彼の周りは少し愛が重い   作:澱粉麺

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百花繚乱(END.浮葉)

 

 

桜が散る。

陳腐なほど、月並みなほどに表現や演出に使い古された桜は、しかしそれでも人の心を惹いてやまない。それはただ、ひとえにその美しさが全てなのだろうと思う。

 

そうだ。きっと、理由は要らないのだ。

小難しい理由も、捻くれた天邪鬼も、そういったものなど要らない。

 

美しいものは、それだけで美しいんだ。

一目見た、瞬間に心を奪われるほどに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

「貴方は、誰が好きなの?」

 

 

 

私は、これを言って、全部終わりにするつもりだった。忘れられない、捨てられないこの想いも、機会と理由がなくなればいつかは捨てられるだろうから。

 

中途半端で、生半可で、それでいて捨てられないから。ここまで人に惹かれたことはなかったけれど、だからこそこれは手放さないと。

 

矛盾のようでいて、当然のことでもある。

好きな人に幸せになってもらいたい、と思うのは当然のことだから。

 

 

だからその言葉は。

 

 

 

 

「…………です」

 

 

「………えっ?」

 

 

「先生が好きです。

浮葉三夏先生。俺、貴女が好きです」

 

 

 

…最初に聞いて、何が起こったのかもわからなかった。実感を脳が感じ取るまで、分単位の時間が掛かってしまったのではないかというくらい。

 

 

 

「……」

 

「…………え……」

 

「……え、ええ、ええ…!?」

 

 

 

狼狽して、椅子から立ち上がった私の手を、がしりと掴む大きな掌。その体温と無骨に、びくりと肩が揺れる。

 

 

 

「…俺は、貴女が好きです!

これが俺の隠さない、素直な気持ちです」

 

 

「……じょ、冗談じゃ…」

 

 

「ありません。

俺、先生を愛してます」

 

 

 

なんとか誤魔化そうとした、しどろもどろの返答もばっさりと否定されてしまう。

追い詰められて、あまりにも真っ直ぐで、退路を断たれたような気持ちになった。

 

 

「ダ…ダメよ、ダメ!確か今はその、卒業後も手を出したらいけないとかなんとか聞くし…」

 

 

 

絞り出すようにそう返す。

今思えば、この時に『どうしてそんなことに詳しかったのか』と聞かれなくてよかったと思う。迂闊な発言だった。

 

 

 

「………すみません。

やっぱり、迷惑でしたか」

 

 

「えっ、いや!迷惑なんかじゃ…

でも、ほら、なんていうか、ね?」

 

「…私と違って君には色々な可能性があるんだから。私みたいな人にかまけてそれを潰す必要はないんだよ」

 

 

 

諫めるように言ったそれに、しかし集くんは尚のこと顔を上げ、激しく反発をした。

彼、こんなに反骨精神豊かだったかな?

 

 

 

「違う。…もし、そうだとしても俺にはもう可能性は一つしか目に映らないんだ」

 

「先生と生徒が付き合うのはまずいですよね。

なら、待ちます。いつまでだって貴女を待つ。

それでいいですか」

 

 

 

…この時、このまま、それにダメだと言ってしまえばよかったのかもしれない。待っても貴方の気持ちに応える事はできないから諦めなさいと。でもその時はどうしても、そんな事はできなかったし、その選択肢すら浮かばなかった。

 

彼がようやく選んだ選択肢だから尊重したいと思って。その熱量を誤魔化すにはあまりにも勿体無いと思って。

……そういう、言い訳を自分にして。

 

 

 

「……わ、かった。わかりました、から」

 

 

たじ、たじ。

後ろに何歩も歩きながら、手を繋がれたまま、ようやくそれだけ口にした。

 

瞬間、パッと手を離されて、腰が抜けた私はそのまま椅子に倒れ込むように座ってしまった。

 

 

「あ。す、すいません先生!大丈夫ですか?」

 

 

「え、ええ…急に、びっくりしちゃって。

うん。気持ちは凄く嬉しい、から」

 

