最強(厨二病)到来
ーー等しく、絶望であった。
東京ーー日本を代表する首都。それが今、突如現れた怪物によって崩壊しようとしていた。
平和であった、穏便であった、それが、その平和が、ずっと続くと思っていた。
しかし、平和はいつまでも続くことはなかった。
「な……ん…だよ…あれ…」
工事作業をしている男がポツンと呟いた。カンカンと釘を鳴らし作業していた手が止まった。
突如襲ってきた地震のようなもの。早く避難しようと立ち上り、顔を上げたところに、ソレは居た。
ひとえにーー化け物。
巨大な巨大すぎる四肢に、何百個とある目玉。そして、決め手となるソレの雰囲気。まさに恐怖を詰め合わせたようなソレは見てるだけで息苦しくなる。
空がーー裂けた。比喩ではなく、ソレはただそこに存在するだけで空を裂いて見せたのだ。
ソレが男の方へ目を向けた。「ひっ…」と、息をしたくてもできない、過呼吸に近い悲鳴がごぼれ落ちた。
そしてソレは手に持っているナニカをゆっくりと上げる。
スローモーションに見えた。これが走馬灯なのかと、男は場違いに思った。そう思うしかなかった。
ーーーーそのナニカが振り下げられた時、東京は消えた。
ーーもはや姿がなくなった東京のど真ん中でソレは佇んでいた。
ドミノのように崩れているビルの数々、人だったのだろうモノたち。火がそこら中に舞っていて、地獄のようだ。
【つまらん…こんなものか……人間は…】
ソレがつぶやいたのは人間に対する失望。戦車に自衛隊に爆弾、どんな手を使おうとソレに傷一つ付けれなかった。
【どこかにいないのか…私に匹敵する強者が…】
次につぶやいたのは悲願。ソレはただ、主人である魔王から命令されたから人間を殺しにきたわけではない。
望みをかけたのだ、自身に匹敵する強敵がいるのかも知れぬと。が、結果はこの通り。
【つまらん…実につまらん…】
ソレは嘆く。このつまらない世界に。
その時だ。
「おいデカブツ、てめえか?東京をこんなんにしたのは…」
ーー刹那。この世のものとは思えぬ殺気が自身の体に吹いた。
殺されると直感で感じたソレは、一瞬にして後ろに飛び、距離を取る。
【……なんだ…お前は…?】
ソレは殺気を放つ張本人に向かってそう言った。
しかしこの男、素性が掴めない。白一色のロングコートに深いフードを被り、顔は不気味な仮面で隠されている。
「名乗るほどのもんでもねえ…お前を倒すものだ」
【なに…?私を倒すだと…?人間如きが?】
ソレは疑問を放った。
「人間如きが、だ。ささっとかかってこい、くそ野郎が」
突如現れた人間は、反論する様にソレに言い放つ。煽りともいう。
【く…くくっ…面白い…私はディスペア…お前…名はなんという?】
しかし、ソレーーディスペアは煽りに屈すようなことはなく、絶望を具現化した恐怖そのものである自身に歯向かってきた人間に敬意を表し名を名乗る。
「言っただろ、名乗るほどのもんでもねえよ…俺はお前をーー」
そう言って、消えた。人間は突如として消えたのだ。ディスペアは周りを見渡す。しかし姿が見当たらない。
どこにいる?まさか逃げたのか?そんことはないだろう、そんなのこの私が許さない。
それにこのディスペアですら見えない移動ができるんだったらとっくにーー
ふと、気付いた。足の感覚がないのだ。さっきまで地についていたはずの足が。
そんなはずはない。なんなんだこれは?一体全体なにがーー
ーー腕。次は、腕がなくなったのだ。何十個とあったはずの腕が、ない。
な…なんなんだ?何が起こっている?なぜ私の身体がどんどんーー
「倒す者だ」
ーーディスペアは何百個とある目を驚愕に見開いた。さっき消えた人間が何十メートルもあるはずの自分の目の前にいたからだ。
その時ディスペアは気付いた。否、気付かされた。上には、上がいるのだと。
東京を壊滅させ、世界を震撼させた怪物は、1人の人間によっていとも容易く命を絶ったーー
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