかった。
私は冷や汗をかきながらオータムさんの言葉を待ち、オータムさんは何故かニヤニヤとして、同じく私の言葉を待っていた。
.........埒があかない。
「オータムさ」
「......やっぱり覚えてねぇか」
口を開いた瞬間、被せるようにして彼女は呟いた。
覚えてない? ......何をだろうか。あいにくと全く心当たりがない。
「ま、しゃーねーな。あん時はお前かなり緊張してたしな」
苦笑するオータムさん。一体なんの話をしてるんだか私には分からない。
一瞬、さっきの私の暴走はバレてないのかと思ったが、この人に限ってそれはない。
だから、「そういう話」だと思うのだが、今のところ......さっぱりだ。
「なぁ、鈴。オレの事は覚えてなくても、一年前の事なら覚えてるよな?」
一年前というと、私が日本から向こうに移住した時だろう。
「それがどうしたんですか......?」
相槌を打ちながら、何気なしにその当時を思い出す。
そういえば、ちょうどその頃だ。私の「初めて」は。
......あの傭兵、元気にしてるだろうか。
思えばあの仕事は、ターゲットが複数だった気がする。
私は一人倒してダウンしてしまったので、傭兵にはその他全てを任せてしまったのだろう。申し訳ない。
......ああ、思い出した。あの傭兵も確か一人称が『オレ』だった。
鋭い目つきに、スラッとした顔立ち。そんな美人がワイルドな笑みを浮かべるもんで、頼もしいとか思ったものだ。
いや、当時の私にそこまでの余裕は無かったが。
まぁともかく、美人だったのは覚えてる。そう、例えるならオータムさんの...よう.......な.......
「......あれ?」
「どした?」
依然としてニヤニヤ顔を辞めない彼女。
その顔も何故だか傭兵の面影を思い出して......
......
.........
..............
「......まさか」
「おう、ザッツライトだ。いやー、外見全然変わってねぇよな、お前」
ーーーーーーー
オータムさんは、海で一夏に私を紹介してもらった時から気が付いていたらしい。
それなら言ってくれれば良かったのにと言うと、私が一夏に昔の事隠してるのかと思って空気を読んだとの事。
「じゃあ、二人きりの時にでも言って......」
「いや、なんかお前幸せそうだったし、わざわざほじくんのも悪いと思ってな」
「そ、そうですか......」
「んで、今さっき気付いた。あ、コイツガチで忘れてんだ、てな」
そう言うと、彼女はゲラゲラと笑った。
なんだか申し訳なくなって、私は顔を伏せた。
オータムさんは、恩人だ。この人が居なければ、今の私は存在しないだろう。
そんな人の顔を忘れるなんて......
「そんな顔すんなよ。別に怒っちゃいねぇよ、お前も大変そうだったしな」
頭を乱暴に撫でられる。
優しい人だ。心からそう思える。
何故だか分からないが、彼女の顔を見ていると安心感が満ちてくる。一夏がゾッコンなのも、なんとなくだが分かる気がしなくもない。
「......で、どうすんだ?」
「なにがです?」
思わず声が硬くなる。
咄嗟に返したものの、私はオータムさんの雰囲気が微妙に変化したのを見逃さなかった。
......やっと本題。
自然と私の笑顔も消え失せる。
「なぁ、分かってんだろ。このまんまじゃいけねぇって事ぐらいよ」
「......はい」
分かってる。そんな事はハナから分かりきっていた。
それでも尚、私は一夏の傍に居たいのだ。その為だったらなんだってする。
―――例えここにいる全員を殺してでも、一夏の隣に居てやる。
ゆっくり殺気を広げていくと、それは当然の如くオータムさんに阻まれた。
私は殺気の全てをオータムさんに向ける。そして彼女に掛ける殺気の圧を、徐々に増大させていく。
部屋の家具がミシミシと悲鳴をあげ、窓ガラスがひび割れ始める。
天井の電気が、唐突に破裂する。
ポルターガイストもかくやというような異常が、室内に降り注ぐ。
これら全ては、衝突した殺気が起こした現象ではなく、私の殺気が動いた余波だ。
オータムさんは依然として、自分自身と
「くッ......!?」
つまるところ、私は押されているのだ。他ならぬ一夏の母であるこの人に。
部屋の外に殺気が至らせぬようにし、なおかつ私の殺気を内に内包して押し留めるなど正気の沙汰ではない。
しかも、押さえ付けられていると感じる訳でもなく、その逆。自由に暴れさせてもらっている感じだ。それだけでどれほど力量差があるのか分からない。
彼女の顔を見れば先ほど変わらない笑みを浮かべている。
やれるもんならやってみろ。
言外にそう言われた気がした。
「上等ッ......!」
私は殺気を更に開放した。
体術では恐らくこの人には敵わないだろう。ならば殺気のみで打倒するしかない。
幸いな事に、オータムさんは殺気が外に及ばないようにしてくれている。これならば多少無茶をしても問題ない筈だ。
―――そうしてパキリ、と右腕が悲鳴をあげた。
私の殺気に体が耐えられないのだ。当然このまま行けば体が押し潰れる。
構うものか。ここで力をセーブして勝てる様な相手じゃない。だったら初っ端から全力でイカせてもらう。
「......んぁ?」
こちらの意図に気付いたのか、オータムさんが僅かに顔をしかめる。
もう遅い。このペースだと腕の一つや二つ覚悟しなければならないだろう。
が、それだけである。そもそも肉弾戦ならそれ以上の被害を受けただろうし、腕だけの被害で済むならばむしろ僥倖。
その後は一夏を連れて逃げればいいだけ。両腕というハンデを背負ったまま、無理に他と戦う必要はない。いやでも千冬さんもヤッとくべきか......
