「青」と「黒」   作:アメイジング長なす

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相も変わらず変なところで終わります。


近界民

 青子の魔弾を回避。そして米屋は青子に、三輪は遊真に攻める。

 青子と遊真はなるべく穏便にすませたいので、あまり反撃はしない。

 ただ、無視できない一手を打っていく。

 

 あえて弾速がやや遅い魔弾を放つ。

 それは米屋は簡単にかわせるが、かわしたら三輪に当たるようになっている魔弾。

 その魔弾を冷静に処理して、反撃をする米屋。

 

 [遊真、『鎖』、つけれそう? ]

 [難しいな。この二人、連携と立ち回りが上手い]

 作戦通りにこなすのは難しいと判断する遊真。

 

 [同感ね、守りはできるけど予想以上に誘導が難しいわ]

 いっそ、足を切断するっていうのはどう、と提案したいが、それをすると修に迷惑がかかる。

 青子と遊真はなるべく、穏便に場を収めたい。

 

 [レプリカ、あんたが『鎖』でぐるぐる巻にしてくれない? ]

 [それをすると狙撃手(スナイパー)に狙撃される可能性が高くなる]

 レプリカにさせる案もあえなく消滅。

 狙撃手がいるかもしれない以上、レプリカにさせるのは得策ではない。

 

「おいおい蒼崎、こんなときに考えてんのか?」

 米屋の槍さばきがいっそう速くなる。

「ええ、どうすればそっちの刀の方は話し合いに参加してくれるかなって」

 青子は距離をとりつつ、米屋にとって無視できない一手を放っていく。

「そいつは諦めて大人しく踊れ(戦え)よ!」

 青子の一手をさばきながら、果敢に攻める米屋。

 

 遊真の相手をしている三輪も、ハンドガンで米屋の攻めを絶えさせない。

 同じく、米屋も槍の柄を長くして不規則に遊真に攻撃して、三輪の援護をする。

 [奈良坂(ならさか)古寺(こでら)、援護できそうか? ]

 三輪が狙撃手の二人に聞く。

 

 [厳しいな]

 奈良坂はマイナスの意見。

 [俺たちの存在を知って、立ち回っているみたいだ]

 [同感です]

 奈良坂の意見と賛成する古寺。

 [今狙撃で援護しても、先輩たちに当たりそうです]

 信じられないが、目の前の近界民二人はなぜか狙撃手がいることを知っている。

 そして米屋や三輪ごと撃ち抜かなければ、狙撃が通らないように立ち回っている。

 [わかった。なら、一つやってほしいことがある]

 そこで、三輪は一つの思い浮かんだ妙案を二人に伝えた。

 

「あら、今度はそっちが考えごとしてるじゃない」

「いやいや、そんな大層なことじゃねーよ」

 相も変わらず、青子は槍をかわし、米屋は三輪への妨害を槍でさばく。

 しかし──状況はかわった。

 

「っ!?」

 突然、目に光が直射された。

 それに対応できず、思わず目を閉じてしまった青子。

 その隙を見逃すほど、米屋は弱くない。

 槍は青子の右手にまっすぐ、吸い込まれるように速く進み──

「うっし、まずは右腕!」

 一本とられた。

 

 ⋯⋯位置から考えて狙撃手ね。

 考えたものだ。狙撃で援護できない立ち回りをするなら、あえて狙撃で援護しない。

 恐らくスコープの部分に日光を反射させて、青子の視界を奪ったのだろう。

 反射の影響を受けるのは青子だけ。狙撃手と同じ方向を向いている米屋にはこの反射の影響を受けない。

 ああ、良い一手だ、忌まわしい程に。

 

「よっと!」

 米屋が追撃をする。

 槍はまっすぐ、今度は首に進む。

「それはもうあたらない」

 今度はかわした。

 故に、当たるわけがない。

「⋯⋯と、思うじゃん?」

 

「っ!」

 しかし、米屋の槍は青子に届いていた。

 たしかに槍はかわしたはずなのに、青子の首に槍は当たった。

 ⋯⋯槍が変形した? 

