「つ、付き合ってください!!」
日光に照らされ、優しい風が流れる学校の屋上。そこである少女が青春の醍醐味とも言える【告白】をする。
90度に腰を曲げ、握手をする時のように手を開き、腕を伸ばす。
対峙するは学校1イケメンと言われる【加藤慎也】
日本とアメリカのハーフであり、煌びやと輝く金髪にどこか可愛らしさを蓄えたイケメン顔。運動神経抜群の成績優秀。田中が聞いたら「ぜっっったい演じてる」と言うくらいの完璧超人。
加藤慎也に託された選択肢は二つ。少女からのびた手を、握るか、握らないか。
ミーンミーンと蝉の声が響く。それがさらにこの場の緊張を高めさせる。
その手を握られた時の喜びと、握られずに終わる絶望感が少女の体内をぐるぐると彷徨っているのだろう。
心なしか少女の手は、いや。体全体が震えているように見える。
そして蝉が鳴き止んだ瞬間に、加藤慎也は目の前の勇敢なる戦士に告げたーー
ーー「ごめんね。僕、まだ付き合う気は無いんだ。ほんとにごめんね」
………………勇敢なる戦士は、告げられた刃にによって力なく崩れ落ちた。
学校という生活の括りの中には必ず三つの派閥が存在する。
一つはクラス、または学年全体を仕切る中心的な人物。世間一般的には陽キャと言われる者達。
もう一つは比較的大人しめで、あまり人と関わらない人物。世間一般的には陰キャと言われる者達。
そして最後、どちらの派閥にも属さない、中心的な人物ではないが人と関わらないわけでもない。普通の者達。
これらの人物たちが学校という生活の中にいることにより、一つの【青春】が完成する。
そしてそれらはもちろんこの【東京都式神高校】にも存在する。
偏差値は72と。中々に頭のいい高校。口コミでの評判も悪くなく、部活動においても優秀な成績を収めている。
ちなみにこの高校こそが田中太郎が所属している高校である。あいつ、意外に頭がいいのである。意外に。
そんな東京都式神学校ではある人物が話題となっていた。
親の事情でアメリカから転校してきた、日本とのハーフ。甘いマスクの超絶金髪可愛いイケメン。高校一年生。
転校初日で学校中の噂となり、2日目で学年全体を仕切り、3日目で学校全体を仕切った化け物。
その名も加藤慎也。
もはや教師すら従えるカースト最上位野郎である。
……女子生徒が去っていった。
相当ショックだったのか、涙の溢れた跡がいっぱいある。
僕は加藤慎也。自他共に認めるイケメンであり、自他共に認めるクソ野郎でもある。
僕が転校してきてから一週間が経ったけど、もうこの学校は僕のものになっている。学校の長でもある女校長も堕としたのがその証拠だ。
告白された数はもう100回を超えたあたりから数えていない。
その度に断って、女の子に涙を流させる。でも不思議なことに罪悪感などは無い。ただ、気持ちいい。
僕と言う存在に振られて、泣いて顔を歪める女の子達を見ると、本当に気持ちがいい。最っ高の気分になる。
男子だってそうだ。自分で言うのもなんだけど僕は可愛い。そこらの女優よりよっぽど可愛い。男だけど。
男子達にも何回も告白されたことがある。そして断る。そしたら泣く。僕は最高の気分になる。
ここまで来たらもう猿でもわかるぐらいに僕はクズだ。今世紀最大のクソ野郎。
僕の家庭は色々と複雑で、金はあるけど浮気をしまくる父に、ギャンブルしまくる母。つい最近は離婚して、また再婚した。
そんなところに生まれてしまったモノだからこんな性格ができてしまった。
でも、自分がクズなことを自覚していない奴らより全然マシだ。僕はクソ野郎なことを自覚している。そこの違いなんだ。
そんな僕でも堕とせないやつが1人いる。
名前は田中太郎。普通の普通にして普通のやつ。顔も普通。スタイルも普通。成績も普通。運動も普通。
どうやったらそんな普通なやつが生まれるのかがわからないくらいに普通。でもこいつ中々僕に堕ちないんだ。
僕の目を見ただけで惚れる女子や教師に男子だっているのに、こいつは僕のことを間近に見ても何も反応しなかった。
ある日朝登校した時、「おはよう」と、エンジェルスマイリングで田中に言ったのだ。
この時点で全人類は僕に惚れる。そのくらいに自信があった。田中は堕ちなかった。
