「青」と「黒」   作:アメイジング長なす

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キリがいいところで書き終わったら、いつもより少ない文書量になっちった。



結成

「私たちがボーダーに⋯⋯?」

 修たちと合流した青子たちは、遊真の黒トリガー──遊真を守るために、遊真と青子にボーダーに入ることを勧めた。

「遊真はわかるけど、なんで私まで?」

「青子ちゃんにもトリガーがあるだろ? 遊真の黒トリガーが最優先だとしたら、次に重要なのはトリガーの技術だからな」

 つまり、黒トリガーの奪取が失敗して、もしも青子がボーダーに入ってなかったなら、青子が狙われる可能性が大いにあると迅は言った。

 

「もしボーダーに入るとしたら、本部に行くわけ?」

 青子は街のシンボルともなりかけている基地を指さす。

「いや、ウチの支部に来ないかってことだから、なにも本部に連れていくわけじゃない」

「どうする、遊真?」

 遊真に訊く青子。

 自分だけに関係することではないので、青子だけでなく、遊真にも決める権利はある。

「ふむ⋯⋯オサムもチカも一緒ならいいよ」

「よし、決まりだな」

 行き先は決まった。

 青子たちは迅について行き、玉狛支部を目指すことになった。

 

 ▲

 

 目的地の玉狛支部は川の中に立ってあった。

「川の真ん中に建物が⋯⋯!」

 元々は川の何かを調査する施設だったここは、ボーダーに買い取られて基地に回想されたらしい。

「何かって何?」

『川の何か』に反応する青子。

「たぶん水質のことだと思うよ。それか川の中の生物じゃないか」

 そんな話をしながら基地の中に足を踏み入れる青子たち。

「なっ⋯⋯!」

 開口一番、修がそんな声を上げる。

 彼らが見たものとは──

 

「しんいりか⋯⋯」

 動物に乗っているお子さまだった。

「まさかこのお子さま(コイツ)は玄界の新しいトリガーの一種⋯⋯?」

 一人だけ間違えた方向を考えるのがいた。

 遊真でさえそんな考えはしなかった。

「違うから。こいつは林藤 陽太郎(りんどう ようたろう)、ただのお子さま」

「⋯⋯」

 顔が恥ずかしさで赤くなる。遊真に至っては「考えすぎだろ」と言ってる。

 

「あの、青子さ──」

「オサム、今はアオコに話しかけない方がいい。八つ当たりくらうからな」

 余計な一言だと思ったのか、青子は遊真にチョップをした。

 余談だが彼女のチョップは、それはそれは見事だった。美しさを感じるほどには。

 

「あれ、お客さん?」

 二階の部屋から出てきたその子──宇佐美 栞(うさみ しおり)は、青子ら四人を見てなにやら困惑している。

「あんた私たちが来ることぐらい知らせなかったの?」

「実力派エリートにはそれなりの事情がありまして」

 チィッ、とひょうひょうとする迅に青子は舌打ちをする。

 

 応接室に通され、どらやきでもてなされる四人。

「っ⋯⋯おいしい」

「よかった〜口にあって」

 そんなにおいしいのか、と思った遊真は、自分のどらやきに手をさし伸ばしている不届き者(陽太郎)に気づいた。

「わるいなちびすけ、おれはこのどらやきというものに興味がある」

 その不届き者に制裁を下してから、どらやきを口に入れた。

「わたしのあげるよ」

 よかったな陽太郎。女神はいたらしい。

「きみ、かわいいね。けっこんしてあげてもいいよ」

 ⋯⋯ただ、貰ってからすぐに口説くのはやめておいた方がいいだろう。

 

 ○

 

「遊真、メガネくん、来てくれ。ウチの支部長(ボス)が会いたいって」

 残った青子と千佳は今日は玉狛支部(ここ)にお泊まりになったので、部屋の準備をすることになった。

「千佳、あんたは先に親御さんに連絡しときなさい。連絡してる間に私の部屋の準備を終わらすから」

「わかりました」

「じゃあ、えーと⋯⋯」

「宇佐美でも栞でもいいよ。たぶん年近いし」

「そう。じゃあ栞、部屋の場所を教えて」

 応接室から出て、今日泊まる部屋に向かう。

 

