バチギスドリドリまで後少し―――
次は誰が狙われるのか・・・
私は演劇部の練習を終えて麻弥と共に帰路へと着いていた。
「薫さん。今日の練習はかなり熱が入っていましたね!!」
「そうかい?麻弥もあんな出来事があった後なんだから余り無理をしないほうがいいんじゃないか?」
「はい!!ですけど薫さんもですよ?」
「それもそうだね。でも、こんな状況だからこそ日常を大切にしたいのさ・・・」
私達はそんな他愛ない話を繰り広げながら―――
――――――
「あの~薫さん。そんなところは今は詳しく話さなくていいので、もう少し後の事をお願いします。具体的にはあいつが出てきた辺りを・・・」
「おや・・・美咲はどうやらせっかち・・・。いや、どうやら美咲だけがせっかちではないようだね・・・」
余りにも関係が無さそうな話が始まったので美咲が早々に話を打ち切らせると、ペルセウスが出てきたところの話を急かす。
そんな薫は美咲へと視線を向けるが、そこには視線の先では美咲だけではなく薫以外の全員が薫の話を急かすような視線を向けていた。
「分かったよ。では出る前まで話を飛ばそう―――」
――――――
私と麻弥は2人で他愛ない話をしていたら、ミッシェルたちの事について連絡を受けた。
でも私は麻弥を一人にすることを躊躇って麻弥を家まで送ることを考えていたがそこで悲鳴が聞こえてきたんだ。
「何かあったんでしょうか・・・?まさか!!」
「麻弥。行こう」
「薫さん!?」
そう言うと人が逃げてくる流れに逆らって、私は麻弥と共に悲鳴の聞こえた先へと駆け出す。
少し走った私の視界には先日見た怪物が剣を振り回して人を追いまわしているのを見つけたんだ。
でも、こちらに気が付いていないようだったので麻弥と2人で建物の影に隠れると麻弥がスマホで怪物の撮影をしていた。
「とりあえず、如月さんを呼ばないと・・・!!」
「麻弥、後何枚か撮影して私にも写真を送っておいてくれないか?」
「・・・?了解しました!!」
そして麻弥が弦太朗達よりも先に私だけに写真を送ってくれたのを確認するとその後も何枚か撮影をしていたら追いまわされている人達の1人―――子供が転んだんだ。
恥ずかしいことに私達は怪物が追い回している人の中には子供がいたのに全く気が付いていなかったんだ。
その子は絶望感にあふれた表情を浮かべて後ろに迫っていた怪物へと向けていた。
「麻弥!!後は任せたよ!!」
「ちょっと!!薫さん!?」
それを見た私は麻弥の静止も聞かないで怪物の前で転んでいた子供の元へと駆け出す。
私の視線の先では怪物は左腕を振り上げていたのが見えたので、子供を石にさせるわけにはいかないと思って庇うように抱きかかえて、私が石になるのを待った。
抱きかかえてからどれ位の時間がたったのかが分からないが一向に石になるような感覚がないことに気になった私は視線を怪物の方へと向ける。
そこには左腕が私の目の前で止めていた怪物の姿が映った。
なんで腕を止めたのかは分からなかったが、そのまま怪物は腕を降ろすと右腕に持っていた剣を地面へと叩きつける。
その剣はコンクリートを砕き、破片が煙のように舞い上がって視界を奪う。
そして、視界が晴れるとそこには怪物が開けた穴だけが残っていて怪物の姿はもうどこにもなかったんだ。
――――――
「ここまでが私が怪物と会った時の話だよ。その後は麻弥を家まで送り届けてからここに来たのさ」
薫は自身がペルセウスとの出会いを語り終えると何とも言えない空気が流れていた。
「あの後すぐに人が襲われたんだ・・・」
「てか、さっきの写真は麻弥が撮ったのかよ・・・」
「流石麻弥だよ。彼女が冷静でいてくれたからこれが撮れたんだよ。悪いが、今度は弦太朗達があの怪物と会った時のことを教えてくれるかい?」
「あぁ・・・わりぃ・・・」
薫が語り終わると次は弦太朗達が見たことの説明を求める薫。
それに答えて弦太朗が説明を始め、あやふやな部分は居合せたポピパ達―――主に有咲が補足すると、それを聞いて薫は話を理解しようとしていた。
「そんなことが・・・。それで瑠唯ちゃんが・・・」
「瀬田さん。そこまで気にしないでください」