またある日、「髪型変えた?似合ってるね!すごいかっこいいよ!」と、昼放課、田中に言った。
そしたらあいつはただ「…あっ…うん」って言って席を立って僕から離れたんだぞ。意味がわからない。
なんでこいつは僕に惚れないんだ。ムカついためちゃくちゃムカついた。相手が誰であろうと堕とせたこの僕に堕とされない田中太郎という
超一般生徒にぼくはすごくムカついたのだ。
それからも猛攻撃を仕掛けたのにも関わらず全部、ぜーーんぶあいつは「おう」とか「うん」とか「へー」とか一言だけ言って僕から離れる。
なんだか最近は田中のことばかり見てる気がする。これは別に好きとかそう言うのでは無いのだ、絶対に違う。
いつも堕とす側の僕が田中太郎とか言うスーパー一般生徒に堕とされるわけがない。絶対にそんなことはないのだ。
キーンコーンカーンコーンというお馴染みのチャイムが鳴り響いた。6限目が終わったようだ。田中のせいで全然集中出来なかった。
まあ、それは家に帰ったら復習したり男子達に聞いたりなんでもすればいいし。もうみんな僕にメロメロだからな、なんだって教えてくれる。
と言うことで日課となる田中の尾行だ。ストーキングではない。僕が田中を堕とすための情報を得るためにこう言うことをするのだ。
もう僕は田中のことならなんだって知ってるんだぞ。好きな食べ物や飲み物に映画はもちろんのこと、家族のことだったり普段散歩する道だってしってる。なのに堕とせない。本当にむかつく。なんなんだよバカ。バーカ。
そんなことを考えてると突然田中が立ち止まった。まさか尾行がバレたのかと思ったが違うようだ。もし尾行がバレてるなら後ろを振り向苦はずだし、ま、振り向かれても僕の固有魔法【転移】を使えば一瞬にして消えれるんだけどね。
しかし中々動かないなと思った時のこと。田中の横腹に強烈なキックが繰り出された。
ただのキックではない。魔力を乗せたキックだ、一般人が食らったら全身の骨という骨が砕けてしまう。
僕はそれを見た瞬間足を全力で動かした。音速まではいかないがカツラを被ってる人の横を通り過ぎたらカツラが空の彼方に吹っ飛ぶくらいの速さである。僕と田中の距離は約20mくらい。これだったら間に合う。まだ田中に死んでもらうわけにはいかないのだ。
田中は僕が堕とさないといけない。なのに先に死ぬなんてことは絶対あってはならない。ちなみに【転移】はその強力さゆえ1日に一回しか使えない。魔力の消耗が大きいのだ。
あっという間に田中の元についた。たった数秒だったいうのに砂埃が舞って視界が悪い。なんでコンクリートで砂埃が舞うんだよ。
そして砂埃が消えてきて視界が開けた時。僕は田中は絶対に絶対に瀕死状態だと思っていた。拙い魔力を乗せたキックとはいえ、田中太郎は一般生徒だ。魔法なんて使えないただの一般生徒。だから僕は魔力を残して治癒魔法をかけてやろうと思ってた。
ーー田中が平然と立っている姿を見るまでは。
そして、田中の下にはさっき蹴りを放ったであろうチンピラが死んだように床に倒れていた。体に傷がないのを見る限り死んではないのだろう。僕は田中に話しかけに行った。
「ね…ねえ…大丈夫?」
僕がそう聞くと田中は一瞬驚いた顔をしてから「このことは誰にも言わないでくれ」と言ってどこかに消えてしまった。
…聞こえなかった。砂埃が舞うような戦闘してれば打撃音などが聞こえるはず。なのに気持ち悪いぐらいに無音だった。
そして見えなかった。田中が消えた瞬間が、何をしたのかすら分からなかった。僕と同じ【転移】を持っているのか?
そもそも田中は何者なんだ?学校では魔法を使える素振りなどは見せなかったはずだ。魔法が使える人にだけ見えるオーラもなかった。
では田中は本当に魔法を使えないのか?それともオーラを隠しているのか?僕の頭の中は疑問で埋め尽くされている。
…考えても仕方ない。僕も帰ろうと思った刹那、僕の目の前に拳が置いてあった。その拳はどんどん僕に近づいていってーー
ーー盛大に弾けた。
投稿遅れてしまってすいません。
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後、田中が【闇の善人】だということは加藤慎也にはバレてません。上手く隠しています。ちなみに尾行も気づいています。
⚠︎bl展開はないです