「はぁ……はぁ……」
「ンフフフ。随分と時間が掛かってしまいましたか……ええ、ええ。この道満の術を強引に跳ね除けるとは。いやはや些か、少しだけ驚きましたな」
あれは何だと、私は感じた。
私が門番としての仕事をするのはお嬢様の為だ。
だから私はこの紅魔館の門番として長い間守ってきた。いかなる侵入者からも、だ。
幻想郷に来たとしても私は自分の役目を果たそう……そう思っていた。
最初の人間はまさか空から侵入してくるとは思っていなかったので油断したが、次は絶対にこの紅魔館に侵入させないと固く誓った。
だけど、それは──
「がはっ…ぜぇ、はぁ……お前、だけ…は、絶対に通させ、ないッ!!この、紅…美鈴が、命を懸けてもッ!!」
「貴殿の主にし仕えるそのお気持ち、拙僧はとても美しい。……ええ。ですが、拙僧も慧音殿から「この月をどうにかしろ」と言われ申されておられるゆえ」
この人間によって私は既に瀕死の状態に陥っていた。……最初はただの人間だとそう思い込んでいた。確かに、私は妖怪だが人の気ならば、感じることが出来たから。
…だけど、この人間は……いや、あれは人間じゃない。あれはただの化け物だ。
しかも、あの化け物は戦ってすぐに分かった。もし、紅魔館の門を通せば確実にお嬢様は殺されるッ!!
「ッ……絶対に、お前はッ!!お前、だけは…お嬢様の所に、は行かせないッ!!……ぐふっ」
「…ンン、ンンンンンン、ンンンンンンンンンンンンッ!!貴殿の働きは実によかった!愚かの極み、無様の果てとはまさにこの事でしょう!
素晴らしい──嗚呼、嗚呼、ソレでこそ忠義とは素晴らしいものッ!!」
「あがっッ!?…がはっ……」
「では、大盤振る舞いにてッ!!……拙僧の人形にして差し上げましょう。ええ、ええ。拙僧の目的は紅美鈴殿…貴殿なのですから」
「ッ!?わ、わた…し……?」
私は選択を間違えた。
あの時、咲夜を呼んでおくべきだった。
この化け物の目的は私だった。でも、もう気もほとんど残っていない、体はボロボロ、術のせいで意識も朦朧としている。
私は、逃げることさえ出来ない。
「では、紅美鈴殿。おやすみを……次目覚める時には──」
あの化け物の声が段々遠くなる。
意識も薄れて何も見え、なく…なってく、る。
あ、ああ……お嬢、様……
♬
忘れもしませぬ。あれは先程、拙僧が趣味で始めた機械いじりを始めた頃のこと。
突然慧音殿が異変の様子を見てきてくれと拙僧に頼んできたことが始まり。
……しかし、拙僧は1度始めたことはきちんと終わらせるまで趣味に徹底したい気分でしたので、今回は式神に異変の様子を任せました。
「いやはや、これが異変……また何とも奇妙で美しい」
この幻想郷では空を飛翔する妖怪や人間が多数存在致しますが、拙僧はそもそも空など飛べはしませぬ。
なので、拙僧がその場所に向かうには術を用いての移動しか出来ないのです。ええ。
「…やはり、式神はとても便利です。いくら死のうが替えがききますからなッ!!……さて、あの紅き城が慧音殿の言っていた異変の発端、ですか」
慧音殿からは様子を見てきてくれと頼まれましたが……これはこれは。ンフフフ、実に面白い。
今回、拙僧は手を出す予定では無かったのですが、この道満。少しではありますが、少しだけ異変の手助けを致しましょうぞ。
「……誰ですか貴方は」
「お初にお目にかかります。拙僧、蘆屋道満と申す法師にて陰陽師でございますれば」
「そうでしたか。しかし、ここは通す訳には行きません。この紅魔館の門番、紅美鈴がお相手いたします」
「左様で。……しかし、拙僧は別にこの異変とやらを解決しようとは考えていませぬ」
「そうですか。なら、早く帰った方がいいですよ……貴方の為になりませんから」
拙僧が見つけたこの御仁。名を紅美鈴と申されたか。
そのお姿、その立ち振る舞いはまさに清を彷彿とさせる。
…ンフフフ、フフフフッ!!実に素晴らしいッ!!拙僧の手足となるに十分ッ!!
…では──
「左様、ですか」
「ええ。別に私も紅魔館に侵入しようとしなければ危害は加えませんから安心してください」
「…ではお一つだけお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「……はぁ。手短にお願いしますね」
「ええ、ええ。では……
死なない程度にいたぶって差し上げあげましょう」