100日後に壊滅する門兵部隊。   作:にゃあたいぷ。

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前日のエノス視点、少しだけ加筆しています。
あと遅れましたが、夜迷子ノエ様。誤字報告ありがとうございます。


6日目

 私、ベルカは前線に配属されていた。

 毎日のように襲ってくる機械兵を相手に、御国の為に、と叫んで手持ちのサブマシンガンで弾を撃ち込み続けるだけの簡単な御役目に従事する。

 ……ふざけんなっての! ちょっと前に後退の命令が降された後、敵国から送り込まれる機械兵の数が爆発的に増えた。

 

 行きつけのパン屋があった。

 ノーズベーカリーと云う、カゾルミアでは有名なチェーン店だ。前線の近くにある拠点の街まで出張に来ていた店舗であり、私以外の軍人もよく足を運んでいた。そこにあるイートインスペースで焼き立てのパンを齧りながら珈琲を啜るのが好きだった。

 前線を後退させる数日前まで、あの店の従業員は働いていた。

 

 ……はたして、彼らは無事に国境門まで逃げる事は出来ただろうか?

 

 いいや、違う。

 私はサブマシンガンを握り直して、機械兵に照準を合わせる。あの拠点に居た民間人が逃げる時間を稼ぐ為にも、私達のような軍人が身を張って守らなきゃいけないんだ! 肩に銃床を押し当て、出来るだけ振動を抑え込みながら引き金を振り絞った。

 幸いにも機械兵の装甲は薄い。民間用のサブマシンガンの弾でも当て続ければ、破壊することが出来た。

 

「穴だらけにしてやるわ!」

 

 私には守るべき存在が居る。

 あの国境門の内側には家族が居るし、誰かの家族である民間人達も殺させる訳にはいかない。次から次に無尽蔵に湧いてくる機械兵が相手でも、簡単に逃げる訳にはいかないんだ!

 たった一人でも多くの人を生かす為に、限界のギリギリまで機械兵を壊し続ける。

 

 それが、今から二日前の話だった。

 私は、機械兵に前線を突破された責任を取らされる形で門兵部隊へと左遷させられることになった。

 別に転属は、これが初めての事ではない。

 今回の事だって、体良く私を追い出す為に付けた算段に違いなかった。

 

 そうですか。と私は淡々と答えた後、その足で荷物をまとめて部隊を出た。

 

 

 それは唐突だった。

 何時ものように部屋でテレビを眺めていると、監査官がツインテイルの女性と一緒に押し入ってきた。

 突然の訪問に頭の中は錯乱して、フリーズ状態だ。

 

「調子はどうかしら?」

 

 そんな監査官の問いかけに「……御用、でしょうか?」と返す他に手がなかった。

 監査官は、じっと私を見つめた後に溜息をひとつ零す。

 

「ベルカ、この子のことはしっかり見ておくこと。ボーッとしていて、怪我しても気が付かないのよ」

 

 また、ぼんやりしていると言われてしまった。

 こんな事なので、私は、空虚で、気持ちが悪い奴だと。言われるのだ。

 これでも、改善しようとは、頑張ってるんだけどな。

 

「エノス、彼女はベルカ。前線から来た元衛生兵よ」

「最後は前に出て、バリバリと戦ってたけどね」

 

 なんだかツンとした人だなあ。と思って眺めていたら、彼女は私を見て、目を見開いた。

 

「……って、血が出てるじゃない! どうしたのよ!」

 

 彼女はポケットからハンカチを取り出すと、私の額に押し付けた。

 あれ? 今日は怪我していないんだけど? まだ国境門を守る時間にもなっていないし……。

 あっ、と思い当たる節に気付いた。

 

 しかし、今、思い出したところで、もう、手遅れだったようで、朝食のジャムを拭き取ってくれた。

 えっと、ベルカだっけ? が、わなわなと肩を震わせている。

 

「これ、ジャムじゃない! 紛らわしい!」

 

 甲高い声に、頭が、キーンって、なった。

 

「ま、まあ、こういう子なのよ。今日から二人は相方になるのだから仲良くなさい」

「……相方?」

 

 こてん、と首を傾げると「そうよ、今日からルームメイトでもあるわよ」とベルカの方から手を差し伸べてきた。

 

「今は、サブマシンガン兵ベルカよ。足を引っ張らないでね」

 

 ツンケンとした態度。でも、一応、歩み寄る意志はあるらしい。

 色々と言いたい事も、あった気がするけど、考えるのが面倒臭くなって、うん、と小さく頷いて、彼女の手を取った。

 今日から、二人で国境門を守れるのは、大きい。

 私に、マルフーシャと、同じ事をするのは、難しい。

 

 

 のんびりした子だな、って思った。

 こんな性格をしていながら、よくもまあ今日という日まで生き延びれたものだと素直に感心する。

 話を聞けば、最近になって徴兵されたんだとか。

 階級を聞けば9級等国民。本当に、よくもまあ、徴兵を逃れ続けることが出来たもんだ。

 あんまりにものんびりしてるので戦場に来るのも遅刻したのだろう。

 

 彼女は下のベッドを使っているらしかったので、私は上のベッドを使わせて貰うことになった。

 荷物を整理している間、彼女はずっとテレビに齧り付いていた。政府主導の情操番組、もしくはプロパガンダ。それの何が面白いのやら、とか思いながら前の部隊から拝借してきた民間用サブマシンガンの手入れをする。前線では、まともな武器が回って来ない。更に後方の門兵部隊であれば、なおのこと、銃器なんか手に入ることはないはずだ。

 斯くして、私の予想は当たっていた。危うく私はハンドガンで機械兵と戦う羽目になっているところだった。

 

 機械兵を相手にハンドガン一丁で戦うなんて、正気の沙汰ではない。

 

 

 くちゅんっ、誰かが私のことを噂しているのかな?

 今日も国境門を守る御役目を果たした私は、今は部屋で一人きり、ショットガンの手入れに精を出している。

 やっぱり、まともな銃があるとないとじゃ大違い。

 今日は大型の機械兵がやって来たけども、ショットガンの火力にものを云わせて、難なく撃破した。

 国境門を狙うだけで人間を撃たない機械兵は良い的だ。

 そして昇給、また一からのやり直しだけど、安定して昇給できることだけが、この仕事の良いところだ。

 次こそは、妹に仕送りする為に頑張って生き抜いてやる。

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