「青」と「黒」   作:アメイジング長なす

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遅くなって申し訳と思っています。
今回は箸休めと、リハビリ回。炒飯でも食べながらどうぞ。


ボーダー本部にて

「おっ、黒トリの白チビと蒼崎じゃん⋯⋯って秀次?」

 米屋は遊真達を見かけて来て、三輪の様子に気づいた。

 三輪は米屋に何も言わず、来た道を戻って行く。

「秀次、どこ行くんだ?」

「⋯⋯⋯⋯会議に出る」

 そんな彼らを青子は眺めていた。

 

「なあ秀次になんか言ったのか?」

「復讐の手伝いでもしてあげようかって言っただけ」

「あ〜」

 米屋は青子の説明で理解した。

「ところで、なんで米屋君(アンタ)と陽太郎が一緒にいるの?」

「クソガキ様のお守りしてんだよ」

「陽介はしおりちゃんのイトコなのだ」

 クソガキと言われても気にしないあたり、仲がいいことが分かる。

 

「⋯⋯それにしても珍しいな、アオコが他人の手伝いをしようとするなんて」

 遊真が言っていることは失礼なことだが、実際そうなので青子は反論をしない。

「別に親切心で言ったわけじゃない」

「そうなのか? アオコはなんやかんや困ってるヤツは助けるヤツと思ってたが」

 

「アイツの家族が死んだのはアイツの責任じゃないでしょ? 

 自業自得⋯⋯アイツの責任で家族が死んだんだったら別だけど、そうじゃないから言ったのよ。

 やられたのに絶対、やり返してはいけない──なんて偽善にも程があるもの」

 青子はそう言うが、遊真には、やはり、親切で言っているようにしか見えなかった。

 

 ◇

 

「じゃあ私たちランク戦行ってくるから」

「あ、そういやオレ、白チビ(おまえ)と戦うって約束してたよな! ヒマならいっちょバトろうぜ!」

「オレはいいけど、正隊員と訓練生って戦えるんだっけ?」

「ポイントが動くランク戦は無理だけど、フリーの練習試合ならできるぜ」

 そう言って、米屋は遊真を連れて対戦ブースに行った。

 青子も飲み物を買って彼らを追いかけようとした時、背後から声がかかった。

 

「ごめんなさい、ちょっといいかしら?」

 振り返るとそこには、訓練生とは違う⋯⋯正隊員の隊服なのだろう⋯⋯を身にまとった女性がいた。

「いいけど、なに?」

「あなたとあの白い男の子、一秒切りしたんでしょ? 

 あ、私は加古 望(かこ のぞみ)、よろしくね」

 那須が手を出してきたので、青子も「蒼崎青子よ、よろしく」と言って、その手を握り返す。

 

「それまでの最速記録が4秒だから、一秒切りをした子は初めて見たわ」

「でしょうね。周りの反応がいちいち大袈裟だったから嫌でも理解した」

 

「アタッカーならまだしも、シューターで一秒切りはホントにすごいのよ? 

 私もシューターだから分かるけど、シューターって他のポジションと比べると慣れるまでが大変でしょ? 

 扱いが上手いのね」

 加古は青子を賞賛する。と、同時に、先に行っている遊真を見る。

 

「アイツがどうしたの?」

 青子が加古の視線の先にあるものに気づいた。

「あの子の名前って空閑遊真くんって言うのでしょ? だからスカウトしに来たのよ」

 遊真の背中が見えなくなって、ようやく加古は青子に視線を戻した。

 

「私の隊はイニシャルが『K』で統一してるチームなの」

 イニシャル、という言葉を知らない青子は、加古が言っていることを理解できない。

「イニシャルってなに? 私もアイツも最近日本に来たから、あんまり日本の言葉を知らないの」

「外国育ちってことね、ますますいいわ。

 イニシャルが『K』っていうのは、名前の頭文字が『か行』ってことよ」

 説明を聞いて、青子は加古が言っていることを理解した。

 

「ねぇ、あの子のこと紹介してくれない?」

「申し訳ないけど、アイツはもう私達とチームを組むことにしてるの」

「あら、それは残念⋯⋯」

 加古はそう言っているが、青子にはまだ諦めていないようにしか見えなかった。

 

