彼の周りは少し愛が重い   作:澱粉麺

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あくまでおまけです。
ここから先は時系列とかあんま気にしないでください。


おまけ
ほわっちゃねーむ?(折枝ユキ)


 

 

 

 

「ねえねえ。どう呼ばれたい?」

 

 

「…そう言われてもなぁ。

さっきから考えてるけど思いつかないよ」

 

 

 

私、折枝ユキはショッピングモールに来ている。横には大好きなにーちゃんも一緒だ。しかも今日は珍しく、あの口煩い鈴が居ない!

 

 

そう、だから、ほんっとーに楽しみにしてたんだけど。勿体ないけどなんだかある事を考えちゃってて、集合してすぐ、つい質問をした。

 

 

 

「ねぇねぇ。

『にーちゃん』以外になんて呼ばれたい?」

 

 

「え?」

 

 

 

たぶん思ってもなかった事を言われて、固まってた。ちょっと長くだけ静かになって。

思い付いてないならまだいいよ、と言ったはいいけどその後もちょくちょく聞いてみて…

で、一番最初に戻る。もう一回聞いてみたけどまだ思いついてないみたい。

 

どうどう?ってもっかい聞いたら、困ったように笑って言った。

 

 

 

 

「…うーん、特に思い浮かばないな。

ま、とりあえず行こうぜ?」

 

 

 

…明らかに、ごまかされた。

でも確かにここでずーっと止まってるのもせーっかくのにーちゃんとの時間が勿体ない。から、まだいいや。

 

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

まず初めは、服屋!

 

にーちゃんったら折角スタイルが良いのにいつも服は適当なんだから、だから私が選んであげようと思ったのに。

当の本人は『今日は俺のはいいよ』なんて言っちゃって、つまらない。

色々オシャレさせようと思ったのになー。

 

 

まあそれなら私の服を、スキな人の好みの通りにしてもらっちゃおうかな!って、意気込んだのに。

 

 

 

「ねぇねぇ、これはどう?」

 

 

「ああ、似合ってるよ」

 

 

「えー?これは?」

 

 

「おお、良いぞ!似合ってる」

 

 

「…ねぇ、これは?」

 

 

「うん、すごく似合ってるぞ」

 

 

 

…何回も何回もうんうん考えて、オシャレな格好したのに、似合う似合うって何にでも言ってくれちゃう。

 

それ自体はいいんだけど…ちっちゃな子供に付き合って、その子供を褒めるみたいにして私を褒めるんだもん!面白くない!

 

…確かに、嬉しいけど!

 

 

 

「どうだ?気に入ったものはあったか?」

 

 

「…どれが一番似合ってた?」

 

 

「ん?どれも可愛かったぞ」

 

 

「そうじゃなくって!」

 

 

もう。にーちゃんが、どれが一番気に入ったのかってコトを聴きたいのに!

全く、乙女心がわからないんだから!

 

 

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

次は何処に行きたい?って言われて、悩んでたらあそこはどうだ?ユキ好きそうじゃないか?ってそこのクレープ屋を指差すなんて、やっぱにーちゃんったらデリカシーない。

私はいっぱしのレディなんだし、そんな甘い物にキョーミは無いの。

 

目がそっちの方に行ってたなんて、言いがかりもいいとこなんだから!ほんと!

 

私が迷いなく指を指したのは、コスメショップ!私は大人なんだから、その一歩として、まず身だしなみにも気をつけなくちゃ。

今日欲しいのはアレ。

 

 

「ねぇねぇ。コレ、買って?」

 

 

「お、珍しいなおねだりなんて。

…っとなんだこれ」

 

 

「えー、知らないのー?

ツバキ油ってゆーんだよ!」

 

 

「ああなんか名前だけは…

…その歳から必要なのか?」

 

 

「女の子には年齢なんて関係ないの。髪とか肌は、いつだって女の命なんだから!」

 

 

 

そう。これを使えば髪の毛もサラサラになって、色んな髪型にも出来る。色んな格好に合わせたようにも出来るんだ。

やだ、私ったらもっと可愛くなっちゃうんだ!

 

 

 

「おお、名言だな。よし買ってやろう!

どれどれ…っと結構いいお値段するな」

 

 

「えへ。実は…ちょっと手が出せなくって」

 

 

「うーん…よし、一回言ったしな。

男に二言は無い。買ってやるぞ」

 

 

「きゃー、かっこいいー♪」

 

 

そうやって、ちゃんと買ってもらっちゃった。

ちょーっと悪いような気はするけれど、でも仕方ないよね。これも気に入ってもらう為なんだし!これでもっとオンナに磨きをかけちゃうんだから!

