「青」と「黒」   作:アメイジング長なす

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 遅くなって申し訳ない。
 これからはこういう一か月ちょっとに一本ぐらいの投稿ペースになるかもしれません。
 失踪しないで、ランク戦までいけるかな……?


開戦

 ジリリリリ。

 

 いやに耳障りな音が聞こえる。

 その音で目を覚ますと、窓の外がほんのり明るくなっていることに気づいた。

 まだ1月、日の出が少し遅いのも納得だ。

 

 ピ。時計を止める。

 

「──」

 青子は身体を起こして、あくびをした。

「なんだか寝足りない⋯⋯」

 昨夜は特に何をしていた訳でもない。むしろ早く床に就いた。

 なのにまだ寝足りない。

 ベットからグラつく身体に力を入れて立ち上がる。

「⋯⋯ああ、そうだった。遊真は玉狛に泊まってたんだった」

 思い出した。

 いつも起こさせているヤツがいないから、いつもより早く起きるようにしたからだ。

 

 今、この家にいるのは青子ただ一人。

 つまり、冬特有のこの部屋の寒さを吹き飛ばす、暖房をつける便利なヤツがいないということだ。

「今は⋯⋯まだ学校まで時間はある」

 現在、6時36分。

 学校が始まるのは8時30分。

 少しゆっくり目に朝ごはんをとっても、余裕でお釣りがくる……というか、早く起きすぎた。

 

「──ん?」

 青子はケータイにメッセージがきているのに気がついた。

 食パンをトーストに入れタイマーをして、ケータイを手に取る。

 メッセージの差出人は米屋だった。

「────」

 内容を見て、青子は絶句した。

 要約すると、

「宿題終わってないから手伝って(●︎´▽︎`●︎)」

 と書いてあったのだ。

「自業自得ね」

 青子は冷酷に、そして一般的にその要望に応えないことにした。

 

 メッセージを無視して、洗面所に向かう。

 蛇口をひねると、冬の成分(寒さ)が存分に含まれた水が出てきた。

 その水を手にすくって、顔を洗い、タオルで水を拭く。

 

 顔を上げて、洗面台横の洗濯機に使い終わったタオルを入れる。

 そうして、いつもの習慣を終えて洗面所から出ようした時だった。

「──────」

 振り返って、目をしばたたく。

 一瞬、鏡を通り過ぎた時、鏡の隅に、赤い(ドレス)不審人物(ナニモノか)を見た気がした。

「──────、ふぅ」

 どうやら、いつもの勘違いだったようだ。

 青子は深呼吸をして、洗面所から退室した。

 

 

 


 

 場所と時は移って、学校の昼休み。

 米屋と隣の席であることが災いして、青子は米屋の愚痴に付き合うことになった。

「小森はあの問題をオレが解けないことを知って、当ててきたんだろーな」

「愚痴を言う前に、あんたは小森に何をしたのか自覚した方がいいと思うけど?」

「そうだぜ、槍バカ。これはおまえが悪いな」

「えー?」

 米屋の席の前に座っている出水(いずみ)もそう言う。

 

「あ、そういえば」

 そんな言葉を全く意に介さず、米屋は話を変えた。

「大規模侵攻のことって、C級に伝達されてんの?」

「一応は、ね。C級は市民の避難の手伝いが第一だって」

「伝達はされてんのか⋯⋯でも蒼崎、おまえは戦いに行くんだろ?」

 米屋が好戦的な顔を覗かせ、出水が興味深そうに青子を見る。

 

「場合によるけど、たぶん戦うと思うわよ。そういう経験もあるし」

「なあなあ、蒼崎」

 出水が小さな声で青子を呼び、顔を近づけさせる。

「槍バカから聞いたんだが、おまえのトリガーって弾系なんだって?」

「そうだけど、それがなに?」

 

「今度機会があったら、撃ち合おうぜ!」

「嫌。第一、そんな機会は本部で訪れないし」

「じゃあ玉狛で⋯⋯」

「なんでそんな戦いたいわけ?」

「弾バカだからだろ?」

 呆れてため息をつく青子。

「今、話すべきことは侵攻が始まった時の段取りでしょ? 