「ん~・・・?」
「ハナ?どうした?」
「なんだこれ・・・?」
「それに有咲さんも・・・」
そんな中で突然たえと有咲が何かモヤモヤしたような表情を浮かべていたことにますきとましろの2人が気が付いた。
「なんか変じゃない?」
「変・・・?おたえちゃんどういうこと・・・?」
「今までと違って目的が分かんねぇよなぁ・・・」
「そうそう私もそう思った」
有咲が違和感を語るとたえもそう思ったと口に出す。
その言葉に有咲・沙綾・ますきの3人は疑惑の視線を送るがすぐにそれを辞めると沙綾が有咲に賛同する。
「あー・・・。今までのも話を聞いてるだけだけど、とりあえず法則性・・・?みたいなのはあったよね?」
「今回は沙綾の言うようなのが無いんだよな~」
「モールに商店街だもんね・・・。そう言えば薫さん達はどこで見たの・・・?」
今回現われている場所を呟いた花音。
そこで彼女は薫たちがどこで見たのかを話していないことを思い出したので口に出すと、薫はそっと写真を見せる。
彼女は写真を撮ったものの場所までは覚えていなかったようで恥ずかしそうな表情を浮かべると、土地勘のない弦太朗を除いた全員が写真を食い入るように見る。
その写真の場所に最初に思い出したのは沙綾とますきだった。
「ここって・・・病院だよね・・・?」
「あぁ、小さい病院だな」
「病院?なんで病院に・・・?」
「さぁ・・・」
「てかよ。モールって言っても広いだろ?どこだったんだよ?」
「ふえぇ~。えぇっと・・・確か歯医者だったよね・・・?」
「あぁ、そうだったね。花音」
「聞いてみたけど・・・ますますわかんねぇ・・・」
「ますきだけに・・・?」
「「「「「・・・・・・」」」」」
「ははっ・・・」
たえがここでくだらないギャグをぶっこむと、ましろがなんとか作り笑いをするも他は完全に言葉を失ってしまい、思考が停止してしまう。
「あ~、もうやめだ!!ハナのギャグで考えがもう纏まんねぇよ・・・」
「とりあえず、時間を置いて考えますか・・・」
「「「さんせー」」」
「お腹空いたよ~」
「そういえば、黒服さんがみんなの夕食を用意してくれたみたいだから行きましょうか・・・」
こうしてペルセウスへの対策をどうするかの話はここで打ち切られてしまい、彼女達はぞろぞろと部屋を出ていくと扉が閉じられた。
そんな中で薫だけが部屋に残ると近くにあった椅子に座り込むと頭を抱えるその姿はさながら探偵。
彼女はその姿のまま呟いた。
「歯医者に病院。そして商店街で瑠唯ちゃんを狙った」
一度ここで言葉を止めると部屋全体は静まり返るがその中で薫は再び呟き始める。
「さっき聞いた話にあったミッシェルを手にかけた時の様子。そしてさっき私に対して腕で掴まないで直前で止めたこと。それに最初のモールで怪物がいなくなった時のことや今までの事を考慮して・・・。
そこから導き出される結論は・・・」
ここで薫は自分の考えを纏めるがそこから導き出されたのは考えたくもない最悪の結論だった。
「はははっ・・・そんなことがある訳がない・・・。
仮にそうだとしたら三文芝居以下の酷過ぎる脚本じゃないか・・・。こんな考えみんなに話せるわけがない・・・」
薫は自身の考えた結論に絶望し頭を抱えた。
この考えを否定したかったが、今の彼女にこの考えを否定できる素材は何一つとして存在していなかった。
そんな中で閉じられていた扉が開かれるとそこから顔を出したのは花音と目を覚ましたはぐみだった。
「薫くん!!ご飯食べよ!!」
「薫さん?大丈夫?」
「あぁ・・・。ちょっと夜の街を見てみたくなってね。すぐ行くよ」
「うん!!かーくんもゲンちゃん先輩もみんな待ってるからね!!」
そう言い残してはぐみと花音は扉を開けたままその場を離れて行く。
「信じたくはない・・・。でも仮にそうだとしたらこれ以上無関係の人を襲わせるわけには行かない・・・」
薫はその言葉と共に覚悟を決めると立ち上がる。
そして明るい自分の演技をして花音たちの後を追うのだった。
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