「おおきに、霖之助はん。……もし講民党の男がまた来たら、次また武器が入荷するって言ってみてくれへん?今度は銃で」
「まあ……構わないけど、来たら警防団へ通報すればいいかい?」
「紅魔分団に頼むわ。里の連中は囮ってもんを分かってへんからね。紅魔分団に連絡すれば、向こうからウチに報せと増援が同時に来るってわけ」
「了解した」
単車で行けば香霖堂から里へはそう時間もかからない。しかし藤花は、捜査の為の手筈を脳裏で全て描き切っていた。彼女の考えた通りなら、ロケット野郎に辿り着くのはそう時間は要しまい。
燃料を惜しんで単車は高黍屋の前へ停め、車体を揺さぶる躍動を止めると身を翻して何時しかの中華料理屋へと向かった。店の明かりは落とされていたが、じきに開店するのであろう。丸々として人当たりの良さそうな店主は一段落した掃除の道具を脇へどけて看板を引きずり出している途中であった。
「どーもー、陳さん」
「あぁ、煙草屋のあねきね。ごきげんよう」
「うんうん、商売はどない?」
挨拶ついでに煙草を一本差出し、店主は謝謝と言って受け取った。勿論火も点けてやる。聞き込みの時に相手へ近づく手段としてこれは定着しつつあった。
「やっぱりうちの店高いのかねえ、けっこうベンキョさせてもらってるんだけど」
「まあ、他には無い味やしええんちゃう?幻想郷で本格中華を食えるんもここだけやもんね」
藤花も続いて煙草をくわえた。店主も火種は持っていたらしく、燐寸を取り出して擦ってくれた。とりあえず二人で一口、味わって押し迫る夕暮れへ紫煙を吹き上げる。
「警防団の方でこないだの砲撃事件、調査してるんやけど、うちは商売あがったりやで。……あんたんとこも、変な客とか従業員相手せなあかんの大変ちゃう?」
もちろん目星を講民党へ絞って来ているわけだが、この店をあれだけ貸し切る資金力だ。常連だったりして犯人扱いされれば店主の態度を硬化させかねない。あくまで世間話や方々で質問していそうなことから切り出した。
「そうねー、うちのお客さん、大体良い人だね。金持ち喧嘩せずってねぇ。こないだも幽霊業界の人。ひと?かな。シキガミとかいう猫の子の祝いの日だって盛大に遊んで行ってくれたね。でも店の若い子、あれが全然だめ」
「店の?」
考え込むように伏されていた藤花の目が、瞬きと同時に眼前の陳を見据えた。そういえば店主がシンパなら高級店たる中華料理屋へ入り浸る事も可能なわけだ。本当なら捜査はおろか、聞き込みまでやりづらくなるが……。しかし、次のコメントでその疑念は打ち消された。
「そうそう、セミナーとか言って、最近全然お店来ないし」
「うーーん、成る程なあ」
講民党の、所謂表の顔とは何なのだろう。名前の響きからすると自己啓発とかその辺りか。
「大変やな……ほな、今日んとこはここいらで」
*
中華料理屋で一定の成果を挙げたと確信する藤花は、次の目標を竹林へと定めた。数日ぶりに炭焼き小屋を訪ねると、今度は無事に妹紅に会うことが出来た。
「お久しぶりやね。そっちの分団はどない?」
「どうも、里の分団は外環を支部か何かと勘違いしてるみたいだね。本業の案内人が手につかなくて困ってるとこ」
やはり中央集権の考えが根付いていない幻想郷の人里で外界の組織を模倣する事は困難なようだ。藤花もその点については辟易させられている。
「ここだけの話、砲撃事件はやっぱり人の手で、それもでかいとこがやったみたいやね」
「おお、何か掴んだのかな」
「まだ名前だけやけどね…。講民党って、聞いた事ある?」
藤花の言葉に、妹紅はンーと唸って片手で目を覆って何かを思い出そうとしていた。