 今このタイミングで始まったらどうするの?」

「そんなの簡単」

 米屋が自信満々で言い切る。

 

「蒼崎は生徒を避難場所まで避難させて、それ以外は全員戦場にGO!」

「C級のトリガーで? しかも、か弱い乙女一人に?」

「どこがか弱いんだよ」

 あ、キレた──と出水は思った。事実、青子は笑顔だが、それでも隠しきれないほどの怒りのオーラが溢れている。

 

 その時だった。

 

「おい、アレなんだ!?」

 一人の生徒が窓の外を見て、そう言った。

 青子たちが外を見ると、夥しいほどのゲートが三門市中に開いていた。

 しかも、この学校の付近でもいくつかのゲートが開いている。

「ねえ、米屋くん」

「⋯⋯」

「あの量をか弱い乙女のC級一人で何とかしろって言うの?」

「まあ、なんとかなるんじゃね?」

 米屋にげんこつが一発、いい音が響いた。

 

「トリガー、起動(オン)

 トリオン体に換装した青子たち。

「さっきはああ言ったけど、あんたたちはここから離れてもいいわよ」

「じゃああのげんこつはなんだったんだよ⋯⋯」

「蒼崎はあの量相手にいけるのか?」

 米屋を無視して、出水が悩み気味に青子に聞く。

 

 が、愚問だったようだ。

 

「あの量は敵のうちに入らない。さっさと避難誘導させて、私も防衛に参加するから、先に行っといて」

 青子は余裕の笑みを浮かべて、そう伝えた。

 

 ▲

 

「目的は雛鳥の確保。そして、可能ならばここで『ブルー』を排除する」

 とある船にて──彼らは作戦の再確認をしていた。

「『ブルー』の排除⋯⋯ですか?」

「それについてだが、これは機会ができたのならば、の話だ。

 必ずしも排除できる機会がくるとは限らない。とりあえず頭の隅に置いとくだけでいい」

「了解です」

 

「隊長、あのトリオン兵はどう扱うつもりですか?」

 ある兵士が隊長と呼ばれる者に質問をした。

「あれは敵の主要戦力を分散させるための駒だ。使う時は各自の判断に任せる」

「ケッ⋯⋯ンなもんいらねーよ。『ブルー』つっても、雑魚黒トリガーを持ってるだけの小娘だろ? 

 なんならオレ一人で、全員皆殺しにしてやろーか?」

 一人が挑発気味に提案する。

 

「⋯⋯おまえが出陣する時は俺が決める。もし、おまえがワープした場所に『ブルー』がいたら──そのときは殺してもいい。おまえなら可能かもしれないからな」

 隊長は薄っぺらい笑みを浮かべた。

 

 √

 

「先生、私が誘導するので生徒を連れて避難してください」

 青子の言葉を受けて米屋と出水は先に防衛戦に参加した。

 この学校にいた他のボーダー隊員たちは生徒と教師に避難するように言って、戦場に行ったらしい。

 

 ──となると、この学校にいるC級は私だけか。

「焦らず、確実に、いつも通りに振る舞うだけね」

 走らず、早足で廊下を歩く生徒。

 青子は彼らの様子を見ながら、同時に外の状況も確認する。

 ──トリオン兵はいない、と。

 どうやら、他のボーダー隊員たちがここらのトリオン兵を一掃しているらしい。

 窓から飛び降りて、グラウンドに出る。

 

「落ち着いて行かせれば、被害はなさそうね」

 グラウンドに出て来た生徒と教師たちも多くなってきた。

「先生、今から言うことを彼らに伝えてください」

 青子はその中で、一番使えそうな教師に、これからのことの伝言を頼む。

「⋯⋯ああ、わかった。蒼崎君は気をつけて、生きて帰ってきなさい」

「言われなくてもわかってます」

 そう言って、足早に青子は戦場へ向かった。

 

 ──トリガーオフ。

 心の中でそう宣言して、換装を解く。

「トリガー、オン」

 そして、自身の最も信用するトリガーを起動する。

「やっぱり、これじゃないと」

 換装をしなおし、トリオン兵が溢れかえっている警戒区域を見る。

 

「西と北西は大丈夫そうね。他は⋯⋯東と南、それに南西か。

 南西は少し厄介ね⋯⋯」

 青子が通っている三門市立第1高等学校は、警戒区域から見て西南西にある。

 つまり、トリオン兵の一団と進行方向が、少し一致しているのだ。

「じゃあ南西は私が担当するか」

 

 方針は決まった。

 青子は真っ向からやってくるトリオン兵に、自ら向かっていくのであった。

 

 ▲

 

 戦闘を有利に進めるのは何か、と聞かれると何を思い浮かべるだろうか。

 単体の圧倒的な戦力? 

 圧倒的な量の兵器? 

 戦略と戦術? 