 それなら辻褄はあう。

 しかし、それは奇襲としては失敗だ。

「ギリギリ致命傷にならなかったかー」

 

 だが、三輪はその米屋の攻めを利用する。

 遊真と青子に弾丸を放つ。

 二人ともシールドで放たれた弾丸をガードする。

 だが──

 

「は?」

 その弾丸はシールドをすり抜け、青子に命中した。

 横を見ると、遊真も同じように食らっている。

 不意打ちと巧みな連携。

 この二人は毒蛇のように立ち回った。

「チェックメイトだな」

 命中した弾丸は重石になり、二人を地に伏せた。

 

「ダメージはない代わりに、シールドの干渉を受けないトリガー⋯⋯なかなかおもしろい発想するじゃない」

 青子は弱音を吐かないし、弱った顔を見せる気はない。

「強がりもそこまでだな、近界民。

 俺には遺言を聞くつもりもなければ、貴様らの強がりを聞くつもりもない」

 勝利を確信したのか、はっきりと地に伏せている二人を見下す三輪。

 

 それは──間違いだった。

 

「いや、強がるつもりはないわ」

 嘲笑し(笑い)ながら青子は言う。

「ただ──狙撃で殺せない位置で、敵を殺すまでは余裕になってはいけない、って今日わかるようになるわ」

 三輪は己の過ちを理解し、青子に刀を振り下ろす。

 米屋も遊真にトドメを刺そうと、槍を穿つ。

 

『解析完了。印は『(ボルト)』と『(アンカー)』にした』

OK(オーケー)

「チェックメイトはあんた達ね」

 青子がそう言った瞬間、遊真と青子の目的は達成した。

 

「『錨印(アンカー)+(プラス)射印(ボルト)』──四重(クアドラ)

 三輪が二人を地に伏せた鉛弾(レッドバレット)が、さらに重くなって米屋と三輪に次々と命中する。

 その重さに耐えきれず、立ち上がることすらできなくなった二人。

 

「ナイス、遊真」

「青子もな。最後に喋ってたのは助かった」

 そう言って立場が逆転した二人に話しかける。

「さて、話し合い、しましょうか」

 その時の青子は実にイイ顔をしていた。

 

 ▲

 

「どうせいるんでしょ、迅?」

「ありゃりゃ、バレちゃった」

 駅に入ってくる迅、後ろには奈良坂と古寺がいる。

「迅さん!」

「よっ、メガネくん。なかなか強かっただろ、そこの二人」

 

 迅は遊真と青子を見る。

「おー、二人ともけっこうやられてるじゃん」

「まあね」

「ふつうに手強かったしな」

 戦闘が終わってなのか、少しリラックスしてるように見える遊真と青子。

「まあ、でも、私たちが勝つのはふつうに考えれば当然のことだったから、あんまり気を落とさなくても大丈夫よ」

「貴様っ⋯⋯!」

 青子が放ったその言葉に噛み付こうとする三輪。

 しかし──

 

 

コイツ(遊真)、黒トリガー使ってたから、しょうがないって言ったら、しょうがないのよ」

 青子が何気なく呟いた一言に三輪隊の全員は驚いた。

「黒トリガーだと!?」

「? 『相手のトリガーを学習する』トリガーなんて、黒トリガーぐらいしか考えられないでしょ?」

 いつもの何を言っているんだおまえは、と言いそうな顔をする青子。

 

 この流れに乗って迅は、「今は普通の近界民でもごたごたしてるのに、黒トリガーなんて敵に回したらやばいからな。

 おまえらは『こいつらを追い回しても何の得もない』って、帰って城戸(きど)さんにそう伝えろ」

 迅はいつもの顔で三輪隊のメンツにそう言った。

 

「⋯⋯こいつらが街を襲う近界民じゃないっていう保証は?」

 奈良坂が迅に訊く。

「おれが保証するよ。クビでも全財産でもかけてやる」

 その言葉に修は迅のサイドエフェクトを思い出した。

 未来予知──無数に広がる未来を見ることができる、ボーダーのサイドエフェクト基準の中でも最上級のランクSに属する超感覚である。

 それを持つ迅がそう言うということは信ぴょう性があることになる。

 