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

「…ねー。私ばっかり行きたいところ行ってるけど、だいじょーぶ?」

 

 

そう、相手の事を気遣ってちゃんと言う。優しくしてもらうのは当然として、男の人を気遣えるのが出来るオンナの一歩だって色んな雑誌で読んだもの。

 

 

「ああ。ユキの行きたい所に行っていいぞ」

 

 

…折角気を遣ったのに、そう言ってくる。

これで無理してそう言ってるんだったらいいのに、本当に嬉しそうに優しそうに笑うんだもん。もー、やりづらいったらない!

 

 

「えー、ほんとにないの?

私だけ楽しんでも意味ないのに!

ほら、あるでしょ!あって!」

 

 

「うーん、つっても…あ」

 

 

そう言うと、そこにあった小さな屋台を指を指す。たこ焼き屋さんみたい。

 

 

「腹、減ったからあそこ行きたいな。

付き合ってもらっていいか?」

 

 

…もう、そういう事じゃなくて。シュミとか好みとかを聞こうと思ったのに。

それに、どうみてもでっちあげたっぽい!

 

と、不平不満を言おうとした時。

私のお腹が鳴った。

 

顔が熱くなっちゃうのを感じる。

 

 

 

「はは、賛成みたいだな」

 

 

「…いー、サイテー!」

 

 

 

……

 

 

 

 

熱々のものを食べて、口の中を火傷してしまう。いつの間にか買ってきてくれていたお茶を呑んで、口の中を冷やす。もう、がっつくなんてらしくないのに。恥ずかしいったらない、反省反省。

 

そんなこんなで大体食べ終わって、一息ついた。

うーん、そろそろ決まったかな?

 

 

 

「ね、それで、どう?」

 

 

「ん、何が?」

 

 

「『にーちゃん』以外に、私になんて呼んでもらいたい?」

 

 

「…」

 

 

あー。すっかり忘れてた、って顔してる。そんな事だろうと思ってたけど。そういう所も好きなんだけど。

 

 

「ねー教えて!

ねね、そんなに大事に考えなくっていいし、後で変えてもいいから、ね?」

 

 

「…いや、うーん…」

 

 

 

悩む時間はあんまり長くなかった。

やっぱり、決まってたのかな?

それとも今早く決まっただけかな?

 

 

 

「…そうだな。『にーちゃん』って呼ばれんのが当然だと思ってたから、それが一番落ち着くんだ」

 

 

「…えー。つまんなーい」

 

 

「はは、ごめんごめん。でもさ」

 

 

 

そう言うと、おっきな手を私の頭にぽすんと乗せてくる。それで、ゆっくり撫でてくれた。笑いながら私に話しかける。

 

 

 

「俺は出来れば、お前の『にーちゃん』のままで居たいんだけどな。ダメかな」

 

 

「……わかった」

 

 

 

そう言われて、渋々うなずく。まっすぐに目を見られながら、こんなこと言われちゃったら…断る訳には行かないもん。ほんとこれ、ずるいなあ。

 

 

 

「いや、ごめんな。

多分、やな感じの答えだったろ?」

 

 

そう思ったのを見透かしたように、にーちゃんがそう言ってくる。

もう、そういうことばっかはわかるんだ。

オンナココロはわからないのに!

 

 

「…ううん、嬉しい。…けど、でも…」

 

 

「うーん…呼び方が嫌になったって訳でもなさそうだな。じゃあ尚更、なんでそんなに他の呼び方に拘るんだ?」

 

 

 

そう言われて、ぐっと静かにする。

わざわざ言わせようなんて、また意地悪。

 

 

 

「だって…」

 

「…だって『兄ちゃん』だと困るんだもん」

 

 

 

「…?」

 

 

 

よく意味がわからないって顔。

全く、本当に乙女心がわからないんだから。

 

そんな顔を見ていたら、ちょっとイタズラ心が芽生えた。分からず屋のにーちゃんには、こう!撫でてくれてる手をどけて、飛び出て、ほっぺにちゅーだ!

 

 

 

「うおっと!はは、なんだよ急に!」

 

 

「ふふっ!なんでもなーい!」

 

 

 

そのまま歩いていった私をにーちゃんが追ってくる。さあさあ、ショッピング再開!

 

 

まだちょっと心がドキドキしちゃう。でも、もっと大胆でも良かったかな?

 

ううん、今はまだほっぺだけにしておかないと。口と口のキスは、ちゃんとした時にしないとね。

 

 

どんな時って?例えば、チャネルの鐘が鳴り響く、神父さまの前でとか!

 

 

 

 

「おーい!忘れ物、忘れ物!」

 

 

 

 

 

 




折枝 雪 (オリエダ ユキ)
→孤児院の子ども。まだ幼いころに両親に捨てられている為、愛に飢えている。基本的にませていておしゃまで生意気だが、ある一人には態度が甘い。
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