織斑一夏と愉快な家族達 作:探さないで!
ちょっと息抜きにオリヒロモノ書いてました(ステマ)。
こっちに飽きたわけではありません。
では、ドゾー
第54話
隣で小さな寝息をたてて眠るマドカ。
俺はそんな妹の頭を優しく撫でると、目を閉じて今日の事を思い返した。
――俺は、マドカにプロポーズした。
今日は十二月二十四日。俗に言うクリスマスイブだ。
俺はマドカに告白した。
前々から今日にしようと決めていた訳ではない。高校卒業後にしようとか、真面目な仕事に就けたらとか、色々考えていた。
しかし、何故か今日じゃなきゃいけない気がした。
今日じゃなきゃ駄目な気がした。
俺はすぐに家族に打ち明けた。
そして、だから今日は二人きりにしてくれ、と頼んだ。
皆は何も言わず了承してくれた。
それから、マドカをデートに誘った。
マドカは逡巡することもなく、喜んで頷いてくれた。
とびきりの笑顔でだ。
かわいい。
俺はわざわざ集合場所を設けた。
それは何故か。
指輪だ。マドカとデートする前に、指輪が必要だった。
多少急ぎ足で街角の小洒落た店に行き、以前見かけて「いいな」と思っていた指輪を買った。
もちろん自分のお金で。
夏休みが終わったあたりから、俺は楯無さんに仕事を斡旋してもらっていた。なんてことは無い。将来への資金稼ぎである。
楯無さんは裏社会の人間だ。必然、そういった仕事が大半を占めていた。
やれあの人をどこどこまで守ってだの、やれこれをなになにに届けてだの。そんな感じの仕事だ。俺は亡国機業で慣れているため、特に苦労はしなかった。
そんな事があって、図らずとも給料三ヶ月分を俺は手にしていた。
狙い済ましたかのように、その指輪も給料とまったく同じ値段だった。
買うしかないね。
その後、俺はマドカと合流。デートに移行した。
世はクリスマスシーズン。町中カップルだらけだった。
そんな中俺達は、何を見るわけでもなく、何をしに行くわけでもなく、ただひたすら二人で手をつないで町を歩き回った。
行けども行けどもリア獣しかいなかった。いろんな人達が至る所でチュッチュしてた。
「俺達もするか?」とマドカに聞いたら、「兄様のキス顔は女の子宮が疼くので、あまり他所の女には見せたくありません......」と頬を染めて返された。
かわいすぎである。
俺は有無をいわさずマドカに口付けをした。
そんな他愛もない会話をしながらゆっくりしていると、いつの間にやら夜になっていた。
しばらくすると、雪が降ってきた。
ここしかない、と思った。
「雪が降ってきましたね。兄様、今温めて差し上げます」というマドカの言葉を遮り、俺は往来の場で片膝をついて跪いた。
『四次元袋』から指輪を出した。
「結婚してください」と一言そう言った。
周囲からヒューヒューなんてのが飛んできたのかもしれないが、あいにくとその時ばかりは俺も真剣で、周りなんて気にしてる余裕は無かった。
長い沈黙の後、マドカは目に涙を浮かべてコクリと頷いた。
俺のプロポーズは成功した。
その後はあまり覚えていない。
気がついたら俺の部屋にいて、そんで二人共全裸で......いつもより長期戦になって、今に至る。
「ふ、ぁ......」
眠くなってきた。
俺も寝るか。
――ああ、俺はこんなに幸せでいいのだろうか。
......
.........
...............
.................................