いやいや待て待て、目的を見失うな。あくまでも一夏が最優先だ。その為に邪魔だからオータムさんとは戦っているだけだ。
「なぁ、鈴。話聞いてくれないか?」
「なん、です......?」
まだおしゃべりに付き合うくらいなら出来る。
頭の中で脱出の算段を考え、殺気の密度を高めながら、言葉を捻り出した。
「オレは別にお前一夏を別れさせたい訳じゃねぇんだよ」
「へぇ......」
嘘をつけ。
そう思ったが口には出さない。向こうも素直に聞いてくれるとは思っていないだろうから。
よって、次の言葉を待つ。彼女がもし本当に私の削除以外になにかココに来た理由があるなら、それを知りたい。
「助けてやるよ、
次の瞬間、私の殺気が
「え......?」
何が起こった。何をされた。何にされた。
分からない。こんなのは初めてだ。まるで元から彼女の物だったかのように、私の殺気が吸収された。
何だこれは。まるで意味が分からない。
呆然とする私に、オータムさんは優しく語りかけて来た。
「
自分が悪い事して、しかも誰もそれを罰してくれない。悪い事をしたら罰されるのは当然なのに。
そう考えるいい子ちゃんは、次第に自分で自分を罰していく。そういうカラクリなんだ」
「......」
彼女が何を言っているか、私は理解できなかった。
「ようは向いてなかったんだよ、鈴。お前は『戦い』には向いてるが、『殺し』にはとことん向いてねぇ」
「......」
「......だから、一夏に任せろ。なんたって、オレの息子だ。お前のなにもかも全て背負ってくれる筈だ。つーか、そーゆー男に育てた」
一夏に任せろ。
どうにかその言葉だけを聞き取り、そしてぎこちなく頷いた。
「よし、じゃあ行くか」
「......ぇ?」
.........どこに?
ーーーーーーー
そして私は、一夏の隣で横になっていた。
「......むふ」
これで都合何度目か。私は一夏寝顔を見て、もはや自分でも見ていられないほどニヤニヤしていた。
ああ、私の胸の内は幸せで一杯だ。オータムさんには感謝してもしきれない。
―――オータムさんの話によると、どうやら私は後悔と自責の念の最強バージョンに陥っていたらしい。
そしてそれは一夏に抱かれたら治るとかいう謎理論のもと、私は一夏とベッドの上で二人きりにされた。
少し前にラウラが『初めて』を終えて、いよいよもって焦っていた私だが、イキナリこんな事になるとは露ほどにも思わなかった。
一夏も一夏で、理由を知ってか知らずか無駄に積極的で、というかかなりのテクニシャンで何度も失神しかけた。
お陰で今は息も絶え絶えだ。まぁ、とっても『良かった』のだが......
「......むふふ」
思い出すとニヤケが止まらない。体を重ねるとは、こんなにも幸福な気分になれるのだろうか。
しかし慌てて首を振る。問題はまだ解決していない。
何でも一夏の隣で寝れば悪夢は来ないらしい。
言われてみれば確かに一夏の隣で寝た事は無いが、だからといってそれは一夏を私から守るためであって......。
そんな事をして大丈夫なのかと言う不安と、そもそも前提条件として
「....りんぅ.....あぃしてる......」
「わ、わっ......!?」
その言葉にドキッとしたのもつかの間、一夏は私を抱き枕の様にして抱きしめてきた。
そこは普通、マドカの名前が出てきて『私じゃないのかよ!』みたいなのがお約束じゃないだろうか。これは反則だ。クリティカルで嬉しすぎる。
しかも、私の眼前には一夏の寝顔がドアップ。体の密着加減もどえらい事になってて心臓が破裂しそうだ。
「うぅ......」
今ほど自分の胸が小さいのを恨んだことはない。
今、私達は服を着ていないし、こんな薄い壁じゃ、私の心臓がドキドキしてるのがすぐバレてしまう。というか、胸と胸が完全密着してるんだし、絶対バレちゃう。
いや、一夏は今寝てるから大丈夫なんだろうけど、私が言いたいことはそうじゃなくって、だからこれってつまり
―――結局寝れないのでは......?
ーーーーーーー
「オータム、大丈夫なの?」
「......何がだよ?」
「だって鈴ちゃんの『悪意』、そうとう大きかったわよ?」
「昔のお前よりマシだよ」
「もう、茶化さないの」
「......実際、オレが無責任に『全部自分のモノにしろ』なんて言ったから、ああなっちまったんだ。オレが引き取るのが当然だろ」
「あっそ......鈴ちゃんにはなんて言ったの?」
「『詳しい』事はなんも。ただ気負いすぎだぜって言った」
「......アナタがそれ言うの?」
「へっ、オレは別に気負ってねぇよ。好きで背負ってんだ」
「......バカ」
「褒め言葉として受け取っておくぜ」
言い回し、表現、比喩その他もろもろ。アドバイスお待ちしてます。感想も。
誤字は見つけ次第、修正していきます。
感想をくれた方ありがとうございます!
なんでクインテットファンタズム完結したんや。アニメ化までワンチャンあったやろ!
つーか、そんな事よりグリザイア二期はまだか!!
迷宮っつーことは、つまり麻子が出るんやろ!!!
うっわー、楽しみぃ!!!!
ウチのオータム母さんなんかは、もろ師匠の影響受けてますからね。