衛兵マルフーシャの国境門防衛100days   作:橋場はじめ

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2日目

 二日目。

 自動販売機から出てきた食事をとったマルフーシャたちは準備を終え、既に国境門の警備を開始していた。

 昨日と同じ曇り空。まるであまり気乗りしていないマルフーシャの気持ちを表しているようだ。

 

「さむ……」

 

 変化がないのは天候だけでなく気温もだ。手がかじかんでしまうほどではないが、これからもしばらくここで働くことを考えたら対策を考えた方が良いだろう。

 

『我慢なさい。前線の兵に比べたらあなたなんて全然ましなのよ』

 

 マルフーシャの少し後方にいるライカからたしなめる声が飛んでくる。とは言ってもそれは生の声ではなく耳に装着したインカム越しの声だ。いつでも声の届く範囲に居られると限らないとライカがどこからか持ってきたものだ。

 そうは言われても見通しが良いのは門を守るためには良いものの、風を遮る物がなにもないというのはそれはそれで不満点でもある。

 ただそれでも夜間警備でないだけマルフーシャはまだ救いがある方だ。

 夜間はこれ以上に冷え込むうえに視界が悪くなる。そのため警備の仕事も一層難しく、経験のないマルフーシャが夜間警備を任されることはまずない。

 そうマルフーシャは自分に言い聞かせて、寒さに堪えつつ門兵としての仕事をこなしていった。

 

 

 

 ――数時間後――

 門兵としての仕事を終え交代要員に引継ぎをしたマルフーシャは、ライカと共に宿舎へと帰宅していた。

 今日のマルフーシャの戦果は昨日やってきた目玉タイプの特攻機械兵二機だ。その事が気になりマルフーシャは問いかけることにした。

 

「ライカ」

「なに、どうかした?」

「機械兵が抜けてくることはほとんど無い、んじゃなかったの」

 

 マルフーシャは気になったのはその事だった。実は昨日と同じように機械兵を倒した後にまた声が聞こえたのだが、ライカには聞こえた様子がなく聞いてもまた空耳だと言われるのが落ちだろうとそっちは黙っておくことにした。

 

「ぐ、偶然でしょ偶然。そういう時もたまにはあるわ」

 

 そう言うとマルフーシャは一応納得した様子だった。しかし言った方の当人はそうではなかった。

 確かに確率の上ではあり得る話ではあるが、それでもライカは二日続けて機械兵が国境門までやってきたという話をこれまで聞いたことが無かった。マルフーシャは偶然だと言いはしたが、本当にそうなのだろうか……。 

 たまたま偶然、運が悪かった。そう決めつけて軽視した結果命を落とした者がいることをライカは知っている。

 

(前線に問い合わせてもいいけど…………)

 

 もし問題が発生していたとしても隠されてしまう可能性が強い。

 問題が発生していると監査官(ライカ)が知れば、その理由を探るために監査に来て下手をすれば責任を取らされる。そう考えそうなるぐらいならと問題を黙殺してしまう、という事がこれまでに何度かあった。

 そうでなくとも前線で汗や血を流す兵士たちからすれば、内地勤務や国境門警備などは自分たちと比べてだいぶ楽をしていると恨みを買いやすい。

 一番良いのは抜き打ちで前線に行くことだが、今新兵であるマルフーシャの元を離れる訳には行かない。それにもし本当に前線で異変が起きているのならここにとどまって国境門を守るべきだろう。

 前"線"を守るよりも国境門という"点"を守るほうがはるかに守りやすいからだ。

 

(流石に本当に危なくなったら報告してくるはず…………)

 

 そもそもを言えばそういったことを考えるのはライカの仕事ではない。ライカよりももっと上の者の仕事だ。

 楽観視は良くないが、自分の領分以上のことを考えすぎるのも良くはない。このことを考えるのはここまでにしておこうと、ライカは切り替えることにした。

 

「マルフーシャ、早く身体洗ってきなさい」

 

 そう言って追い出すとライカはいそいそと編み物を始めた。

 そして十数分ほどでマルフーシャが出てきてもライカはせっせと手を動かし続け――。

 

「できた」

「?」

「マルフーシャ、ちょっとこっちにきなさい」

 

 ベッドの縁に腰掛けてうとうとしながらライカの様子を眺めていたマルフーシャに声をかけながら手招きして、自分の目の前に座らせる。

 そしてさっきまで編んでいたマフラーをマルフーシャの首にかけた。

 

「…………?」

「あげるわ。あなたずっと寒そうにしてたでしょ?」

「ありがとう、ライカ」

「礼なんていいわ。言葉よりも行動で示しなさい。礼を言われるよりもあなたがしっかりと職務を果たしてくれた方が嬉しいわ。…………私もシャワー浴びてくる」

 

 ライカが内心照れていることに気が付いたマルフーシャが楽しそうに見つめてくるのに耐え切れず、逃げるように浴室へと向かった。

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