赦してクレメンス。
対面
「
「どういう
副作用とはトリオン能力⋯⋯トリガーを使うための才能⋯⋯が高い人間に現れることがある超感覚のことである。
現在、深夜の中学校にて、蒼崎青子と空閑遊真が調査をしていた。
なぜなら昼にトリオン兵がこの中学校に突然出現したからだ。修と遊真のおかげで犠牲者を0人にできたが。
「にしても、緊急事態だったら訓練生でもトリガーぐらい使わせればいいのにな」
ところが修はまだボーダーの正隊員ではなかったため、ボーダーの規定に違反してしまったことになった。
そのことに思うところはあるだろうが、青子は何も言わない。
「もしかしたら、目をつけられたかもね」
「そうだな。オサムがボーダーで何言われたかわからないけど、昨日の
涼しげな顔をしている悠真をジト目で見る青子。
「? どうしたんだ、アオコ」
「⋯⋯いや、何言っても無駄なことね」
頭にハテナが浮かんでいる遊真には目もくれず、青子は静かに怒りを抑えた。
「それにしても、夕方のあれはなんだったの?」
「夕方のあれ」とは、突然街に爆撃型トリオン兵、イルガーが現れたことだ。
「どっかの国が
「⋯⋯一理あるわね。イルガーを使う国にアソコがいるし」
「アソコ?」
なんでもない、と青子は首をふった。
▲
翌日、早朝。遊真と青子は遊真がブラックトリガーを使った所に来ていた。
トリオン兵を木っ端微塵にして道にできた穴で彼らはあるものを見つけた。
「コイツか」
「コイツね」
さて壊そう、と殺意マシマシでそれと向き合う青子。
『アオコ、手に持っているそれはなんだ』
遊真のお目付け役のレプリカ──初見で見ると喋る炊飯器型ロボットに見える──が青子に問う。
「何ってハンマーじゃない」
なにを言っているんだコイツは、なんて言い出しそうな顔をしてキョトンとする彼女。
「うおっ、どこからとりだしたんだ」
「そんなことどうでもいいでしょ。いいから壊すわよ、それ」
目がかなりイッてしまっている彼女がハンマーを振り下ろしかけたそのときに、彼らは来た。
「空閑と蒼崎さん⋯⋯!? って、何やってるんですか!?」
「おうオサム⋯⋯と、どちらさま?」
「ほんとね。だれ?」
修の横に立っている男に二人は注目する。
「おれは迅
「ふむ? そうか、あんたがウワサの迅さんか」
「なんかチャラそうね」
慣れているのか傷ついた様子はない迅。
「おまえ、ちびっこいな! 何歳だ?」
遊真の髪の毛をわしゃわしゃ撫でながら訊く。
「おれは空閑遊真、背は低いけど15歳だよ」
「空閑遊真、遊真ね⋯⋯そちらの凛としているキレイな女の子は?」
続けて質問する迅。
「蒼崎青子、17歳よ」
「青子ちゃんね⋯⋯ところで、おまえら
途端、身構える遊真と青子。
修も迅の質問に驚いたが、青子がハンマーを構えたことにさらに驚いた。
「いやいや待て待て、そういうあれじゃない。おまえらを捕まえるつもりはない。ってか、ハンマーはシャレにならないからやめて」
ある意味⋯⋯トリオンの反応がないという点において⋯⋯トリガーよりも厄介な凶器に、冷や汗を少しかきながらお願いをする。
「おれは
サイドエフェクトのことを疑問に思う遊真と青子。
「迅さんのサイドエフェクトって⋯⋯!?」
オサムがそう言うと、迅は自身のサイドエフェクトを伝えた。
「おれには未来が見えるんだ──目の前の人間の少し先の未来が」
「「⋯⋯!」」
そのことに驚く遊真と青子。さすがの歴戦の二人でも反応が顔に出てしまう。
「昨日メガネくんを見たときにこの場所で誰かと会っている映像が見えて、その「誰か」がイレギュラー
「ああ、コイツね」
それを蹴り上げて、修と迅に見えるようにする。
「コイツはラッドって言って隠密偵察用のトリオン兵。だけど、あのイレギュラー門を引き起こすように改造されたっぽいわね。あとはコイツに聞いて──レプリカ」
青子に呼ばれ、にゅっと出てきたそれ──レプリカに迅は少し驚く。
『はじめましてジン、私はレプリカ。ユーマのお目付け役だ』
「おお、これはどうも。はじめまして」
レプリカが言う。
このラッドは大型トリオン兵のバムスターの腹の中にいて、バムスターから分離したあと、地中に隠れ、周囲に人がいなくなったら散開。その後、近くを通る人間からトリオンを集めて門を開く。
修は思った。
