100日後に壊滅する門兵部隊。   作:にゃあたいぷ。

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初日

 ある日、突然に。

 というには、余りにも予兆があったけど、屈強な男達が家にやって来て、薄っぺらい紙切れと共に徴兵の通告を受けました。

 私には溺愛する義妹がいます。御国の為に、というのはよく分かりませんが、不安げに私の右腕を掴む義妹の姿を見て、できるだけ優しく微笑みかけて、その頭をゆっくりと撫でました。

 徴兵が必要だということは浅学な私でも分かります。本国に貢献できるありがたい機会、国民の一人として一層の奮励努力を尽くさなくてはなりません。

 でも、やっぱり、私には、御国の為に、ということがいまいち分からないのです。

 

 ですが、この可愛らしい笑顔を守る為ならば、きっと私は頑張れる気がします。

 

 次に逢えるのは、何時になるのか。

 心配そうな顔で私を見送ってくれる義妹に、行ってきます。と私は勤め先のパン屋に行くような軽い調子で応えました。

 それが明日を拝めるかも分からない日々の、その一歩目に踏み出した日の事になります。

 

 もう遥か昔のことのように思えます。

 たった数週間の軍事訓練を終えた私は今、誉れ高くも国境に高くそびえる門の防衛の任に就く事ができました。前線から抜けて来る機械兵を退治するだけの簡単な御仕事。そう言われて、送り出された私だけの戦場です。

 監査官が云うには、前任者は戦死したようです。兵隊は私だけ、独りぼっちです。

 武装は、全国民に配られている一丁のハンドガンだけです。

 

 軍事訓練で学んだ事は、先ず銃器を構える。次に照準で狙いを定めて、最後に引き金を引く事だけです。

 いや、まあ、マガジンの取り替え方やありがたい教訓とか教えて貰ってるけど、つまりは、まあ、ほとんど銃器の扱い方だけを叩き込まれた状態で戦場に立たされています。

 命綱とも呼べるたったひとつの銃器を握り締めて、嗚呼、と空を見上げました。

 

 私は本当に家に帰ることができるのでしょうか。

 遠くから戦線を抜け出してきた一体の機械兵を見つけた私は、いや、と首を横に振ります。

 果たして、私は明日の朝日を拝むことすらもできるのでしょうか?

 

 ハンドガンの乾いた発砲音を青空に鳴り響かせます。

 

 幸いにも、機械兵は人間相手には興味がなかったようで無事に退治する事ができました。

 その日の任務を終えて、大きな門の内側に帰還すると御給金が支払われます。基本給から家賃に光熱費、学生ローン、税金その他諸々を引かれてしまうと手元に残るのは四分の一にも満たない数字になってしまいます。

 家賃には義妹への仕送りも含まれています。生活するのに必要最低限の金額です。

 

 私は手元に残った僅かな金銭を使って、明日を生きる為に装備を整える必要があります。

 銃器を手入れする為の道具を買わなくてはなりません。

 ……溺愛する義妹に少ない金額しか仕送りできない事は、非常に心苦しく思いますが、私が死んでしまっては元も子もないのです。

 

 私は元ノーズコーンベーカリー13番通り勤務、現カゾルミア陸軍門兵部隊所属マルフーシャ二等兵。

 明日を生き延びて、何時かまた義妹と会う為に死にもの狂いで戦い抜かなければいけません。

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