「何の得もない⋯⋯?」

 ただ、三輪は完全に頭にきていた。

「損か得かなど関係ない⋯⋯!」

 姉を近界民に殺されている三輪にはそんなことを飲み込めるわけ、なかった。

「近界民はすべて敵だ⋯⋯!!」

 緊急脱出(ベイルアウト)──三輪がそう叫んだのと同時に、三輪の姿は消えた。

 

「緊急脱出ってこと?」

「ああ、ボーダーの正隊員にはトリオン体が破壊されると、自動的に基地に送還されることになってる」

「便利だなー」

 感心を口にだす遊真。

 

「一つ聞きたい」

 奈良坂が青子に話しかける。

「何?」

「どうして俺たちがいることを知っていた?」

 そう、奈良坂はあの立ち回りについて聞きたかったのだ。

 狙撃手がいるとわかっていないと、あの立ち回りは不可能だ。

「知ってはいないけど、アイツの性格から考えて、いるだろうと思ったのよ」

 

 アイツと言うのは十中八九三輪のことだろう。

「性格から考えた?」

「そう。

 あーゆータイプはたいてい攻撃の前衛と援護の後衛をバランスよく作るのよ。だから、さっきの立ち回りをしたってわけ」

 恐らく最初の駅のホームでの会話から、考え始めていたのだろう。

 性格から部隊の構成の目処を立てるとは、なかなかだ。

 近界民から学ぶのは癪だが、この考えは使える──奈良坂はそう思った。

 

「あら、動けないところを後輩に見られた米屋君じゃない」

 青子はニヤニヤしながら米屋に話しかける。

「恥ずかしいからやめろよー」

 そう言って空を仰いでいる。

 先程の恥ずかしいことを蒸し返されて、米屋は顔を手で見えないようにしている。

 

「あんたはさっきの⋯⋯えーと」

「秀次のことか?」

「あーそうそう。秀次と違って、近界民に恨みとかはないの? 

 なんか、戦った感じ、あんたは戦闘狂(バトルジャンキー)っぽかったんだけど」

「おれは近界民の被害受けてねーもん。あっちの狙撃手(二人)は違うけど」

 なるほど。

 つまり、あっちの二人は被害を受けたから恨みはあると。

 でも米屋は被害を受けていない。そして戦闘時には笑っていた。

 なるほど、やはりバトルジャンキーだった。

 

「あんたまさか、戦うのが楽しすぎて成績悪いっていうこと⋯⋯?」

 青子はおそるおそる質問すると、米屋は──

「⋯⋯と、思うじゃん?」

 次の瞬間。

 青子は米屋が反応できない速度で手を出した。

 

「ちょっと、蒼崎さん!?」

 思わず、青子を止めにかかる修。

「離しなさい修! 世の中には勉強したくても勉強できない子がいるのよ! 特に、あっちの世界では!」

 手を出された米屋はポカーンとしている。

 さっき迅がドヤ顔で言っていたことが、わずか五分足らずで覆されかけている。

「⋯⋯まあ、これは陽介が悪い気もするな。陽介、俺が言うことではないが、授業はちゃんと受けろ。居眠りなしだ」

「奈良坂さん!?」

 近界民に被害を受けた人間が近界民の意見に同意する。

 ああ、なんて皮肉なことなんだ。

 

 □

 

 ちょっとした事件のあと、米屋たちは本部に戻った。

「んじゃ、おれとメガネくんは本部に報告にいってくるから、終わったらまた連絡するよ」

 そう言って修と迅は本部に向かっていった。

「とりあえず場所、移動しましょ」

 残った千佳、遊真、青子は時間をつぶすために場所を移してお喋りをしにいった。

 

 本部では迅と修が駅のことを上層部に報告をしていた。

「報告御苦労」

 ボーダー本部の司令官である城戸が修と迅にそう言った。

 顔はピクリとも動かないので、本当にそう思っているのかは不明だが。

 