ーーーーーーー
気が付けば、俺は真っ暗闇の中にいた。
目を開けているのか閉じているのか、それすら分からない闇の中にいた。
「うぉ......!?」
少し遅れて、妙な浮遊感を感じ取った。
浮いているのかとも思ったが違う。俺の体の感覚がない。
なんかスゲェ気持ち悪い。
魂的な奴だけで浮いてるんだろう。と適当に納得した。
同時に、これが夢である事も理解したからだ。
確か明晰夢と言ったか。多分これはそれだ。夢の中で「これは夢だ」と気が付いてしまう奴だ。
「......?」
しかしおかしい。仮にも夢なら、ある程度ぶっ飛んだストーリー展開があっても良いのではないだろうか。
一向に変化は訪れない。
......このまま暗闇の中で朝まで過ごすのだろうか。ちょっと怖いな。
「兄様」
などと思っていると、声がした。
聞き間違えるはずもない、マドカの声が。
辺りを見回すと、すぐに見つかった。
マドカは全裸で、体中からうっすらと黒いオーラの様なモノを纏って、ゆっくりと歩いていた。
彼女は俺とは違い、ちゃんと体があった。
とすると、アレは俺が造ったマドカなのだろうか。
無意識に妹を創造するとは、やはり俺は心底惚れているらしい。
マドカはゆっくりとした足取りで近づいてくる。
俺はそれを黙って見ていた。
マドカの裸体に見惚れていた。
マドカの表情は、いつもより硬かった。
俺の前では、マドカはあんな顔を滅多にしない。俺を悲しませないためだ。
急に胸の辺りがザワつき始めた。
これは本当に夢なのか。
そうではない気がする。
何かが違う気がした。
不意にパキリと、音がした。
――違和感に気付いたのは、その時だ。
ヒビだ。マドカの右腕に大きなヒビが走った。
手の先から肩まで、全体的にクモの巣が貼ったようなヒビ。
そしてそれは、マドカが一歩近づくたびに大きくなっていった。
胸のザワつきは刻一刻と増していった。
マドカは止まらない。
なんだよこれ。
どんなホラーだ。
ふざけんなよ。
パキリ、とまた音が鳴った。
「マドカ、そこで止まれ!!!」
俺は
「ッ......!?」
ギョッとした。
慌ててマドカを見た。
右腕が無かった。
マドカは止まらない。
「......なんだよ、これ」
悪寒が凄い。
これは本当に夢なのか。
これは夢なんかじゃ無いのか。
いや、夢だからこそこんなにも恐怖を感じているのかもしれないが、何か違うような。
怖いのだ。とにかく怖い。
怖い、怖い。怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖いコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイ。
俺はマドカを失うのか。
いや、そんなバカな。
「待て、そこから動くなマドカ!!」
俺は叫んだ。必死に叫んだ。
マドカは小さく首を振った。
心配しないでくださいと、首を振った。
「......兄様と初めて会った時、正直に言ってしまえば嫌でした。
ああ、こんな人に私は命を捧げるのか、と。
いくら仕方がないとはいえ、最初は嫌々でした。兄様のお命をお守りするのは」
やっとマドカは口を開いた。
しかし、いつもと様子が違う。
「い、命を捧げる......?」
何を言っているんだ、マドカは。
分からない。
あれほど気持ちの通じあっていた妹が、今は全然分からない。
「ですが、すぐに私はそんな気持ちを持った事を恥じました。
兄様はとても素敵なお人でした。
私にはもったいないくらい、とてつもなく素敵な男性でした」
依然として、マドカは歩み続けている。
俺はどうすることもできず、ただぼうっとしているしか無かった。
今やマドカは両足を無くし、上半身のみでコチラに近づいて来ている。
歩いているのか浮いているのか分からなかった。
「今日まで私は、兄様の強さに、優しさに、そして弱さに、守られ続けて来ました。
私は幸せでした。
私は本当に幸せでした。
......強いて心残りがあるとしたら、兄様との結婚生活なども過ごしてみたかったですね。
しかしそれも、兄様にプロポーズされた事で、スッキリしました。
このまま消えようとしている私からしたら、今日は夢のように素敵な一日でしたから」
そう言って、マドカは本当に嬉しそうに微笑んだ。
だが、俺の頭には『このまま消えようとしている』という言葉が、呪いのように駆け回っている。
どういう意味だ。
どういう意味なんだ。
何かの比喩なのか。
分からない。
現実とどこか乖離した光景に、頭が働かないのかもしれない。
すべてが分からない。
気がついたら、マドカは目の前にいた。
体なんてもはや消え失せており、浮いているのはマドカの頭だけだ。
「ッ......!?」
ここまで近くで見て、俺は初めて気付いた。
泣いていた。
マドカは、笑顔で泣いていた。
「兄様、わた、しは......あなたの事が、だいすき、です......」
そう言ってマドカは、『俺の中に消えていった』。
ーーーーーーー
「ッァ......!?」
「......」
「......はははは、結局夢オチかよ......焦らせるぜ、全く」
「......」
「ぅー......にしても、なんでこんなに寒いんだ。布団の中なのに、まるで氷を突っ込ん、だ、よ...うな......?」
「......」
「......マドカ、寒くないか?」
「......」
「なぁ、マドカ......?」
「......」
「お、おい、マドカ、嘘だよな......?」
「......」
「......あ、ああぁぁ......」
「......」
「......ああ、ああああ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああァァァァァァァァァァァァッッッッッッ!!!!!??」
それでは、今回より最終章です。
最終話ではありません。最終章です。
これ以降、オリ展開的な奴が続きます。
うまく書ける気が全くしません。なにせ初めてですから。
ですが、精一杯書いてみますので、どうかお付き合いいただければ幸いです。
更新は少し遅めになると思います。
ご容赦を。