「あなたとあの子って玉狛所属なの?」

 加古が服の所属先を示すワッペンを見た。

「そ、だからもう決まってるってわけ」

 そう言うと、今度は少し残念そうな顔をした。

「確かに玉狛所属なら、もう先のことは考えてそうね⋯⋯話に付き合ってくれてありがとうね。

 あ、今、時間ある? あるなら、ご飯、作ってあげるけど」

 

 ──────なぜだろう、イヤに死の気配が近づいた気がした。

 

「いや、もうランク戦しに行くから、ご飯は大丈夫」

「そういえば、空閑くんもランク戦しに行ってたわね。

 ヒマだし、ついていっちゃおうかしら」

 足を進める加古望。

 蒼崎青子はそんな存在をなるべく知らないフリして、ランク戦ブースまで行くのであった。

 

 ○

 

「すげぇ、緑川(みどりかわ)が全然勝てなくなってる!」

 ランク戦ブースでは巨大モニターに、A級の緑川とC級の遊真が戦っている様子が映し出されている。

 現在の対戦成績は2対5。

 C級が遊真の実力を理解し始めたころ、青子と加古はブースに入ってきた。

 

「何この騒ぎ?」

「こんなに盛り上がるなんて、二宮(にのみや)くんでも来たのかしら?」

 加古はモニターを見ると、口角を上げて

「やるじゃない」

 素直な賞賛の声をあげた。

 

「加古さんじゃん! 珍しいっすね、バトリに来たんすか?」

 米屋が加古達を見つけると、すぐに声をかけてきた。

「私は空閑くんをスカウトしに来たのよ」

「⋯⋯うん? 

 なぁ、蒼崎。白チビっておまえらとチーム組むんじゃねーの?」

 青子は呆れた顔をして、頷く。

 

加古(そこの変質者)にはスカウトしても無駄って言ったのに、まだ諦めれないらしいのよ」

「変質者は酷くないかしら?」

「素直な感想を口にして酷いと思うなら、それは言われた本人自身が言われたことに同意してるって知ってた?」

 青子はもう言うことはない、というような顔をして加古から離れる。

 

「そう言えば米屋君」

 思い出したかのように米屋に青子は声をかける。

「ん? オレとバトリてーの?」

「違うわよ。

 冬休みの宿題って、終わった?」

 それを聞いた米屋は突然笑い出して、

「おいおい蒼崎、いくらオレでも提出日まで2週間ある宿題なんて、終わったに決まってるだろ」

 米屋は胸をはって、自信満々に力説した。

「出てる宿題いくつあるか言ってみて」

 

「えーっと、数学、国語、英語の3つだろ?」

「古典は?」

「は?」

「だから古典はって」

「いや、古典はないぞ?」

「──────」

 

 絶句した。

 この男、宿題すら確認してないのか──と。

「古典、あるわよ」

「⋯⋯結構量ある?」

「英語と同じぐらいある」

 

 英語の教師、竹田は二学期までの復習と銘打って、『ドキドキ! 英語復習プリントセット!』なるものを出した。

 基礎の基礎⋯⋯それこそ中学生レベルの範囲⋯⋯から出されたものなので、必然、量はグロデスクと言ってもいいほど多かった(おかげで青子はある程度、英語を理解した)。

 それを一週間もない期限で終わらせるなど──ほぼ不可能である。

 

「⋯⋯蒼崎、お願いがあるんだけど」

「自分でやりなさい」

 米屋は泣きながらうつむいた。

 

「おっ、終わった」

 勝敗──遊真対緑川は8対2で、遊真の勝ちとなった。

 加古はブースから出てきた遊真を見るやいなや、遊真の方へ歩き出した。

「ちぇー、オレ戦えねーじゃん」

 米屋はこれから始まる地獄と、単純に戦えない欲求不満から、涙の量が増えていく。

 