 

 

高鳴る鼓動。どうしようもなく止まらなそうなそれを必死に彼に露見してしまわないように抑えながら、にこりと笑った。

 

 

「……わかった、約束する。

君が卒業の後、それでも同じ気持ちなら」

 

 

 

そう言った。貴方の想いも、気の迷いで。その気の迷いなら時間と共に流れて消えていくだろうと、そう思っていて。この時は、『また今度』でどうにかなると思っていた。

 

 

………いいえ。でも、きっと多分。

私はこの時に、もう…

 

 

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

 

卒業の季節がやってきた。はらはらと散る桜は既に葉桜と半々となっていて、新しい芽吹きと既にあったものの移り変わりを示しているようだった。

 

 

色々な人の挨拶もそこそこに、俺はある場所に向かっていた。

それは、第二校舎の裏。朝に連絡して、そこで会うことが出来ないかと聞いたから。

 

 

急いでそこに向かうが、誰もいない。

…冗談や、酔狂だと思われただろうか?

そう、落胆しながらそこから去ろうとした時。

 

 

 

「…あ!ほ、本当に…来たのね…」

 

 

背からかけられるその声に、うなだれていた顔をバッとあげる。歓喜と共に行ったそれは、その顔を見ることにつながる。

 

浮葉三夏先生。

来た彼女の名前は、それだった。

 

 

「遅れてごめんなさい。

思ったよりその、お仕事があって」

 

 

「いえ、こちらこそ急に呼び立ててすみません。迷惑でしたかね」

 

 

「ううん、大丈夫。

……それで、その。今日此処に呼んだのは…」

 

 

 

顔を桜色に染めて、左斜め下に顔と視線を向ける彼女。それを見て飛び出したくなる気持ちを抑えて、冷静に話す。努めて、冷静に。

 

 

「…まだ、まだ後じゃないといけないのはわかってるけど、それでも今伝えておきたかった。

卒業したら、もうこれまでみたいに頻繁に会うことも少なくなるだろうから」

 

「…卒業の後もその気持ちが変わらなかったらって言っていましたよね。俺、気持ち変わっていませんよ。ずっと、好きです」

 

 

「!…そう。」

 

 

 

はっと顔を上げて、そしてまた俯くように下を向く。その姿に、少し危ない気持ちになる。

 

 

 

「…改めて集くん。卒業おめでとう。

それで、その…気持ちも教えてもらってとても嬉しい。今、私がその気持ちに応えることは出来ないけど」

 

 

「………でも。私ね、その…

貴方の気持ちに応えたいと思ってる。

出来れば、だし。

君が愛想を尽かさなければ、の話だけど…」

 

 

 

控えめに、そう呟く彼女。赤い汁が滴りそうな程に桜色になった顔を俯け、遠慮がちに、刺激的な言葉を言うその姿を見て、危ない気持ちが閾値を越えた。

 

グイと近付き、彼女の背中にある壁に手を付いた。退路を塞いで、覆い込むようなそんな状態にしてしまった。内に入れてしまうような。

 

 

 

「先生、先生…!」

 

 

「集、くん…」

 

 

もう片方の腕が浮葉先生の頬に伸びる。そのまま撫でるように動こうとするが、それにそっと腕が置かれる。力のこもっていない、ただ触れるだけのようなそれだった。

 

 

 

「…ダメ、だめよ…今はまだ、ね…?」

 

 

震えた声と、力の篭っていない拒否。そっともう片方の手で、指を俺の唇にそっと置く。少し冷たいその指は、妙なエロティシズムを感じさせた。

 

それらは、拒絶の意志をまるで感じさせないものだった。だからこそそれはこの俺の凶行を止めさせるに至った。

 

 

「……す、すいません」

 

 

「ううん、こちらこそ…」

 

 

 

ひどく、気まずい空気になり。

結局その場はそのまま解散した。

きっとあのまま一緒にいたならばこっちの歯止めが効かなくなってしまっていたから。

 

 

(………っ)

 

 

