ーーーーーーーーーーー巨大な、本当に巨大なある城がそこにあった。黒を基準にしたプラハ城と言えばいいだろか。
しかしそれはプラハ城よりもいくらか、いや、比べるまでもないくらいに大きい。その城からは憎悪、苦しみ、怒り。
あらゆるさまざま負の感情が流れているのではないかと思うまでに、その城は黒かった。
この城こそが【魔王城】世界中を恐怖に陥れる絶望、魔王の城。
人は問う。ああ、神よ、なぜ私たち人間にこのような試練を与えたのかとーーーー
ーーーー魔王城の廊下を、コツン、コツンと、靴を鳴らし歩く者がいた。
外から見れば齢16。しかし、その年齢は100を優に超えている。纏う雰囲気も、只者ではないことが判る。
その者はコツンと、また音を鳴らし、巨大な扉の前に立った。3メートルはあるだろう
ズズ、ズズズ、と、徐々に扉が開いていく。
そして、開いた扉の先にはーー黒。何か黒いモノが玉座に座っていた。
【久しぶりじゃないかーーーールシフェルよ】
ーー黒いモノが、口を開く。
ーーーー刹那、この世のものとは思えないほどの魔力が、力が、その黒いモノから、溢れ出ててくる。
そこら辺にいる魔物や人間なら、この力を受けただけでこの世界からいなくなるだろう、圧倒的な力。
ルシフェルと言われた者は、しかし、それに動じることはない。
「はい、ただいま帰りましたーー魔王様」
ルシフェルが口を開き、返事をする。よく見ると玉座に座っている黒いモノは人のような形をしている。だが、制御してもなお、溢れ出てくるその力は、もはや人ではない。そう、黒いモノの正体はーー魔王。世界を絶望に陥れる、魔の王。
見た目は20代後半あたり、白い髪に黄金の目、そして纏っている黒のロングコートの上からでも判る筋肉質な体に、整った顔。
現代の世界、さぞかしモテるだろう。しかし、頭に生えているツノが異質感を表していた。
【それでーー調査の方はどうだ】
「はい。計画通りであります。あの者ーー田中太郎の調査は、後輩という立場を利用し、順調に行っております」
計画ーー。勘のいい人なら分かるだろう、この少女、ルシフェルは、紛れもない千枝梨沙そのものであった。
全ては計画通りであったのだ。自身を囮に、魔王城の門番たちに自分を襲わせ、田中太郎に助けてもらい、関係を作る。
門番三人が全員死んでしまったというアクシデントもあったが、これも魔王様のため。あの三人も幸せだろう。
【そうか、あいつはーーあいつだけは絶対に消さなければならない、分かるだろう?】
「はい、重々承知しております、魔王様」
魔王は、魔の王は、田中太郎という一人の人間を危惧していた。
この魔王が直々に作った最高傑作であるディスペアを、いとも容易く殺してみせた。その後も【七人の英雄】でも討伐が難しいであろう
怪物を送ったのにも関わらず、あいつはーー田中太郎という人間はその全部を殺してみせた。魔王という存在が危惧するのも当然と言えるだろう。
【しかし】と魔王は話を変える。
【やはりあいつーー田中太郎は【非道の魔王】で間違い無いのだな?】
「はい。魔王様。私はあの者に助けられた際、なぜこのようなことをするのかと問きました。あの者は償いだと、言ったのです」
【ほう……】と、魔王は相槌を打つ。
ーー魔王とルシフェルはある仮説を立てていた。それは田中太郎は【非道の魔王】ではないかということ。
最高傑作であるディスペアをも容易く抹殺する力、出てきた怪物を即座に殺す、怪物に対する殺意。
【非道の魔王】は名の通り、それはそれは非道であった。地上の動物たちを大量虐殺し、地獄の閻魔大王を瀕死にさせ、ついには天界の神にまで手を出した。
ーーだからこそ、思ったのだ。田中太郎が言った「償いだ」ということは、殺してしまったものたちに対する償いなのではないのかと。
だがーー
【く…くくく…】
ーー魔王は嗤った。もう、遅いのだと、もう、間に合わないのだと。田中太郎、いや、【非道の魔王】よ、哀れだと。だが、本気で思っているわけではない。期待をしているのだ。
【くく……そうか…ご苦労であった…出て良い】
「はっ、魔王様」
魔王に出ていくよう促されたルシフェルはコツン、コツン、と、また、靴音を鳴らし扉を出た。
ズズ、ズズズと、ゆっくりと、扉が閉まる。
【田中太郎…いや、【非道の魔王】よ…お前なら、【あの方】も……」
徐々に暗くなっていく部屋で、ぽつんと、魔王が一人呟く。
魔王がつぶやいた【あの方】には呼び名とは裏腹に、憎悪が込められていた。
大きな窓から降る光照らされながら魔王は立ち上がる。
【非道の魔王】通称ーーーー【最強の魔王】
ーーーーその力は神をも滅ぼす
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では!!