「じゃあ、そのラッドを全部倒せば⋯⋯」
「いや〜きついと思うぞ」
「同感ね」
遊真と青子は否定的な意見を口にする。
「さっきレプリカが調べただけでもコイツら、数千はいるってわかったから。全部駆除するなら何十日ってかかるわよ」
「いや、めちゃくちゃ助かった」
ただ迅だけは違った。
「こっからはボーダーの仕事だな」
ラッドを片手に、実力派エリートの顔を見せた。
▼
ボーダーは訓練生の隊員までも導入し、昼夜を徹してのラッドの一斉駆除を結構。その結果、ラッドはすべて駆除された。
「やっぱ数の力は偉大だな」
「いやいやいや、ちょっと待ってちょっと待って⋯⋯いや、速すぎない?」
あまりの速さに頭がついていかなかったらしい青子。目がピンボールみたいに移動している。
「そりゃ遊真とレプリカ先生のおかげだよ。おまえがボーダーに入ってなくて残念だよ」
「ほう、じゃあオサムにつけといてくれ。いつか返してもらうから」
驚く修。
「そりゃいい。B級昇格とクビは取り消し確実だな」
そんな修を横に盛り上がる迅。
「パワーアップはできる時にしないと、いざっていう時に後悔するぞ。それに、メガネくんは助けたい子がいたから、ボーダーに入ったんだろ?」
「?」
「え、なに? 修、好きな子がいたの?」
「違います!!」
話がてんで違う方向に向かっている青子の言葉に、修は強く否定した。
○
ガタン。
とある河川敷にて、そんな音が響いた。
音の主は空閑遊真。向こうの世界からやってきた、いわゆる近界民である。
そんな遊真を見て、真剣に考えている影が一つ。
蒼崎青子。彼女もまた、近界民である。
「ハンドルを左右に少しずつ動かしながらはどう? それにあわせて、身体はハンドルの向きと逆に動かしたらできそうだけど」
「やってみる」
ガタン。
再びそんな音が響いた。
「次、私がやるわ」
「結構難しいけど、できるのか?」
「たぶん、さっき言ったようにするといけると思うのよ」
自転車にまたがった。
ペダルを踏み込む。
チェーンが回る。
それによって後輪が回る。
そして前輪が動く。
理屈はわかった。あとはバランスを取るだけ。
青子は自信満々で、ペダルを踏み込んだ。
ガッシャーン!
今までで一番酷い音を響かせて、自転車は転倒した。
「アオコ、どんまい」
「うるさい、同情するな!」
「あのー」
そんな二人を見ていた人がいた。
「大丈夫ですか⋯⋯?」
「大丈夫よ」
「つまんないウソつくね、アオコ」
遊真のサイドエフェクトは「ウソを見破る」というもの。なので青子のウソはすぐにバレた。
「ええ!? 大丈夫じゃないじゃないですか!」
「少し擦りむいただけだから大丈夫よ」
「バイ菌がそこから入るかもしれないんです、絆創膏ありますから使ってください」
その子の勢いにやられ青子は「わかった、ありがたく使わせてもらうわ」と言った。
「ところで、貴女の名前は?」
「
「そう、千佳、ありがとうね。私は蒼崎青子、コッチのチビは空閑遊真」
「よろしくな、チカ」
シールを剥がして、傷口に絆創膏を慣れた手つきで貼る。
「なあ、チカは自転車こげるのか?」
「人並みにはこげるよ」
「千佳はどうやって自転車に乗れるようになったの?」
「兄さんに手伝ってもらって⋯⋯たとえば、後ろから押してもらったりしてもらいました」
「それよ!」
パチンと指パッチンをして、閃いた! とでも言いそうな顔をする。
「そもそも一人でしようしたのが間違いだったのよ!」
「おちつけ、アオコ」
そのとき、突然警報がなった。近界民が来たことを知らせるサイレンだ。
「ここは危険ね。遠くにいきましょ⋯⋯千佳?」
青子はそう言ったが、時すでに遅し。
彼女はさよなら、と言って去った。ただ、向かっていった方向は近界民がいる方だった。
「遊真」
それだけで遊真は青子が言おうとしたことを理解する。
「まったく、アオコはヘンに優しいな」
「知り合って直後の人間が死んだら、誰だってイヤな気分になるでしょ?」
青子はぶっきらぼうにそう答えた。
▲
雨取千佳は近界民に狙われてきた。
まだ、ボーダーが公表されてなかった頃から狙われてきた。
その度に雨取千佳は心を空にしてきた。
今回も彼女は心を空にしてやり過ごすつもりだった。
突然、
近界民はそれに気づいてしまった。
千佳には自衛手段はない。
