ハロハピ篇の主人公は美咲。
はっきりわかんだね。
「「「・・・」」」
ペルセウスに変身したこころが逃走した。
それと完全に意気消沈した黒服が現われて無言の彼女達と石となった薫を連れて向かったのは屋敷―――
ではなく、有咲の家の蔵の中にいた。
そんな蔵の中では家主が突然の出来事に頭を抱えていた。
「悪いな有咲」
「ったく、連絡も無しに来るんじゃ・・・って言えるような状況じゃないよな・・・」
「薫くん・・・」
「ふえぇ・・・」
ここで有咲が言葉を止めて蔵へとやってきたハロハピ達へと視線を向ける。
そこには普段から良く笑っている彼女達とは対照的に暗い顔で座り込んでいる姿に有咲は気を使って弦太朗だけに聞こえるように小声で話しかける。
「でも、薫さん。元に戻んのかよ・・・」
「分かんねぇ・・・、とりあえず黒服の人たちがこころ探してるからそれから・・・だな」
「薫さん・・・すいません・・・」
「おい美咲!!」
小声で話してはいたが美咲には聞こえてしまったようで彼女はよろよろとした足取りで立ち上がると蔵から出ていくのを弦太朗が止めようとするがそんな彼を有咲が静止する。
「今はそっとしてやれ・・・」
「でもよ・・・」
「今はそっとしといてやれよ・・・。それに如月も戦い続きなんだろ?少しは休んどけよ」
「・・・分かったよ」
弦太朗は有咲の言葉に反論することが出来ずにしぶしぶと言った態度でその場に腰を下ろすとそこで会話が止まり、静まり返る蔵の中、それと対照的に蔵の外から騒がしくなると勢いよく蔵の入り口が開かれた。
「薫・・・っ!!」
「薫さん・・・」
そこに千聖と麻弥が慌てた様子で蔵の中へと駆け込んでくると薫の姿を驚きを隠せなかったが、思わぬ人物の登場に有咲も驚いていた。
「白鷺先輩に・・・麻弥さん?てか麻弥さんが・・・?」
「話を聞いたときに千聖と一緒にいたんですよ・・・」
「そうだったのか・・・。そういえば麻弥、バガミール返してもらえるか?」
「えぇ・・・。さっき彩さんからバガミールさんを受け取りましたけど、どうするんですか?」
「とりあえず撮って天校のダチに調べてもらおうと思ってな・・・」
「そうだったんですね。では・・・」
そう言って麻弥は自身のカバンの中からバガミールと出すとそのまま薫を撮影を開始する。
薫を見て震えている千聖の姿に蔵の空気が重くなっていくとバガミールが麻弥の手から飛び出して薫を様々な角度から撮影する。
「ちょっと、外の空気を吸ってくるわね・・・」
「気をつけろよな・・・」
薫を撮影しているバガミールに気が付いたのか千聖は薫から離れるとそのまま蔵の外へと出ていくのを見送るが、出ていく彼女の目に浮かんでいた物について誰も触れることはなかった。
――――――
「・・・・・・」
私は市ヶ谷さんの蔵から出ると扉の影に隠れて膝を抱え込んでいた。
「薫さん・・・。全部私のせいだ・・・」
こころがおかしいと思ったのに気のせいって事にして逃げてた。
商店街の時だって私が早く行動していればあんなことにならないで済んだかもしれない。
怪物の正体がこころって分かった後に、怪物にした張本人が出てきて怒りに身を任せてしまった代償に薫さんが犠牲になってしまった。
「ぁあ・・・」
私はそのまま声を押し殺して泣きだしてぁらどれだけの時間がたったか分からない。
でも、ひとしきり泣いた私はポケットに入れっぱなしにしていた如月先輩の携帯を取り出すと先ほどの光景が蘇ってくる。
『美咲。君がこころを救う最後の・・・』
「薫さん・・・。あの時なんて言おうとしてたのかな・・・」
ふと疑問に感じて声に出てしまうがそれに答えてくれる人なんていない。
そんな辛い現実から目を背けたくてが見上げるとそこには私の心情を映したようなどす黒い雲がかかった空から雨が降り始め、私はこれが今の暗い気持ちを洗い流してくれると思って雨に打たれていた。
ひとしきり雨に打たれた私は蔵の中へと戻ろうとするが中から誰かが外に出てくる姿が見えたので
私は咄嗟に扉の裏に隠れてしまった。
中から出てきた白鷺先輩。
でも私の事に気が付いていないみたいで先輩は先ほどまでの私と同じように雨の中に立っていた。
流石にまずいと思って私は白鷺先輩へと声を掛けようとする。
「白鷺せんぱ・・・」
しかし、私は白鷺先輩の顔を見て声を途中で止めてしまった。
「かおるぅ・・・。なんで・・・!!どうしてよぉ・・・!!」
「・・・っ!!」
雨で涙を隠すように先輩が薫さんの名前を呼びながら泣いていた。
先輩が泣きながら薫さんの名前を出す度、私も薫さん達と過ごした思い出が頭の中を過った私は出し切ったと思っていたのにまた泣き始めてしまった。
薫さんがあんなことになってしまった悲しみが涙と共に溢れてくる。
しかし、次第にそれはこころへの恨みや怒りへと変わり、悲しみを上から塗りつぶしていく。
白鷺先輩が泣き終えると必死に泣き顔を誤魔化そうと表情を作って中へと戻って行く弱弱しい姿を見送った私は顔を下に向けて座り込んでいた。
世界中のみんなを笑顔にする。って言ってた本人がみんなから笑顔を奪っている―――
「こころ・・・あんたは絶対に・・・許さない・・・!!」