 と──そこへ、

「おっ、珍しいメンツだな」

「! 迅さん⋯⋯!?」

 突然迅が現れた。

 さすが暗躍の達人──なのかはわからないが、突然出現することに関しては向こうの世界を含めても一番だと思われる、セクハラ派エリートがやって来た。

 

「遊真、青子ちゃん、それにメガネくん、ちょっと来てくれ。城戸さんたちが呼んでる」

 驚く修と、遊真を手放すことになり、少し不服そうな加古。

「カコさん、申し訳ない」

 遊真がそんな加古に一言告げる。

「入りたくなったら何時でもうちの隊室にきなさい」

 それでも大人だからか、セレブ感を所構わず振りまく彼女は、そのオーラが一人立ちしないような対応をした。

「⋯⋯」

 青子はそんな加古に不信感を抱いたが、抱かれた本人はそんなこと、少しも知らない。

 

 ▲

 

 迅に連れられ、やってきたのは前回とは違う会議室だった。

 その中には上層部や風間、そして三輪がいた。

 上層部は近いうちに来たるX-DAY(大規模侵攻)に向けて、遊真と青子の意見を参考にしよう、という魂胆らしい。

 

「そういうことならオレの相棒に訊いた方がいいな」

 遊真がそういうと、どこからともなくレプリカが遊真から出てきた。

「はじめまして、私の名はレプリカ。ユーマのお目付け役だ」

 青子は疑問の目でレプリカを見るが、そんなのはどこ吹く風なレプリカ。

 

「私はユーマの父、ユーゴに作られた多目的型トリオン兵だ。

 私の中にはユーゴとユーマが旅した近界の国々の記録がある。おそらく、そちらの望む情報も提供できるだろう」

 その言葉に感心する開発部長。

 

 だが、

「しかし、ボーダーにはネイバーに対して無差別に敵意を持つものもいる。

 青子はともかく、私はまだボーダー本部を信用していない」

 と言った。

 その言葉に、まあそうか、と納得する青子。

 

「ボーダーの最高責任者には私の持つ情報と引き換えに、アオコとユーマの身の安全を保証すると約束して頂こう」

 修は本当に保証するか、サイドエフェクトで判断する為だと理解した。

 

「⋯⋯よかろう」

 城戸は重苦しい口を開く。

「ボーダーの隊務規定に従う限りは、隊員──空閑遊真と、蒼崎の安全と権利を保証しよう」

 会議室の者の反応は様々だ。

 驚く者、変わらなかった者、笑った者。

 修は驚く者であり、青子と迅は変わらなかった者だ。

 

『確かに承った。それでは望む情報を提供しよう』

 

 ◎

 

「蒼崎くんから貰った情報から、今、こちらの世界に近い国で最も攻めてくる可能性が高いのは──アフトクラトルだと、我々は認識している」

 忍田が本部で出た結論をレプリカに知らせる。

『正しいだろう。今、近づいているのはアフト以外にも3カ国ある。だが、イルガーを使った時点で確率が高くなったのはキオンだ。それか、どこかの乱星国家ぐらいだからな』

 レプリカがそう言うと、青子が疑問を口にした。

 

「姉貴の情報にアフトの現状とか書いてなかったの?」

「対トリガー使い用のトリオン兵、ラービットが開発していたことと、黒トリガーが12()本あるということが書いてあった」

 それにレプリカが微かに反応した。

(黒トリガーが一本、減っている⋯⋯?)

 

「でも黒トリガーって大抵守りに使われるから、遠征にはあんまり行かないのよね」

 青子はそう言い、レプリカも頷く。

『故に、攻撃には卵にして大量に運用できるトリオン兵を使い、遠征の人員はなるべく少数に絞るのが基本だ』

 なるほどと上層部も頷く。

 

「ひとまずは人型の参戦も考慮しつつ、トリオン兵団の対策を中心に防衛対策を詰めていこう。

 三雲くん、きみは爆撃型と偵察型、両方の件を体験している。なにか気づいたことがあったら、いつでも言ってくれ」

「は、はい!」

 

「遊真くん達には我々の知らない情報の補足をお願いする」

「了解了解」

「了解よ」

 

「さあ──近界民を迎え撃つぞ」

 

 

 

 




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