身体が恐怖で震え、目の前が真っ黒になりつつある。
諦めるしかない、と彼女は思った。
「よっと」
近界民がこちらに攻撃をする前に、誰かが千佳を抱えた。
「遊真くん!?」
顔を見ると、抱えたのはさっきであった空閑遊真だった。
「あのねえ、ワケありならなにか言いなさい、チカ」
声がした方を見ると、そこには蒼崎青子がいた。
「まあ、もう大丈夫ね」
「? なんでだ、アオコ」
「一人、ヒーローが駆けつけてきたから」
地面が少し揺れる。
見るとそこには先程のトリオン兵を倒した三雲修と
「おーやるじゃん。さすがB級隊員」
「千佳!!」
「「⋯⋯へ?」」
突然のことに目が点になる青子and遊真。
「なんでおまえが警戒区域にいるんだ! バカなことはやめろ!」
「ごめん⋯⋯街のほうにいたら危ないと思って⋯⋯」
二人をそっちのけで話をする二人。
「なんだ、おまえら知りあい?」
肯定する修。
「空閑、レプリカ、蒼崎さん⋯⋯今日は三人の知恵を借りたいんです」
▼
近くにボーダーの隊員がいたため、場所を廃駅に移した四人。
簡単な自己紹介をした後、本題に移る。
遊真はトリオンが原因だと言う。曰く、あっちの人間はトリオンの強い人間がほしいから、千佳がしつこく狙われているならそれだけトリオン能力が高いらしい。
そこで、トリオンの計測をレプリカにしてもらうことになった。
結果、千佳のトリオン能力は「尋常ではない」とレプリカに言わせる程に、異常なトリオンを有していた。
レプリカはボーダーに相談した方がいいと言うが、千佳は周りの人に面倒をかけたくないと言う。
そんなとき、コツ、と足音が駅に響いた。
「動くな、ボーダーだ」
学ランを着た 二人組が現れ、そう言った。空気が変わる。
驚愕する修。
それに対して、青子と遊真は二人組を見据える。
「トリガー──オン」
姿が変わって武器を手に取る二人組。
その二人組のうち、一人を見て青子はあることに気づいた。
「米屋くん?」
「ん? 蒼崎じゃねーか!」
同じクラスの二人が対面する。
「知ってるのか、陽介」
「この前転入してきたヤツだよ! 」
初耳だ、と無感情で答えたもう片方。
「なあ蒼崎、近界民はどいつだ?」
まるで近所のコンビニに行くかのように気楽に言う。
「今、そのトリガーを使っていたのはその女だ」
千佳がもう一人の方──
「ああ、違うわよ。近界民は私と
思わず目を見開いた米屋と三輪。
「⋯⋯間違いないだろうな?」
「ええ」
その瞬間、三輪は二人に向かって銃を撃った。
「何してるんですか!!!」
「近界民を名乗った以上、見逃すわけにはいかない。近界民はすべて殺す。それがボーダーの務めだ」
あくまで正当行為だと三輪は言う。
「おいおい⋯⋯おれたちがうっかり一般人だったらどうする気だ」
しかし、遊真はシールドで、青子は隠し持っていたハンマーで放たれた銃弾を防いでいた。
そのことに驚く三輪と米屋。⋯⋯米屋に関しては好戦的な笑みを覗かせている。
「私としては使いたくなかったんだけど」
やるしかないわね──と目の色を変える青子。
『いいのか、アオコ』
「面倒なヤツに知られてしまった以上、やるしかないじゃない。
⋯⋯それに、いつかはこうなるって考えたら不思議なことじゃなかった」
「下がってろ、オサム。こいつらが用があるのは俺たちだ。こいつらとは──」
おれたちがやる、とブラックトリガーを起動する。
「トリガー、オン」
青子もトリガーを起動する。
二人はトリオン体に換装する。
遊真は黒い戦闘服に服装が変わるが、青子は私服のままトリオン体に換装する。
[アオコ、どうする? おれとしては、穏便に収めたいのだが]
[じゃあ『
通信を使って作戦を立てた
[どーする、秀次? ]
[基本、俺が男の方を、おまえが女の方を相手にする形で、援護できる時にお互い援護をする。上に浮いたら、奈良坂たちが仕留める──わかったか? ]
[了解]
こちらも作戦を立てた
青子の右手が青く光り、魔法陣が右手に現れる。
「「!」」
それを見て警戒する米屋と三輪。
「気になる? このトリガーのこと、知りたいなら教えてあげるわ」
教えるのはその身体にだけど──青く光る魔弾が照射される。
その魔弾が開戦の合図になった。
誤字脱字等がありましたら、指摘してくれるとありがたいです