この作品は学年が上になるほどにメンタルが弱くなっているように感じる・・・
「ひな・・・ひなぁ・・・」
「紗夜・・・さん・・・・・・?」
「ふえぇ~・・・」
「おいおい・・・どうなってんだよ・・・」
狂ったように日菜の名前を呟き続ける紗夜。
そんな彼女の姿にしばらく言葉を失っていた彼女達だったが、戸惑いながらもつぐみ達が声を絞り出す中でリサが語り始める。
「みんな紗夜がやった事は知ってるよね・・・?」
「あぁ、とは言っても話だけだけどね・・・」
「あたしは知らないっすね。・・・もしかしてあの時か・・・」
「マスキちゃんの考えてる通りだと思うよ・・・」
「その後からヒナに対して過保護気味なんだんなよね・・・。
練習の合間も学校でのヒナの様子を聞いてくるし、この前パスパレが襲われてた時はアタシ達の反対意見を無視してヒナの身代わりになろうとするし・・・」
最近の紗夜について語ったリサを見て、薫は自身の軽率な発言を後悔の念を覚えて椅子に力なく座ると申し訳なさそうに顔を下に向ける。
「すまない・・・。私のせいで・・・」
「も~・・・薫のせいじゃないでしょ?それに薫はこの事知らなかったんだからさ~」
「そうだよ!!薫さん・・・!!」
「すまない・・・」
「でも、どうするんですか?」
「流石に・・・このままには・・・出来ないよね・・・?」
リサの言葉を受けても薫はそのまま自責の念に苛まれてそのまま力なく椅子へと座りこんだままだったが、とりあえずの紗夜の状況は理解した。
しかし今の彼女達は紗夜をどうするか考え始めたところに店のドアが開かれる。
「紗夜!!って薫もどうしたんだ?」
「えっ!?如月さん!?」
「ふえぇ~?」
「流石に来るタイミングが良すぎだろ・・・?」
「如月くん・・・?どうしてここに?」
「紗夜の様子がおかしいのをバガミールが教えてくれてな。それでバイク飛ばしてきたんだよ・・・」
「こいつそんなことまで出来んのかよ・・・」
「如月さん・・・!!日菜が・・・!!」
余りのタイミングのいい登場に驚く彼女達に弦太朗はここに来た理由を話すと納得したような様子を浮かべていたが、このタイミングで紗夜が弦太朗の胸の中へと飛び込んで泣き出す。
つぐみが羨ましいと思ってしまうが、今の紗夜の気持ちを考えると一瞬それも失せる。
弦太朗も紗夜の行動に驚きの表情を浮かべているとここで紗夜のスマホから着信音が鳴り響くが紗夜は未だに泣いていてそれに気が付く様子はない。
それを見たリサは紗夜のポケットからスマホを抜き取って電話に出る。
「もしもし?」
『紗夜ちゃん!?・・・ってこの声はリサちゃんね?』
「千聖!?」
「「「「!?」」」」
「ヒナは!?ってちょっとますき!?」
「・・・すんません。あたしも気になるんで・・・」
電話の相手は先ほどまでテレビに映っていた千聖。
まさかの相手からの通話に紗夜以外の全員が驚きの表情を浮かべるも、リサはそのまま電話を続けてたがますきがスマホを取りあげて全員が聞こえるようにスピーカーに設定してからリサへと戻す。
『リサちゃん?大丈夫かしら・・・?』
「あぁ・・・うん。ちょっとみんなに聞こえるようにスピーカーにしただけだから・・・」
『・・・一応聞くけど、紗夜ちゃんとマスキちゃん以外には誰がいるのかしら?』
「えぇっと、薫に花音につぐみでしょ?それにつくしと・・・さっき弦太朗が来たってところだけど・・・そんなことよりヒナは!?照明が落ちてきたように見えたんだけど!?」
『最初に日菜ちゃんの事についてだけど・・・。あの子は今、彩ちゃんと一緒に病院に行ったわ』
「病院!?」
「「「「「!?」」」」」
病院と言う単語が飛び出したことによって、最悪の事態が頭を過って、彼女達に緊張が走る。
ほんのわずかな時間だったにも関わらず、彼女達は時間が止まったような錯覚と共に次の千聖の言葉を待っていた。
『えぇ・・・幸い誰にも直撃はしなかったんだけど、落下した破片が日菜ちゃんにね・・・。彩ちゃんは突き飛ばされて受け身を取ろうとしたら手首を捻ったみたいで・・・』
「千聖ちゃん!!日菜ちゃん達は無事なんだね!!」
「そうよ。花音にも心配かけたわね・・・」
「日菜・・・良かっ・・・」
「おい!!紗夜!!」
「紗夜は・・・安心して気を失ったみたいだね・・・。ほら薫もいつまでも落ち込んでないの!!」
「あぁ・・・」
「如月先輩!!とりあえずこっちに椅子並べておいたんで!!紗夜さんを」
「わりぃな・・・!!」
『そろそろ続けていいかしら・・・?』
「まだ何かあるんですか・・・?」
日菜が生きている。
それを知って安心してしまった紗夜がその場で意識を手放してしまった。
どうしようかと思っていた所につくしが椅子を並べて、弦太朗は紗夜をそこに寝かしておくことにした。
それを電話越しに聞いていた千聖は話を続けようと電話の向こうから問いかけてくる。
彩と日菜が怪我をしながらも生きていることを伝える以外に要件があることに疑問を覚えたつぐみが千聖へと聞いてしまうと彼女の口からは驚くべき答えが返ってきた。
