「青」と「黒」   作:アメイジング長なす

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頭をフルで活用して、頑張って書いていこうと思ってます。
あと、書きたいっていう欲求を抑えられなかった。


プロローグ
プロローグ


「いい? 赤は止まる──わかった?」

「わかった、赤はとまる、だな」

 一人の少女が目の前の少年に注意をする。

 

「あとアンタは正体がバレないようにすること──わかった?」

 言い方を前より強くして少女は言う。

「あんたがバレると私までバレるんだから、絶対にバレたらダメよ。もしバレたら⋯⋯わかるわね?」

「わ、わかった。バレないようにする」

 鬼のような形相と威圧感で少年に約束させる。

「それじゃ、遅刻しないようにしなさいよ。私は先に行くわ」

 彼女はそう言って少年の返事を待たずに部屋を出た。

 

 △

 

「なあ、転校生が来るって知ってたか?」

「マジで!?」

 場所は変わり三門私立第一高等学院、その二年B組でと米屋陽介(よねやようすけ)がその友達と話をしていた。

「てことはやっぱ知らねえか」

「? どーゆうことだよ」

「いや、その転校生のことなんだが、誰も見てねえって言ってんだよ」

 その言葉に米屋は首を傾げる。

 

「そりゃ校長室とかで話聞いてるから、誰も見てねえんじゃねーの?」

ここ(三門市)に転校してくるヤツって、スカウトされたヤツが多いだろ? だから気になったんだよ」

 

 

 △

 

 一方、その噂の転校生は──

『アオコ、ユーマが遅刻をした。そして学校にむかっている途中に車に衝突してしまった』

「⋯⋯」

 報告を受けて静かに怒っていた。

「で、()()()()()()()ってことはバレてないのよね?」

『ああ、途中で車と衝突した時に、住所や名前は言ったが、そのことは言っていない』

「そう。⋯⋯で? あのバカはなんでそんなことになったの?」

『学校に登校する前にボーダーを見にいったからだ』

 こめかみに青筋が現れた。朝からこんな気分になるなんていつぶりだろうと彼女は思い、もはや怒りを通り越して呆れた。

 

「レプリカ、私は今、遊真(アンタ)を殺したいぐらいに怒ってるって遊真に伝えといて」

『わかった』

 彼女は口調を朝以上にキツくして、言った。

 

「はあ⋯⋯これじゃあいつがあっちから来たってすぐにバレるかも⋯⋯」

 ため息を一つ。 それを消してくれる人間は残念ながらいなかったが、かわりに少しは気を紛らわしてくれる人間が来た。

蒼崎(あおざき)さん、そろそろホームルームの時間だから、教室にむかいましょうか」

 そう言われた少女──蒼崎青子(あおこ)は目の前の教師に自身が怒っていることをバレないように返事をした。

 

 ◇

 

「蒼崎青子です。今日からよろしくお願いします」

 自己紹介をした青子に二年B組の男子は喜んだ。あるものは感情を丸出しにして、あるものは心の中で喜んだ。

 栗色の髪をした可愛らしい少女が今日から同じクラスということに喜ぶ男子は多かった。

 ⋯⋯まあ、性格がわからないうちはただの可愛らしい少女に見えるのだろう。

 

「はーいみんな静かに! 質問とかは休み時間に。それじゃ蒼崎さん、あの空いてる席があなたの席だから」

 生徒たちを落ち着かせて青子に自分の席がどこかを教える。なるほど、あのカチューシャをつけてるのの横かと思う。

「オレ、米屋陽介! よろしくな!」

 元気よく挨拶をしてくる陽介に、よろしく、と彼女は挨拶をかえした。

 

 △

 

 一時間目が終わるとすぐに青子(転入生)の周りに生徒たちは集まった。転入生の(さが)である。

「どこから来たの?」

 もちろん、青子はこの質問に対する回答をキチンと用意している。

「外国ね」

「外国ぅ!? なんて言う国!?」

「いろんな所をまわっていたから、あんまり覚えてないわね」

 嘘ではない。半分は嘘ではない。

「なんか流行ってたこととかは?」

「鬼ごっこ⋯⋯だったわ」

「サッカーとかは?」

「あんまりしなかったわね」

 などなど、どこの学校でも転入生が来たら行われるイベントを着実とこなす。

 