一人になった後で、あの顔を、声を、腕の細さを、疲れた隈を。全てを思い出す。

 

ああ、この時に俺は初めてわかったんだ…

 

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

 

 

幾つもの春が過ぎ去って行った。

そしてまた、私は春が過ぎる度に罪悪感と、焦燥感に襲われていった。

 

 

罪悪感。

次なら、次なら。次の春なら。私はただ、そうしてのらりくらりと彼の気持ちをかわしているだけなのではないか。彼の純な気持ちを弄び、思わせぶりに、彼の未来を食い潰してしまっているだけなのではないか。

そう、何度も何度も考えた。

こんな事をしてしまうなら、あの時にきっぱりと断るべきだったのに、どうしてそれが出来なかったのと自分を責めるけれど。でもきっと、あの時にタイムスリップしても私はあの時、変わらずに断ることは出来ないと思う。

 

 

焦燥感。

彼が魅力的に思ってくれた私はもうとっくに消費期限が切れて、どうしようもない廃棄品に変わっているのではないかと。

あの時に想っていてくれた私はとっくに老いて、消えてしまったのではないか。

時間は残酷に、平等に過ぎる。

初めはあの子を導くことが出来た誇らしさだったのに、今となっては、ただどんどんと身体に出て来る衰えを怖く感じてしまう。

いつか私から愛想を尽かしてしまうのではないか。そうされても、仕方のないようなものになっていってしまってるのではないか。

 

 

 

不安になる私の雲を打ち払ってくれるようにあの子から連絡が来る。

また今度会う事は出来ませんか?と。

 

そして、それを苦渋の気持ちで断る。

本当に、その誘いに乗りたい。

でも雁字搦めにした職務と責務が縛って、彼の約束に行くことを許さない。

いっそそれすら投げ捨ててしまいたいと思うけれど、それだけは許されない。

 

だって、それをしてしまったなら、もう彼の前で胸を張ることも出来ない。こんな情けない大人が、あの子の前に立って自信を持って君と釣り合う人間だよと言うことができるだろうか。

 

それに、彼が私を見初めてくれたのは、大人として、先生としてのそれだろうから。

せめてそれに恥じない姿でありたい。

 

 

ああ、でもそれでも集くんに逢いたい。

あの子の笑顔を見ていたい。

あの大柄な腕に包まれていたい。

囁かれて、掴まれて。

成人して、大人びたその姿が未だに目を瞑れば出てくるようだった。

 

 

 

「あなた、綺麗になったわね」

 

 

久しぶりに逢った姉から、そう言われた。

そんな事は無い、と否定した。

謙遜ではなく、本当にそう想っていた。

年々衰えていく身体。潤いと張りを明らかに失っていく肌。擦り減っていく心。

この状態を見て喜んでくれる人なんて居ないんじゃないかと思ってすらいた。

 

でも、本当にお世辞じゃなくて綺麗になったと思って貰えたのなら、それは希望になる。

取り柄も思い付かない、すぐにでも埋もれて消えてしまいそうな私が、それでも人を繋ぎ止めるとしたら、悪くはない見た目の部分が大事だろうから。

 

恋をしたら綺麗になる。と聞く。

本当だろうか。なら私はやっぱり、あの子が好きで好きなんだと思う。

 

 

 

「久しぶりです、浮葉先生」

 

 

 

ある日、集くんと携帯電話で話をした。

体温の無い、顔写真との対話。

嬉しそうに、新しい環境にくたびれた姿を見せてくれる姿を見る。

 

会話をいくつかした。どれも他愛の無い話。近況報告に、思い出話。そしてそれぞれの話。そろそろ、ご飯を作りにいかないとなんて事も話したと思うけど。

 

 

「…浮葉」

 

 

ぼそりと呟くように、私の名前が呼ばれた。

その声に、何かを突きつけられるような気持ちになり、背をぴんと伸ばす。

 

ぼーっと遠くを眺めたような視線。

手を伸ばしても、互いに届きはしない。

画面に触れて、無機質な温度に目を閉じる。

 

 