『実はここ最近アイドルが事故・・・いえ、事件が立て続けに起きてるよの』
「「「「はぁ!?」」」」
『それにさっきの落下事故の後に私達が襲われたのよ・・・』
「それって・・・ゾディアーツか!?」
『残念だけど違うわ。あの黒い奴・・・"ダスタード”だったかしら?あれだったけど、それは大したことはなかったわ』
「ふえぇ~!?ちょっと待って!!」
「後で説明するから!!千聖、悪いけど続きを・・・」
アイドルが連続で襲撃されている。
その上、照明が落下した直後に千聖達が襲われたという言葉にその場にいた全員が驚き、流石に理解が追い付かなくなった花音から声が挙がるが、リサが千聖へと説明の続きを求めた。
『えぇ・・・。2人が病院に運ばれてから私達も病院に向かおうとしたのだけど、その時にテレビ局の廊下に3体出たのよ』
「それ千聖達は大丈夫だったの!?」
『イヴちゃんが近くにあった特撮番組の小道具の剣で瞬殺してしまったから怪我も何もなかったのだけれど・・・』
「あの・・・これはどこからツッコめばいいんですか?」
「つくしちゃん・・・それは考えたら負けだよ・・・」
千聖の説明に思わずツッコミを入れたくなってしまったつくしだったが、その行動はつぐみによって止められてしまう。
そんな中で千聖はそのまま話を続けていく。
『それで悪いのだけれど、明日から少しの間弦太朗を借りていいかしら?』
「俺は大丈夫だけど・・・。そんな状況でアイドルすんのか?」
弦太朗の尤もな意見に千聖は声のトーンを落としながらもその問いに答えた。
『この間の暴走事件で若手のアイドル達の評判が軒並み落ちてしまったから、これ以上落とすわけにはいかないし、それに・・・次の仕事はライブなのよ』
「それは千聖ちゃんたちのせいじゃないでしょ・・・?」
「しかも怪我人をライブにあげんのかよ・・・」
『これが開催までに時間があるならまだしも、今度の木曜日なのよ・・・。それに汚い話だけれど、事務所としてもそんな開始直前で中止するわけには行かないって言うのが本音なのよ・・・。仮に日菜ちゃんが怪我で出れない状況でもね・・・』
「なんだよそれ・・・!!」
「よく分かんねぇけど落ち着けって!!・・・それで千聖、俺はどうしたらいいんだ?」
自身の意思とは関係なく怪我人をライブに出させるという言葉にますきは怒りを覚えるも、弦太朗はそんな彼女を宥めてから電話の向こうの千聖へと問いかける。
『あなたには私個人のマネージャーをしてもらうわ!!』
「なっ!?」
「んっ?」
「「はい?」」
弦太朗が千聖のマネージャーになるという彼女の言葉につぐみは驚きの声を他の一同は不思議そうに声を挙げてしまう。
「マネージャーってなにすんだ?」
『そんな難しいことはないわ。スケジュールは私自身で管理してるし、移動もタクシーよ。事務所で雇う訳にもいかないから私個人のマネージャー・・・・・・というのは形だけで、実際は私達のボディガードね』
「おう!!よく分かんねぇけど・・・任せとけ!!」
『それじゃ明日から頼んだわよ』
その言葉を最後に千聖からの電話が切れると、店の中は何とも言えない空気に包まれる。
「よく分かんねぇな・・・」
「如月くん。千聖さんに変な気起こしたらダメだからね!!」
「大丈夫だって!!弦太朗にはそんな甲斐性ないから~☆」
「ふえぇ~」
「儚い・・・」
「その・・・頑張ってください!!」
「とりあえず、あたし達もなんかあったら手伝うから言えよ?」
「おう!!」
各々からの激励?を受けて弦太朗は笑みを浮かべてそれに答えると、ますきが弦太朗へと歩み寄っていく。
「ますき?どうしたんだ?」
「いやな。麻弥さん達のマネージャーになるってのをパレオに伝えたんだけどよ・・・」
「パレオに?・・・あぁ、そう言えばアイツ彩たちのファンだったな」
「あぁ・・・その・・・なんだ・・・・・・・・・死ぬなよ?」
「は?どういう・・・」
歯切れの悪いますきの言葉に弦太朗が首を傾げると、マグフォンから着信音が響くと即座にそれを取った弦太朗。
しかし、それがある意味では地獄の片道切符だった―――
『如月さん!!お話はマッスーさんから聞かせていただきました!!パレオにお任せください!!あなたを一晩で立派なパスパレ信者にして見せます!!』
「パレオ?なにいってんだ?」
『大丈夫です!!すぐにパスパレ愛に目覚めますので!!まずは彩ちゃんのプロフィールですが・・・』
弦太朗は先ほどのますきの言葉を理解した。
彼が彼女に視線を送ると、手を合わせて謝るような素振りを見せていたがその顔はとてつもなく笑顔だった。
その後、羽沢珈琲店で解散するがパレオのパスパレ講義は弦太朗がバイクで家に向かっている間も続いており、翌日の朝日が登るまで延々とその講義は続くのだった。
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