 そんな会話の中に、三門市(この地域)独自の質問がやってきた。

「蒼崎さんはスカウトで来たの?」

「スカウト?」

 思わず聞き返す。

「そう、ボーダーにスカウトされてここに転入してきたのかってこと」

「ボーダー⋯⋯?」

 何を言っているのだ、ここの人間は──と言いたそうな顔をしてその単語を繰り返す。

「そうかぁーボーダーのスカウトで来たわけじゃなかったんだな」

「そのボーダーっていうのは何?」

 その発言に彼らは目を丸めたが、すぐに元通りになった。

 

「外国にいたんだもんな。そりゃ知らねぇわ」

「ボーダーっていうのは、うーん⋯⋯まあ自警団みたいなものだな。四年ちょっと前にここに『近界民(ネイバー)』ってヤツが攻めてきたんだよ。何人も死んだりしたよ。銃とかが効かなかったからもうみんなが死を覚悟してたんだ」

 

 そのとき! ──少年は言葉を強く発した。

 

「突然、謎の一団がそいつらを倒していったんだ! その人たちのおかげでそいつらは倒されて、みんな助かったんだ。そして! その人たちが所属していた組織こそ──!」

「オレらボーダーってわけ」

 いいとこ取りはやめろよな、米屋ぁ、と青子の隣の席の米屋がさっそうといいとこ取りをしていた。

「俺たち、ってことはあなたはそのボーダーの隊員なの?」

「おう。興味があるなら入隊試験でも受けたらどうだ?」

「そんな簡単に受かるわけでもないんでしょ、侵略者の侵攻を防衛する組織には」

 普通に考えたら軍にいる鬼教官みたいな人間ばっかりがいそうな組織である。

 が、残念ながらそれは間違い。なぜなら──

 

「俺でも受かったんだから、いけるだろ」

 目の前に成功例のバカがいるからである。

 陽介が言いたいことを青子は理解し、少し小さなため息を一つ。

「転入生に自分がバカだって伝えるのはどんな気分なの?」

 ついでに皮肉も一つ。

「事実だからしょうがねーな」

 目の前のバカは皮肉が皮肉と理解できないぐらいにバカだったことに、青子は再びため息をついた。

 

 ▼

 

 そこから先はとくに目立ったことはなく、放課後になった。

 今日は用事があるから、と一緒に帰ろうとしたクラスメイトたちに物腰柔らかな態度で説明して一人で帰路についた。

 ⋯⋯彼女の性格を知るものは、彼女の後ろに怒れる狂戦士(バーサーカー)が見えたと言うだろう。帰路についたのではなく、戦場に出向くように見えていただろう。

 

 それもそのはず。彼女は今まさに報告を受けていたからである。

『アオコ、ユーマが──』

「まさか、()()を使ったわけではないでしょうね?」

『いや、(ブラック)トリガーを使った』

 怒りを通り越して呆れてきた青子は頭を抱えた。

「⋯⋯アイツ今ドコ」

 ついに片言になってしまったらしい。頭の中のどこかがやられて(故障して)しまったらしい。

『今は()()()()の人間といる』

「その場所、教えて。そして遊真にそこから動くなって伝えて」

 だんだんと怒りがこみあがってくる青子の言伝(命令)を、レプリカはすぐに遊真に伝えた。

 そして青子は徐々に加速しながら向かっていった。

 ◆

 

「? どうした、空閑(くが)

 先程と雰囲気を変えて、なにやら暗い雰囲気が空閑遊真(ゆうま)に漂う。

「すまん、オサム。今からかなりヤバいのがくるから、気をつけてくれ」

 いわゆるお通夜ムード。顔を露骨に変化させて、気分がだだ下がりになる。

 今の言い方だけを切り取ると、猟奇殺人者や通り魔がやってくるように聞こえるが、今からやってくるのはそれよりももっと恐ろしい女子だ。

「まさか⋯⋯トリオン兵がここに!?」

 トリオン兵とはここ三門市に四年前に現れた近界民(ネイバー)が作った兵隊人形のことだ。

「いや、人間だよ。おれと同じ、あっちの世界からきた人間」

 その言葉で今からここに来る人物も近界民(ネイバー)ということを理解した。

 

「そいつは危険なのか?」

「ああ、ある意味トリオン兵の大軍よりも危険だ」

「ふーん。私もそのトリオン兵の大軍よりも危険な人間、ぜひ見てみたいわね。その人、どこにいるの?」

 