「どっかで聞いた事あるような……」
「ほんまに?」
思わず藤花が煙草を差し出す。このまま在庫を使い切ってしまわないか心配だ。しかし、彼女の憂いをよそに妹紅は無事記憶から答えを探し当てることが出来たようで、手を顔から放して明るい顔で振り返った。
「思い出したぞ。最近里で加入者を増やしてる慈善団体だ」
「ジゼン……?」
意外な肩書きだった。普段あまり慈悲を受ける事がないせいか、そちら方面には疎い。
「しかし、なんでまた妹紅はん知ってたん?」
「うん、少し前にね、永遠亭に多額の寄付をして話題になってたかな。人里で職を失ったりした人を保護して犯罪減らすなんて言って」
その情報だけ耳にすれば社会正義と言った感じではあるが、妹紅も「言われてみれば怪しい」と続けたのを聞いて、藤花も頷いた。
「せやろな。金持ちのおっさんが裏では変態だったなんて、ようある話やし」
「変態かどうかは分からないけど……永遠亭から大量の薬を買ってたな。大半は傷薬とか腹痛の薬だったけど、精神を病んだ人にとかいって、そういう薬をしこたま」
「……宗教戦争に発展するかもやね」
「異変級は嫌だなあ」
大騒動に乗じて脱出、は藤花も考えないでもなかったが、新興宗教に関しては彼女はあまりいい顔をしなかった。
「変な拝み屋にはウチも恨みあるし…海のあいつ……」
「?」
「いや、こっちの話。妹紅はん、永遠亭への道案内……お願いしてもええかな?」
年の瀬に向けて日は短くなってきているが、まだ時間は残されている。
*
永遠亭という呼称からは、いまひとつ想像が沸かなかったのだがこうして現物を目にするとその佇まいに圧倒させられる。無論博麗神社や命蓮寺を目にした時も同様に古い建造物を目にした際の感想を抱いたはずだが、日本の寺社は一部を除いて建立後に施した意匠、塗装を色あせるままに時の移ろいも味わう印象が強かったが、永遠亭という名を冠したそれは、それこそいつしかの美鈴の問い「関ヶ原から何年」、ともすれば関ケ原以前に建てられ、劣化を抜きにしたそのままの姿を絵巻物から引っこ抜いてきたような屋敷と言えた。里の初見も「映画村のよう」としか言えなかった彼女だが、その評価はここでこそふさわしいと言える。
「……行こうか」
しばし言葉を失っていた彼女を、さりげなく妹紅がうながした。
「狸御殿撮れそうやね」
「何だって?」
「あいや、映画でも撮れそうやねって」
藤花の言葉に、妹紅は鼻を鳴らす。
「蓬莱ニートに言ってあげな。収入源が増えるって喜ぶだろうね」
「日当貰ってんのに?」
「ニットーじゃない!……まあ、会えば分るよ。ああでも今日のお目当ては薬屋さんの方か」
妹紅の顔を向けた先を見れば、「処方御用命の方は」の流麗な筆文字と矢印の書かれた立札がひとつ。巨大な屋敷であるし、住居と分けて開業医と薬局の入り口が設けてあるのだろう。
常世の人間の立ち入りを拒むような幽玄さに溶け込む屋敷を回り込み、笹の葉の擦れ合う音と月影清かな光景を楽しんでいると行く手に隙間から漏れ出でる光の筋が、唯一生者のいる空間であることを表すように伸びていた。
「ここだよ」
「おおきに……妹紅はん来ぇへんの?」
「あの演習以来顔出しづらいんだよ……」
「あぁ………」
心中察した。これ以上は言うまい。藤花は小さく頷いて、ひとり木戸を叩いた。
*
「ごめんくださいまし」
しばしの沈黙。もしかしたら屋敷へ引き込んでいるのかと思い、そっと扉を押してみた。
何かと常識を覆してくる幻想郷の常として、藤花の知る医者と異なるであろう事は心得ていた。確かに中に広がる光景は診察室や調剤室を備えた医院というより、構造はともかく、患者と医者の無味な空間というより、彩りに富んでいるせいか酒の代わりに薬瓶を並べたバルめいていた。