 ところで、城戸は『近界民死すべし慈悲はない』を掲げる城戸派閥の人物。

 そして部屋の中にいる玉狛支部の支部長、林藤(りんどう)とボーダー本部本部長の忍田(しのだ)を除く、メディア対策室長の根付(ねつき)や本部開発室長の鬼怒田(きぬた)、それに外務・営業部長の唐沢は同じく城戸派。

 つまり、黒トリガーの使い手が現れるとこうなるのである。

「その近界民を始末して、黒トリガーを回収しろ」

 実に単純。

 殺して奪う。そしてそれをボーダー隊員に使わせて、防衛力を強化する。

 

 しかし、困った。

 黒トリガーは強すぎるが故に、ボーダーでは黒トリガーを使う迅はS級という特別な位置に存在する。

 ようするに、強すぎる黒トリガーを相手にするのに最適解は、同じく黒トリガーの使い手を差し向けるということである。

 なので、迅は城戸にこう言われた。

「おまえに黒トリガーの捕獲を命じる」

 

「それはできません」

 迅はその命令に真っ向から拒否した。

 迅いわく、自分に命令できるのは直属の上官である林藤だけであると。

「⋯⋯林藤支部長、命令したまえ」

「やれやれ、支部長命令だ、じん。黒トリガーを捕まえてこい」

 ただし、やり方はお前に任せる。

 林藤はそう付け足した。

 

 ▼

 

「三雲くん」

 修が部屋から退室する直前、唐沢が修を呼び止めた。

「きみの近界民がコッチに来た目的とかは聞いていないか? 

 いやなに、相手が何を求めているか、わかれば交渉可能になる。たとえ、それが別世界の住人でも」

 鬼怒田と根付はなにを悠長に、と考えている。

 唐沢とは違い、彼らはせっかちさんなのだろうか。

 

「目的⋯⋯とかは聞いてませんけど、『父親の知り合いがボーダーにいる。その知り合いに会いに来た』とは言ってました」

「その父親の名前は? ⋯⋯いや、きみの友人の名前でもいい」

 唐沢が食い気味で聞いてくる。

 この人は欲張りなんだろう、と修は思った。

 

「父親の名前はわかりませんが、本人の名前は空閑遊真。

 それと、空閑と一緒に来た人の名前が蒼崎青子です」

 一瞬、沈黙が部屋を満たした。

 その後、すぐに『空閑』について林藤、忍田、城戸はピンと来たようだが、それと同じぐらい、修が気になったのは唐沢の反応であった。

「『蒼崎』か⋯⋯そういうこともあるな」

「知っているのかね、唐沢くん」

 

 城戸が唐沢に話しかける。

「ええ、本人ではないですけど」

「では一体誰を知っているんだ、唐沢くん!」

 鬼怒田は少しリラックスした方が良さそうだ。

 ここのところを考えると、彼には仮眠ぐらいはとってほしい。

「私が知っている──いや、会ったことがあるのは彼女の姉の方ですよ」

「姉? どういうことだ?」

 今度は忍田が質問をする。

 

「ボーダーに来る以前、蒼崎橙子(とうこ)という女性と商売の話をしていたことがあるぐらいですよ。

 話の途中で妹の話がちょっと出てきたぐらいですし、あと、不味い煙草をもらったぐらいですよ」

 なるほど、彼女は近界民だったのか、と一人で納得する唐沢。

 そのあと、空閑の父親、空閑有吾(ゆうご)の話をして、修は会議室から本当に退室した。

 

「唐沢くん、蒼崎青子について知っていることはなにかあるか?」

 修たちがいなくなった部屋で、城戸が唐沢に質問する。

「特には何も。ただ、壊すことに関しては素晴らしい才能があるって、彼女から聞いてたぐらいです」

 彼女には作る才能がありましたから、正反対ですね──と唐沢は言った。

 彼はそう言ったあと、ポケットからある煙草を取り出して、不味そうに吸った。

 

「それが例の不味そうな煙草か?」

「ええ。林藤支部長も吸ってみますか?」

「遠慮しとくよ。不味い煙草は趣味じゃない」

 林藤は笑顔を絶やさずそう言った。

 

 




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