「それにしても空き部屋が多いのね。隊員は少ないのに、なんでこんな部屋が多い場所買ったのかしら」

「たぶん事故物件とかで売り出されていたんじゃない? それで格安だったからとか」

 残念ながら青子に事故物件という単語がどのようなものかは分からないが、あまりいい意味ではないのだなと理解した。

 

「はい、ここだよ」

「ありがとう」

 どこにでもありそうなベッドに、前にこの部屋を使っていた人間の机や椅子が置いてある、普通の部屋だった。

 

「用意するのは布団ぐらいね。

 栞、布団の場所を教えて。取りに行くから」

「アタシもいくよ」

「いや、たぶん千佳が待ってるから、千佳の準備の手伝いをしてほしいの」

 ああ、なるほど、と感嘆する栞。

「今日は確か暖かかったから⋯⋯布団があるのは屋上かな? 階段を上がっていくと着くから、おねがい」

「わかった」

 

 ▼

 

 屋上に向かう途中、いいことでもあったのか迅がニヤニヤしながらやってきた。

「なに? なにかいいことでもあったの?」

「まぁね、いい未来が見えたから」

 これから必要なものを取りに行く途中──と迅は言った。

「そう⋯⋯そういえば、遊真と修は何してるの?」

「メガネくんは今、さっき言った未来に向かってる途中。遊真は屋上にいるよ」

「? アンタ、どんな未来を見たの?」

 迅の発言に少し気になる青子。

 

「まだ秘密。サプライズが必要なんだ」

「ふーん⋯⋯」

 いろいろと気になるが、(目の前のヤツ)は未来予知ができるので、特に追及しない。恐らく、いい方向に向かわせようとしてるのだろう。自分にとってもいい未来かは知らないが。

 

「私は特にすることはない?」

「今回は、うーん⋯⋯必要ないな」

 なら、自分は自分の仕事をしようと青子は思う。

「布団は屋上に──」

 あるのよね、と言おうとしたが、迅は先手をうっていた。

「布団はリビングに置いておいたよ。暖房で少し温めてあるから、ぐっすり快眠できる」

 未来予知は便利だなぁ、と思う青子であった。

 

 □

 

「はあ⋯⋯疲れた」

 青子は暇だったので千佳と遊真、それに修の分もやってしまっていた。

「なんでこんなに動いてるんだろ、私」

 用意された自室のベッドに寝転がる。

 むこうの世界を思い出すように、まぶたを閉じる。

 

 むこうの世界でも、こんなに他人のために何かをするのは少なかった。

 それがどうだ。こっちの世界に来てから、まるで性格が反転したようだ。

「⋯⋯まさか」

 乾いた笑みを浮かべ、自嘲するように呟く。

 こんなに早く身内認定するなんて、ありえない──

 それでも、なぜか千佳と修には対しては自覚できるほど甘い。

 本格的に疲れがきたのか、青子は自分でも気づかずに、意識を手放した。

 

「すみません、青子さん、今いいですか?」

 声が聞こえたのと同時に青子はぼんやりと目を覚ます。

 声から察するに修が来たようだ。

 まだ覚醒してない意識のまま、無理やりベッドから身体を起こして、ドアに向かう。

「なに──って遊真と千佳も? アンタら何しに来たの?」

 

 ドアを開けて先にいたのは、三人だった。

「おれたち、チームを組むことになった」

「へぇー⋯⋯で?」

「アオコも入らないか?」

「なんで私が入るのよ」

 無愛想な返答もあいまって、青子の機嫌は少し悪いように見える。

 ようするに、客観的に言うと少し怖いのだ。

 