「はーい」
奥から明るい少女の声。まっこと女性の社会進出が目覚ましい。
声の主が現れる瞬間を引き延ばしてじっくり観察したならば、まず目に飛び込んできたのは一対の白い耳。そして淡い色の髪がなびいてその下からぱちくりと瞬く赤い目であった。耳が見え無ければギョッとしていたかもしれない。
「あっ、お客さん」
「えーと、はい。こっちのお医者さんに……」
「お師匠様ですね、少々お待ちを」
来た時と同様に素早く引っ込んで行ってしまった。翼の次は耳に慣れた方が良いのかもしれない。
仕様も無い事を考えていると、二人分の足音になって戻ってきたようだ。
「お待たせしましたあ」
おっとりした声だ。これは先ほどの兎少女とは違う。
現れたのは負けず劣らず淡い色の豊かな髪を一まとめにし、シルエットこそ看護婦だが、赤青の市松模様めいた装束の女性であった。
「どーも……」
「お薬ですか、診察ですか?」
「あ、あいや。ウチ警防団の者なんですけど」
そう言って懐から支給された手帳を示して見せる。身分を隠す職業だった彼女がむしろ明らかにしていかなければならない身分になったのだからなんだか皮肉めいている。
「まあ」
時間も時間なので世間話をする時間もあまりない。単刀直入に行こう。
「講民党……をご存じ?」
「ええ、ええ」
こないだも来られましたよ、と言うのでお願いして卸した薬品の目録を見せてもらった。ざっと目を通したところ、町医者や薬局が置いてあるような薬品ばかりである。妹紅が言うような慈善団体が社会的弱者に福祉を行き渡らせるという名目なら、まだわかる。
しかし、どんな薬品が入れ替わり立ち代わりリストに名前を出そうと、必ず含まれているものがあった。
「アンシホルモン……」
わざわざカナ文字に直してあるが、中身は一目瞭然だ。藤花は覚せい剤取締法など知る由も無いので、ガサ入れの根拠と言うよりも、胡散臭い団体である事の証拠として理解した。薬品で高揚状態にした相手にお告げだ瞑想だと色々吹き込んで信者として引き入れる、とまあこんなところではないだろうか。
「えーと」
「永琳です、八意永琳と申します」
「永琳はんやね、すんません。ご挨拶が遅れて……遅くにお邪魔してお願いばっかりで恐縮やねんけども……これ、今度写しを警防団本部宛てに送ってもらえます?担当は藤花で」
「ええ、分かりました。……男の人の話では、慈善事業と治療の為と言ってましたけど、何か事件ですか?」
「うーん、まだ確証ってわけやありませんが……武器と薬品を集めてるみたいで」
何かあったら教えて下さい、と伝えて今夜は退散する事にした。何度もお辞儀して永琳の下を去ると、表へ足を進めて闇の深くなった永遠亭の庭先を一望する。来た道を戻りつつ妹紅を呼ぶと、やがて竹林の道の側で手を振る影があった。
「お待たせ……遅ぅまでごめんな」
「ま、仕事だからね。サテ世間じゃ夕食や帰宅だけど……時に藤花どの」
「なんでごぜえやしょう」
トウカドノと茶化したように呼ばれて、思わずナンバ歩き。見ると妹紅は片手を突き出し、中指から小指を抱き込んで人差し指と親指で輪を作る。輪を立てればゼニの話だが、ここではすなわち杯なり。
「屋台でいっぱい、どうかな」
「…………ウチそういうの好きやねん。案内のお礼に奢ったげる」
「分かってるじゃないか」
二人して笑いながら竹林を抜けて行った。
*
翌朝。
屋台の酒が抜けきらぬうちにふらふらと煙草畑へ向かい、戻ってきた藤花を出迎えたのは開店待ちの客ではなく緊張した面持ちの美鈴とこあであった。