 空閑遊真に冷や汗がダラダラと。

 三雲修(みくもおさむ)には驚きが。

 そして──

「レプリカからいろいろと報告してもらったけど、説明してくれる?」

 蒼崎青子には怒りに満ちた笑顔と──こめかみに出現している青筋が。

 

 ●

 

「あ、あなたは」

「蒼崎青子よ。三雲修ね?」

 思わず、はいっ、と答えてしまう修。目の前に鬼軍曹がいるようだ。

「コイツにいろんなことを教えてくれてありがとう。コイツがトリガーを使ってたのは見たのよね?」

 有無を言わさぬ威圧感。肯定しか許さないというような空気が修を襲う。

「見ました」

「それとアンタ、ボーダーなのよね。ってことは空閑遊真(コイツ)のことを報告するなら⋯⋯」

 身構える修と構える青子。まるで被食者と捕食者が対峙しているようにも見える。

 

「待て、アオコ。おれは自分で判断してオサムを助けたんだ。オサムを殺すのは、筋が違うだろ」

 ⋯⋯朝からずっと彼女を怒らせている張本人が呑気にハンバーガーの包み紙をポケットにしまいながら言っている。

「アンタねぇ⋯⋯もし私たちがあっちから来たってことが知られたら、アンタの目的も果たせないのよ!?」

「そうだな。でも、おれたちとやり合って勝てるやつはいないだろ」

「そうかもしれないけど、その油断がダメだからこう言ってるんでしょ⋯⋯!」

 いよいよ青子の怒りが爆発する。

 

「ぼくは空閑のことを報告しません」

 突然、修が切り出した。

「え?」

「だから、ぼくは空閑と蒼崎さんが近界民(ネイバー)だって報告しないって言ったんです」

 目を丸くする青子。

「それ、信用できる?」

 今まで以上に空気を異質化させる青子。しかし──

「ついさっき出会った人の言うことは信用できないと思います。でも──今は信用してください、としか言えません」

 そんな空気なんて関係ない、と言うように真っ直ぐな目で青子を見据える修。

 

「⋯⋯それも、そうね」

 身構えていたのをやめる。それと同時に異質な空気は消え失せた。

「珍しいな。アオコがこんなに簡単に人の言葉を信じるのは」

「別に。コイツが言うように信じないと、いろいろと不都合なことが起きると予想して判断しただけよ」

 具体的に言うと指名手配になる可能性がある──と彼女はそう付け足した。

「それに、アンタもコイツが嘘をついてないって判断したんでしょ」

「うん、オサムはウソついてない」

 ならひとまず安心ね、とも青子は付け足した。

 

「修。アンタ、遊真に日本のことも教えてくれるんでしょ」

「そうですけど」

「ありがとね。コイツにモノを教えるの難しいと思うけど、まあ頑張って」

 ついでに勉強も教えてあげて、と勝手に要望する。

「いいですけど、蒼崎さんは日本のことを知ってるんですか?」

「姉貴がいろんなところに放浪したりしてるから、たまにここのことは聞くわ」

 そうですかと、納得する修。ついでにこの人のお姉さんも、こういう性格なのかと心配する。

 

「それじゃ、私たちは帰るわ」

「私たちって⋯⋯一緒に住んでるんですか?」

コイツ(遊真)の父親にはいろんな恩があるから、それをコイツでチャラにしようとしてるだけよ」

 なんとも冷たい言い方である。しかし同時に修は、青子の性格も少し理解した。

 

「じゃ」

「オサム、また明日だな」

「ああ」

 三人は帰路につく。

 この出会いが彼らの運命を大きく変えることは──今はまだ秘密。

 

 ☆

 

 彼には未来が見える。

 目を覚ました時、彼は未来が見えた。

 キレイな星が空を埋め尽くす夜。

 そこには知っている人物はもちろん、顔がわからない人物も何人かいて、その中には──

「⋯⋯最上(もがみ)さん」

 そこには彼の師匠である最上宗一(そういち)もいた。

 夜だからいつのことかはわからないが、彼にはその未来が高確率で起こる、と確信した。

 まだそれに至る過程の未来は見えないが、恐らくその過程では最悪を避け続け、最善に近いものを選び続けた後に、見えた未来は起こる。

 それはとても難しいが、今その未来が見えたということは、何かが起こったということ。

 ベッドから体を起こして、意識を覚醒させる。

 少なくとも、近いうちに起こることではない。ならば今は今の仕事をしなければ、と彼は思った。

 

 

 




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