「逢いたい」

 

 

ただ、癖になっていた敬語すらもなくなって、ぽつりと口から発せられるそれ。

恥ずかしいような、照れるような気持ちになり、そしてまたその呟きに同意する。

 

ああ、君に会えたらどれほどいいか。

だけど私は、言う。

それを必死に押し殺して。

 

 

もう少しだけ、待ってて。

もう少しだけだから。

 

 

数年が、こんなに長く感じる事なんてきっと無かっただろう。貴方に合わなければ、二度と。

 

 

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

また、春が来た。

約束を交わして何回目の春だろう。

もうこのまま、『まだ今度』という言葉を言うことが常態化しているくらいだったけど、それは今回はもう発せられることは無い。

いいや、もう、二度と。

 

 

 

少しだけいいレストランを集合場所にして、私は少し早く着きすぎた事を後悔していた。

この待つ時間は、永劫より長く感じた。

 

いいや。だからこそ、その大柄な姿が見えた時、すぐに気付く事が出来たのだとも言えるかもしれない。

でも、貴方の姿ならどんな時でもすぐに気付く事ができるかもしれない。

 

 

 

「こんにちは、先生」

 

 

「もう、先生じゃありません」

 

 

「浮葉さん」

 

 

「うん。…こんにちは、集くん」

 

 

互いに、照れ臭くなりながら椅子に着く。

向き合ったその状態で、一体どのような事を話したらいいのか。話題が迷子になって、何から話していいものか不安になっていた。

 

 

 

「……想いは、変わらないのよね」

 

 

だからそんな、分かりきっている事を聞いた。それに、さすがに集くんも少しだけむっとしたようだった。

 

 

「変わってるなら、此処にすら来ませんよ。

それとも、直前で心変わりするような男だと思ってましたか」

 

 

「うん、そうよね。

…ごめんなさい。ずっと、不安なの」

 

 

 

不安という言葉にぴくりと、反応したのが見えた。彼はいつもそう。そんな、ネガティブな言葉や感情に敏感ですぐに気付いてくる。

 

 

「…今でも、思ってるの。

私きっと、貴方みたいな素敵な人に釣り合うような女じゃないんじゃないかって」

 

 

「そんな事ない」

 

 

「もう、お仕事も無くなって」

 

 

「俺が稼ぎます」

 

 

 

矢継ぎ早に、私の言うことを否定する。

その否定の速度は、本心そのものであることの表しのようで、とても嬉しかった。

 

 

 

「………私、もうおばさんだよ?」

 

 

 

「関係ない」

 

「それでも、ずっと待ってたんだ」

 

 

目が互いに合った。

感情が同じになった。愛しさ、思いやり。

 

 

「白状、します」

 

 

だからこの時に言っておかないといけない。

最悪、集くんがこれで私に失望したとしても、それでも必要なことだから。

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

「白状します」

 

 

ふと、観念したように浮葉さんが顔を上げた。緊張するように口を開けたその様を、しかし信頼を持って見つめる。

大丈夫だ。この人ならば、と。

 

 

「私、最初は本当に君が私のことを忘れるならいいと思っていたの。私なんかじゃなくて、他の子を好きになるなら、私よりよっぽど幸せになるならそれの方がいい。私とは止めた方がいいって、本当に」

 

 

「うん」

 

 

「…でも、いつからか。私は貴方にずっと愛されている事を期待していた。『気持ちは変わっていない?』と聞く時に、変わらず私を愛してくれてる貴方に喜んでた」

 

 

「…ずっと集くんを袖にして。それでも、私のことをずっと好きなままでいてくれることを期待してた。変わらず、私を愛してくれる集くんの姿を見て喜んでいたの。

……失望、した?」

 

 

 

なんだ、そんなことか。

俺は少しだけ笑って首を横に振った。

 

 

 

「むしろ、改めて好きになった。

浮葉さんは、ずっと俺のことを信じてくれていたんだ。ずっと俺のことを想っててくれたんだ。それだけで、俺は嬉しいよ」

 

 