「藤花さん、香霖堂から連絡がありました。講民党を名乗る男から接触があったそうです。今日、店に現れると」
「おお、やっとやね……ちょっと待っててな」
大急ぎで二笑亭へ駆け込み、野良着を脱ぎ捨てておろしたてのシャツ、そして拳銃嚢を身につけた。すっかり身支度を整え終った頃、表でレパードのエンジンが唸りを上げて始動した。
*
香霖堂への道中、こあが見せてきたのは珍しく写真だった。後部座席から差し出されたそれを受取り、藤花は目当ての男の顔を脳裏に焼き付けた。
「塩谷諸太です。塩問屋に養子として転がり込み、寺子屋では優秀な成績だったそうで」
「それがなんでまた警防団を狙うんやろ」
「以前、塩屋の長者が怪異に憑かれた事があって、家の評判がガタ落ちになったみたいですね。それに前後して彼も病を患った事が…‥」
藤花は写真を戻し、胸元から煙草を取り出した。
「それで反妖怪派に転向したってわけやね。ようある話や」
こあの話では、反妖怪派、反博麗派も決していないわけではなく、幻想郷成立期に博麗神社と対立した一派の子孫であるとか、以前に文が尻尾を掴みかけてその事を記事にしたとか。
「ただ、警防団を狙った理由がよく分からないね。人も標的にするかなあ」
運転席で美鈴も意見を述べた。確かに存在を誇示するなら別の機会や、実行後の犯行声明なり出してもいいはずだが、それも無い。
「ま、理由なく人を傷つけられるから犯罪者になれるんやけどね」
彼女らが目的を確認し終り、里の家々の並びが途切れると、窓外は秋の自然一色へと塗り替えられた。
*
「でもどうするんですか、まだ実行犯かも分からないのに……」
香霖堂でこれ見よがしに待ち受けるわけにもいかず、手前の道で脇へ入ってレパードを隠すと、こあが尤もな疑問を提示した。
「それもそやなぁ……ちょっとウチと美鈴で考えるわ。こあちゃん空飛べるんやったら店の手前の上から見張っててくれへん?ウチらはあそこに隠れてるから合図してんか」
「りょ、了解です」
緊張した面持ちのこあを残し、藤花と美鈴はそろそろ見慣れてきた香霖堂への道を落葉を踏みしめ、歩き出す。法律なき警察でしかない警防団が犯罪者を捕縛できるのは殆ど現行犯でしかない。私設警察化を防ぐ為だったが、足かせもいいところだ。
「そや、美鈴が囮になってくれたら」
「おお、なるほど……でも怖いなあ」
「頼むって!晩御飯つけるから」
「め、メシでつられるとか美学が無いよ!」
もう一押しなところで足踏みして回れ右しかけた美鈴を、藤花は方へ腕を回して口を耳元へ寄せ、回した手を美鈴の眼前で小指を立ててみせる。
「一人、紹介する」
「………なんでもやる」
藤花の吐息を耳朶で感じ震えながら美鈴は何度も頷いた。
塩谷が囮の美鈴を見かけた時、考えられる行動は三つだった。一つ目は講民党へ引き入れようと勧誘してくる、次いで妖怪の横暴の宣伝材料として接近してくる、そして最後はその場で非人間的存在として始末しようとして来るかである。とりあえず彼女には紅魔館をクビにされたという設定でオロオロ現れてもらう事になった。
そうと決まった時、小石が二人が身を寄せ合っている岩へ落ちてきて音を立てた。見上げれば午後の早まる日没を予感させる赤みがかり始めた木漏れ日に見え隠れする、こあの姿が。手を振っている。
「来たで!……上手い事やってや」
「うーん、大丈夫かなあ」
「最終的には、どっちかで決めるって」
藤花が懐の手錠と拳銃を指し示して見せると、美鈴は格闘家の気合い入れめいた息を一つついて、すっくと立ち上がった。
香霖堂には、予定していた入荷が遅れると返答するよう要請してある。塩谷が店に入り、出てくる時間はそんなにかからないはずだ。
