前線にある一部の拠点は半ば、崩壊したらしい。
敵国の新型である自爆特攻兵器が拠点を吹き飛ばし、その勢いのままに国境門まで侵攻した。
残った特攻兵器は辛うじて、門兵部隊が迎撃した。
しかし、御世辞にも無事とはいえない有様だ。
国境門の修復には、どれだけ掛かる。
負傷者も出た。門兵部隊の立て直しには、もう暫くの時間が必要だ。
今、取れる最前の選択を。
とにかく部隊の配置換えは必須だ。
此処から先、彼女達には今まで以上の無理を強いることになる。
頭が痛くなるばかりだ。
とりあえず、上官の机を磨く事で気持ちを落ち着ける。
そして今日もまた警報音が鳴り響いた。
◆
背中には半壊した国境門、向こう側が見えてしまっている。
最早、聴き慣れた警報音。ショットガンを両手に握り締めて、前を見据えた。
地平線の彼方から攻め込んでくる機械兵。空と陸の波状攻撃、迫り来る鉄塊を迎え討つ為に砲口を向ける。
充分に引き付けて、引き金を絞った。衝撃を全身で押さえ込んで、一、二、三と速射する。
装甲が剥がれて、爆風と共に液体が飛び散った。
装填する。弾を詰め込んで、そしてまた数秒にも満たない時間で三回、引き金を引き絞った。
爆風の隙間から、鼻先に破片が飛来する。
それを首を傾けて躱し、返す刀で空戦型の小型機械兵を撃ち抜いた。
的確に、相手の動きを見切り、動いた先に照準を合わせる感覚、後追いではなくて待ち受ける。
何度か装填と速射を切り返せば、目の前に残るのは爆発四散した機械片のみ。
今日もまた、機械兵御一行様を殲滅せしめた。
◆
「ああ、本当に厄日が続くわね」
後ろには修繕中の国境門。その先には衛兵の宿舎があり、更に先には7等級未満の国民の居住区が広がっている。私の兄妹は、そこで暮らしている。此処から先に通す訳には行かない。
今日は私の後ろにエノスは居ない。
人手不足との話で、それぞれ別の国境門を守っている。サブマシンガンを両手に握り締めて、迫る機械兵に向かって駆け出した。
「何処までだって足掻いてやるわよ……!」
◆
「また、一人……」
背後には、無傷の、綺麗な国境門。
何度か、守ったことはある。ここはマルフーシャが、守り続けてきた場所。
そこを今、私が、一人で守っている。
「……やって、みる」
地平線の果てから向かってくる機械兵、軽機関銃の銃口を向ける。
先の特攻兵器の襲撃で、此処と、私とベルカで守っていた国境門以外の全てが、半壊以上の被害を受けたと聞いている。
みんな、修繕とか、怪我の手当てとか、せかせかしてる。
こんな時でも、機械兵は、やって来る。こんな時だからこそ、機械兵は、やって来る。
私の頭は包帯で、ぐるぐる巻きだ。
ベルカが、やってくれた。血は出てたけど、怪我は軽いとか、ちょっと頭がまだ、ぽけっとしてる。
いや、それは何時ものことか。とりあえず、今日も頑張る。
この国境門の先には、私の家族もいる。
「ここから、先は、行かせない……!」
迫り来る機械兵に目掛けて、弾幕を張る。
力の限り、弾をばら撒いた。
◆
マルフーシャは勿論、エノスとベルガにも国境門を単体で守れるだけの力がある。
しかし、それでも部隊の能力には限界があった。
……今日は前に出て、ショットガンの引き金を引いた。
機械兵を撃ったの何時ぶりか。
憲兵が敵兵の矢面に立つのは間違っているけど、そうしないと凌ぎ切れない。
とりあえず、今日を凌ぎ切った事で幾分か余裕はできた。国境門の修理を急ピッチで進めさせる。その為に大量の物資を消費する羽目になってしまったが、これも国家防衛の為の致し方ない犠牲だ。
ただ、まあ、私の部隊が大きな被害と出費を出してしまった事は否定できない。
元々は前線の失態とはいえ、被害を食い止め切れなかった門兵部隊に非がある。その責任は、部隊の監査と監督を続けていた私にも飛び火する。出向からの出戻り栄転、憧れの内地勤務。その夢が遠のいた事に溜息を零す。
これは私、ライカが軍属になって以来の大失態だ。
とにかく不貞腐れていても仕方ない。
戦力が足りない、人員不足なのは明白だ。ついでに云うと武装も行き渡ってなかった。
機械兵の猛攻が激しくなる今、ないない尽くしで嫌気が差す。
足りぬ足りぬは工夫が足りぬと云うけども、リソース管理をするにも限界がある。
それでも、やらねば、国を守ることができない。
今、前線は、どうなっているのか。
その詳細な情報が、この門兵部隊に配属されてから届き難くなっている。
前線は今、何処にあるのか。前線の部隊は、どういう状況なのか。
それでも、為すべき事を、為すしかない。
そうするしか、ない。
ポンコツだけど有能っていう表現に困るライカさん。