これパスパレメイン回・・・だよな・・・?
「はぁ・・・」
お仕事を終えた私は事務所の片隅で今朝のイヴちゃんとの一件でため息をついた。
かなりキツイことを言ってしまったけど・・・。
口に出した言葉はもう呑み込めない以上、今の私にはもうどうすることも出来ないし、それにあれで正しかったのかすら分からない。
「帰りましょ・・・」
しかし、ここでいくら悩んでも答えが出るわけではないからとりあえず家に帰って休みましょう・・・。
そう思って事務所を出ようとすると何か入口が騒がしいけど何かあったのかしら?
私はそのまま騒ぎの脇を通って帰ろうとする。
その際に騒ぎの中心にいた人物を見て驚いてしまった。
そこにはここにいるはずのない彼女の姿があったのだ―――
「やぁ千聖」
「薫・・・。どういうつもりかしら?」
「良かったらこれから・・・どうだい?」
私は騒ぎの中心にいた幼馴染に怒りを覚えながら頭を抱えてしまった。
そんな私の事を気にする気配もなくカップを持つようなジェスチャーを向けてくる。
「えぇ・・・行きましょうか」
「それじゃ、行こうか千聖」
普段だったらこんな誘いには乗らないけど、今朝の事があって精神的に参っているのか誘いに乗ってしまった。
薫は私の横に着くとそのまま並んで曇り空の元を歩き出す。
少しだけ事務所から歩いた私達。
時間にすればわずかな時間だったのに心が弱くなっていた私はこの無音に耐えられず、歩き始めてまもなく薫へと話しかけていた。
「薫。あなたなんで事務所まで来たのかしら?」
「とある人に頼まれたからさ」
「とある人・・・?誰かしら ?」
薫が言ったとある人物が誰なのか気になって聞いてしまった。
日菜ちゃんはそんなことを頼むような子じゃないし・・・麻弥ちゃんか花音、大穴で彩ちゃんかしらね?
そんなことを考えていたが薫は笑みを浮かべながらあっさりと答えを返してきた。
「弦太朗だよ」
「えっ?」
「弦太朗に頼まれたのさ。「幼馴染の千聖の事を頼む」ってね」
「そう・・・」
弦太朗が・・・。
でもよりによってどうして薫なのかしら・・・。
「話は麻弥から少しだけ聞いたよ。君の事だ、イヴちゃんの事を思って憎まれ役になったんだろ?」
「そんなんじゃないわ?」
「ふふっ、私にそんな嘘が通ると思っているのかい?伊達に名女優の幼馴染を何年もやってないさ」
「・・・」
正解をズバリ言い当てられてしまった。
私はそれを隠すように振舞ったが、目の前に幼馴染には一瞬で見抜かれてしまって言葉を失ってしまった。
横にいる薫は涼しい顔をして私を見つめているけれそも、この調子でいられると癪に障るわね・・・。
「でも、それがどうしたの?かおちゃん?」
「そっ、その呼び方はやめ・・・。2人っきりだから・・・・今だけはいいよ・・・ちーちゃん」
まさかのOKに私の方が面食らってしまった。
私も薫・・・いえ、かおちゃんの幼馴染をしているから恥ずかしいと思っているのは分かっている。
でも、かおちゃんが恥ずかしさを押し殺して返した笑みの破壊力は凄まじかった。
「それで私の事務所の前まで来てたの?」
「弦太朗もだけど私だって、ちーちゃんの事が心配だったから・・・」
「そう・・・」
久々に見た薫の恥ずかしがりながらも、しおらしい反応に私は懐かしさを覚えて嬉しくなる。
まさかこれを狙って弦太朗は薫に頼んだのかしら・・・?
弦太朗も憎いことしてくれるわね。
弱ってる私の心に一番効果のある物を無意識に用意するのだから・・・。
弦太朗の行動と薫の姿を見て気持ちが明るくなると同時に曇り空が晴れると雲の隙間から日が差し込んで私たち2人の影を作る。
その影は道に先まで伸びていったが―――
突如として2人の間に怪物の影が割り込んできた。
「嘘っ!?この前の・・・。どうしてここに・・・!!」
「あれが・・・」
あの化け物―――キグナスだったかしら?