 はっきりとはわからないが言えることは一つ。

 当然のことだが、それら全てが相手を上回るなら──勝利は近い、ということだ。

 

 現在、ボーダーは相手に先手を取られている。

 相手のトリオン兵の大群を駆除させるために、各地に戦略をバラけさせている。

 それで耐えている状況。追加戦力もあるにはあるが、まだもう少し時間がかかる。

 ここからさらに手を打たれると、命の選別も余儀なくされるかもしれない。

 

 忍田はこの状況をそう感じていた。

 ─────そして、次の一手は無慈悲に指された。

 

『忍田さん、こちら東! ラービットと思われる新型トリオン兵と遭遇した! アイビスを防ぐだけの装甲がある!』

 ──このタイミングで⋯⋯。

「⋯⋯わかった、増援が来るまで上手く凌いでくれ!」

 さらに、

「現在、ラービットと遭遇した部隊は東隊を含めて、3部隊です!」

 沢村が忍田に新たな情報を伝達する。

「どこの舞台だ?」

「諏訪隊と鈴鳴第一です。諏訪隊に関しては、諏訪隊長がラービットに捕らえられました⋯⋯そして、そのラービットの相手を風間隊がするそうです」

 忍田は苦虫を噛み潰したような顔をした。

 

 東と村上たちが遭遇するのは痛い。

 動かせる部隊が減ってきている⋯⋯しかし、まだ増援部隊は到着しない。

 とすると、やることは限られている。

 

「B級の部隊に告ぐ! 今新型と交戦していない者たちは合流して、『避難が進んでいない地区』を優先して防衛、そしてA級の各部隊は新型の相手をせよ!」

 

「B級全部隊!? それでは⋯⋯東、南、南西の1箇所ずつしか回れんのじゃないのかね!?」

「その通り。1箇所ずつ、確実に、敵を排除していく。

 その間、他の地区の被害はある程度、覚悟していただく」

 驚愕した根付に忍田が冷静にそう答えた。

 

 ▲

 

 南西にて。

 青子は迫りくるモールモッドを相手に、一歩も引かずに、むしろモールモッドの大群に突っ込んでいた。

「──」

 そして、次々にそのモールモッド(ガラクタ)を壊していく。

 青子にとっても、この数のモールモッドと戦うのは初めてだ。

 

 だが、似たような経験ならある。

 身内が作った人形たち。

 出身地を出て、戦争地域で戦ったトリオン兵たちと、トリガー使い。

 そして、久しぶりに会った遊真とともに戦った、敵国の軍。

 

 ──それらの経験と、培われた状況把握能力、そして使い慣れたトリガー。

 いつも通りに、落ち着いて焦らず戦えば、この程度の量は敵ではない。

「たいしたことないわね」

 言葉通りに、青い魔弾は打ち抜き、ガラクタは花のように砕ける(散る)

 有象無象の敵に臆することなく飛び込むその姿は、まるで─────

 

 その時だった。

 

 後ろの方から、腹を破るような、気味が悪い音がした。

「──?」

 後ろ髪を引かれた青子が後ろを見ると、そこには会議で名前が出た──ラービットがトリオン兵の内部から這い出てきた。

「──へぇ。私を捕まえれると思ったの?」

 好戦的な笑みを浮かべながら、青子は構える。

「悪いけど、今はそんなに機嫌がいいわけでもないの。私を捕まえたいのなら──」

 ラービットは青子をめがけて跳躍して、剛腕を叩きつけた。が──

 

「──接続(セット)

 ラービットの渾身の一撃をバックステップで回避して、目の前の敵を見据え、宣言する。

「──―行使二層、直流数紋」

 自身の右腕(主砲)の中身のトリオン伝達回路(ピース)を、慣れた手つきで迅速に、そして丁寧に組み替えていく。

「あんたじゃ無理だから、他のヤツを連れてきなさい───!」

 青子はそのセリフとともに、先程までとは段違いの威力の魔弾を放った。

 

 

 ラービットはとっさに腕を交差させて防御したが、その魔弾は片方の腕を打ち抜き、もう片方の腕にヒビを入れ、その威力でラービットを吹っ飛ばした。

「……意外と耐えるのね」

 それは、青子にとって意外な出来事であった。

 青子はラービットに対して、素早く倒すのに適切な威力の弾を、放ったつもりだった。

 しかし、実際は違うらしかった。その証拠に、ラービットはまだ生きていて、立ち上がろうとしている。

「思ってたより、かなりしんどくなるかもね……」

 青子はそう呟いて自身の認識を改め、ラービットにとどめの一撃を与えた。

 

 

 




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