そして自分の口からこころに向けてに憎しみの言葉と感情が漏れ出ていた。
この気持ちは持ったらいけない物だってのは理解できているのに、どうしてもこのどす黒い憎しみが溢れてくる。
もう頭なの仲がグチャグチャになってしまっていて、この気持ちを手放してしまうともう私は正気を保てないかもしれない――――
「奥沢さん・・・。風邪ひきますよ・・・?」
「・・・大和さん」
声をかけてきたのは大和さんで、持っていたカバンから取り出したであろう折り畳みの傘をずぶ濡れになっている私に傘をさして、私の顔を覗き込んでいた。
きっと酷く歪んだ表情をしているのだろう。
大和さんは私の顔を覗き込んだと思ったらおもむろに立ち上がった。
「・・・奥沢さん」
「なん・・・っ!!」
私は立ち上がった大和さんを見ようと視線をあげると、彼女は座り込んでいた私の頬を両手でグリグリと解してきた。
私は訳が分からなくなってその手を払いのけてる。
「なんなんですか!!」
「スマイルスマイル。ですよ?」
「はぁ・・・?」
「世界中を笑顔にするのが夢のバンドの人がそんな顔じゃダメじゃないっすか。
それに薫さんだったらきっと、奥沢さんに笑っててほしいと思ってるはずです。ジブンも笑ってもらおうとしましたが上手くできませんね・・・」
「こんな状況で笑えると思ってるんですか!!」
大和さんの行動に怒りをぶつけるがあの人は余りにもぎこちない作り笑いを浮かべていた。
「薫さんがそうして欲しいっていうならジブンは出来る限りそうします」
「・・・」
「本当は千聖さんに渡そうと思いましたが、奥沢さんにこれを渡しますね」
そう言って大和さんがカバンからあるものを取り出した。
「それは・・・」
「薫さんの制服の上着ですよ。演劇部の衣装合わせした際に忘れて行ってしまったのをジブンが預かってたんです。では、ジブンは中に戻って千聖さんの様子を見てきますので。適当に理由は言っておくので落ち着いたら戻ってきてくださいね」
大和さんは強引にそれを私に押し付けて早々に蔵の中へと戻って行ってしまったが、私はそれを見て泣き出しそうになった。
そんな時に私のスマホが震えた。
でも、この震え方はいつものチャットではない、極々稀に来るメールだ。
何気なく私はスマホを取り出して通知を見る。
そこに出てきた通知に驚きを隠せなかった。
「薫さん!?なんで!?」
メールの送り主は薫さん。
確かに、前にメールアドレスを教えたけど薫さんから来ることなんて無かったのにどうして・・・
不思議に思った私はそのメールを開くと動画が1つだけ添付された文章のないメール。
普段ならいたずらと思ってみないけど、何故か私は震える手でその動画を再生すると見覚えのある風景と信じられない人が写っていた。
『やぁ、美咲』
「薫さん!?」
動画に出ているのは間違いなく薫さんで私の名前を呼んだ。
私はその言葉を驚きながらもその動画を黙って見始めた。
『最近のスマホって凄いね。メールの送る時間も決められるなんて・・・ってこんなことはどうでもいいね・・・。
美咲がこれを見ているということは、私が石にされたんだろうね・・・。
それでさっき私の知っている名探偵に今までの出来事を話したんだけど、私の考えと一緒でね。
今回の犯人はこころなのだろう?』
「!?」
これがいつ撮ったものかは分からないけど、薫さんはこころだって気が付いたんだ・・・。
その事に驚いていたが、その後の薫さんの言葉に私はそれ以上の衝撃を受けた。
『だけど、決してこころを悪く思わないで欲しい。これは私の犯した罪の償いでもあるんだ』
「薫さんの・・・罪?」
『1つ、私が攫われた時に美咲や花音、そして弦太朗を傷つけたこと。
2つ、幼馴染の千聖の異変に気が付くことが出来ずに何もできなかった事。
3つ、今回の事件もこころが犯人だと思っているがそれを言い出せない私の弱さ。
これが私の罪だ。
だからみんなの笑顔のために私はなんでもするつもりだよ』
「・・・」
『そして、もう1つ私は罪を作る。
美咲、勝手なことを言っているのは分かっているが、こころを救ってほしい・・・』
「こころを・・・」
『弦太朗がこころを倒して止めるだけじゃ彼女は救われない。
誰よりもこころを大切に思っている君がこころを救う最後の希望なんだ・・・。
なに、私の事なら大丈夫さ。
弦太朗も同じことが起こって元に戻れたのだから私や瑠唯ちゃんだって元に戻れるさ・・・。
だから、頼んだよ。
つぐみちゃん。推理と撮影してくれて助かったよ。後、お茶をもらおうかな・・・』
締まらない最後の言葉と共に画面の中で薫さんが静止する姿を見た私はゆっくりと立ち上がった。
「私一人じゃ無理です。だから・・・
力を貸してくださいね。薫さん」
私はそう呟いてから大和さんから受け取った薫さんの制服に袖を通す。
そしてこころを止めるために蔵から走り出した。
走り出してふと空を見上げるといつの間にか雨は止んでいて、雲の隙間からは綺麗な月が顔を出していた。
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