「──二人とも、私の手伝いをしてくれるんです」

 そんな青子との会話に、千佳が割って入る。

 予想外の発言に少し青子は驚き、「手伝い?」と疑うように呟く。

「わたしは近界民にさらわれた友だちと、あっちの世界にいった兄さんを探したいんです」

「⋯⋯厳しいことを言うけど、むこうの世界は広い。だから見つけ出すなんて不可能に近いし、第一──今、生きているとは限らない」

 

 青子の言葉には重みがある。

 それはむこうの世界にいた経験と、多くの国々を知っているから言えるからだろう。

 異人種に厳しい国、自国が第一の国──そんな国も珍しくない国を巡ってきた青子だから、言葉に重みがある。

 そして、たとえそれが信じられないような事実でも、彼女はハッキリと断言して告げる。

 

 千佳はまだ十四歳。

 その言葉は確かに心に深く刺さったが、彼女の目は曇らなかった。

「それでも、少しでも可能性があるなら──じっとしてられないんです」

 

 青子と千佳が目を合わせる。

 今、今朝のような気弱な千佳はいない。

 眼前には、ただ、自分の意志()を貫こうとする人間。

 一瞬の沈黙。

 

 千佳には怖い、という思いがあった。

 兄や友達と会えない、自身の死、己の周りの人間が巻き込まれる──そういった可能性すべてに、恐れを抱いている。

 それでも、それは修に影響されたか。

 それは千佳ですら分からないが──彼女は可能性があるのに、行動できない自分が嫌だと思った。

 

 青子は自分の間違いに気づいた。

 確かに千佳は気弱な印象だった。

 だが、その裏に隠れていたモノに気づいていなかった。

 

 ⋯⋯どこが気弱な少女。十四歳でこれは──異常だ。

 

「⋯⋯私が入っても、アンタの兄貴たちが生きているとは限らなし、もし極限状態で見つけても、助けれるとは限らない」

 ──だけど、私がいなかったから死んだっていうのは、迷惑。

 

「って言うことは⋯⋯!」

「特別に手伝ってあげるわよ。どうせ、やることも少ないし」

 三人の目に喜びが現れる。

「青子さん⋯⋯!」

「勘違いしないで、私は自分のためにアンタたちを手伝うの。そこを忘れないこと」

 遊真だけは気づいたが、あえて言わないことにした。

 青子はこういうところがあるから、おもしろい。

 

 ★

 

「おう、遅かったな」

 チーム結成のことを伝えるために支部長室に行くと、すでに四人分の入隊、転属用の書類が用意されていた。

「それとはじめまして、蒼崎青子ちゃん」

「どうも、ボス」

 玉狛支部長、林藤(たくみ)と青子が対面する。

 

 

「きみは有吾さんと知り合いだと聞いたが、どこであったんだ?」

「私の国にアイツが来たのよ。そこで借りができたから、今遊真の面倒をみてる」

 そうか、と言って煙草を灰皿に入れる。

「身の上話はここまでにしておこうか。きみは自分の話をするのは、あんまり好きじゃないだろ?」

「まあね」

 青子の話は終わった。

 

「さて、我が玉狛支部に入隊するんだろ?」

「知ってたから、このサプライズでしょ?」

「おれは実力派エリートだからな」

 

 四人が書類を書いて提出する。

「正式な入隊は保護者との書類が揃ってからだが、支部長としてボーダー玉狛支部への参加を歓迎する」

 

 ──たった今からお前たちはチームだ。このチームでA級昇格、そして、遠征部隊選抜を目指す! 

 

 

 修はチームの隊長としてやっていくことに緊張し、自分にできることを考えた。

 千佳はこれからチームに貢献するために、自分にできることを考えた。

 遊真は新たな目的と、それを達成するための大事な仲間がいることに笑った。

 そして青子は──昔のことを思い出して、笑った。

 

「このチームならできるな」

「間違いないわね」

 修と千佳は彼らの言葉を聞いて笑った。

 

「おまえらはいいチームになるよ」

「それは迅さんのサイドエフェクトで見たのか?」

「いや、おれのサイドエフェクトじゃなくて、おれがそう言った。

 未来なんて見るまでもなく、わかるよ」

 迅はいい笑顔でそういった。

 

 

 




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