 

 

ああ。そうだ。俺はあの卒業の日の校舎の裏で。ようやくわかったんだ。

あの日、あの時。あのパーティ・ホールで浮葉に手を伸ばしたのは、いつもの善行や、憐れみからではなかったんだ。

 

ただその隅で何かに救いを求めるような顔をしたその貴女に、世界を憂うようなその静かな雰囲気に、一瞬なりとも目を惹かれてしまったからだったんだ。

もう、それで目を惹かれてしまった。

心が囚われてしまった。

 

 

いいや、違うのかもしれない。

あの時はただ、善行のつもりだったのかも。

 

だが、今の俺は、もうあの時をそう思ってしまう。本当はそうでなかったとしても、そう脚色してしまう。それくらい、心が奪われていた。

 

 

 

「わ…わかった。

だからそれ、少し勘弁してほしいな…」

 

 

「それ?」

 

 

「敬語じゃない…口調。

その、どうしてもつい、照れちゃって」

 

 

 

それを聞いて、にこりと微笑む。ただ敬語じゃ無いだけでここまで可愛らしい姿を見せてくれるなら、これから定期的にやろうと、そう心に誓った。

 

 

さあ、そして。

言わねばならない事を言う。

もう互いに抱いている気持ちは同じだ。

だけれど。だからこそ口にする。

 

言葉にしなければ、ならない事がある。

不文律ではいけない想いがあるから。

 

 

 

「浮葉三夏さん」

 

 

「…はい」

 

 

「本当に、遅くなってしまったけど。

ようやくこれを言えるよ」

 

 

 

「俺と結婚して欲しい」

 

 

 

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

 

「ねえ集くん。一つ、聴いていい?」

 

 

 

ふと浮葉が思い立ったように言葉を紡ぐ。

 

 

 

「その…今の集くんの気持ちを疑うつもりなんてない。でも、どうして、最初に私のことを好きになったの?きっかけは?」

 

 

「きっかけ、ですか」

 

 

 

そうして、古賀が考え込む。

どうして。何故ここまで彼女に惹かれるようになったのか。何時からこうなっていただろうか。もう、思い返そうとしても遠い記憶のようで、意外とわからないものだ。

 

何か理由があっただろうか。そう思うと、不思議と答えが出たような気がした。

 

 

 

「理屈じゃないですかね。

多分、一目惚れでした」

 

 

 

そうだ。きっと、理由は要らないのだ。小難しい理由も、捻くれた天邪鬼も、そういったものなど要らない。

 

美しいものは、それだけで美しいんだ。

一目見た、瞬間に心を奪われるほどに。

 

桜や花が咲き乱れる様はそれだけで美しい。美しさとはそのまま素晴らしくあり、そしてまた、美しさに理由なんて要らない。

 

 

 

一目惚れと聞いた浮葉は呆れたように口を開けて。そして、くすくすと笑い出した。

全く、おかしいわねと次に言って。その少し冷えた指先でそっと青年の口に指を当てた。

 

 

 

「ふふ、一目惚れか。

……実は、私もなの。お揃いね」

 

 

今度は、古賀が一目惚れ、と聞いてキョトンと顔を向けた。そんな事はないだろう、と確認のように自分の顔の古火傷の後にざらざらと触って。

 

そして、困ったように笑う。

 

 

 

「先生、趣味悪いですね」

 

 

「それはお互い様でしょ?」

 

 

やっぱり、お似合いなのかもしれない。

二人はそんな事を呟いてけらけらと楽しそうに笑いあった。そしてまた、互いが互いを、愛情を持って見つめ合った。

 

 

 

……桜が散る。気持ちを通じ合ってから幾度目かわからない落桜。何度も何度でも散ったそれが初めて報われる。

 

 

 

「ねえ。こんな私でもいいかな、なんてもう言わない。だから、精一杯幸せにしてね」

 

 

百花繚乱。

花が咲きみだれること。美しく咲き誇ること。

そして、そのさま。

 

 

 

 

 

 

 

 

エンド4、おわり

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