「青」と「黒」   作:アメイジング長なす

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魔法使いの夜────映画化、おめでとう!!
ジョージボイスのロビン(願望)が動く姿が見たいぜ!!


狭間
狭間──雪の思い出


 雪が降り積もる三門市の12月31日、つまりは大晦日。

 玉狛支部の隊員はそれぞれの仕事や訓練、休憩を取っていた。

 青子はリビングで一人、ソファに寝転がりながら、テキトーに雑誌を読んでいた。

 

「お、アオコか」

 小南と10本勝負をしていた遊真がリビングにやってきた。

「今日は何本取ったの?」

 雑誌から目を離さずに青子は言う。

「4本。5本の壁は厚い⋯⋯」

 口を3にしながらそう言う。

「私が最後に迅とやった時は1本よ? こっちは2本取るのに必要以上に壁が作られてるわ」

 青子は少し疲れたような声をだす。

 

 窓の外では雪だるまを作っている成人男性や、あろうことかその雪を試食している人間もいる。

 だが青子はそんなのには目もくれず、雑誌から目を離して積もった雪を見た。

「覚えてる?」

 青子が外を見ながら遊真に聞く。

「なにをだ?」

「私たちが初めてあった日のこと」

「確か、オレと親父が山を歩いてた時に⋯⋯」

「そ。私()()と出会ったのよね」

 青子は静かに笑う。珍しい、穏やかな笑みだ。

 

「私も小さい時にあったから、もう何年前かも忘れた」

「オレもだ。次にあったのが、親父が死んでから一年ちょっとした後だな」

 遊真は懐かしんで、感慨深い気持ちになった。

「さてと、行きますか」

 ソファから立ち上がった彼女は伸びをする。

「どこに行くんだ?」

「外。久しぶりになんか雪で作ろっかな──って思って」

 少し恥ずかしそうにはにかむ青子。

 

「あんたも来る?」

「暇だし、オレも行く」

 

 ☆

 

 外はやはり寒い。

 コートを羽織ってこの寒さ。だから雪も積もるわけだ。

「何作る?」

 青子は隣にいる遊真に声をかける。

「最初はやっぱり雪だるまだろ」

「決まりね。じゃあ私、胴体作っとくから、頭出来たら持ってきて」

 役割を決めた彼らは、効率とは無縁の、ただ楽しむためだけの仕事を始めた。

 フカフカしている雪を集めて、巨大な玉を作る。なかなかどうして、これが楽しい。

 青子も遊真も、作っているうちに自然と笑顔になってしまう。

 

 試行錯誤をして、さらなる完璧な完成品を作る彼ら。

 破壊に関しては稀代の魔女とも言われる青子だが、その魔女でさえ、この遊びはどれだけ時間を費やしても、滅ぼし、壊せないだろう。

 

 最初に出来上がった雪だるまは遊真より少し大きく、威厳がどこからか出ていた。

「久しぶりにしては上出来でしょ」

 喜ぶ青子。

「今度はオレが胴体を作るぞ」

「オッケー」

 遊真は唐突に思った。

 ──この青子はレアだな、と。

 青子は美人ではあるが、中身はバーサーカーと賢者のハーフとも言える混沌(カオス)である。

 そんな彼女がただ純粋に楽しんで雪だるまを作っている。珍しく、笑顔を絶やさずに。

 ──あれ? これ得してね? と思うのも無理はない。実際得してるから。

 

 2つ目の雪だるまは青子と同じぐらいの大きさだった。

 1つ目と並べられているので、夫婦とも見れないこともない。

「もはや芸術ね」

「これを超える雪だるまはたぶん誰も作れないな」

 2人とも満足しながら、そう言い合う。

「アオコ、提案なんだが」

 遊真が閃いた顔をしながら言う。

 

「コイツらの下に小さいのを大量に作るのはどうだろうか?」

「アンタ天才だったの?」

 

 ☆

 

 時刻は午後4時。

 玉狛支部に帰ってきた迅はリビングに入って早々に、面白いものを見た。

「迅さん、静かにな」

 遊真が小さな声で迅に言う。

「オッケー」

 遊真の横には、遊真にもたれて寝ている青子がいる。

「遊んでたのか?」

「うん。入口の近くに雪だるまがあったでしょ? アレ作ってた」

 そりゃまた凄いな、と心の中で呟く迅。

 あそこまでいったら、軽く人を呪えるだけの力はあるだろう。

 

「いつまで作ってたんだ?」

「レイジさんが帰ってくるまでだから、3時ぐらいまでだな」

「それって、いつから作ってたの?」

「11時ぐらいから?」

 迅は口を抑えて、笑わないように必死に我慢する。

 4時間雪だるま作りに勤しんだら、そりゃ疲れるよな、と思う迅。

 

「遊真たちだけで作ってたのか?」

「最初はそうだけど、途中でコナミせんぱいとかも参加してきたぞ」

 ちなみに頭が異様にデカいヤツがコナミせんぱいの作品──と付け足す遊真。

 胴体と頭の大きさの比が1:3の雪だるまのことだろう。

 恐らく今頃、コテッと頭が落ちてるに違いない。

「迅さんも作るのか?」

「後で作ってみようかな」

 

 ◇

 

「2人はどこで出会ったんだ?」

 目の前のソファに腰をかけて迅は遊真に聞く。

「初めてあったのは親父と旅をしてた時だな。山を歩いてたら、偶然出会ったんだ」

 遊真はその時のことを鮮明に覚えている。

 

「性格は今と全く変わってないし、正直怖かったけど──カッコよくもあった」

 そう言って横をチラリと見る。まだ本人は寝たままだ。

「その山は凄い雪が降ってて、積もってる量も多かった。そんな道を自然に歩いてたんだ⋯⋯雪なんてないっていうふうに」

 珍しく懐古する遊真の顔は──屈託のない、満面の笑顔だった。

「その後話してるうちに気づいたのは、オレは、こういう人間になりたがってるかも──ってことだな」

 迅は静かに耳をすましている。

 

「アオコは人間らしいんだ。たぶんどんな時でも自分の信条を良くも悪くも優先するぐらいには⋯⋯オサムとチカはアオコに似てると思う。

 だからアオコはアイツらともやれてるんだと思う」

 迅はそれを聞いて、「そっか」とだけ──しかし十分な思いを込めてそう呟いた。

「じゃあおまえは幸運だよ。そんな人間、滅多に会えないだろうし」

「だな」

 窓の外ではまだ、銀の花が舞っている。

もうじき夕飯の時間だ。

 

 ☆

 

 遊真が青子を起こすと、玉狛支部の全員が集まっていることに気づいた。

「ごめん、待った?」

「いや、今全員集まったとこ」

 宇佐美が返答をする。

「すみません、レイジさん。オレらまでご馳走になって」

「気にするな。今日ぐらいはお前も楽したいだろ」

 台所では京介とレイジが話している。

 どうやら、今宇佐美と小南の周りにいる弟たちのことについてらしい。

 

「おはよう、青子ちゃん。いい夢は見れたっぽいね」

 珍しくぼんち揚を食べずに迅がリビングに入ってきた。

「そうね──銀世界だったわ」

 その言葉の真意は遊真にしかわからなかったが──青子の顔は実に良いものだった。

 

 

 外の雪はまだやまない。

 この夜が続くうちは────そういうことだろう。

 花は咲いたばかり、雪の音は鳴り響いている。

 

 




ノリと勢いに任せて書いたけど、意外と楽しかった。
短いのは許して。

余談ですが、途中出てきた雪だるまを作ったり、雪を食べた成人男性は二宮さんです。


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