良いですねぇ…とても良い。甘露な味わいです。美しき獣とて、脳を酷使すれば糖は必要。
……ええ、やはり糖を摂取するには団子は必要不可欠でありますゆえ。
「慧音。筍を持ってきたぞ〜」
「すまない妹紅ー。今、少し手を離せないから置いてそのままにしてくれたら助かるー」
「分かったよ慧音」
……おや?客人ですかな?しかし、慧音殿は今とてもお忙しいようで。ならば、拙僧が代わりにお相手を致しましょう。
「失礼。宜しいかな」
「ん?……えっと」
「失礼。まこと、失礼と存じながら声を掛けました。そこなる御仁」
「……誰?」
「お初お目に掛かります。拙僧、蘆屋道満と申す者。法師でございますれば」
「蘆屋道満……確か、蘆屋道満って京の都にいた陰陽師だったような?」
…ほう。儂のことを知っておられるようで。もしや、同じ京の都の者……いえ、そんな筈はありませぬ。
拙僧がいくら京の都に住んでいたとしてもここは幻想郷。
もし、知っておられるのであれば妖や神化した人、もしくは英霊でなければ分かりませぬ。なれば──
「ええ、ええ。その通りでございます。拙僧は陰陽師。どのような術も儂にかかれば──」
「でも、陰陽師って京の都では蘆屋道満より安倍晴明がの方が人気だったなー……」
…安倍晴明?今、この御仁は晴明と申されたか?しかも、拙僧より晴明の方が人気、ですと?
……の、れ……おのれ、おのれェ……晴明ィ!晴明!晴明!晴明ィイイイイイイイイイイイ!
「…晴明。安倍晴明。彼奴だけはッ!!ンンンンーッ!」
「ッ!?び、びっくりしたぁー……もしかして、自分に人気が無いこと言われて怒ってる?」
「フゥ、フウウウウゥゥゥゥゥ……いやはや取り乱しました。失礼。拙僧は別に晴明の方が人気と言われ申しても決して、決してッ!!取り乱したりはしませぬッ!!」
「お、おう。わ、分かった……」
いやはや。
まさか拙僧がここまで熱くなろうとは。何とも……いやしかし、この御仁。
晴明や拙僧を知っておられると言うことは、京の都の縁のある人物と見られる。
…だが、この儂にもこの御仁が妖でなければ神でもない。ただの人間の様にも見られる……この御仁は一体──
──ドタドタドタッ!!
「妹紅ッ!!大丈夫かッ!?」
「あ、慧音。もう終わったの?はいこれ。筍」
「え、あ、あぁ……ありがとう。……って、そうじゃないッ!!こいつに何かされなかったかッ!?」
「ンン、慧音殿。拙僧に対して些か失礼なのではないかと」
「お前が余計なことばかりするからだろッ!!」
慧音殿はやはりからかいがあって、拙僧はとても楽しいでございます。……しかし、この様子ではこれ以上の詮索は無粋、ですな。
「……じゃあ、そろそろ私は帰るよ」
「おや?もうおかえりに?」
「妹紅。道満の話は聞かなくていい。早く帰るんだッ!!」
「慧音はその男が嫌いなの?」
「当たり前だッ!!……いや、こいつは優秀で頭が良すぎるから余計に──」
「私はその人面白いから結構好きだけど」
「なッ!?」
…面白い、とな?この拙僧が?…何故でしょうな。この御仁はまるで、誰かに近しいようで。まるで──
『ヘイ、大将ッ!!今日も元気してるー?』
……これ以上は止めましょう。ええ。これ以上は。
「じゃあね。慧音と…道満だったけ?また来るよ」
「妹紅ッ!!今の話は──」
「あ、そう言えば言い忘れてた。私は妹紅。藤原妹紅。これからよろしくね」
「ッ!?……いやはや。そうでしたか……藤原の者」
「じゃあねッ!!また筍を持ってくるよッ!!」
「妹紅ッ!!……はぁ。道満、お前妹紅に何か変なことしてないだろうな?」
「いえいえ、この道満そのような無粋なことは決していたしませぬ。ましてやあの藤原の者であれば、拙僧は手を出すことも難しいでしょうな」
「……ならいい。私はまだ仕事が溜まってるから後の家事。……分かった?」
「ええ、ええ。慧音殿、拙僧にお任せを」
…いずれまた、お会いしましょう。藤原妹紅殿。その時は今度は拙僧が、とびきり甘露な団子を包んで訪ねましょう……京の都の公家の者よ。
藤原妹紅
迷いの竹林に住む女。
久しぶりに京の都の話が出てきた時はびっくりしたらしい。
後、彼女から見た道満は不気味から面白いと印象が変わってしまった。
これも晴明のせいである。