思った通り、五分もしないうちに店の戸を引く音がして塩谷が姿を現した。少し伸び気味の散切り頭に、書生めいた袴の出で立ちの痩せた男であった。
「うっ……ぐす……ッ…あんまりだぁ……」
美鈴が迫真の演技で相手に聞こえるようにべそをかきつつ、森から現れた態で歩きはじめる。案の定、男は振り返って彼女の姿を見止めたようだ。
「…………」
「お嬢様も……あんなに言わなくても……ぉ……うぅ」
本人が心配していた演技力も、申し分無かった。最後の最後まで「大丈夫かなあ」と繰り返していたが、藤花の「女は天性の役者なんやで」の一言で何とかやる方向に落ち着いたのだ。
「あんた……」
「え………」
相手の方から声をかけてきた。いきなり凶行に及ぶような事は無さそうだ。藤花が見上げると、こあも位置を移動していつでも飛びかかれるように男の後背、木の上に陣取っている。さすが警備の補佐もしているとだけあって素早い。
「里で市民団体の活動に協力している者ですが、何か事情がある御様子。良ければ御話を……」
間違いなく講民党の事だ。美鈴もしゃくり上げる演技を交えつつ、見事に応対している。相手は完全に油断しきっていた。
「館を……うぇっ……いきなりクビだなんて……明日からどうずれば……」
「なんと……湖の、あそこですね?資産家の使用人なんて、クビはすなわち住処を失って生活もおぼつかなくなるという事なのに」
「ぞ…ぉ、なんでずよぉ……何百年もお仕事頑張ったのに……うぇえ」
「百……?そういえば、あなたは」
塩谷は、そこで何かと忘れられがちな事実に気付いたらしい。待機する二人に緊張が走った。
「弱りましたね……私どもの施設で、と思いましたが入所者の中には妖怪の手で家族を喪った方もおりまして………でも御安心なさい、こちらの道を行けば」
塩谷の手が道を指さす。それにあわせて美鈴が顔を向けるのと、塩谷の別の腕が背中の鞄を投げ捨て、荒縄を引き出すのはほぼ同時だった。
「ちょ、ちょ…先走りすぎやって!」
藤花が思わずつっこみながら飛び出そうとする。
しかし。
縄が首にかけられようとする刹那、美鈴の体がくの字に折れ、同時に片足が張り付いた落ち葉を舞い落しながら靴底で相手の下腹部をしたたかに蹴り出した。
「ぐゥッ」
「よせよせ素人さん、慣れない事をするもんじゃないよ」
余裕の台詞を吐きながらも、美鈴の躍動は止まらない。地面に接したままの足を軸に体を半回転させ、予備動作無しで上体を一瞬のうちに立て直すとそのまま前に幅跳びめいて跳躍、一切のエネルギーを再び蹴り出す足に込めてなおも立ち向かおうとする相手の中心に叩き込んだ。
「イヤーッ」
「………!」
その衝撃は前進しようとしていた成人男性を止めるどころか、後方へ数メートルは吹き飛ばすものであった。
「さて……おっと」
しばらく動けまいと思っていたが、美鈴が捕縛の為に手加減したのか、男は怒りのこもった目で彼女を睨みつけると、懐から拳銃を取り出した。
「そこまでや、生身の女の子に銃は卑怯やろ。塩谷諸太、脅迫及び誘拐未遂で逮捕する。変な気は起こしなや。この銃はあんたのアイバージョンソンより数段強いで」
*
とりあえず別件逮捕であった為、砲撃事件、講民党の黒い疑惑についてまずは吐かせなければならない。持ち物をひっくり返したところ、拳銃の他に警防団車両砲撃に使われたM202の説明書が出て来た為、容疑はますますもって動かぬものになると思われた。
しかし塩谷の態度は不遜なものであり、警防団の分団管轄の曖昧な地区でもあったので取り急ぎ紅魔館特設取調室へ塩谷の移送を急行した。