そいつは太陽を背にして建物の屋上から彼女達を見下ろしていたが、何を思ったのか建物の屋上から飛び降りる。
それと同時にかおちゃんは私の腕を掴む。
「逃げるよ!!」
「ちょっと!?」
普段の薫に戻ってしまったけどその表情は真剣で私の腕を引いて駆け出す。
降りてから私達の方へと追いかけてくるキグナス、その距離はどんどん縮まっていく。
「なんで私達を!!」
「それは違うよ。あいつの狙いは君だよ。千聖」
私の言葉に答えるかのようにキグナスは一度立ち止まると私に向かって羽根のようなものを飛ばしてくる。
「ちーちゃん!!」
「きゃ!!」
「くっ・・・!!」
「薫!!」
「大丈夫。かすり傷だよ」
私目掛けて飛んできた羽根だったが、薫が私を抱きかかえるように腕を引く。
そのおがけで私は怪我はなかったけど、数枚の羽根が薫の服を裂き、そこから少しだけ血が滲む。
少しだけ痛がるような表情を浮かべる薫に声を掛けるが私の腕を引いて再び薫は走り出す。
その姿を見て私は声を張り上げる。
「薫!!離して!!」
「残念だけどそれは出来ないよ」
「なんで!!」
「弦太朗みたいには出来ないけど、私もちーちゃんの笑顔くらいは守りたいからね」
その薫の答えに私は返す言葉が見つからなかったが、薫はそんなことを気にすることはなく先ほどよりも速度を上げて走り出す。
「このまま大通りに出るよ」
「ちょっと薫!?」
「あいつは君が狙いだ。現にさっきから私には攻撃してこないから大丈夫だよ」
真剣な薫の言葉に息を呑む。
心の底からそれを言ってるのが分かった私は薫を信じることにしてそのまま大通りへと飛び出すけど、その後を追ってキグナスも私達の後に続いて飛び出してくる光景に周囲の人は悲鳴を挙げて逃げ出していたが、それを気にするほど体力に余裕はなかった。
「千聖。もう少しだけ・・・行けるね?」
「えぇ・・・!!」
「大丈夫。千聖は私が助けるから」
薫の言葉に答えるも私は体力の限界が見えてきていたけど、体力を振り絞ってそのまま薫と共に走る。
大通りに出たはいい物の歩道の脇には路上に停めてある自転車や街路樹で、私達よりも遥かに大きいキグナスは少しだけ走りにくそうにしていたが、次第に距離が詰まってくる。
「くっ・・・。すまない!!」
薫は私の腕を引いていた手とは反対の手で路上に停まっていた自転車を路上へと引き倒すと、キグナスは予想外の障害物に足を取られて盛大に転ぶ。
そのまま走ると大きな橋を渡ろうとしたがそのなかほどでキグナスが私達を追い抜いて立ちふさがった。
「うそ・・・」
「・・・大丈夫だよ。任せて」
薫が私の前に立ちふさがると同時に言葉が聞こえてきた。
そして薫が私を庇うように立つとキグナスの方から話しかけてくる。
「アイドルは・・・パスパレは消す・・・!!」
「それが千聖を狙う理由かい?」
「そこをどいて・・・。そうすればあなたは見逃してあげる」
「確かに見る人からしたら、それは魅力的な提案かもしれないね・・・」
あいつの目的は私を含めたパスパレのみんな・・・
私が行けば薫が助かるならいいと思ったが薫の腕を掴まれる。
その行動に驚いた私は薫の方へと向き直ると薫の腕に抱かれた。
「薫!?」
「・・・だがその提案は断らせてもらうよ」
「なんですって?」
はっきりと拒否した薫にキグナスは苛立ちの言葉を見せていた。
それに畳みかける様に薫は言葉をぶつけていく。
「彼女は私達の大事な人だから自分よりも守りたいのさ。それに、君のような醜いアヒルに渡すつもりはないよ」
「薫・・・!!」
「くそがぁ・・・!!」
その答えにキグナスの口調が荒々しい物へと変わっていくけど、どこかで聞いたような声ね・・・。
「折角だ。私のもう一つの顔を教えてあげよう」
「もう一つの顔・・・?」
「何を言ってるの・・・?」
キグナスも私の薫の言葉に困惑するが薫は堂々とした態度ではっきりと宣言した。
「私は瀬田薫。またの名を"怪盗ハロハッピー"。この可憐な白鷺は私が頂いていくよ」
「きゃ!!」
その言葉を共に薫は私を抱きかかえると同時に駆け出すが、キグナスはその場で羽根を私達へ向けて飛ばすが薫は橋の手すりを駆け上がる。
「ちょっと薫!?まさか!!」
「それではごきげんよう。醜いアヒルさん」
「きゃあああああああああああ!!」
薫はそう言うと私を抱えて橋から川へと飛び降りた。
その光景をキグナスは橋の上から見下ろしていて、そこから私達を追いかけてくることはなかった。
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